新田剣丞のマガイ物になったので、悪役ムーブを決めて暗躍したい 作:Hoffnung
本編ネタバレを多分に含む展開になりますので、未プレイの方はブラウザバック推奨です。
目が覚めたら自分が自分では無くなっていた。
そんな経験をしたことがあるやつはまあ稀だろう、多重人格者などといった極小数の例外を除いてこの世に生を受けてから、あの世へと還るまで自分は自分でしか無く、突然どこの誰ともわからない人になっていた、なんてことはまず起こり得ないし、あり得ないとも言っていいだろう。
東から登った太陽が、西に沈む現象がある日突然逆になるかのか?…そんな事はまず無い、それ程までに急に自分の姿形が変わらないということは不変的な事実なのだ。
わざわざ思考するまでも無く、そうであって当然。
ふと思い浮かべることがあったとしても絵空事として直ぐに馬鹿馬鹿しいと結論づける絶対的な法則。
当然の事実…であって欲しかったのだが…
「くくくく…は、はははははははっ!!!」
意識が覚醒し、1番初めに聞いたのがこの高笑いであった。
喜んでいるのだろうが、どこか狂気的と表現せざるを得ないそんな笑い声だ、正直怖い。
……それとここはどこだろうか?
随分と薄暗い不気味な空間だ。
空気が動く気配も無く、音が響く様子が感じとれない。
大気そのものが存在していないのでは無いか?
そう錯覚してしまいそうな程に……無、という表現が当てはまるように思える。
余りにも不気味な空間に自分が現在いるという大きな不安と、目の前にいる笑い声を発している存在の不気味さに内心に恐怖が湧いているのがわかった。
だがそんな俺の心情などお構いなしに目の前の存在は言葉を続ける。
「善き哉善き哉。これで朕が望む新たなる外史への扉を開くための鍵がまた揃った…!」
「朕は『お前』の誕生を心から祝福するぞ…たった今、荒加賀が裔にして、稀人として当世に舞い降りた天人の姿形と圧倒的な武力を得た…朕の僕としてな…」
「朕の高貴な血による新たな日の本の新政の礎となれることを誇りに思うがいい…『お前』には期待しているぞ?」
「貴き血を持つ朕を頂点とする、新しき日の本を築くためにな…」
…………
ええ…(困惑)
「朕を拒絶した鎌倉を始めとする下賎の武士共に…目に物をみせてくれるわ…!」
そう高らかに目の前の高貴な着物を纏った中性的な少年は宣言した。
拝啓、お父様、お母様。
あなたの息子は今、このよくわかんないこと言ってる少年の野望?とやらの礎になる為の存在になった様です。
はー、わっけわかんねえなこれ。
戦国†恋姫〜乙女絢爛☆戦国絵巻〜
株式会社ネクストンのアダルトゲームブランドであるBaseSonにより発売されたPCゲームで、恋姫シリーズと呼ばれるBaseSonさんの主軸シリーズの一つにあたる。
ある日、主人公である新田剣丞は戦国時代へとタイムスリップしてしまい戦国の世を駆け抜ける、といったゲーム内容になるのだが…このゲームの大きな特徴として日本の戦国時代を舞台にしておきながら、武将が全員女の子という物がある、まあ、あり大抵に言ってしまえば全員俺の嫁!が出来るハーレムタイプのエロゲーである。
因みに選択肢は無く、ルートは一本道である為、エロゲ初心者でも安心の設計だ。
主要武将が全員女の子、というのは昨今の界隈ではよくありがちな設定ではあるが、史実から絶妙にアレンジされたシナリオをベースに個性あふれる登場人物の多さや、丁寧な世界観の描写と設定の作り込みは作品の完成度をこれでもかと高めており、それゆえにこのゲームに魅了されたファンは多く、根強い人気を博しているゲームだ。
因みにこんな解説をしているだけあって勿論俺もその1人である。
なんでいきなりこんなゲーム紹介なんてしてるかっていやあそれは…
目の前にいるのがどっからどう見てもそのゲームに出てくる登場人物だから、ですかねぇ…
「くくくく…解る、解るぞ…!『お前』の秘めたる圧倒的なまでの武力をな…荒加賀が裔を元にし、朕のもつ神器の力を込めたことでここまでの力を持つとはの……朕の力を直接別けて作り出した甲斐があったというものよのお。」
喜びを抑え切れないと言わんばかりに俺に向かって笑み(といっても随分と邪悪だが)を浮かべ、満足そうに頷きながらそう言葉を発する。
どーみてもラスボスの吉野の
改めて目の前に立つ、少年、吉野の姿を目に収める。
貴人らしい質の良い着物姿に、小柄で中性的な見た目。
そして何よりこの回りくどく古くさい傲慢な言い回し方!
うん、吉野だ、吉野。
原作ゲームをプレイしたことがあるならばまず忘れることは無い、戦国恋姫でのラスボス、吉野の御方そのものだ。
いや、吉野が出てくるってことは続編であるXの方か…と思考を軽く張り巡らせる。
因みにXと前作違いって言うのは簡単に言うとエッチシーンの有るか無しか!!シナリオのボリュームにも差はあるが1番大きな違いとしてはここだろう、確か最初から18禁版でリリースしようとしたけどテレビCMが打てないやら、雑誌に広告を出すことが出来ないって制限かかるから泣く泣く一般作として出したんだっけな?
1ファンとしてはちゃんとエッチシーン有りが作られるまで売れて良かったって感想しか無いぜ…いざって時に寸止め多くてモヤったもんなぁ。
「体の馴染み具合はどうだ?何の問題も無く作り出せた筈だが…姿見でも見るか?」
そんなキモオタ全開の思考をしていると吉野に声を掛けられた、いっけね、そもそも何で目の前にゲームのキャラがいるってもそうだけど兎に角この現状が分からなさすぎる。
普通に寝て起きたら目の前に吉野だからな、頭おかしくなるわこんなの。
つーか普通に気遣ってくれるんだな、ゲームをプレイしてた時の印象としてそんな事はしなさそうって思ってたわ。
吉野の声かけと共にどこからとも無く出現したこれまた古そうな装飾の姿見鏡が現れる。
これで確認するといいと言わんばかりに手振りをしてくれる、素直にありがたい。
…結構なサイズだ、これなら難なく全身の状態を確認出来るであろう。
さて、今の俺はどうなってるのか、な……?
?
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???
????
??????
……………………は????????
姿見鏡に自身の姿を収め、全体の姿を確認して時間にして数秒程度。
…俺は混乱の余り思考停止をしかけた。
そんな馬鹿なことがと、二度、三度、四度と確認し直す。
だが結果は変わりはしなかった。
驚きのあまり心臓の鼓動が速くなっているのを感じる。
平静から困惑へ
困惑から疑惑へ
疑惑から焦燥へ
そして焦燥から確信へと変わっていくのが直感的に理解出来た。
いやこれは理解して受け入れて良い物なのか…俺には判断しかねない。
冷や汗がタラリと流れるのがわかる。
産まれてこの方ここまで混乱するほどの衝撃を受けたことは無い、だってそりゃあそうだろう。
目の前の姿見鏡に写っているのが見慣れたいつもの自分の姿では無かったのだから。
いつの間にか鏡の前に立ち、早数十秒の時が過ぎていた。
そんな俺の様子に流石に怪しんだのか
「…?おい、何を黙り込んでおる、朕は寛大であるからな、わざわざ許可を得ずとも発言ぐらいは許してやるぞ?」
相変わらず吉野の傲慢な発言も右から左へと耳を突き抜けるように消えていく。
そんな気遣いしてるわけじゃねーよと思う以前に姿見鏡に写ってる姿が予想外過ぎた。
別に人間ですらない人外的な存在にされてたって訳じゃ無い、ちゃんと人間だし男って性別も同じだ、そこは安心している。
だが、それを配慮したとしてもこの衝撃は相当な物だ。
…改めてじっくりと自分の全身を確認する、鏡に写っている者の動きと、自分の動きがリンクしていることから間違いなく自分は今この鏡に写っている通りの姿をしていることが頭で理解してしまった。
この顔付き
この服装
この立ち姿
戦国恋姫をプレイする上で、なんどもイベントCG絵で見た外見だ、多少の差異はあるが…でも間違いない。
「……新田剣丞、だと…?」
ここに来て初めて発した声色が、これまた自分の声では無いと気づくのはそれからもう少し後のことだった。
プロローグは後1、2話ぐらい使うかも?
主人公そっくりの偽物って良いよね…素のスペックが主人公より上回ってたりすると尚良い。
感想とかくれると嬉しいのでお待ちしております。