新田剣丞のマガイ物になったので、悪役ムーブを決めて暗躍したい 作:Hoffnung
ーーーブウウンッ……
そんな何処と無く不気味な音と共に俺は
少しの浮遊感から、直ぐに重力の力でしっかりと大地へ己の2本足を踏み締める様に着地する。
さっきまでずっと音も無く、ただひたすらに"無"って言葉が似合う空間である
無明長夜ってのは吉野が使える妖術の1つで、"無"って表すことが適切であろう暗闇の虚空間の事だ。
原作ゲームでは本能寺での決戦の際、主人公である新田剣丞を拉致する為に使った術式だがBGMとかも更に合わせて一切無くなるので本編をプレイしていて少し驚いた覚えがある、まさか自分がその術中の中に入る様なことになるなんて思いもよらなかったが…いや、そんな事言い出したら主人公のそっくりさんになって吉野に協力する事になるなんてことの方が思いもよらない出来事か。
吉野と協力関係を結んだあの後、俺は自由行動を取らせて貰える様に図らって貰った。
何でも、まだこの
実はもう1つあるのだが…それはひとまず置いておこう。
「
吉野にある程度の自由行動を取ったのには理由がある。
「
そう、原作の進行具合の確認だ。
戦国恋姫Xに登場する吉野は、原作ゲームの最終章で本格的に主人公達鬼討伐連合と真の黒幕として敵対することになり、そこで森長可こと通称"小夜叉"によって殺されてしまう。
つまり、吉野が今現在存在している以上、物語の最終章である京の奪還及びに本能寺の変が終わっていないということになる。
俺の予想では既に物語も折り返しにはきているであろうと思っているが、そもそもの話、原作にいない俺という存在を吉野が作り出してしまっている以上何処まで原作と乖離が発生しているかがわからないのだ。
その為、無明長夜から出てきた場所は越中の魚津近く、原作での大きな分岐点である金ヶ崎の退き口で主人公率いる通称剣丞隊が逃げてきた辺りだ。
俺の朧げな記憶が正しければ本編最終章までの道のりの中でこの近辺に再び立ち寄る描写は無かった筈だ、そうならば主人公サイドとも会う心配は少ないだろうし、比較的安全に現状確認が出来るだろうと見越している。
更にここから越後を目指し、春日山城城下の町へと向かうことが目標だ。
「ん、ほっ…」
体をある程度ほぐして、軽くステップを踏む。
体に何も問題は無さそうだ。
軽い準備運動を終えた俺はそのまま越後へと向かう方角へ体の向きを変える、原作では新田剣丞達はこの魚津から船で向かっていたが当然俺にそんな物は無い、じゃあどうするかって言うと…
「…ふっ!」
走るんだよォ!!
俺は足に力を込め、地面を勢いよく蹴る。
次の瞬間、俺は風になった。
◇
ーーーーー
「俺はもう越後は終わりだと思ったがなぁ…落ち着いてきて何よりだ。」
「新しい後継者も景勝様へと無事決まったようじゃしな、これでしばらくは平穏に過ごせるじゃろう。」
「争っていた景虎様も納得して景勝様に協力するって聞いたしな、これで越後も安泰だ!」
「ああ、これで逃げてしまった商人達も戻ってくるじゃろうて…儂らも頑張らなければな。」
やはり、御館の乱までは進んでるか…
俺は歩きながらふとそんな事を考えた。
脅威の身体能力を駆使して、魚津から
因みに御館の乱っていうのは戦国恋姫Xにて長尾衆サイドの補完として追加された新エピソードであり、現越後当主である、長尾景虎の養女、長尾"空"景勝と北条三郎"名月"景虎との跡取り合戦のことで、関東を牛耳る北条家からの思惑がありつつも最終的には内乱中に発生した鬼の出現に一致団結し、名月が空に対して越後の未来を真剣に思い、協力する決意を表明する俺個人としても好きなエピソードだ。
で、何故俺が御館の乱まで進んでいるかって予想してたのは何を隠そう俺の産みの親にしてラスボスである吉野の初登場シーンがこの御館の乱だからだ。
俺をもう1人の新田剣丞として作る以上は何かしらの接触をして俺を作り出すための何か新田剣丞本人から採取したのではないかと話を聞いて感じたからな、原作の本筋に大きな差異が無ければ御館の乱までは進んでるかと思ったって訳。
「これも阿弥陀如来の化身様のお陰だな…」
「確か
「何でもとてもお優しい方らしいぞ、白い天の服を着ていて民にも分け隔てなく接してくれるらしい。」
「へー!そりゃ大したもんだ!で、今は何をされてるんだ?」
「何でも数日前に越後を出て甲斐に向かったって話だそうだ。」
「甲斐!?甲斐といえば武田の…!!…何でまた?」
「さあな、偉い人の考えはオラにはわかんねぇ…」
「心配だな…この越後を救ってくれたんだ、大事が無ければいいが…」
またまた新情報をゲットした、数日前に越後を出て甲斐に…つまりまだ武田家とのエピソードが始まってないってことになるか、越後から甲斐までの道のりは馬でも結構掛かってた描写あったしな。
さっきから噂話多すぎない?って疑問が出てくるかもしれないが娯楽が兎に角少ないこの時代、大名達のお家騒動なんか庶民には最高の娯楽でしかないと言うのを忘れてはいけない、町の様子から見るに春日山城奪還と次期当主でのお家騒動なんて言う2つの大きな出来事があったんだ、これで噂話にならない方が可笑しいだろう。
SNSが発達した現代から来た俺には到底理解出来ないだろうがそれだけ井戸端会議ってのはさぞ楽しい娯楽なんだろうな。
実際、その煽りを受けて乱れてた町を修繕する様子が所々見受けられる、恐らく春日山城の足軽達だろう、忙しなく動き回っている。
「
予想では数日ぐらいかかるかな?って思ってたわ、まだこの街に入って1時間ぐらいしか経ってないぞ、どんだけ噂話好きなんだこの時代の人。
まぁ時間が掛かるより遥かにマシかな…しかし、実際問題これからどうする…?
現代であるなら、好きなゲームをやったり、友達と遊びに行ったりと休日なんていくらあっても時間が足りないぐらいなんだが…生憎今の状態ではどちらも実行は不可能。
「
こうなったら適当にブラつくかー、復興に向けて修繕してる途中だし何か買い食いとかして町にお金を落とせたら良いんけど…俺今お金無いんだよなぁ…
適当なこといって吉野に路銀集れば良かったかな?いや、そもそも吉野ってお金持ってるんだろうか…元は平安時代の良い身分だったみたいだから無一文って事は無さそうだけど『何故朕が今の通貨など使わねばならぬ?朕はこの日の本の主人ぞ』とか普通に言いそうだ。
…こうなったらあんまり乗り気じゃないけど吉野に言われた
「…む?」
そんな事を考えているとふと、ある建造物が視界に入る、いや正確には遠目からならずっと目に入ってたんだがな。
「
春日山城、この越後にて剣丞達が越後のお家騒動にて空奪還の為に侵入した長尾勢の本拠地。
原作では美空の姉である、長尾晴景が空と愛菜の2人を人質に謀反を起こして剣丞達がそれの奪還に協力し、見事美空達長尾衆を連合に引き入れることに成功する切欠になってた筈だ。
にしても実際に見ると確かに厳重そうな城だ、この越後を代表する堅城というのもあながち間違いないらしい…まあ剣丞に攻め落とされたけど。
…待てよ?確か甲斐に向かう時って剣丞隊の面々の多さから全員は甲斐に向かわず、待機する流れになってた筈だ。
て事は、今あの春日山城には剣丞隊員…もとい戦国恋姫のヒロイン達がかなりの数いるってことになるのか…
………
見 て み た い(欲望の権化)
ちょっと軽率過ぎないかって思うかもしれないけどさ、いやだって見たくない?エロゲーをしてる上で最も目にする機会が多いヒロイン達だぜ???
ゲームの世界に来てしまった立場でその作品のファンなら登場人物がどうなってるかぐらい見たくなるのがファンの性ってもんだろう。
そうに違いない、違いないと言え(豹変)
「
そうと決まれば話は早い、俺は春日山城に潜入する為とある場所へと移動を開始した。
◇
「
移動を開始して約半刻ほど、俺はすんなり春日山城の裏手である崖付近へと到着に成功していた。
原作では堅城故に絡め手での方法が難しい為、大軍による正面突破しかないと言われていた春日山城を落とす為に剣丞達はここから春日山城に侵入し、空達人質を奪い返すことになるんだよな。
つーか、実際に見るとすげえ断崖絶壁だな高さ的にビル30階ぐらいは下らないぞ…角度もほぼ垂直だしこれ見て小刀と縄使ってクライミングしたろ!ってなった新田剣丞さんマジぱねえっす。
試しに岩肌に触れてみる…かなり硬い、確かに小刀や苦無を差し込めそうな亀裂は所々見受けられるがあの小波ですらここから侵入するのは無いって判断してただけあってここを登ろうなんて発想はまず出てこない筈だ。
…まあ俺も今から登るんですけどね!!
登るって言っても小刀と縄を使ってクライミングするわけじゃない、足に力を込めて…
「はっ!!」
おお!早い早い!!
岩肌の突起に足を掛けては次の足場に足を掛けるのを高速で繰り返しているだけに過ぎないが、突然だがそんな事普通は出来はしない。
それだけの超人技がいとも容易く出来てしまうこの体のスペックがおかしいのだ、吉野さん本気出しすぎだろ。
あっという間に頂上付近まで近づいた俺は近辺に人影がいるのを確認出来た…4、5人ぐらいだろうか?見張りなんていないだろって鷹を括っていたが原作では見張りをつけていなかったことで剣丞達の侵入を許した訳だからその対策ってとこか?
「はー、何で俺こんな崖の見張りなんかしてんだろ…」
「言うなよ…景虎様の手の者に聞かれたら何されるかわからんぞ。」
「いや、気持ちはわかるぞ、人質がいるから絶対勝てる!って聞いたからあの謀反に乗ったってのに…今じゃ俸禄も下げられてこんな崖なんか見張りさせられてるんだぞ?」
「だよなぁ…こんな崖、見張りなんかいなくたって侵入してくることなんか無いだろ…あの田楽狭間の天人め…余計なことをしてくれおって…」
「全くだ、あの男がこの崖から侵入なんて奇策をしなければ今頃晴景様の足軽としていい身分でいられたってのに…」
「おい、どうせ誰も見てないんだし休憩にしようぜ?ちょっとぐらい目を離したって問題ないだろ。」
「だな!おーい、お前らちょっとこっちに----」
「
そう言って俺は気の抜けた見張り達の前に降り立ってみせた。
「なっ!?くせ…ぎゃっ!!」
「おわっ!?」
「ぐふっ…」
突然現れた俺の登場に気の抜けた見張りの兵達が動転し、味方を呼ぼうとするがそうはさせない、目にも止まらぬ速さで俺は兵達を全員気絶させてみせた。
…うん、ちゃんと手加減出来るっぽいな、死んでないし一安心。
てか、この体に気づいたことがもう1つ、やけに戦闘に向けての行動が最適化されているのだ。
俺本人がこうしようと思ったことが的確に再現されるオート機能とでもいうんだろうか?
少なくとも俺自身は元の世界では喧嘩なんかほとんどしないモヤシだったがこの機能のおかげで難なくこんな真似が出来てしまうのだ、いや本当に便利だなこの体。
さっきの会話の様子から考察するにこの気絶した見張り達はお家騒動で春日山城占拠に加担した足軽達ってとこだろう、春日山城が無事に美空に戻ってしまった今、こんな窓際部署に飛ばされてるみたいな扱いを受けてるってことか、世知辛いねぇ…ま、俺には関係ないけど。
さて、ちゃっちゃと目的を果たしにいくとしますか…確か原作での美空サイドって甲斐に連れて行かれた剣丞を取り返すためにかなり早い段階で出陣してたっぽいし、急がないとヒロイン達はもう越後にはいませんって状態になりかねない。
そう考えた俺は春日山城に向けて歩きだし-----
「そこの者!とまりなさい!!」
!!?
俺は何者かに後ろから静止の声をかけられた。
ま、まだ見張りが残ってたのか!?
「くせ者、そこに直れ!あの断崖絶壁から侵入してくるとは何者だ!!成敗してくれる!」
まずい!見つかるだなんて毛ほども想像してなかった!
くそっ、内心さっきの足軽達を軽んじてたけど、気の抜けてるのは俺もじゃないか!
「こちらを向け!武士としての情けだ、背中から襲わず、正面から成敗してくれる!!」
しょうがない、こうなったら兵達が集まってくる前にコイツを気絶させてやり過ごすしか…
そう思って俺は言われた通りに振り返ると。
「…なっ!!?」
声の主の仰天した顔が目に映った、まるで信じられない物を見たかのような形相だった。
あれ、確かこのキャラって…
「
「に、新田…どの…?」
今すぐにでも抜刀が出来る居合の構えをして呆けている目の前の女性。
戦国恋姫Xにて追加された新キャラの1人
小島貞興こと通称"貞子"が呆然とした声で呟いた。
お話考えるのって難しいなと思う日々、主人公を頑張って暗躍させたい…
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