新田剣丞のマガイ物になったので、悪役ムーブを決めて暗躍したい   作:Hoffnung

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鬼小島と相対のち、最後の条件を果たし始めるとのこと

…夢でも見ているのだろうか?

 

晴景派残党である謀反に加担した足軽達の管理の一環で見回りをしていたところに思わず出くわした侵入者。

 

あの断崖絶壁から再び侵入者が現れたってことだけでも一大事なのにその侵入者は私にとって…いや、御大将にとっても驚くべきことだった。

 

「に、新田…どの…!?」

 

つい先日までこの越後での2つのお家騒動の解決に協力して下さった田楽狭間の天人、そして御大将の良人となってしまった幕府公認の蕩し御免状を頂戴した稀代の女たらし。

 

新田剣丞どのそっくりだったのですから。

 

呆然とする私に向けて、目の前にいる黒い新田どの?は口を開いた。

 

「…越後の将が1人、小島貞興だったか」

 

「…私を知っているとは恐縮ですね」

 

「鬼小島の異名は聞き覚えがあるのでな」

 

以外?にも目の前の黒い新田どのは私の名前を知っているようだった、あの白を基調としたどこか爽やかな雰囲気がする服装の色合いから対極する様に黒を基調とした色味に変わっている新田どのは簡潔に、そして淡々とした様子で言葉を紡ぐ。

 

何はともあれ綺羅星の如く勇者が在籍する越後において自分の名が敵に知られているというのは武士冥利に尽きるものだ。

 

…しかし、小島貞興なんて堅苦しい呼び方ですね、声も新田どのそっくりですけど何か重々しくて威圧的な感じです、先日は貞子さんって呼んで熱い夜を過ごしたというのに…えへへ、あの時の新田どのは素敵だったなぁ、御大将を差し置いて1番にやや子が出来ていたら…嬉しいな…♡

 

じゃなくて…!

 

ふわっとした気持ちを切り替え目の前の侵入者をキッと睨みつける。

 

「妙高の鬼、越後の鬼、長尾が鬼の鬼小島!弥太郎貞子貞興、刀一本にてお相手致す!」

 

何はともあれこの男を捕らえなければ!

私は頭を切り替えいつでも抜刀出来る様に戦闘体制を整える。

先日肌を重ねたばかりの男にそっくりな外見をしてるので多少のやりにくさは感じますが私とて越後の将、それぐらいは割り切ります。

 

我が居合いの技、とくと味合わせてやる!

 

「…威勢が良いな」

 

そんな私の様子を見て、やれやれといった様子で肩をすくめると黒い新田どのは右手で軽く手招きをしてそのまま人差し指を立てた。

 

…?何の真似だ…?

 

「こい、貴様が刀一本なら私は…()()()で相手してやろう」

 

「っ!!私を…舐めるなぁ!!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、私は激昂した。

指一本で相手をするだと?武人として…そんなあからさまな侮辱があるだろうか?私は一気に頭に血が昇ってしまい勢いのままに刀の柄にかけていた手を力強く握りしめ、勢いよく抜刀する。

 

抜き放った刀は正確に首筋に吸い込まれ、首が飛ぶ…筈だった。

 

ガキンッ!!

 

「なっ…!?」

 

まるで金属同士がぶつかった様な鈍い音を響かせ私の刃は…()()()()()()()()()()()()()

本当に指一本だけで止められた事実に愕然としつつも止めた張本人は涼しげな様子だ、冷ややかな目で止めた刀に目を見やる。

 

「良い腕だな、確実に私の首を狙っていた、速度も悪くない…だが…」

 

そのまま指を折り曲げ刀を逸らし----

 

「私には通じない」

 

「っ!?」

 

そう言い放つと体制を崩した私の右腕目がけて指が突き出され、右肩に吸い込まれる。

指で突かれただけ、ただそれだけの筈なのにまるで木刀で叩かれたかの様な衝撃が走り、思わず私は刀を地面に落として突かれた右肩を抱えこむ。

 

「…案ずるな、威力は軽い打撲程度に抑えてある、無理に動かさなければ直ぐに回復するだろう」

 

「っ!何の…これしき!」

 

余裕混じりの発言から手加減されたという事実にまたもや屈辱を感じ、直ぐに刀を拾おうするがそれよりも素早く黒い新田どのが刀を軽く蹴り飛ばし、私の刀が向こうの茂みへと放物線を描いて放り込まれる。

 

「無意味な足掻きだ。」

 

淡々と冷たく言い放つ。

取りに行こうにも、今ここから目を離せば本丸への侵入を許すことになるかもしれない、命に替えても止めねば越後の鬼と呼ばれた私の名が廃る…!

 

「おい、騒がしいのはこっちからだ!」

 

「くせ者か?誰か念のためもっと人を呼んできてくれー!」

 

「急ぐぞ!」

 

最悪捨て身で特効しようと考えていたその時だった。

 

あの声は…見張りに従事していた秋子どのの足軽達だろうか…?

 

「…チッ、思っていたより厳重だったか」

 

そんな足軽達の声を聞いて黒い新田どのは舌打ちを打って悪態をつく。

…見れば見るほど新田どのとは別人だ、先日宇佐美どのと一献交わしたときとは似ても似つかない。

 

「流石に私が軽率だったようだな、大人しく帰るとしよう」

 

「帰る…?ここから逃げられるとでも思いですか?」

 

「当然だ、貴様らとは出来が違う」

 

そう傲岸不遜(ごうがんふそん)に言い放つと、再び侵入した崖の方へと向かう。

 

そして-----

 

「また会おう」

 

そう一言だけ言い残し、黒い新田どのは()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ!!?」

 

本日何度目になるだろう驚愕の声が出た、私は直ぐさま落ちた崖を覗く。

縄などで小道具を使って滑り落ちるわけでも無く、例えるならまるで…身投げ、投身自殺としか思えないような落ち方をした黒い新田どのは倒れる様な姿勢で落下しながら空中で体を転換させ、驚くべきことにそのまま難なく崖下に着地してしまった。

 

そして、着地して直ぐに駆け出して逃走してしまう。

 

「なんて出鱈目な身体能力…!!」

 

驚異的な身体能力を披露したかと思えば、馬なんかよりも遥かに速い速度で逃走した黒い新田どのは、あっという間に姿が見えなくなってしまった。

 

「貞興様!?いかがなされましたか?」

 

「大きい物音を感じて駆けつけた次第でありますが…」

 

そうこう見ている内に騒ぎを聞きつけた足軽達が到着した、私は気を取り直し足軽達に指示を飛ばす。

 

「くせ者が現れた!直ちに春日山城城下に追っ手を出せ!全身黒い衣服の男だ!そしてこの近辺の警備を強化せよ!」

 

『はっ!!』

 

私の指示に対して一斉に返事をした足軽達は直ぐに行動に移すために動きだす、その様子を見て私はとりあえず一安心した。

 

「いたっ…」

 

ズキリとした痛みを覚え、再び右肩を押さえる。

…本当にしばらくは安静にしておいた方が良さそうだ。

 

右肩を庇いながら茂みへと蹴飛ばされた愛刀を回収して鞘に納める。

 

「いったいあの人は何者…?」

 

先日御大将が良人としたあの田楽狭間の天人にそっくりな男、それも超人じみた身体能力を持っている。

 

明らかに普通じゃない、お家騒動もひと段落して甲斐からの介入もあったばかりの昨今、一体何が起きているのだろう。

 

「…この越後に災難が振りかからねば良いのですが…」

 

そんな私の独り言に応える様に一陣の風が吹き抜けていった。

 

 

 

 

 

 

あー!クソッ!失敗した失敗した失敗したぁ!!

 

春日山城からあっさり逃走に成功した俺は再び城下町にやって来ていた。

 

(あんなに見張りいたのは誤算だった…!)

 

あそこの崖を越えた所に出る建物、越後の家老である直江景綱、通称"秋子"の屋敷付近に出るのだが、原作では春日山城正門から奥の方に構えられた建物である為、空と愛菜が人質に捕われていたのだがあの崖の断崖絶壁っぷりから侵入者はいないと考えられていた為、最低側の見張りしか配置していなかった故に主人公達に侵入を許したという経緯がある。

 

冷静に考えればそこから侵入されたのだから対策として見張りやらで警備を強化していることは容易に想像出来るものだが、原作でのイメージが強すぎてあまり深くは考えていなかった…流石に軽率すぎたぜ…

 

(だが、収穫が無かったわけじゃない…)

 

俺の本来の目的はこの作品のメインヒロイン達の姿を一眼見ておくこと、お目当ての剣丞隊メンバーは拝めなかったが…

 

(まさか貞子さんと最初に会うことになるとはな…)

 

戦国恋姫Xにて追加された新ヒロイン、小島貞興こと通称"貞子"には会うことは出来た、新しく追加された割には出番が少ない人だったから続編でもっと出番貰えるといいなー、幕間劇でのHシーンは息子が大変お世話になりました、ヤンデレお姉さんはいいぞ…

 

…ちゃんと手加減出来てたかな?一応出来てるとは思うけれども戦闘に関してはこの体ってオートモードになってるから勝手に体が動いてるんだよな、楽ではあるんだけど自分の意思でやってる訳じゃないからやっぱり不安だなぁ。

 

とりあえずこの町を早く出よう、俺という侵入者が出た以上確実に追っ手は城下町にかかるだろうしこんな真っ黒な格好してたら直ぐにバレるのなんて明白、更には新田剣丞のそっくりさんときたもんだ。

見た目としてはカッコいいから気に入ってるんだけどこういう身体的特徴が分かり易すぎるとこはネックだよな。

 

 

ドンッ

 

「いてっ」

 

「ん…?あ」

 

そうこう考え込んでいるとどうやら通行人に肩がぶつかってしまったらしい、やべ前とか全然見て無かったや。

 

すまない、こちらの不注意だった(ごめんなさい!前見てませんでした!)

 

素直に謝ろう、これに関しては俺が悪い。

直ぐ様俺はぶつかった通行人に対して謝罪の言葉を投げ、大丈夫かと体を気遣う言葉をかけようとするが…

 

「おうおうおうおう!どこ見てやがんだ兄ちゃんよぉ!」

 

「兄貴が怪我でもしてたらどうしてくれやがんだ!」

 

「俺らを誰だと思ってやがる!ぶっ殺すぞガキィ!」

 

…どうやら元気が有り余ってる人達だったみたい。

 

俺がぶつかったのはいかにも悪いことをしてます、と顔に書いてあるゴロツキ達だった。

よりにもよって面倒な人種とぶつかっちゃったなー。

 

「何してくれてんだぁ?おいこらぁ!」

 

…考え事をしていてな、前を見ていなかった(考え事してたんで前見て無かったです…)

 

「んだと?世の中舐めてんのかクソガキ!」

 

「謝罪とかあんだろ?あぁん!?」

 

すまなかった、以後気をつけよう(本当にごめんなさい、気をつけます)

 

「ごめんで済んだら役人いらねぇんだよぉ!!」

 

め、めんどくせ…!!

 

確かに非はこっちにあるんだけど、はやくも俺はゲンナリしていた、これ自分達が立場上なのを良いことに楽しんでる口だろ、だって表情が怒りというよりニヤついてるもん、暴れられる大義名分見つけた的なさ。

 

なんだよその表情、きめえからぶっとばすぞ。

 

あんまり騒ぎを起こしたく無いんだが誰か助け船は…あ、はい通行人に思いっきり目を逸らされました、そりゃそうよね、こいつら腰に刀ぶら下げてるし関わりたくないよね。

 

現代でもこんなゴロツキ共と関わりたくないのに相手が人とか普通に殺せますけどーみたいな武器まで携帯してりゃ尚更だろう、そう考えると織田信長の一銭切りとかってこの時代に適った良い法律だったんだな。

 

「何黙りこくってやんだ!」

 

「あれか?ビビって声出ないんでちゅか〜?」

 

「ギャハハ!おい、めんどくせぇからこのガキ殺してさっさと行こうぜ」

 

「そうだな、てなわけでとっとと死ねやガキ…」

 

おっといけない、もうコイツらの中では俺を殺す対象になってるらしい。

この体のハイスペックぷりからして100%勝てるだろうから対してそこら辺は問題無いのだが…早くこの町を出たいってのにどうするかねぇこれ。

 

そこで俺はぐるりとゴロツキ達を見回し数を数える。

 

2、4、6、8、10、12…14…16人!!?

 

思ってたよりずっと多かった、確かにこんな人いるのに前方不注意でぶつかって来たらそりゃあお前どこ見てんだよ案件にもなるわ!

 

俺に絡むのも飽きたのか数人が抜刀してこちらに近づいて来てる、近くにいる通行人はこれから起きるであろう刃傷沙汰に巻き込まれないようにとそそくさと人が引いていく。

 

これ本格的に戦わなきゃいけない流れか?

今にも襲いかかって来そうだし、正当防衛ってことでなら多少怪我させても許されるよな?

 

そう思い戦闘体制に入ろうとしたが…

 

(…まてよ?)

 

 

今ここにいる奴らを倒すぐらいなら吉野に言われてた自由行動する上での()()()()()に丁度良いんじゃ…!

だったらここは人目につき過ぎるよな、場所を変えないと…

 

そう頭に思い戦闘体制に入ろうとした体を逃走体制に切り替え、ゴロツキ達が追いつける速度に抑えて逃亡を始めた。

 

「待てゴラァ!!」

 

「舐めてんじゃねぇぞガキィ!!」

 

「捕まえてぶっ殺せーっ!!」

 

勿論そんな俺の行動に黙ってる訳もなく、ゴロツキ達はドスの効いた口調で追いかけ始める。

待てって言われて待つバカがいるもんか、バーカ!

 

そんなこんなでゴロツキ達との鬼ごっこが始まった、捕まったら死刑!スリル満点だね!!

 

とはいってもこちとら吉野さんお手製のハイスペックな体をしている上、コイツらを利用しなきゃいけないんでね、1人でも多く欲しいからそう遠くに逃げるつもりは無い。

 

俺を先頭に越後の町を駆け回る、すいませんすいません、町の皆さんすいません、また立ち寄らせてもらう機会があったら町にお金を落とさせてもらうんでほんとすいません!!

 

心の中で謝罪しながら適度に人気が無いところを目指し走る、出来ればもっと人気が無くて他所から見えにくいところが理想…ってあった!

 

俺は逃走しながら張り巡らせていた理想の場所を見つけ、その路地へと飛び込む、まだ復興途中なのだろう、建物との間に開けた場所を発見した。

 

行き止まりに突き当たったのでピタリと俺は静止、それに数秒遅れてゴロツキ達の足元も止まる。

 

「へへへ…馬鹿め、行き止まりに逃げ込みやがった…」

 

「手間かけさせやがって…!」

 

「もう逃げられねぇぞガキィ!!」

 

自分達の勝利を確信したのか舌なめずりをして抜刀しながら俺に近づくゴロツキ達。

追いかけることになって相当腹が立ったのだろう、逃げる前は数人しか抜刀して無かったのに対し、今度は全員が抜刀している。

ブチ切れ状態だ。

 

普通だったら俺は今からこのゴロツキ達に目も当てられないぐらい無惨に斬り殺されるんだろうが…勿論こんな人気のない所に逃げ込んだのにはちゃんと理由がある。

 

なんせ…

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「良くも逃げてくれやがったな、なます切りにしてやるから覚悟しやがれ…」

 

そう言って俺がぶつかった張本人、恐らくリーダー格の男なのだろう。

そいつが一歩前に出てスラリと刀を抜き放つ。

表情は勝ちを確信し、強者として弱者を嬲ることを楽しみにしているゲスな顔だ。

 

「くくく…」

 

「あぁ!?お前状況わかってんのか!!」

 

思わず笑ってしまった俺に憤りを隠す事なくリーダー格の男は俺にぶつけてくる。

俺はそれに返答することも無く、そのままある術を行使した。

 

すると…

 

 

ドンッ

 

 

そんな場面が切り替わる様な音と共に、()()()()()()()()

 

「…は!?」

 

「おい、なんだ!急に暗くなったぞ!!」

 

「暗いっていうか…全部黒い…?」

 

「どこなんだよ、ここは!!?」

 

急に変わった景色に騒ぎ始めるゴロツキ達。

感の良い人ならわかっているだろうが、お察しの通りこれは無明長夜。

吉野から伝授された何処までも続く無の世界、当世から完全に切り離して発動するため、周囲からは対象の人間は突如として消えた様に見える、だからあまり人通りの多い場所では使いたくなかったのだ。

 

「あ、あのガキが発動させたってことか?」

 

「ふざけんなクソガキ!元に戻せ!!」

 

やれやれ、最期ぐらい静かに出来ないのか?(最期なんだから静かにしてくださいよ)

 

「何が静かに出来ないだ、ぶっ殺すぞ!!」

 

「お前を殺して静かにさせてやろうかクソガキ!」

 

そんな俺の発言に瞬く間に激昂したゴロツキ達は殺気立つが、俺はそこをどこ吹く風と言わんばかりに人差し指と親指を合わせる。

 

 

…慌てるな、次期に静かになるさ(急かさなくてもいいですよ)

 

なんせ…

 

貴様らはここで死ぬんだからな(どうせここで死ぬでしょうし)

 

パチンッ

 

そう俺が指を鳴らした。

それと同時にドスンッと何か大きい物体が落ちたかの様な音が複数この空間に発生する。

 

「あ?なんだ?」

 

ゴロツキ達の誰かがそう言ったのを聞こえた、だがその後直ぐに…

 

『グルルル…』

 

 

この世の物とは思えない悍ましい唸り声が周囲に響いた。

その事象に軽く困惑していたゴロツキ達は1人、また1人とその事象の正体に気づき、表情を一変させていく。

 

 

俺が吉野に自由行動を許して貰えた最後の条件。

 

吉野の要件があれば呼び戻すこと、そして必要以上に外史に介入しすぎないこと。

 

そして最後の一つ。

吉野を慕う、この日の本の新民達の強化、つまり…

 

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

『グギャァァ……』

 

「ひ、ひぃぃぃ……!!」

 

「ば、化け物だ!!」

 

「に、逃げろー!」

 

「に、逃げるったって…どこだよ!?」

 

「知るか!!とにかく走るしか無いだろ!」

 

無駄だ、この空間から逃れる術はない(残念ですけど逃げられないんですよ)

 

突如として現れた鬼の出現に先程までの威勢は何処へと言わんばかりに腰を抜かしたりとパニック状態に陥ったゴロツキ達に対してピシャリと俺が言い放つ。

 

貴様らはここで鬼共の血肉となるんだ(悪いけどここで鬼に食われてもらいます)

 

大人しく我が主の野望の礎となれ(吉野さんの命令なんで諦めてね)

 

俺の発言に一息を置けたのか幾分かだけ冷静になったゴロツキ達がまた騒ぎ出す。

 

「こいつらって最近話題になってる鬼ってやつじゃ…!?」

 

「夜道に出くわすから出るなっておふれも出てた気がするぞ…」

 

「じょ、冗談じゃねぇぞ!!俺はこんなところで死にたくなんかねぇよ!!」

 

ゴロツキの大半が恐怖に包まれるが例外もいたようだった。

 

「ハッ!何ビビってんだお前ら!こんなやつら刀で切り殺せばいいだけだ…ろ…」

 

グシャ…

 

そう1人勇んで刀を抜き出して切り掛かったゴロツキの刃はアッサリと鬼に受け止められ、逆にその鋭い爪で呆気なく体のど真ん中を貫かれた。

 

「あ…が…」

 

ガクリ、と何が起きたかわからないといった表情で無謀にも切り掛かったゴロツキはこと切れた。

そして、串刺しにしたゴロツキを鬼は嬉しそうに貪りはじめる。

 

「う、うわあぁぁぁ!!」

 

「助けて…助けてくれ!!」

 

「死にたくねぇ、死にたくねぇよ…!」

 

「お母ちゃん…!!」

 

そんな仲間の惨状に再び恐慌が起こり、命乞いが俺に向けられる。

 

「助けてくれ!頼む!この通りだ!!」

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらリーダー格の男は、さっきとは打って変わって俺に額を地面に擦り付けて懇願する。

他の奴らもそれにならって命乞いを始めた、散々好き勝手やって来ただろうに何様なんだって気持ちも感じなくは無いが、それにみっともないだなんて俺は少しも思わない、俺だって当事者になれば泣き叫ぶだろうし腰も抜かすだろうし、命乞いだってするだろう。

寧ろ命の危機だってのにくだらないプライドで意地を張る方がどうかしてるのだ、知性ある生物として当然のことだろう。

 

…だが、そう言われたところで俺の気持ちは既に固まっているんだ。

俺だって最期に鬼に食われて死ぬなんてことは流石に気の毒とは思うし、本当はこんなことはしたくだってない。

 

リーダー格を含め、数人のゴロツキ達が嗚咽をしながら俺に許しを乞う。

そんなゴロツキ達の姿を見て俺は…

 

…無理だな(ごめんなさい)

 

そう一言呟くしか無かった。

 

俺のその一言に再び絶望を顔に浮かべ悲鳴を上げて鬼から逃げ惑うゴロツキ達。

この無明長夜の中じゃ文字通り例え地の果てまで逃げたとしても術者である俺が解除しない限りこの空間が終わることはない、つまり絶対に逃げられないのだ。

 

逃げても鬼に捕まえられ、最期の足掻きへと戦いに挑むも鬼達に蹂躙され、そして最期は捕食されていくゴロツキ達を見ながら呆然と考える

 

(…これでもう俺は引き返せない)

 

そう、今この瞬間を持って俺は立場状仕方ないとはいえ自分の私利私欲の為に()()()()()()()

 

(吉野さんよ、俺はあんたの思想とかにはサラサラ同意する気は無いよ)

 

だって、もし叶ってしまったらバッドエンド一直線だもん、俺がこうやって介入することによって吉野の願いが成就されよう物なら俺が主人公達に代わって吉野を倒す。

 

あくまでユーザー目線から見てみて俺の立ち位置が悪役として美味しいんじゃね?と軽薄かつ自己中な理由で協力しているんだ、人から見ればふざけんなって批判されても可笑しくは無い。

 

でもそんな自己中なクズヤローの俺なりにでもこの世界に生み出してくれた(吉野)への義理は感じてるし、それなりに報いるつもりだ。

 

…つまりだ、吉野よ。

 

(来るべき決戦(本能寺の変)までちゃんと付き合ってやるからな)

 

そう俺は吉野へと誓いを立て、鬼達に食われていくゴロツキ達の姿を目に焼き付けるのだった。

 

例えゴロツキであっても俺の主の野望の礎になる存在を忘れない様に…

 

 

……

 

………

 

…あ、路銀とか欲しいから服までは食うなってこと伝え忘れてたわ。

 

おーい君たちー!お金とか欲しいから服とかは残しておいて、って言ったそばから丸ごと食ってんじゃない!俺無一文なの!!

 

ねぇ聞いてる???だからさぁ!お金欲しいから全部丸ごとは食うなって言ってんのよ、ねぇ、ちょおい、だから待てって。

 

いやだからとりあえず食うのをやめろーー!!!

 

 

 

 

 

 




仕事が忙しくて更新が随分と遅くなりました…

いよいよ持って悪役らしくなってきた偽剣丞くん、これからもどう暗躍させようか楽しみです。

感想とか高評価、お気に入りしてくれるだけでもモチベ上がるんでお待ちしてます!

後、貞子さんエッチなんだからもっと公式さん出番増やしてください、お願いします。
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