婚約破棄されたので復讐するつもりでしたが、運命の人と出会ったのでどうでも良くなってしまいました。これからは愛する彼と自由に生きます!   作:柴野いずみ

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第十七話 昇格を目指して

 セイドとグレースは仲間になったが、一緒に家に住むわけではない。

 うっかり夜の自室に忍び込まれでもしたら大変だからだ。彼とはそういう関係ではないのだから。

 

 ので、グレースが海辺の屋敷に住み、セイドは毎夜別れて自宅へ帰る。彼の自宅がどこかは知らない。

 

 そして朝になれば二人はギルドへ集合し、活動を始めるのだ。

 

「『必勝の牙』、最初の任務は今度こそ薬草採取にいたしましょう」

 

「じゃあ僕が教えてあげるよ」

 

「お願いいたします」

 

 ということで、彼と出会った例の森へ足を運ぶ。

 今度は二人なので少しも不安はない。仮にまたあのドラゴンが襲って来たとして、彼の手にかかれば瞬殺できるだろう。

 実際、森の最深部まで行くと小さな魔物がいくつか出てきたが、その程度であればグレースの炎魔法だけでも片付けることができた。魔物たちのランクは平均でD〜C相当らしい。

 

「自分のランクより高い相手には苦戦する、ですか」

 

「そうだ。僕とてAランクではそう簡単には倒せないし、Sは一人では無理だ」

 

「Sランクといえば最高でしたか。それだけには遭遇したくないものですね」

 

 そんなことを言いながらやって来たのは、木々が立ち並ぶ場所。

 森の中で一番深い場所であるここにはたくさんの赤い草が生えていた。

 

「これが薬草だよ」

 

「まあ。この真っ赤な草が薬草なのですね。……見るからに辛そうですが」

 

「辛味のある草なんだ。これを煮込むと薬草汁ができる」

 

 それから二人で薬草を摘み取り、あらかじめ持って来た袋に詰め込む。

 これを換金したらいくらになるだろうか。そう考えると胸が躍り、グレースはいそいそと酒場へ戻っていった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 正真正銘の初仕事は大成功。

 あまりにも大量だったものだから、銀貨一枚になった。平民の暮らしから言えばかなりの大金、Dクラスの中でも最高額になる。

 

「これで昇格が近づいたね」

 

「昇格……とは?」

 

「知らないのかい? ランクにはもちろんのこと上へ行くシステムがあるんだ。DからCへ、さらにBへ……。それにはどれだけの働きがしたかが問われるんだ。一度の仕事じゃ足りないが」

 

「このままこなせばすぐに昇格が狙える、ということですね! 昇格して国を、いいえ、それは余計な話でした」

 

 うっかり口を滑らせそうになったとグレースは焦る。

 しかしまあ、セイドは気にしていない様子なのでギリギリセーフということにしよう。

 

 そういうことで、彼女が目指すべくは最高のSランクへの昇格。最高最強の冒険者になる必要があるのだ。

 そのためにはとにかく努力! 彼女らは早速次の仕事に取り掛かった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 小さな魔獣狩り、荷物運びなどなど。

 それからも毎日のように酒場から仕事を見つけてはこなし、その度に報酬を受け取っていく。

 

 気づけば劇的に少なくなっていた資金も、金貨五枚分くらいにはなった。まだ以前のような贅沢暮らしはできないが、ある程度の暮らしができるようにはなって来ている。

 

 まさに順風満帆と言っていいのではないだろうか。

 

「これで確実な昇格と、ワタクシの目的の達成は安泰……!」

 

「何を言っているんだいグレー」

 

「あっ。いえいえ何でもございません」

 

 思わず独り言が多くなるグレース。気をつけなければといつも思うのだが、つい声を漏らしてしまう。

 こんなのでは作戦に綻びが出てしまう。独り言は周りを確認してからにしないと……。

 

 などと、そんなことを考えながら彼女は今、この町の領主であるオーネッタ男爵のご令息の護衛をしている。

 彼はよく屋敷から出たがり、その都度護衛を雇っているというのだ。……物好きな貴族もいるものですね、とそれを聞いたグレースは心底思ったものだ。

 

 貴族令息は基本的に外出は控えさせられる。うっかり誘拐されでもしたら大変だからだ。

 パーティーなどの時や外遊の時以外は基本的に屋敷で過ごすように決められているのが普通だ。もっとも、王妃教育がなされていたグレースはその限りではなく、毎日のように登城していたのだが。

 

 男爵家はおそらくそこまで重要人物ではないため、行動制限も緩いのだろう。実際、町に出る時の護衛はグレースとセイドの二人しか付けられていない。

 

「ねーねー、グレー、あっちあっち」

 

「そんな喋り方は貴族としてはしたないですよ。五歳にもなるんですから」

 

「きゃははっ」

 

 会話も全く通じていない。よくもまあこんな五歳の息子を冒険者などに預けようと思えるものだ。見ていて不安になってしまう。

 

 が、別に何事もなくオーネッタ男爵令息のお散歩の護衛を務めることができ、大量の報酬をいただくことができた。これはなかなかに大変な仕事だったので納得だ。

 そして――。

 

「グレー、やったよ。僕たちのパーティーのランクがCに上がったってさ。もちろん君のランクもそうだ」

 

「まあ。つまり昇格ですね?」

 

「そういうことになる」

 

「やりました。これで次のもっと高度な依頼もこなせるというわけですね! そしてワタクシたちは一躍有名人!」

 

「まだそこまでは望めないと思うが」

 

 苦笑するセイドの前で、グレースは大はしゃぎである。

 この調子でB、A、Sと上がっていけば……もしかするとたった数ヶ月で到達できるかも知れない。

 

 そうして二人は、新たなCランクの依頼が貼り付けてある掲示板へと急いだ。

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