最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
試験的に他者の目線で書いてみた回なので今話はエリック視点です。
感想、高評価、誤字報告、いつもありがとうございます。BIG感謝
幾本も迫るレーザーを掻い潜り、空を踏みしめ飛び上がることでアイテールの天眼に神機の刃を突き立てる。鮮血が吹き出しその綺麗な紅い髪を汚すが、それすらも太陽光に当たれば彼女を演出するメイクかのようによく映える。
加納ニーナ。捜索と回収を主目的とする第4部隊隊長。
下ろせば腰ほどまで伸びているだろう紅い長髪を、ポニーテールに纏めた容姿端麗の美人で、その親しみやすい言動はパーソナルスペースをあまり感じさせない。
2つ名は《施し》または《蒐集者》。平時の性格は明朗快活で自信に満ちていることに加えて、話し相手に気も遣える所謂よく出来た女性だ。
そう、平時であれば。
アラガミとの交戦時と言うよりは神機でアラガミを捕食し、神機解放状態になってからはまるで別人だった。
一人称は俺、言葉遣いはまるで外部居住区の思春期の少年の様で、平時の時にボクにどことなく感じさせた品の良さは消えて荒々しさが表出していた。
神機解放状態になると気分が身体能力に併せて高揚したりする人もいるとは聞いていたが、恐らく神機使いの中でもその影響がトップクラスに強いんだろう。
その荒々しさは言葉と雰囲気だけで、行動の全ては最適化されている。
アイテールのレーザーも、ザイゴートのスモッグも、コンゴウのフックもなにもかも。それら全てをバックラーで受け流したり紙一重で躱したりと、アラガミの攻撃を至近距離捌き続けることで、常にその
小型アラガミには1体当たりに時間かけず的確にコアを貫いたり、はたまた捕食したりで一撃で仕留め、中型以上のアラガミは全ての部位を結合崩壊させた後に喰殺していた。
自己紹介の時に聞いた極東でも5本指に入る実力、ソレは嘘でも誇張でも無いということがまざまざと見せつけられた形となってしまった。
交戦が始まる前に彼女が言っていた。
「恐らく理論値的には満点に近い動きだけど、多分真似しようとしない方がいい」と。
なるほど、確かにアレは曲芸か、あるいは神業と称するものだろうし当然だ。私と同じ事をやれなどと言う無茶を言わないあたり、彼女自身自分がどれだけ出鱈目をやっているのかよく分かっているのだろうね。
「エリック!アイテールのレーザー避けるコツは引き寄せてからステップを踏むことだ!俺の動きをよく見てな!」
軒並み他のアラガミを倒しきって、アイテール1体が残った段階で余裕が出てきたのか攻撃を避ける為のレクチャーまでする余裕があるらしい。
今教えられてもボクがアイテールと戦うことになるのはだいぶ先だと思うけれど、それでも、これはアーカイブにも乗ってない貴重な情報になるだろうし、いい経験なのは間違いなかった。
「彼女と命を預け合う関係か。努力しないといけないな」
そもそもヘリを降りる時には後詰の
フォーゲルヴァイデ家の息子として、華麗にあらなくてはいけないしね。
ニーナ君は最後にアイテールの尾状器官を結合崩壊させた直後、空中でそのまま捕食を敢行。コアを心臓部から引きずり出してトドメをさしていた。先に連絡を入れておいた方がスマートだろうね。
「第4部隊所属エリックからオペレーターへ、
該当地区アラガミをたった今隊長のニーナが掃討し終えた。これより帰投するためヘリの操縦者に座標を伝えて欲しい」
『オペレーターより第4部隊、お疲れ様でした!
外部居住区付近の防衛状態としては第3部隊の方へと第1部隊の皆さんが約2分後に合流予定ですが、お2人には第2部隊の応援に向かっていただきます!合流後は第2部隊隊長大森タツミの指揮下で動いてください!』
「了解した。ニーナ君!聞こえてたかい?」
「ああ大丈夫だ!しっかり聞こえてたよ、助けが必要みたいだし急ごうか。にしてもエリック君の実地研修が出来なかったや、ごめんね」
「構わないさ。スグに君に追いついてみせるとも」
話してる最中に神機解放状態が解除されたのか、元の落ち着きを取り戻していた。
2人で駆け足でヘリに乗り込むと、すぐさま発進していく。
聞けばここから3分弱で着くらしい。
ニーナ君はヘリに備えられていたアナグラ周辺の地図を取り出すと、インカムを叩いた。
「もしもーし、コチラ第4部隊のニーナです、タツミさん返事できますか?」
『ニーナか!忙しい、から手短に頼む、ぞ!』
「3分かからないくらいで現着します。ハルオミさんが今日から居なくて、今は新人の実地研修中なので戦力は実質私1人です。なので新人は最後方に配置さしてもらいますが、代わりに今そちらが1番苦戦してるアラガミに私がヘリから直下します。どの地点にいるどいつが邪魔が教えてください」
『なるほど助かる!そうだな……アラガミ群最後方からミサイル撃ってきてるクアドリガを頼めるか!おそらく今回の群れの長だ』
「了解です。クアドリガ倒したらそのまま後方からアラガミ群を叩きます。挟み撃ちにしましょう」
彼女は無駄のないやりとりで短い通信を終えるとすぐにヘリの扉を開く。まだ距離はあるがアラガミの群れが微かに見える。ざっと30-50体程だろうか。コレを1部隊で抑えているというのだから恐れ入るというものだ。
ニーナ君は現状を確認すると地図にペンで赤丸を打っていく。アラガミ達が居る場所辺りかな。
「よし、エリック君最初の実戦はちょっと特殊になるけど、ヘリが着地地点に向かう最中にこの赤マルの位置にモルター弾をありったけ撃っていってほしい。ヘリから降りたら高所から他の神機使いが居ないポイントに弾幕を貼ろう。使うバレットはモルター弾だけで、属性は炎で固定。アラガミに当てるのが目的じゃなくてアラガミの進行を抑えるのが目的だから無理に当てようとしなくていいし、安全第一で動くこと。質問は?」
「ヘリの着陸ポイントまでにできる限りのモルター投下。着陸後もモルターによる弾幕にて他神機使いを邪魔しない程度の援護。属性は炎固定だね。了解した。華麗にアラガミ達を足止めしよう」
「理解が早くて大変よろしい!それじゃあ私は降りるから、くれぐれも死なないように!またあとでね!」
矢継ぎ早に飛んできた指示を復唱すれば、嬉しそうに笑ったあとヘリの扉から飛び降りて行った。下を覗き込めばクアドリガ、だったか、キャタピラの4脚を持った戦車の化け物みたいなアラガミの左肩──と言っていいのかはわからないが──ミサイルポッドみたいな器官を捕食しているのが見えた。
いったいどうやったらそんな寸分違わずピッタリ降下することが出来るのか。ユーバーセンスだったか、その特異な感知能力を持っていても出来るかどうかは別だと思うんだが。ああいや、そんなことを考えている場合では無かった。
「ボクはボクで華麗に仕事をしなければね」
双眼鏡で指定地点に他神機使いが居ないことを確認してモルター弾を発射していく。
ヘリが反動で少し揺れるが、操縦者はそのまま撃てとばかりに直ぐに安定させてくれる。どうやら彼もいい腕を持っているらしい。
ボクが撃ったモルター弾は丁度コンゴウに当たったらしく、そのパイプ状器官を破壊していた。コレは中々いい戦果なのでは無いだろうか?ラッキーショットであるのは間違いないが、できるだけこれからも狙っていくとしよう。
高揚感で手が僅かに震えるけれど、エリナが自慢できる兄である為に今は目の前の戦場で戦果をあげなければね。
十数発のモルターを撃ち降ろしていれば、ヘリが着陸地点まで運んでくれたので指示された通り高所に飛び降りる。
赤い服の
他に人が見えない所から恐らく彼ら3人が防衛班こと第2部隊なんだろう。彼等の視界や行動を爆発で遮らず、かつアラガミがいるポイントとなると……
「あそこだね」
自身の神機の引き金を弾く。
少しでも多くのアラガミを倒す、ボクの華麗な物語の始まりだ。
エリック君は新兵時代は向上心の塊ないい子で貴族の息子だから教養も勇気もあると思うんですよね。
あと漫画のside by side買ったんですけどいい話だった……