最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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うおおぉぉぉ~怒涛~~~な感じで初投稿です。
この初投稿ネタもう古くないですか?

P.S.感想ありがとう。評価もありがとう。うれしすぎ


2-8

 “施し”あるいは“蒐集者”

 曰く、極東にはそういう2つ名を持つのは歳若い乙女である。

 

 曰く、救援成功率100%を割らない猛者である。

 

 曰く、現在の神器パーツの7割以上は彼女が素材を集めて初号を作らせている。

 

 曰く、視界不良の中でも敵を見失わない索敵能力がある。

 

 曰く、アラガミ動物園と称される極東を手ぶらで闊歩することがある。

 

 曰く、曰く、曰く。

 

 噂というのは尾ひれ背びれがついてまわり、実態は噂よりは汎用であるのが世の常だが、それら全てを実現させている怪物の存在をモスクワ支部の神機使いは初めて目にしたのだった。

 

 高度をかなり取ったヘリの上から放たれるは流星一条(メテオ)

 空を翔け昇った後に地に堕ち、刹那の間を置いて攻勢オラクル反応の衝撃がモスクワの戦闘領域を舐め回す。

 

 土煙が晴れる頃には十数体は確認されていたアラガミの群れは小型が壊滅し、荒野にただ一体接触禁忌種(動く厄災)テスカトリポカが後脚を折っていた。

 それを認識すると同時に右肩ミサイルポッドが、空から降ってくる影に捕喰されて喰いちぎられる。

 ヘリからの飛び降りは神機使いの身体能力を持ってすれば大したことでは無い。

 彼らがソレを絶技と認識するのは、先のメテオの影響が消える瞬間にそれが実行された事だ。なにせ攻勢オラクル反応目掛けて、ヘリからダイブしているということだった。

 常人では真似出来ない神業と言えば聞こえはいいが、普通に考えて気が触れているイカれた行動だった。

 

「極東の神機使いは皆あんなんなのか!?」

「……施しがイレギュラーなだけだろう」

「本当に同じ偏食因子か? 極東で独自開発されたミュータントの間違いだろ」

「助けて貰っておいて言うことじゃないがイカれてる」

「挙動はふざけてるが、あのテスカトリポカを完封してやがるぞ」

 

 現地神機使いが悲喜交々な叫びをあげる中、ヘリから1人神機使いが降りてくる。

 地形変動攻撃たるメテオを撃った台場カノンである。

 すわどんなイカれた人物かと、戦々恐々に様子を伺うモスクワの面々だったが、視線の集中した当の本人はといえば。

 

「あ、えっと、極東支部からの増援の台場です〜。

 まぁ、増援といっても私はオマケみたいなモノなんですけど……」

 

 遠慮がちというか、卑屈そうにそう言うものなので、モスクワの面々は逆に目を丸くした。

 その反応をどう解釈したのか、なにかまずいと思ったかのように台場は弁明じみた声をあげる。

 

「いや! その、私は全然ダメダメかもしれないけどニーナさんはほんっっとうに凄い人なので安心してください! テスカトリポカ……? だかなんだかもちょちょいのちょいなので!」

 

 ほら! とばかりに戦場を指させば、転移トマホークを背後に受け流し、着弾後の火弾をバックラーで打ち払う所だった。

 火弾で発生したノックバックで距離を詰め、いつの間にか結合崩壊させられていた前面装甲の眼前に陣取り、捕喰形態(プレデターフォーム)に移行。

 

 前面装甲ごとコアを捕喰し抜き取っていた。

 

 メテオ着弾を戦闘開始時刻とし、コアの抜き取りまでの時間は僅か7分。それは支部が守られたことを喜ぶよりも先に、畏怖が湧き上がってくる程の短時間だった。

 やや重い沈黙が流れる中、オープン回線の通信がその沈黙を破く。

 

「こちら極東支部第4部隊隊長加納ニーナよりモスクワ支部。

 たった今目標の掃討を完了しました。付近の生き残りは小型を含めていませんが、1km以上離れた位置にはまだ居るかもしれませんので、そちらの偵察及び掃討、あと追加人員の台場カノンと合流及び帰投する為のヘリを求めます」

 

「モスクワ支部オペレータより加納ニーナ。

 当方からもアラガミの群れ、及び群れの長たるテスカトリポカの完全沈黙を確認しました。

 ヘリの手配をしますので指定ポイントで待機をお願いします。

 それと、貴女からすれば大したことでは無いのかもしれませんが、我々の支部を護ってくださり深く感謝します」

 

「いえいえ〜! 困った時はお互い様ですから! それに我々としても新型バレット・メテオのいい実地検証になりましたし、地形データへの影響が多少あるかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで、ここは一つよろしくお願いしますね」

 

 オペレーターと和やかな談笑を繰り広げるニーナの声は落ち着いており、神機解放状態(バーストモード)が解けてから通信を入れているらしい。

 その事にカノンは少しホッとしつつ、モスクワの面々に向き直る。

 

「……という感じみたいです! 何かあればまたよろしくお願いします!」

 

「あ、ああ。ありがとう

 ところでさっきの新型バレットのメテオだったか? アレは一体全体どうなったらあんな神罰みたいな現象になるんだ。撃ったのはアンタなんだろ?」

 

「あ〜〜、あれはですね、私も詳しくわかってないんですけど、コクーンメイデン種の弾道落下? とヴァジュラ種、シユウ種の球状放射? をオラクル反応で再現? したものみたいで、通常のモルダー弾とかと違ってまだ神機使いとアラガミとで友好区別? がつけれないから試作段階? がどうのってニーナさんが言ってたので詳しいことは其方に……」

 

「おい待ってくれ。

 友好区別がつかないってことは、当たれば神機使いであってもアラガミ同様のダメージをバイタルに負うということか!? そんな状態であんなギリギリのタイミングに垂直落下攻撃を仕掛けてたのか!?」

 

「……たしかにそうなりますね!? ニーナさん何考えてるんでしょう……」

 

 危険も分からず撃ってたのかとどよめきが広がる。

 冷静に考えれば──考えるまでもない事だが──現行の遠距離神機使いの扱うバレット全てが、アラガミと神機使いを自動的に区別するフィルター──友好区別──がついている。

 これが無くては中型以上アラガミを、近距離神機使いと遠距離神機使いの共闘で討伐することが困難であるからだ。

※誤射姫と名高い台場カノンは、コレがなくては恐らく10人以上の味方を殺している。

 

 特に攻勢オラクルの範囲が広いモルターや、持続時間が長い放射のバレットが導入されるに当たり、友好区別の導入が急務とされ早々に実装された背景がある。

 しかし、この友好区別には欠点があった。

 需要がなかったので実装までの開発予算が取られてないだけだが、バレットエディット時に一定以上の工数を踏むバレットに友好区別がつけることが出来ないことだった。

 

 ニーナとしては、レシピは知ってるものの技術的に実装できないことを歯がゆく思っており、開発予算を上から降ろすための実績ではないが、群れの掃討及び、接触禁忌種に大ダメージを与えられる兵器としてのモデルケースとする為今回の使用に踏み切っていた。

 

 閑話休題

 

 ともあれ開発側の問題や、予算等の政治的問題を現場の人間が知る由もなく。

 彼らからすれば一歩間違えたら自殺になる行為を敢行し、接触禁忌種を実質一人で討ち取った化け物にしか映らなくなっていた。

 極東は蛮地かつ最前線。そんな噂は聞いていたが、ここまで蛮族然とした振る舞いをされるとは実際に目にするまでは思いもしなかったのだろう。

 

 そこに、渦中の人物である加納ニーナがやってくる。

 

「カノンちゃ〜ん、お疲れ様! ナイスメテオだったよ!」

 

「に、ニーナさん! なんで友好区別付いてないバレット目掛けて飛び込んだりしたんですか!? 一歩というか一瞬タイミングずれてたら死んでますよ!」

 

「いやいや私が設計してるし、シミュレーションできちんと影響が無くなるタイミングも分かってたし、影響消えてからヘリから降りたんじゃテスカトリポカのダウン時間を有効活用できないでしょ? 

 賭けに出たんじゃなくて、出来るからやってるんだからそんな怒んないでよ」

 

「え? ん〜〜そうなんですか……? い、いやでも危険すぎますから! ツバキさんに報告しちゃいますからね!」

 

「おっと話が変わってきたね。それだけはさ、ちょっとやめない? 気をつけるからさ? ね? ね?」

 

「ダメです! 私をはじめみんな真壁さんに今日言われてるんです。隊長すぐ無茶するからみんなで止めてやってくれって! アリアちゃんが心配するとも言ってました!」

 

「ぐぐぐぐ、ハルオミさんめ余計な事を言いおってからに……」

 

 眼前に繰り広げられるコントのようなやり取りに、モスクワ支部の面々はこれがあの一方的な戦いを繰り広げた蛮族の姿か? と自身の記憶とにらめっこしている人もなかには居たが、得てして英雄とは常人の理解を超えるものだしな……と言葉を飲み込むことにしたリーダーはニーナに手を差し出す。

 

「Ms.施し。君の献身を我々は語り継ごう。もし、我々が何か君に出来ることがあったら言ってほしい。可能な限り力になることをわれらの魂にかけて約束しよう」

 

「その言葉が聞けただけで来た甲斐がありました! 今回こちら台場が撃った新型バレット・メテオも、友好識別と地形ダメージをある程度抑えれるように改良したらデータ公開予定ですから、今後の防衛に役立ててください! 

 

 あ、そうだ。

 向こう数年年以内に私がいる極東は時代を動かすつもりなので、極東支部長のヨハネスと仲良くしとくと良いことあるかもしれませんね」

 

 握手をしながら相手の耳元でそんなことを囁くと、ニーナは妖しく笑った。

 その笑みを見たカノンは何処か言いえぬ不安を覚えたというが、今はそれがなんなのかは解らず胸にしまわざるを得なかった。

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