最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
感想評価ここ好きアリガトウゴザイマスッ!!(早口詠唱)
誤字報告もありがとうゴザイマァス!
フォーゲルヴァイデ家 極東別邸に私とアリアはおめかしした上で尋ねてきていた。
ドレスって程豪華なものじゃないけど、流石にアナグラでの普段着や狼谷学園の制服で来るわけにもいかないので、アリアは子供用のお高いお洋服だ。華美じゃない程度にフリフリが付いていて、髪を編み込みで可愛くメイクしたら赤いリボンで留める。たったこれだけで天から舞い降りたお嬢様だ。今日もアリアが世界で一番かわいい。
私はフェンリルF制式制服だ。フェンリル関係のお偉方と会うときはこれ着とけばとりあえず失礼が無いから楽なものだ。無骨な印象があるかもしれないけれど、容姿が普通に端麗なので何着ても似合うんだよね。アリアには負けるだろうけど。
今日はフェンリル傘下企業のフォーゲルヴァイデ主催のエリナのお誕生日会。
そんな大それたものではないらしいが、あくまでエリック君基準なので、普通に気合も入ろうというもの。
権力者っていうのは敵対しちゃいけないからね。いかに擦り寄ったり利用価値のある人材かをアピールしないといけないワケで。
話を聞くに参加者の中で顔も名前も知らない人はいなかったのでまぁ何とかなるでしょ。この世界の大人たちって、金と権力と野心が絡まなければ基本的には善人だからな。変態催眠術師も居たりするから気は抜けないけど。
「アリア~? エリナちゃんにあったら最初に言うことは覚えてる」
「うん! 11歳のお誕生日おめでとうございます! 加納アリアです! お姉ちゃんと私からの誕生日プレゼントですって言ってこれ渡すの!」
そう言ってアリアが掲げるのはラッピングされた小箱。中にはハンカチと携帯音楽再生機。旧時代の音楽集付きなので闇市とかに出せば4ヶ月くらいは働かずに済むくらいの貴重品だけど、原本は持ってるし素材さえあればいくらでも作れるので私の懐は痛まない。
病弱ってことで1人でいることも多いだろうし、暇つぶしにもなるだろうっていう読みのプレゼントだ。
ちなみに曲の選出はアリアにやってもらった。
普段はアップテンポの曲ばかり聞いてるのでチルな感じ音楽の良し悪しとか小さい子の好みの音楽が私にはわからないからね。
ちなみにアリアはエリック君とかには会ったことがあるものの、エリナちゃんとは初対面だったりする。というのも彼女は最近良くなってきたみたいだけど、学園の行き帰りが送迎付きかつ始業終業ピッタリに登下校するみたいで、学年が違うアリアと会う機会がなかったらしい。
私もあったことはないので、エリック君が見せてくれた写真でしか彼女を知らない。
初対面の女の子の誕生日祝いに行くという中々特殊な体験だが、アリアはお祝い事=楽しいことという認識なのだろう。既にテンションが高かった。可愛い。
通された客間というには広すぎるので大広間? では緩やかなクラシックが生演奏されており、参加者の面々が思い思いに歓談している。
フォーゲルヴァイデ閥本家があるフェンリル欧州支部長もいるし、アラガミ生態研究学の権威まで居るな?? なんであんな大物が居るんだよ。暇なの?
ああ、いやフォーゲルヴァイデの企業内容が回復錠とかのオラクル細胞活性による神機使い向けアイテムの研究が含まれるからその絡みかな。挑発フェロモンとか研究に有用だしね。
「ニーナ君も来ていたのか」
「ヨハネス支部長、こんにちは。てっきり欠席なさるかと思ってましたよ」
「フッ、接触禁忌種を単騎討伐した神機使い主催の直近のパーティーだ。招待がいただけたのだから無碍には出来んよ」
「それはそうですね。ほら、アリア。ご挨拶して」
「しぶちょーさんこんにちは! いつもお姉ちゃんがお世話になってます!」
「こんにちは、アリアくん。お姉さんには私の方がいつも助けられているよ。最近の学校はどうだい? 何かなりたい夢は見つけられたかな」
「楽しいです! 友達がいっぱいできました! 夢は、うーん。リッカちゃんみたいにお姉ちゃんを手伝えるお仕事がいい! です!」
「リッカちゃん……ああ神機整備士の彼女か。素晴らしい志だ、あのニーナ君の妹なのだ、きっとどの職についても立派な人材になれるだろう。励みなさい」
「はい! 頑張ります!」
私の妹の出来が良すぎる。本当に食べちゃいたいとか目に入れても痛くないっていうのは、きっとこういうのを言うんだろうな。
にしても、ヨハネス支部長がこんなに優しい声を出してると違和感あるな。なんでこれをソーマ君にやれんのだ。と思うと同時に奥さんのことを考えれば気持ちは複雑になるだろう。
善人のリアリストなのに、アーク計画なんていう誇大妄想をやり切ろうとする破綻者なんだから不思議なものだ。
エイジスに立ち寄った時知覚したが、まだまだ未完成だが、ノヴァ建造が進んでいた。結局今の今まで私に声をかけては来てないが、アーク計画に向けて行動は確実に始まってる。
この世界での新型神機使いがどんな化け物かはわからないけど、私がそれを止める側ならいい加減、計画に噛ませてもらいたいところだ。
無策で第一部隊には勝てる気がしないからなぁ。
見たことないけど、コウタ君はまぁともかくとして、アリサちゃんもまぁ実際まだメンタル不調そうだし、そこを突ければとも思うけど、問題は覚悟キメてるサクヤさんとブチ切れてるソーマ君だよなぁ。
主人公はアニメ版なら楽勝そうだけど、漫画版とかゲーム版だとしたら……本当に主人公君とタイマン張れる状況作れないとどうしようもなさそうだし……
今考えてもどうしようもない事なんだけど、つい考え込んでしまう。表面上で当り障りない会話をヨハネス支部長や周りのお歴々として、アリアを紹介し可愛がらせてあげる可愛がっていただく。
アリアの幸せな未来に思いを馳せていれば、今回の主役が奥扉から入ってくる。両脇には髪を撫でつけてビシッとスーツで決めたエリック君とお父様が若干緊張した面持ちのエリナちゃんの背を支えるようにして立っている。
う~ん超正統派のイケメンとイケオジに見えるなぁ。
普段の奇抜なファッションと言動を知ってると温度差が酷い。お父様の方は以前お話しした時ずっとしっかりしていらっしゃったので、今日もかっこいいってたけなんだけどね。
エリック君のお父様が挨拶するみたいだ。アリアを前に抱えてお行儀よく待つとする
「フォーゲルヴァイデ当主 ケヴィン=デア・フォーゲルヴァイデである。本日はご多用の中我が愛娘エリナの誕生祝に出席くださったこと、心より感謝する。
本日は心ばかりではあるが立食形式での食宴と楽団の生演奏を用意した。旧時代の音楽と食事は失われて久しいが故、懐かしく思う方や初めて見聞きする方も居るだろうが楽しんでほしい。
長々と話はしないので各人グラスをお持ちいただきたい。……ふむ渡っているね。では、我が愛娘エリナの健やかな成長と世界の繁栄を願って、乾杯!」
お父様、ケヴィンさんの音頭で全員が静かにグラスを掲げて飲み物を口に含む。
アリアが一瞬声に出しそうになったが、空気を読んでくれたらしい。もうそんなことが出来るなんて本当に賢い子だ。
立食形式なのでそれぞれの派閥や知り合いごとに思い思いに人が固まり、そこにエリナちゃんを連れたエリック君が順にあいさつに回ってくるらしい。
ご当主のケヴィンさんは反対側から回って、挨拶が遅れる人たちを飽きさせないようにサポートしてるって所かな。
まあ全員で30人ちょっとしかいないから、そこまであいさつ回りには時間がかからないだろう。
主役はエリナちゃんだけど、参加者の主題は社交から始まる政治なわけだしね。
その間エリナちゃんが暇になるから、寂しくないようにアリアを含めた招待をしたんだろうね。
見たところ私とアリアが居るグループが最後になりそうだし、プレゼントを渡したらそのままアリアはエリナちゃんと居てもらおうかな。
「アリア、エリナちゃんに最後に挨拶したら、しばらくエリナちゃんとおしゃべりしてあげてくれる? お姉ちゃんは他の人と話して来るし、エリナちゃんも大人と話し疲れちゃうと思うからさ」
「わかった! エリナちゃんと友達になってくるね!」
「イイ子だね」
アリアの頭を撫でていればちょうどケヴィンさんがこちらに来てくれた。
頭を下げようとすれば手で制される。
「止してくれ。君ほどの英雄に愚息の世話をしてくれてる礼こそすれ、頭を下げられる程なにかを成してはいない」
「英雄だなんて、ご子息も接触禁忌種を単騎討伐した英雄になられたのでは?」
「たしかに愚息も君のおかげでなんとか一定以上の格を得ているが、実態は違うなんて言うことは分かりきっているだろう。愚息の立場を立ててくれたこと、心から感謝する」
「では、どういたしましてと言っておきます。セクメトは私からすれば倒せてしかるべきものでしたから、ご子息にお任せしました。ですがそれは、彼のたゆまぬ努力が魔窟たる極東でも上位の力量に食い込んでいるからに他なりません。もう少しあの身勝手な彼を応援してあげてください。彼もまた愛息子でしょう?」
強張っていた顔が少し解けて眉尻が下がる。根の善性が透けて見えるが、それもまたこの人の良いところだろう。
あるいは油断を誘ってるのかもしれないが。
「ふむ、エリックから聞いていたが、君は相手の求める言葉を投げるのが上手い。加納君、エリックの嫁の席が空いてるんだが、立候補する気はないかね?」
息子の職場の上司を息子の嫁に宛がおうとする名家があるらしい。本当に何言ってんだこの人!?
「……生憎ですが、先日エリック君に一緒に働いていたいという思いを袖にされた身ですので、彼が私より強くなったらこちらからお声がけさせてもらいます。
欲しいと思ったものは自分で手に入れる主義ですから」
「クク、それは失礼した。確かにエリックの嫁に加納君は勿体ない。もう少し我が家の英雄を磨いて出直すとしよう」
そう言って次の招待客への挨拶に向かったケヴィンさんを見送る。ていうか絶対に揶揄われてたな……。思わず顔が一瞬熱くなってしまった。というか、もうすぐ20歳を迎える程度の小娘に結婚ネタを振りかざさないでいただきたい。寿命が文字通り短い世界なので、時期当主の子供を早めに用意する必要があるのは分かるけどさ。
「お姉ちゃんお顔がまっか! エリック君のこと本当は好き~?」
「こらアリア! お姉ちゃんで遊ばないの! お姉ちゃんはお姉ちゃんより強い男の人じゃないと結婚なんて絶対しないからね!」
「ふむ、そうなると極東では2人程しか候補者がいないのではないかね」
「支部長うるさいですよ! うら若き乙女で遊ばないでください!」
アリアのほっぺたをムニムニして懲らしめていれば支部長まで揶揄ってくる始末だ。クソこの後私とシリアスな話を繰り広げてもらう予定だったのに、なんかコレのせいでイニシアチブを握られた感じがしてすごい嫌だな。
このコミュ障育児逃走言葉足らずダディの分際で生意気だぞ、なんて言ってやりたいが、流石に口が裂けても言えないので話題を逸らす。
「そういえば今日榊博士は来てないんですね」
「ペイラーもまた忙しい身だ。私と違って便利な立場にいるおかげで、
「あはは、やっぱそうですよねぇ。でも丁度良かったかもしれません」
祝いの席に人が居なくて丁度いいなんてことは普通は在り得ない。私のそういう言葉回しに違和感があったのだろう。
少しばかり怪訝な顔をした支部長だったが、エリック君とエリナちゃんが近寄ってきていたのですぐに顔を平静へと戻した。私はそんな支部長に耳打ちをする。
「少しばかりアラガミ生態学の研究の結果イイことがわかりまして。できれば榊博士に話を聞かれることがない今日ご提案したいのであとでお時間下さい」
いつまでも誘いを出してこない支部長には、私から破滅へのお誘いをするとしよう。
次回ニーナ、支部長と握手。