最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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サブタイトルが1-Xまでの話は駆け足進行していきます。


1-2

「今日から貴様の上官となる雨宮ツバキ少尉だ、アラガミ討伐を主目的とする第1部隊を率いている。つまらん事で死にたくなれば私の命令には全てYESで答えろ。いいな?」

 

「い、YES」

 

 上官があの雨宮ツバキだった。

 数少ない引退まで戦い抜いたゴッドイーターの1人で、ものすごい射撃の腕を持っているらしい。あとユーザー間では上乳なんて下品なあだ名を付けられていたが、少なくとも今生でそんなことを言う度胸は私にはなさそうだ。

 

「加納、貴様はなぜゴッドイーターになった」

 

「家族、特に妹の生活を助けるためです」

 

「そうか、では家族のためにも死にたくはないな?」

 

「......? ええ、家族関係なく死にたくは無いです」

 

「よし、ならば鍛えてやる。と言いたいところだが私の神機は遠距離武器(アサルト)だからな。近接の武器種の事は......おい、こっちへ来い」

 

「はいはい、お呼びですか姉上」

 

 ツバキさんに声をかけられたソファで寛いでた人は、のんびりと此方へ来るとツバキさんに頭を叩かれた。グーだったし、音が鈍器みたいだった、かなり痛そうだ。

 

「アナグラで姉上と呼ぶなと何度も言わせるな。......見苦しい所を見せたな。コレは雨宮リンドウ、私の愚弟だ。適当な性格をしているものの近接としての腕は確かだ。見習うところも多いだろう。

 で、リンドウ、新兵の加納ニーナだ。先輩として色々教えてやれ。とりあえず3日は教育期間としてお前につけるから、できる限りのことを叩き込め」

 

「了解しました。隊長殿」

 

 では、あとは頼む。なんて言い残してツバキさんは行ってしまった。

 残されたリンドウさんの方を見遣ればニカッと笑われたので、何となく笑い返してみると、じゃ、着いてこいなんて言われるのでホイホイ着いていく。

 

 どうやらアナグラを案内してくれるらしく、ここが神機保管庫、ここが医務室、といった具合にパパっと紹介してくれた。

 原作通り自堕落というか適当な様で、大体のことは【詳しい事は使う時になれば分かるさ】で済まされること以外は問題なさそうだ。

 話によるとアラガミを倒せば倒すほど、偉くなって賃金や待遇も上がるらしく、神機の強化もできるらしい。その辺はゲームと変わりないようだ。

 

「よし! あらかた施設の紹介は終わったな。じゃあ今日はとりあえず飯にするか! 訓練は明日からやるから今日はよく休めよ!」

 

「え? 終わりですか?」

 

 流石に神機の使い方くらいは教えてくれるものだと思ってたのだが、どうやらそうでは無いらしい。

 

「だってお前さん、体調良くないだろ。適合検査がキツかったのか分からんが、そんな状態でやってもろくなことにならないからな」

 

 ......流石の観察眼だ。確かに少しは慣れてきたとはいえ、未だにユーバーセンスの酔いはあるし、何より空腹で倒れそうだが、そんなに分かりやすかっただろうか。

 まぁ、ここは素直にお言葉に甘えておくとしよう。

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 じゃ、食堂はこっちな。と言われて飲食スペースに連れていかれる。腕輪をターミナルみたいな機械に通すと、配給されている食事の券一覧が表示されるので、その中から選ぶ券売機スタイルらしい。お腹すいたしこの、原作で味は微妙だったらしいが、量は多いジャイアントトウモロコシにしよう。この空腹を鎮めないと、配属初日で空腹のあまり倒れる、なんてポカをやるわけにもいかない。

 そう意気込んだのだけれど、私が買った券を覗いたリンドウさんが微妙な顔をしていた。......もしかしてガチのハズレだろうか?

 リンドウさんの手にはビールとおつまみセットなる券が握られていた。この人......さては日暮れ前から飲みたかっただけなのでは? 

 まぁいいか、今日運動しなくて良くなったのはいい事だし。

 

「ニーナ、ジャイアントトウモロコシは結構なハズレだぞ?」

 

「そうなんですか? 適合検査以降妙にお腹が空くんですよね。だから量があればまぁとりあえずはいいかなと」

 

 なるほどね。なんて呆れ顔で返される。

 食べれば分かる。程度に思われてるのかもしれない。もしくは色気より食い気か......みたいな感じで引かれただろうか? いや原作でも、ゴッドイーターは喰うのが仕事って台詞があった位だし、問題ないだろう。うん。

 

 そんな気持ちで食堂の係の人に券を渡せば、数分のうちにお盆に乗った私の腕位の長さで、太さは直径約15cmちょっとくらいはありそうなほんとにジャイアントなトウモロコシがでてきた。前世で見たトウモロコシより3倍近くデカイのではないのだろうか? 

 思わず「おお.....」なんて感嘆の声まで漏れてしまった。

 

 味変用の何かが必要かもしれないが、まぁ食卓にある調味料みたいなのが見えるので、それらを適当にかければいいだろう。

 にしても空腹だからか、この味気のなさそうな量だけが取り柄の様なトウモロコシがやけに美味しそうに見える。

 

 こうして私に食べられる為に生まれてくれた、このジャイアントトウモロコシに感謝の念を込めて「いただきます」と手を合わせてから、齧り付く。

 

 大きすぎて食べにくいと思ったが、大きくするのに伴って食べやすさも品種改良されているのか、思ったより抵抗なく芯から可食部が取れた。

 味は、うん、普通のに比べてなんだか水分量が多くて、甘みが少なくなってる感じだ。

 食べれなくは無いが普通に不味い。

 塩か醤油、もしくは味噌が欲しい感じの味だ。

 

「な? 不味いだろ?」

 

 同情半分からかい半分のリンドウさんの言葉に首肯する。

 ぐびぐびと、配給ビールを呷り、気持ち良さげに喉を鳴らすそんなリンドウさんを見てると、1口くらい欲しくなってきた。

 

 じとっ、とリンドウさんのビールを見つめていると、その視線に気づいたのか、ビールを守るように少し体勢を整えて、かわりにおつまみセットの中から1つ、適当な貝柱みたいなやつがトウモロコシの載った皿に置かれた。

 どうやらこれで我慢しろとのことらしい。

 

 というか何かしらの恵みを期待して見つめていたが、本当にくれるとは思わなかった。

 なんだか逆に申し訳ない気分にもなる。

 

「本当に恵みがあるとは思いませんでした。ありがとうございます」

 

 軽く礼を言えば、おう。って軽く返してくれる。

 現在は2065年、つまり原作の6年前と考えると、リンドウさんはまだ20歳になったばかりだと思うのだが、このイケメン振りだ。さぞ数多くの女性を泣かしてきたのだろう。

 

 まあ、私はカプ厨ではないが、リンドウさんはサクヤさんと結ばれるのが公式解釈なので、その間に割り込める程良い女のつもりはないし──容姿だけは自信があるけども──、私が惚れることも惚れられることも無いだろうな。

 なのでその頼れる兄貴っぷりに、今はおんぶにだっこしてもらって楽しようと思う。

 

 卓上にあるよく分からない化学調味料を、ジャイアントトウモロコシにかけて食べていれば、リンドウさんは食べ終わったのか、先に自室の方に帰られた。明日は0800、つまり朝の8時までにエントランスのソファにいればいいらしい。さすがに寝るのはまだ早いと思うので、自室のターミナルであるか分からないが、開示されているアラガミの資料でも見て予習でもしておこう。

 

 

 *

 

 翌日、私は神機使いの訓練として贖罪の街に来ていた。

 訓練場ではなく、贖罪の街に来ていた。原作主人公くんちゃんは、訓練場でツバキ教官(今は隊長だが)のご指導があったと思ったので、遠回しにリンドウさんに聞けば「訓練場? ああ、今開発中のアレか?」とのことだった。

 どうやら習うより慣れろ方式が極東では採用されているらしい。嘆かわしいことだ。そんなんだから新兵が死ぬんだぞ。

 

「じゃ、今回は見てるだけでいい。余裕がありそうなら最後に一体倒してもらうかもしれないがな。一応聞くがアラガミについてどんくらい知ってる?」

 

「オラクル細胞の集合体で、コアを近接型神機の捕喰形態(プレデターフォーム)で抜き取る、もしくは破壊すればオラクル細胞が霧散し、討伐が完了します。神機で捕喰すれば対象アラガミの素材を回収出来て、アラガミ研究等に回せます。また、現在アラガミとして種の名前を与えられている者達は、今後姿を変えるよりもその姿のまま強度を高める形で進化していくことが予想されています。私のアーカイブにはオウガテイル、コクーンメイデン、ザイゴート、コンゴウ、グボログボロ、ヴァジュラの紹介はありましたが、小型アラガミ以外詳しいことが書いてなかったため、詳細は何も知りません」

 

「おうおう、よくもまぁ配属2日目でそんなにペラペラ出てくるな。想像以上の真面目ちゃんとみた」

 

 大体が前世の記憶(原作知識)ではあるが、模範解答に近いものだったようで呆れ眼で感心された。

 今回のミッションは【オウガテイル5体の討伐】である。

 遠目から見えるオウガテイルはやはりと言うべきか、普通に人間よりも大きい。あんな雑魚アラガミに殺られる気はまったくないが、油断していると華麗な男(エリック上田)の二の舞になりかねない。いや、今殺られたら時系列的に私が先でエリックが二の舞なのだろうけど。

 内心で今一度気を引き締めれば、リンドウさんの指示に従って動き出す。アラガミがよく通る道や、素材が落ちていそうなポイントを道すがら教えて貰いながら、移動すること数分で目的地についたようだ。

 私は原作知識とユーバーセンスのおかげで、最初からここにオウガテイルが4体居ることは分かっていた訳だが、リンドウさんは何故ここにオウガテイルが居ることが分かるんだろうか? 経験? もしくはオペレーターの人と密かに連絡でもとってるんだろうか? 

 

 いやでもそんな気配はまるでないしな......よし、後で聞こう。

 

「んじゃあ新入り、お前に出す命令は2つだ。周囲を警戒しながら俺の戦いを見ろ、俺が交戦中に他のアラガミに襲われたら逃げろ、そんで隠れて助けを待て。あ、これじゃ3つだな」

 

「わかりました。リンドウさんの戦いを見学しつつ周囲の警戒、もしアラガミに襲われれば逃走、アラガミを撒いたら物陰にて助けを待ちます」

 

「いい子だ。その都度なんか言うかもしれないから、そん時は臨機応変に対応してくれ」

 

 固く頷けば、リンドウさんは神機を担ぎ、オペレーターに声をかけた。いよいよミッションがスタートするようだ。

 

「よーし、サクヤ聞こえるか? 新入りに対する説明は終わった。これより討伐対象を駆逐する」

 

『オペレーターよりリンドウ、モニターを開始したからいつでもどうぞ......気をつけてね』

 

 アナグラ出発前に説明されたインカムから来る通信はオープン形式らしい。

 リンドウさんと、その幼馴染のオペレーター 橘サクヤさんの会話が聞こえる。一応私の声も拾っているようなので、無駄口には注意しよう。

 少なくとも、ツバキさんが隊長のうちは真面目に見られておきたい。まあ原作まで生き残れるか分からないので、意味の無い見栄になるかもしれないけど。

 

 益体もないことを考えていれば、リンドウさんが神機──ブラッドサージのチェーンソー機構──を起動して1体目に突貫して行った。

 足音によってか、もしくはブラッドサージの駆動音によってリンドウさんの存在に気づいたオウガテイル4体が咆哮で威嚇する。

 その威嚇すら気にした素振りもなく、ブラッドサージを先頭にいたオウガテイルの頭部に叩きつけた。

 いや、叩きつけたというよりも、食い込ませたが近い表現だろうか。

 ブラッドサージのチェーンソー機構はその見た目通りの能力を発揮し、オウガテイルの血と肉をぶちまけながらも、その頭部を両断している。

 リンドウさんは一撃で絶命させたソレを、力任せに振り払い次の獲物に視線を移した。

 3体のオウガテイルはそれぞれ既に行動を起こしていた。

 

「は?」

 

 ......起こしていたのだが、3体が3体ともに噛み付こうとしていた。

 まず、リンドウさんと至近距離にいる個体。コイツはまぁ、至近距離なのだから噛みつきを繰り出すだろう。

 次に、リンドウさんとオウガテイルの足で半歩分距離のある個体。コイツもまぁいい。その馬鹿でかい尻尾を振る方がいいのでは? と思えるような距離感ではあるが、まだ半歩踏み込めば噛みつける範囲だ。

 問題は最後、ゲームであれば恐らく針を尾から飛ばしている距離にいる個体。コイツが大口をあけ、仰け反りながら噛みつこうと、リンドウさん目掛けて突進しようしていた。

 

 全くもって意味がわからない。

 そりゃあアラガミといっても、オウガテイルの様な低知能個体であるため、噛み付きを避けさせて、もう一体がしっぽを当てる。さらにそれ防いだ所に尾針が飛んでくる。なんて言う高度な連携が出来るとは思っていなかったが、人1人というあまりに小さな的に対して、3体全員が無理やり噛みつこうとするとは思わなかった。

 ゲームだったらAI壊れてるのか? と思われるレベルの挙動だ。

 

 リンドウさん1度バックステップをとるだけで、当たり前の様にそれら全てを回避してみせる。その後は1体目の焼き回しだ。切り裂いては振り払い、切り裂いては振り払う。

 そんな様子をどこか納得のいかない表情で眺めれば、サクヤさんが話しかけてくる。

 

『加納さん、どうかしましたか?』

 

「いえ、なんだがオウガテイルの動きが、その、あまりにも下手? な動きに見えたので」

 

『ああ、それはまだオウガテイル神族自体が未熟だからでしょう。

 基本的に小型アラガミは群体で多数の弱者、もしくは1体かつ大型の存在を狙うことが多いの。だからゴッドイーターのような的が小さいかつ、1人を群体で狙うことに対する学習が、アラガミたちの中に未発達な結果よ』

 

「では、今後年単位で時間が経てばアラガミはそういったことも学習するんですか?」

 

『ええ、そうなるだろう。と以前榊博士を始めとした専門家が記事に出してたわよ』

 

「なるほど、いつ進化するかまでは分からないでしょうし、油断なりませんね」

 

『その心構えは大切よ』

 

 サクヤさんが、リンドウさんの状況に合わせて言葉を切れば、リンドウさんがオウガテイル4体を倒し終わり、私を手招きしていた。

 そちらへと向かえば、どうやら倒したオウガテイルの捕喰、つまるところコアの抜き取りをやらせてくれるらしい。

 

 事前に説明があった通りの方法で神機の捕喰形態(プレデターフォーム)を起動する。

 黒々とした色の中に時折赤色がメタリックに光る。

 形はゲームで見たものよりもずっとスリムで、丸みを帯びている。

 例えるならば、そう、マーベル・コミックのヴェノムみたいな感じだ。

 さすがに喋ったりはしないようだけど。......いや、私もリンドウさん並に歴戦のゴッドイーターになれば、リンドウさんの神機よろしく私のにも意思が宿るのかもしれないけど。

 

 ──喰事の時間だよ──

 

 捕喰形態のロックを外して、オウガテイルの死骸に差し出せば、神機がその大顎をもって死骸を貪る。

 程なくしてコアを探し当てたのか、ズルズルと音を立てながら神機が元の形に戻る。持ち手部分を確認すればコアの所持数が表示されていた。

 コアを抜き取られた死骸は直ぐに霧散し、大気に溶ける。

 

 にしてもなんだろう、神機が捕喰したのに私の小腹も満たされた感じがする。こう、学校の友達にお菓子をひとつ分けてもらった感覚だ。

 

「じゃあ新入り、今度はお前の番だな。ユーバーセンスだっけ? 最後の1体の位置はわかるか?」

 

「えっと、はい、ここからあの大きい建物を右へ迂回していけば、恐らく会敵すると思います」

 

 リンドウさんの言葉にハッと我に返って感覚頼りに説明すれば、満足気に頷き先へと促される。

 やばそうだったら助けてやる。との言葉をもらったので、大船に乗ったつもりで私は最後のオウガテイルの元へと歩を進めた。




こんなのにもうお気に入りしてくれる人いて嬉しいね。ありがとうございます 
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