最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
感想、高評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございまぁす!
ちなみに今回も独自設定放出会です。
感応現象についての話をしよう。
感応現象とは新型神機使い同士にのみ起こせる奇怪な現象であるとされる。
心臓移植をした結果、自身が体験していないことを見たことがあるように感じたりする。細胞記憶なるものと少し似た現象だ。
簡単にいえば接触をトリガーに起こる感情と記憶の共有なわけだけど、何故新型同士でのみ起こるのか。
それを説明するには前提として、新型神機使いと旧型神機使いの違いを説明しなければならない。
新型と旧型の違いとは、大きく言えば神機に使われているコアの数が違う。
捕喰機構と刀身、盾の実装で一つ。あるいは銃身とOP生成機構で一つのコアを使って作られているのが旧型神機だ。
新型神機は捕喰機構、刀身、盾はそのままに、銃身を合体させOP生成機構をオミットし、代わりに刀身にオラクル細胞簒奪機構を実装したものだ。
無論コア1つで賄える機能は変わらないので、単純に2個のコアがいるわけだが。
では近距離も遠距離も一人で戦えれば雑に作戦投入出来て強いのに、なぜ今まで完成に至らなかったかと言えば、単純な話、アラガミのコアを2つ併用が出来ないのである。
考えてみれば当然ことだが、神機は人が使う兵器だが、同時に人が手懐けたアラガミ。即ち生体兵器なのだ。
アラガミの中に複数コアを持つアラガミは存在しない。故に、同時に二つのコアを1つの神機で稼働させることは出来ない。その結果、新型は長らく着想がありながらも実装されていなかった。
では、実装された新型はどういう仕組みで動いているのか。
実際のところコアは常に一つしか動かしていない。
近接形態の時は遠距離用のコアは非稼働だし、遠距離形態の時は近接用のコアは非稼働になっている。
その稼働非稼働をスイッチで入れ替えて戦うのが新型神機ということになる。
話を戻して、感応現象が新型使いにしか起こせない理由はこの新型のスイッチ機構にある。
スイッチといってもボタンを押すだの、レバーを引いたり捻るだので簡単に変わるわけではない。
新型神機使いは体内のオラクル細胞を通して、接続した神機に命令を下して呼び覚ますのだ。
もっとも使ってる本人たちはそんなこと欠片も考えておらず、ただ決められた挙動をすれば神機が変形すると教えこまれているので、無意識で行われることにはなるけど。
簡単に言うと新型使いは自身のオラクル細胞を使って、他のオラクル細胞への干渉ができるようになってるわけだ。偏食因子自体は新型も旧型も変わらないP53偏食因子だけど、腕輪の中身が若干異なっていて適合検査──ギロチン拷問適合手術──の時にその辺が機能追加されてるみたい。
そのせいか新型に適合できそうな人間は旧型よりさらに少ない訳なんだけど、そこらへんは今後の課題だね。
まあつまるところ感応現象は、新型神機使いにのみ許された互いのオラクル細胞干渉能力を用いた相互的情報共有現象なわけだね。
互いのってところがポイントで、新型と旧型は接触しても感応現象が起きない。
イメージとしてはオラクル細胞同士の握手が成立すると感応現象が起きるんだけど、旧型は手を動かす機能が無いから新型が一方的に触るだけみたいな? わかりやすい例えが難しいな……
ちなみになんで急に感応現象の話をするかというと、私が新型を旧型からコンバートする形で使う気だったから進めていた旧型から新型への適応計画を進めよ。という圧が来たためです。
近い将来極致化技術開発局のラケル博士が、ジュリウスという特異点を使って実証するはずのP66偏食因子で作られるブラッド部隊を設立するはずだけど、これを私が先取りすることもまぁ不可能か可能かで言えば可能なんだろうけど、普通にやりたくない。
今私が新型にコンバートしてしまうと、先に説明した感応現象によって、ヨハンさんとの企み、原作知識というアドバンテージそれら諸々が抜かれる可能性があるからなんだよね。
普通に原作主人公枠に元々存在しない枠に居る私なら入れるかもと思って頑張ってたけど、無理だったんだよなぁ。
「と、いうワケなのでこのコンバート計画はラケル博士に投げたいんですが、面識ないので研究経過だけ送る形で手配してくれませんか? 適当に理由は付けといてください。ヨハンさんの得意分野ですよね?」
「どういうワケかわからんが、まあいいだろう。おおかた感応現象への警戒だね?」
「大体そんな感じです。私が新型になるのは最強の戦力強化ですが、リスクがデカすぎます。適当にロシア辺りから新型の強化研修を名目に引っ張ってきてください。ロシアの連中、この前薄気味悪い感じで擦り寄りたがってましたし」
流石はヨハンさんだ。一切の前置き無しのというワケが通じる。まぁ原作知識関連は流石に知らないだろうけど、まだろくに検証が進んでいない感応現象にも触り程度は知ってるみたい。そこから生じるリスクも頭に入ってる辺りホントに夢想家としてアーク計画やってるんじゃなくて、現実的に達成可能と判断してアーク計画を進めてるんだな。流石は実子とのコミュニケーション以外は出来すぎる男だ。
「それより、頼んでいる探し物はどうだね?」
「なかなか見つからないですねぇ。各部署から貰ったアラガミの出現と消失データを基に実地で探してるんですが、とんと外れでして。
任務のついでに倒したアラガミの報告をさぼってる人が居るかもですねぇ」
「第1部隊か」
「はい。エリック君にはその辺しっかり報告させてるので、統計が崩れるような要因は第1部隊な気がしてます……なんでしたっけ何とかジュースみたいなの作ろうとしてませんでした? あんな感じで榊博士の勝手な研究で素材集めとかさせられてたりするかもしれないですね」
「初恋ジュースだな。……試飲させられたが酷い味だった。あまり思い出したくもない」
「そうそれです。まだ未完成なんですよね? あの人のことだから絶対何かしらの手段で完成させますよ。私は死んでも飲みませんけど」
「フフフ、なに試作段階では飲めたものではなかったが、完成したら私の代わりに飲むと良い。初恋は私より君のが近いだろうからね」
「アハハ、今生ではまだ恋はしたことが無いものですから。経験者かつ既婚者のヨハンさんが試してくださいねぇ」
フフフ、アハハとお互いにまだ見ぬ脅威を押し付けあっていれば、渦中の人物が部屋に入ってきた。
なにやら紙束もって忙しないけどどうしたんだろうか。どうせ碌でもないんだしさっさと退室するに限るな。
「ヨハン少し話が……失礼、取り込み中だったかな?」
「いえいえ私の用はちょうど終わりましたので! 榊博士が話していただいて構いませんよ。じゃあ支部長、そのコンバート計画の件よろしくお願いしますね」
「ああ、わかった」
「ニーナくん、今から予定は詰まってないかな? 時間があるなら君にも意見を聞かせて欲しくてね」
「支部長?」
「ペイラーがそう言うのだ。余裕があれば同席してくれ」
「承知しました」
逃げようとしたら回り込まれちゃったな……にしても支部長とともども聞きたい意見ねぇ。
まあ、支部長命令ならしょうがないし支部長室の中央に設置された応接用のソファに腰掛ける。
向かいには榊博士が、上座にヨハンさんが着座して榊博士が話し始めた。
「簡潔に言うとね。特異点が現れる頃合いだよヨハン」
「……以前ペイラーが報告してきた通りだな。もうそんな時期になってしまったか」
「……」
いきなり終末捕喰というトップシークレットを、知らないはずの社員の前で話し出すブラック企業があるらしい。……一先ずキョトンって顔をしとこう。
ていうか私が存在確認できてないのに何で榊博士が把握できるんだよ。頭の基本性能が違いすぎるってこと?これでも結構頭も身体も酷使してるんだけど、自信なくすなぁ。
「ニーナくんに特異点についての説明はいらないだろう? 君の過去の資料の閲覧履歴からこの話にはついてこれるはずだよ」
なんで資料の閲覧履歴だけで私が終末捕食についてわかるって分かるんだよ。ていうか権限はあるとはいえなんで私の資料閲覧履歴なんて見てるんだよ。観察対象として日頃から監視されてたりするのかな?
「……軍務違反になるやもと思って黙ってたんですよ。終末捕喰の件であっていますか?」
「話がはやいね。2年弱で私の理論と同じゴールが見えたのは素直にすごいことだ。その件について誰かに相談は?」
「旧時代でいうところのノストラダムスの大予言吹聴して回るような趣味はないですよ。……たとえ自分が本当に気づいた側であっても、私にできることなんてたかが知れてますから。支部長も知ってたなら相談位すればよかったかなとは思いましたが」
「その割りには意外と冷静だ。キミからすると、特異点の出現の報せは妹君の安全に直結する問題だ。もっと焦るのかと思っていたが」
なるほど、榊博士の狙いは私の立ち位置の確認か。アーク計画にはおそらくまだ気づいていないけど、ヨハンさんがなんで終末捕喰を公表しないのかは疑問の筈。どうせ市井の混乱を避けるためとか言ってるんだろうけど、特異点の出現に対してどういう動きをとるのか見に来たんだろう。なら、私の立ち位置は模範的なゴッドイーターを示すべき。
「……私に隕石は止めれませんが、アラガミなら殺せます。アリアが寿命で死ぬまで私が特異点が出てくるたびに殺し続ければいい。結局神機使いは対症療法ですから後手に回るのは分かり切っていたことですが……私に倒せないアラガミがいるとでも?」
「……流石だね、確かにここ2年で更新された新種アラガミの最初の討伐はほとんどキミの成果だったね。極東の、いや世界最強戦力の一角なだけはある」
「アハハ。恐縮でーす」
一先ず私の立ち位置は示せたかな。納得したかはともかく榊博士もとりあえずは私の事を置いておいてくれるみたい。
改めてヨハンさんに向き直って榊博士が話を切り出した。広げた資料は私が各部隊に報告をお願いしてたアラガミの出現と消失の記録……?あれからじゃまだ割り出せないはずだけど、ああいや、榊博士が個人で抱えている正確な情報を合わせれば可能性はあるのか。
「さてヨハン、以前は混乱を避けるために緘口令を出してきていたけど、特異点の出現が起きる。いや、起きたと言っていいね。
ヨハンがソーマに行わせている特務ではまだ報告を受けていないだろうけど、ニーナくんの各部隊に提出させていたアラガミの討伐情報が役に立ってわかったことだ。
もっとも、私が内緒で素材をとってきてもらうためにお願いしていた分を込みにして判明したことだけどね、これからどうする気だい?エイジス計画で終末捕喰を乗り切れるかは……正直分の悪い賭けだと私は思うよ」
「ペイラー。
正直な話だが、私もまたエイジス計画は分の悪い賭けだと認識していた。10年前にキミから報告された時はだがね。
だが数年前にニーナ君が現れてきてくれてからは別だ。彼女一人に頼るわけではないが、ここ数年の極東の死亡率の大幅低下及び任務の達成率向上。これらから神機使いの能力も経験が溜まり能力が上がった。ニーナ君の言葉を借りるわけではないが、特異点状態のアラガミであればノヴァになる前に打倒可能だと考えている。
とはいえ、今は極東は本部の方との政治で忙しいのと新型の研究で忙しかろう。それらが落ち着いた頃合いで全体に説明しようと思う」
……ふぅん?まぁたしかにその場しのぎの嘘としてはかなり説得力があるんじゃないかな。支部長という立場から部下を頼りにするという構図も見栄えがいいし、なによりアーク計画よりも人道的だ。まあいささか
まぁアラガミとの共存。なんてふざけたコトを本気で言いだすこの人の完全な好みとは言えないんだろうけどね。
「そうか、わかった。あくまで私は技術者で
変わらず開かぬ糸目をにこりと曲げ、榊博士は支部長室から出ていった。
なんだかどっと疲れたね……。
ニーナは普通に榊博士の事が苦手です。ソリが合わないので。
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