最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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本日二話目なので初投稿です。

感想、高評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます!

今回は男性陣もといソーマとエリックでの会話になります。
おや、エリック君の様子が……?


3-6-2

 チラチラヒソヒソと、俺を見て噂する奴らの視線が鬱陶しい。

 数日前まではやれ死神だ化け物だと言っていたくせに、ニーナ(アイツ)が俺を呼び捨てるようになったらコレだ。

 もしかしたらあの性悪女のことだから、こういう結果になるのを見越してそう呼んでるのかもしれねぇが。

 

 なんにせよ、階級も立場も伴ってる仕事の量も含めて今はニーナのが上だ。

 今出来ることは黙ってクソったれな仕事をするだけ。だから遠巻きに見てきても直に何も言ってこねぇ連中との仕事はこれまで通り何も変わらねぇ。

 

「そういえばソーマ、とうとうニーナ君と付き合ったのかい?」

 

 エリック(コイツ)ユウ(新入り)を除けばなんも変わらねぇはずだったんだが……。

 第4部隊長(ニーナ)がアラガミ出現記録の再計算をするため、個人単位での仕事が無いエリックは他部隊に貸し出し(レンタル)だったか。榊のおっさんがニーナに報告し忘れていた──初恋ジュースの試作に素材を使うためわざと報告を忘れた──データが出てきたから怒りの再計算の真っ最中らしい。

 なんでも作戦行動中行方不明(MIA)になった奴がアラガミ化してる場合、アラガミの出現と消失割合からある程度地域を絞りこめるから必要な仕事らしいが、計算がMIAになったヤツの強さ、神機の種類とかによっても変わる複雑なモノのせいで、ニーナ以外だと榊のおっさんくらいしか出来ないとか。それなら榊のおっさんがやるべきだが、業務領域は捜索・回収班(第4部隊)の仕事だからってキレてたな……。

 

 初恋ジュースなんて作る暇があったら手伝ってやればいいものを。

 

「ソーマ? いくら華麗な僕でも、親友のキミからの無視は傷つくんだけどね」

 

「チッ、別に付き合ってねぇよ。俺じゃニーナに釣り合ってねえしな」

 

 エリックがヘリ内で仕上げていた報告書のバインダーを取り落とした。珍しいというか、態とらしいくらい驚いてやがるがなんだ? 

 男側()より立場、階級もろもろ高いニーナに釣り合ってないのは事実だろうが。まあだからこそ今までとは違うルートで何かしら成果を上げねきゃならないわけだが

 バインダーを拾い土埃を払い、サングラスをわざとらしく指で直したと思えば真剣な声音で語りかけてくる。

 

「失礼したね。

 にしてもソーマ、そんな馬鹿げたコトを本気で考えてるのかい? 僕としてはニーナ君の様な危ない女性(ファム・ファタール)に釣り合いが取れるのは、キミくらいなモノだと華麗に確信しているんだが……」

 

「エリック、前から思っていたがそのファム・ファタールってなんだ。あいつは性悪だが、妹馬鹿なだけでその魔性だなんだは言い過ぎだろ」

 

「……なるほど、そういえばソーマはコミュニケーション能力に難があるんだったね」

 

「喧嘩なら買うぞ」

 

 あまりに不躾な物言いに思わず語気が強くなるが、コイツは両手を上げて降参の意を示しつつも、ようやくまともに話す気になったらしい。手荷物を脇に置き、サングラスの奥に隠した目を合わせて来る。

 

「ソーマ、コレは真剣な話だがね、僕には人を見る目があると自負している。ニーナ君は良い人だ。余裕がある分には他人を助け、余裕がある分には頼まれごとをこなしてくれる。

 

 だがね、彼女は人を見捨てれて、切り捨てれる人間なのだよ。それこそあってはならないことだが、『愛する妹の為』という大義、あるいは免罪符があれば文字通り何でもする人間だよ。

 仮に親しき人とアリア君が共に危機に陥っていて、どちらかしか助けれない時、普通ならアリア君を選ぶにせよ多少なりとも迷いが出るものだが、彼女は選択肢を理解した瞬間にアリア君を選ぶだろうね」

 

「家族とツレだ。それ位の差はおかしくねぇだろ。まして、妹はあいつの唯一残る肉親だぞ」

 

 そう、ニーナには肉親が妹しか残っていない。なんでもゴッドイーターになったのも妹の生活レベルの向上だったらしいし、その程度の事はこの世界じゃ割とよくある悲劇だ。

 そして、よくいる人種でもある。だから支部長(アイツ)にいいように使われてるんだろうが……。

 

「そうだね、そこまでは異常といいつつもありふれている。

 彼女の怖いところは、アリア君のためなら人類全員殺せる可能性があるところだよ」

 

 コイツは何言ってやがる。人類全員を殺せるだと? 

 いくらニーナが妹バカのシスコンとはいえ、流石にそこまでじゃないだろ。どうやらこいつが配属当初に行われていた並みの新人が裸足で逃げだす研修でイメージがイカレちまったらしいな。

 

「信じてないって顔をしているね、ソーマ、君が知る限りでいいから彼女の人助けのシーンを思い返してみるといい」

 

「人助けのシーンだと?」

 

「ああ、彼女は人を助ける時に絶対いう言葉があるんだ」

 

 アイツの人助けなんてのは枚挙に遑がないわけだが……エリックがここまで強く言うのは珍しいのもあって、これまでのコトを思い返す。

 

『良いんですよ! 困った時はお互い様ですからね〜近いうちに私が困ったら助けてください!』

 

『しょうがないですね〜貸しイチですからね! 絶対そのうち取り立てるので!』

 

『どういたしまして! 今度アリアが困ってたら私の代わりに助けてあげてください!』

 

 ……言う程違和感は無いが、強いて言うなら無償じゃねえところか? 

 だけどこれは当たり前の範疇だと思うが、まあグダグダ考えてもしょうがねぇな。

 

「絶対未来で自分を助けさせようとしてるとかか? あんなの口約束の域で、軽口だろ」

 

「そうか、キミの目の前ではやはり綺麗な面しか見せてないんだね」

 

「あ? もったいぶりやがって。なんかあるならさっさと話せよ」

 

「奇しくも、ニーナ君と出会ったのは僕のが遅いが、年数的に共にすごした時間は僕のが長い。

 勘違いしないで欲しいのはコレは親友に向けた忠告とお願いであり、マウントの類じゃないことを理解して欲しい。

 

 僕は彼女と共に何度も華麗に人を助けたり、アラガミ化した隊員の処理をしたりした。コレは捜索・回収班であるウチの基本業務だからいいんだけどね。彼女はその潔白さからか、僕にトドメは絶対刺させないよう立ち回っていた。実にいい、お手本みたいな上司だった。

 だけど、彼女が神機解放状態(バーストモード)になると、口が悪くなる(建前が言えない)のは知ってるだろう?」

 

「ああ」

 

 極東じゃあ有名な話過ぎて特段話題にも上がらねえレベルだ。しいて言うなら新入りが初めてあいつと組むときに引いてる時に説明するくらいか。

 口が悪いというより男みてぇな口調になるのがニーナの神機解放状態(バーストモード)の特徴だが、口調と一緒に性格の変化も観測されてる。平たく言えば傲慢になる。というより傲慢な側面がより強調されるというのが正しいらしいが。

 

「1年半前にあったアラガミ化した偵察班員の回収、半年前にあった行方不明となった防衛班員の捜索。この2度だけ僕の前で、彼女が口を滑らした時がある。

 

 対象の2人は人柄が良いとはあまり言えなかったが、罪人ではなかったよ。僕たちが対峙した時には両者共にアラガミ化が進行していたが、辛うじて意識はあった。最も処理する以外に他ない段階ではあったから無駄な殺生ではなかったがね。

 その意識がある中、大抵の人間は『助けてくれ』って言うんだ。それに対してこっちは謝って処分する。それがいつもの流れだった。

 

 忘れもしないね、ニーナ君は小さい声だったけど確かに『残念だけど、お前は要らない』と言ったんだ。

 

 ソーマ、平たく言うとだが僕にはニーナ君が何かを企んでる可能性があると思っている。それはまだ計画段階なんだろう。そしてそのナニカには人手がいるんだろうね。言うなれば勢力争いだ。その勢力に彼らは不要と切り捨てられたと思っている。

 

 だからソーマ、君は選ばれている。運命とやらがあるならソレに、神がいるならばソレに、そしてなによりニーナ君自身に。

 ニーナ君が人の道を外さぬよう見守り、引き止めれる役割を担える立場にね。だから、気をつけて欲しい。そして、あんな妹思いのイイ人を悪人にしないようにしてあげてほしい。

 情けないことに僕では力不足だろうからね」

 

 エリックの言葉に思わず眉間に皺が寄る。

 アイツが何かしらを企んでる……? そういえばハルオミの奴もグラスゴーに行く前の送別会でなんか言ってたな。なんだったか。

 

『隊長が追い詰められてるかもしれないから、もしもの時は止めてやれ』だったか? 

 

 あの時は酒に酔ったバカの戯言と思っていたが、いやエリック(コイツ)もバカではあるが、二人もこんなことを言うってコトは何かしらが本当にあったんだろうな。

 俄かには信じられねえが……

 

「……俺にできる事なんてそうねえだろ」

 

「そんなことはないさ。簡単なことでいい」

 

「簡単なことだと?」

 

「しっかり好いてやればいいという話さ。簡単だろう?」

 

「……」

 

 コイツは何言ってるんだ。

 

「試しに聞かせておくれよ。キミ、彼女のどこが好きで手を出したんだい? 好きじゃなかったらそもそも寄られたところで突き飛ばすタチだろうし、どこかしら刺さったところがあるんだろ?」

 

「なんで俺がそんなことおまえに話さなきゃいけねぇんだ」

 

「ソーマはコミュニケーションに難ありだからね。ここで僕にも軽く言えないようじゃ、ニーナ君に直接言うことも出来やしないだろう? 

 彼女は理解がある女性を演じてくれるかもしれないけど、それじゃあ君たちの間に未だ存在する壁や溝は無くならない。それに、こういうのは言わなければ言わないほど口に出しづらくなるものだ」

 

 社交性云々についてはなんの言い訳も出来ねえし、一理あるのか……? 

 別に明確に好意があったから手を出したわけじゃねぇ。勢いもあったし、アイツが煽って……これは言い訳だな。

 

「……アイツは他の連中と違って、俺を置いて死なないらしい」

 

「だろうね。実質最強のゴッドイーターだろうし」

 

「俺を化け物扱いしないのがアイツだけってわけじゃない。リンドウやサクヤ、ツバキにお前もそうだ。

 どんだけ無視しても根気強く話しかけてくる鬱陶しい連中は居るには居る。だが、俺の手を引いたのはアイツだけだった」

 

「さすがの行動力だね」

 

「後は妹の、家族の話をする時の目が、キレイだ」

 

「アリア君のことを語るニーナ君は希望を見ているようだからね、わかるとも」

 

「飯食ったとの食器がキレイだったりするし、食い歩きしてても食べかすは落とさないようにしてたりする」

 

「行儀は悪い時があるけど、彼女の食べ方は確かにキレイだね。ごみの処分も徹底してるしマナーもある」

 

「アイツは髪もキレイだな」

 

「聞くところによると碌な手入れしてないらしいけどね。遺伝的なすごさがあるのかもね。今度ヘアオイルでも贈ってあげるといい」

 

「……多分、初対面の頃から押しの強さにやられてたんだろうな」

 

「意外だね。自覚したのがこの間としても実質一目惚れだったわけだ。

 ふむ、思ったよりたくさん出せたね。ソーマはしっかり彼女の事が好きらしい」

 

「……うるせぇ」

 

 ポツポツと、一個ずつ確かめながら言ってけば、引き出すように復唱してくるコイツから窓に視線をやって目を逸らす、否定する気はないが、妙に気恥しくてせめてもの抵抗だ。

 そんな行動すらエリックにとっては面白いらしい。人の事ばっか笑いやがって、ムカつく野郎だ。

 

「そういうお前はどうなんだよ。どんな女が好みなんだよ」

 

「僕かい? そうだな……僕の足りない所を補ってくれる女性かな? 容姿に対する好みはあまりないけど、強いて言うならボディラインがキレイな女性かな」

 

「まぁ否定はしねえが……」

 

「実際彼女もスタイルいいしね? 最近はもっぱら露出が抑えられてるブルゾンの上着とジーンズが増えてきたし、キミとしては安心かな」

 

「まぁ、な」

 

「なんにせよ、そういう風にちゃんと気持ちがあるなら、関係性には名前を付けておくべきだと思うよ。キミより強いやつはいないから誰も名乗りは上げないだろうが、アレでモテるわけだし、なによりソーマもニーナ君も互いが互いのよりどころになるべきだよ」

 

「……考えとくよ」

 

 関係性に名前、ね。あとはニーナが馬鹿起こさねえようにか。少しばかりアイツの仕事を手伝ってみるとこから始めてみるか。

 

 

 




何も知らない(知る気がなかった)ソーマと、社交をどんどん広げていくエリックとの差。
どちらにせよ彼らはアーク計画など知る由もないので、まだまだお気楽に物事を考えています。

エンディングに影響はないですが調査です。この物語の最後の予想は?

  • アーク計画成功。
  • アーク計画失敗。
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