最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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平和な回はこれで終わりなので初投稿です。
感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます!

アルダーノヴァじゃなくてアルダノーヴァってマジ?


3-7

 ベテラン区画にはアラガミ生態研究及び、神機デザインの基幹職仕事を行う私用の執務室がある。

 主には研究方面の私の部下である職員が挙げてくる紙、電子媒体の情報や報告に対して、チェックして資料の処理をする用の部屋なわけだけど、大体いつもは私とたまにエリック君が手伝いに来るくらいだが、最近はそこにもう一人ソーマが加わってきた。

 

 別に彼だって暇なわけじゃないはずだが、非番の日には必ず手伝いに来てくれている。最初の方こそまるで役に立たなかったわけだけど、流石将来研究職に就く男なだけあって覚えも早かった。神機関連にはまだまだだけど、アラガミ生態学に関しては元々現場で養っていた知見が生きてるんだろうな。

 そんなこんなで今は私とエリック君とソーマの3人で、雑談交じりにデスクワークをしているというわけだ。

 

「へぇ。アリサちゃんだっけ? ロシアから来た新型ちゃんはコミュニケーションに難アリなんだ。大変だねぇ」

 

「ああ、リンドウとユウが上手く対応してるが、旧型を見下す発言が目立ってるな。……これ終わったぞ」

 

 ソーマから渡された資料に目を通す。

 サリエル神族の自然発生個所の概略図を任せてたけど、うん。発生率のグラフと数値に差異は無い。この調子ならアラガミの再発生時期におけるスタンピードの事前予測の計算とか任してもよさそうかな。

 この辺も自動化できればいいけど、資源の少ない食べ残しのこの世界だとスパコンも限られてくるからなかなか難しいよね。

 

「問題……ないね、ありがと。まぁ聞くところによると専属の精神科医が同行してる子らしいし? ある程度はしょうがないんじゃない。しょうがないじゃすまないのが現場だけどさ。エリック君から見てどうだった?」

 

「戦闘に関しては申し分ないね。華麗に戦う僕ほどではないが、お手本みたいな戦い方をしている。その分イレギュラーやアドリブ対応に弱そうだけれど……そこは経験でどうにかできるだろうね。ただやはり生真面目すぎるせいで協調力がネックに見えたかな。ニーナくん、こちらの偏食の性質変化の調査も問題なく完了した。榊博士には僕が出して来ようと思うけど、一緒に出しておくモノはあるかい?」

 

 エリック君に任せてたのはアラガミの偏食性質に変化が無いかっていう地味に重要な調査のまとめだけど、彼が出来たっていうなら出来てるんだろう。この手の原作にはなかった要素の研究じゃすでに私より優秀だし。

 にしてもアリサちゃんはやっぱ不安定みたいだね。ディアウス・ピターの発見記録はフェンリル上層部によって秘匿されてたからリンドウさんの暗殺計画に変更は無さそう。

 ヨハンさんもその手のことまで共有してくれてれば、私ももう少しやりやすいんだけど、こういう明らかな悪性のことは教えてくれないんだよね。ソーマと元々仲良かったのが影響してるのかもしれないけど、親から子への最後の良心ってやつかな。

 

「ありがと! じゃあコレとコレと、あとコレも持って行ってね! あ、期限昨日までのやつがあるな……ごめんけど代わりに謝っといてくれる?」

 

「了解した。なに、ニーナ君の多忙さは皆の知るところだし怒られることも無いだろうさ。一区切りついたのならソーマと小休止でもしていたまえよ」

 

 そう言ってエリック君は、書類の束とサンプルの山が入った箱を抱えて部屋を出て行った。……コレ謎に気遣われてるのか? 

 まぁ一区切りついているのは事実だし、休憩するか。

 ソーマはコーヒーで、私は緑茶だ。茶請けはこの前アメリカ(ボストン)支部に出張した時に向こうでもらったクッキー缶だ。

 大容量なので、缶ごと置いといてもエリック君が来るまで無くなることは無いだろう。

 

「……にしてもエリック君はともかくとしてソーマまでこの手の研究事務仕事手伝ってくれるとは思わなかったよ。休みの日なのにわざわざありがとね」

 

「別にいい。やることもないしな」

 

「無趣味だねぇ」

 

「お前もだろ」

 

「……私はほらアリアがいるし」

 

「妹を愛でることを普通は趣味とは言わねぇぞ」

 

「しょうがないじゃーん! エリック君が来た頃ハマッてた旧時代の音楽も堀つくしちゃったしさぁ、それに降って湧くようなたまの休みなんて何すればいいかわかんないしね」

 

 せっかく一緒にクッキーをつついているというのになんだこの男は。キミが非番なのにも関わらず手伝ってくれている前提が無かったらクッキーは今頃取り上げだぞ。いや、これやられて悲しくなるの私だけか……。

 

「……昔はお前みたいな奴のことをモーレツサラリーマンっていったらしいぞ」

 

「それ、旧時代の中でも昭和とかいう和暦が使われてた時期でしょ、1950~70ぐらいにあったらしい高度経済成長期とかいう恵まれた時代の話だよ? 1世紀前の人たちが今の私たちの仕事見たら、裸足で逃げ出すんじゃない?」

 

「そりゃアラガミと対峙するんだ。神機使い以外は今の時代でも裸足で逃げ出すだろ」

 

 実際問題銃火器が効かない以上、軍人だろうと逃げ出すだろうという確信がある。実際に対峙してるからこそわかるけど、オウガテイルですら私よりデカイし、とてもじゃないけど勝ち目なんてないしねぇ。

 

「そりゃそうだね。にしても趣味か。この時代は娯楽が少ないからなぁ、SNSとか動画プラットフォームとかあればいい暇つぶしになるけど、回線の不足と個人持ち記録媒体の少なさからほぼ絶滅しちゃったしねぇ」

 

「SNS?」

 

「ソーシャルネットワークサービスの略だよ。旧時代でも割と近いほう、オラクル細胞に世界が食い散らかされる直前まで全世界に広がっていたモノでね。共通回線にアクセスできる端末さえあれば人種、性別、年齢、思想、立場を問わずに己の意見が発信できたんだ。まぁ、今の時代にこれは無くなってよかったと思うけど」

 

「そりゃあなんで、ああいや、暴動が加速するのか」

 

「そゆこと。結局自分の意見なんてのを発表するのは頭のいい人の特権にした方がいいよね~。天才は波及しないけど馬鹿は感染するから」

 

 今はほとんどもう何も覚えてない過去(前世)の話だけど、こういう雑談の時は知識だけがスルスルでてくるんだよな。にしてもやっぱりソーマは頭が良いなあ、SNSの概要だけなのに今の時代にあったらどうなるかがすぐ分かるんだもん。

 だれだっけ、数年後に歌姫葦原ユノのマネージャー兼ねてるジャーナリスト。た、たか、高峰サツキ? とかみたいな面白おかしく真実を誇張して書く人に社会的弱者が煽られるのが目に見えるよね。

 厳しい時代であればあるほど、社会に向けた発言力は絞る必要がある。アーク計画前には回線監視もさせなきゃな。下手なカリスマに回線ジャックされて演説なんてされちゃ敵わないし。

 

「前から思っていたんだが、お前のその旧時代の知識は何処からくるんだよ」

 

「う~ん、ターミナル漁りとか?」

 

「ホントにそんな雑学残ってんのかよ……」

 

 もちろん残っていない。だが前世の知識なんて言えるわけもないので仕方ない。

 そうだな、ソーマにならこういう言い訳が効くかな。

 

「まあ、お歴々って旧時代産まれの人が多いからね。仲良くなって雑談するといっぱい聞いたりするワケだね。意外と面白いし、ソーマも気になるなら支部長とか榊博士に聞いてみれば?」

 

「……」

 

 おお、酷い顔してる。眉間のシワがすごいことになってるな。

 明確な虐待はしてないと思うけど、まあ父親として十分な役目は果たしてないだろうから当然かもしれないけど。

 うーん、ヨハンさんとソーマが仲良くなってくれると私としてもやりやすいんだけど、やっぱり難しそうかな。

 

「ソーマさ、これはお節介だけど、生きてるうちに話せるだけ話した方がいいよ。何を考えてとか、実際に何があったとか、そういうのは実際にその時を生きた時しかわかんないんだしさ」

 

「……どうせろくでもない理由だ」

 

 眉間を揉みほぐしながら目を合わしても、不貞腐れた様な態度をとるソーマだけど、コレで怒って部屋を出ないあたり、相応以上に気を許してくれてるらしい。

 

「かもね。でも、ソーマだって命令に従うのは、人類のために戦ってるという一点については理解があるからでしょ?」

 

「……」

 

「ま、ソーマの人生だし、好きに生きたらいいと思うけどね。ほら、口開ける」

 

「……ああ」

 

 これ以上言ってもしょうがないので、口の中にクッキーを押し込み、糖分で強制的にβ-エンドルフィンを分泌させて落ち着かせてやる。

 たくさん喰らうといい、これが貴重な砂糖による幸せホルモンパワーだよ。

 

「……美味いな、コレ」

 

「でしょ? アメリカのは甘すぎるモノが多いんだけど、クッキーは頭脳労働に沁みる甘さで丁度いいんだよね」

 

「なぁ」

 

「んー?」

 

「ニーナとエリックは、人と距離を詰めるのが上手いだろ。アリサみたいなやつと上手くやるにはどうすればいいと思う」

 

 思わず口が開いてしまった。

 ソーマがこういうのを気にするのはもっと大人になってからだったはずだけど、エリック君にあてられたのかな、それか私との関係性から来る違いかな。

 

「ソーマはやっぱり人間だねぇ」

 

「うるせぇな。いいから教えろよ」

 

「教えてくださいでしょ? まあいいけど。

 私的な見解でいいならだけど、今は無難に仕事をこなすのがいいんじゃない? 多分そのうちやらかすから、その時に余計なこと言わずに手伝ってあげたりするのが根が真面目な子には効くよ。

 人たらしみたいなのはユウ君とかがやるだろうから、狙わない方がいいね、ああいうのはコツがいるって言うか、才能がいるから。

 ソーマみたいなタイプは実績で信用を買うタイプだから、短期的に仲良くなるんじゃなくて長期的な目で関係構築するのが向いてると思うよ。

 そのうちユウ君がアリサちゃん連れて任務誘ってくるだろうし、とりあえずはその時二つ返事でOKしてあげたらいいよ」

 

「おい、なんでやらかすなんて分かる。会ったことないんだよな?」

 

「生真面目な性質、精神科医が同行してる、周囲から浮きそうな言動が目立つ女性。役満みたいなもんでしょ」

 

「……」

 

 おかしい、頼られたからちゃんとしたアドバイスをした筈なのになんていうか、「ドン引きです」って目を向けられている気がする。

 なんだよ、打算だらけのコミュニケーション取りやがってみたいな顔するなよ。うるせぇよ。こっちはそうやって普段から頑張ってるんだよ。可哀想な奴を見る目でこっちの頭無言で撫でるな。

 

「……」

 

「……どうせ性悪ですよーだ」

 

 にしてもそろそろ蒼穹の月か、準備しなきゃな。




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エンディングに影響はないですが調査です。この物語の最後の予想は?

  • アーク計画成功。
  • アーク計画失敗。
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