最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
リンドウさんに急かされて歩くこと数分、ユーバーセンスの感覚を頼りに物陰から顔を覗かせれば、オウガテイル1体が呑気に喰事をしている所だった。てか何喰べてるてんだアレは。眼を凝らせば植物のような物が見える。......ハーブ? だろうか。たしか回復錠とかを回復錠改とかに合成でアップグレードする際、必要なアイテムだったと思う。
なんでも喰べる性質とはいえ植物まで喰ってるとは思わなかった。
それはともかくとして、今オウガテイルは喰事中で、私の神機が【ナイフ 序】であることから、上手くいけばゲームで言うバックスタブが決めれるはずだ。
そう考えて、慎重に足音を立てないように近づく。
頭は角度的に狙えないため、武器になるだろう尻尾を根元から切り落とそうと、右袈裟斬り──ゲームで言うところの□ボタン1の動き──を繰り出せば、尻尾の根元約半分の所で止まってしまう。慌てて力づくで抜き取り、バックステップを踏む。
「固すぎじゃない?」
文句を言いつつオウガテイルを見やれば、斬られたことに怒っているのか、咆哮を上げた後に尾針を飛ばそうとするモーションに入った。
普通なら横に避ける所かもしれないが、前に突っ込む。尾針が当たる直前に前方へとステップを踏み、頭を下げてやり過ごす。
ステップの勢いを殺さず、神機をオウガテイルの頭蓋目掛けて刺突する。オウガテイルは尻尾を振り回す予兆が見えたので、神機がオウガテイルの頭蓋に突き刺さったまま、力任せに捻り、
会心の手応えを感じ、最後の反撃をくらわないように、念の為バックステップで距離を取れば、リンドウさんが肩を叩いてきた。
「おつかれさん。初めてとは思えない動きだったな、もっとワタワタするもんだと思ってたんだが」
「ありがとうございます。夢中に動いてただけです。それにリンドウさんの神機みたいに、一撃で両断できるかと思ったんですけど、中々上手くいかないものですね」
「俺のはロングブレードで切断に特化してるからな。お前さんのショートブレードみたいな刺突を捨てた結果さ。まあ、一長一短ってやつだな」
なるほどなぁ。と心の中でメモをする。
斬撃、打撃、貫通とあった物理属性はこの世界ではこういう形で表出するらしい。
ショートブレードを使うならやはり
リンドウさんに質問しながらも、倒したオウガテイルを神機で捕喰し、ミッションは無事に終了した。何やらオウガテイルを捕喰すると空腹が紛れる気がする......?気のせいかな?まあいいや。
オペレーターを務めてくれたサクヤさんからも、初めてなのに動きがやはり良かったらしく、ベタ褒めしてくれたので気分が上がる。
そのサクヤさん曰く、帰投用のヘリは相乗りらしい。
乗っているのはツバキ隊長と同じ第1部隊のソーマ君らしい。え、ソーマ君? 2071年に18歳だったってことは今は何歳だ......? 12.3歳? わ、若すぎる......あまりにも過酷な現実。
リンドウさんも微妙な顔をしながら、ビックリすると思うが、変な反応はとらないでやってくれ。なんて言ってくる。
いきなり原作知識ありきで話す訳にもいかないので、一応人となりをリンドウさんに聞いておく。
褐色の白髪で、私より年下の子供、しかし戦闘能力は普通の神機使いよりは数段上。ぶっきらぼうで周りから距離をとりたがっていて、ツバキさんやサクヤさんと共に心配している......なるほど。
「おい、先に言っとくけどあんまりグイグイいくなよ? ソーマとはじわじわ距離を詰めるようにしねぇと喧嘩になっちまうぞ」
おそらく目を輝かせていたのが分かったんだろう。釘を刺されてしまった。ショタソーマ君は絶対に可愛いと思うんだけどな。妹の次くらいには可愛いと思うけど、まあ、そういう事なら仕方がない。
「......わかりました。気をつけますね」
不承不承という感じで頷けば、リンドウさんは笑いながら、仲良くしてやってくれといって、私の肩を軽く叩く。
そうこうしてる内にヘリがやってきた。
中にはツバキ隊長とソーマ君が、互いに対角線になる様に乗っていた。ツバキ隊長はタブレット端末でなんか読んでるし、ソーマ君はフード被って外を見ている。なんか空気悪くない? いや、どちらも静寂を苦としないタイプなんだろう。これでは中々距離が縮まらない訳だ。
しかし、私は知っている。
ソーマ君に対して必要なコミュニケーションとは、押してダメなら押し倒せであるということを。
「ツバキ隊長、お疲れ様です。あ、リンドウさんはツバキ隊長の隣へどうぞ。フードの人! 隣失礼しますね!」
ツバキ隊長が返事をする前にまくし立て、ソーマ君の隣へと座る。
第一印象は大切だ。だが、グズグズしていても拒否されるのが目に見えている。なので、拒否する間もないくらい突っ込む。
リンドウさんとツバキ隊長が目を見開いて驚いているが、私がやりすぎたと思ったら、どうせ止めてくれるだろう。
「私の名前は加納ニーナ、第1部隊に昨日配属されました! よろしくお願いします! 貴方は?」
「......ソーマ」
「ああ、君がソーマ君! リンドウさんから聞いてます! 私より年下なのにすごい強いらしいですね! 凄いです! 神機は何使ってるんですか?」
「......バスターブレード」
ソーマ君が自身の神機を指さしながら、すごい顔を顰めている。初めて見た理解できない存在みたいに私を見てくる。多少の心苦しさを感じるも、どうせなら仲良くなりたいことだし、まだまだ詰めさせてもらおう。
「バスターブレード! そんなに大きいのを振り回せるんですか!? 凄いですね! 私はショートブレードなんですけど、まだ上手く扱える気がしなくてですね、あ! そうだ私今日初めての実戦でオウガテイル倒してきたんですけど、ソーマ君は今日どんなアラガミを倒してきたんですか?」
「シユウとヴァジュラだ、もうい」
「シユウとヴァジュラですか! ヴァジュラの方はアーカイブでみました! 極東周辺でトップクラスに危険らしいですね! そんなのも倒せるなんて凄すぎます! あ、でもシユウは初めて聞きましたね。ツバキ隊長! シユウってどんなアラガミなんですか?」
ソーマ君が会話を無理やり切りそうだったので、食い気味に繋げる。
それにこれ以上は辛そうだったので、1度ツバキ隊長に話を投げて休憩させてあげよう。
「ああ、シユウというのは人型のアラガミでな、硬度の高い長大な翼手から格闘攻撃、及びエネルギーの放出による攻撃をしかけてくるアラガミだ」
「なかなか手強そうなアラガミなんですね......勉強になります!」
無論知っているし、ゲームでは何度もお世話になった訳だが、あくまで新人なので、知らなかった体裁を保つ為に大袈裟に関心しておく。
以降も褒め言葉のさしすせそを適宜混ぜつつ、ソーマ君に会話を振れば、ああ。とかそうだ。とかうん。とかめんどくさそうではあるが返してくれる。
きっと、もうなんでもいいやとなってる状態ではあると思うが、今後もこのだる絡みをしていけば、普通にお喋りができる日も遠くないだろう。
私の主観では楽しくお喋りをしていれば、あっという間にアナグラに着き、ヘリから降りると、ソーマ君はスタスタと足早に去ってしまったので、背中に大きく声をかけて手を振っておく。
ソーマ君が見えなくなったタイミングで、リンドウさんに頭を小突かれた。普通に痛い。
「グイグイいくなって言ったろうが」
「いやぁ、でも、このまま絡み続ければ多分1年位で仲良くなれそうな気がします」
「その辺にしておけリンドウ。案外歳の近い者同士ならば、あれぐらいのがいいのかもしれん」
流石ツバキ隊長、分かっておられる。
リンドウさんも姉上には逆らえないのか、肩をすくめた。
話が一区切りしたところで、ツバキ隊長が改めて私に向き直った。
「それよりもニーナ。初めての戦闘はどうだった?」
「まだ1体としか戦ってないのでなんとも言えませんけど、思ったより怖くはなかったですかね」
「オウガテイルの尾針は突っ込んで避けて、尻尾の振り回しは飛び上がって避けて、って具合でしたからね。コイツ相当肝が据わってますよ」
まるで曲芸でも見てるのかと思いました。なんて呆れ顔で言うリンドウさんに、瞠目したツバキ隊長がまじまじと私を見つめる。
何となくにへらと笑って誤魔化そうとしたらデコピンをされた。
「当たらないのは最善だが、シールドの存在を忘れるなよ」
......遠距離神機使いの人に言われるとは思わなかったな。
痛む額を擦りながら返事をすれば、よろしい。と微笑んでくれる。当たり前だがやはり美人だ。飴と鞭の使い方も20そこそこ程度の歳の癖になのにとても上手に使ってくる。これもカリスマと言うやつだろうか?
「そうだ、任務明けで済まないが、これから榊博士の研究室に顔を出してくれ。なんでも、この前のメディカルチェックの結果の説明がしたいらしい」
「わかりました。じゃあ、私は神機預けたらペイラー榊博士の元へ向かわせてもらいますので、ここら辺で失礼しますね。リンドウさんも! 今日はありがとうございました! 明日もお願いします!」
「おう、おつかれ。明日も0800に同じ場所に来いよ」
スパッと挨拶をして神機格納庫に神機を預けた後、研究室へと向かう。
ものの数分でたどり着き、丁寧に3回ノックをすれば入室を促されたので、遠慮なく入らせてもらう。
「失礼します、加納ニーナ新兵です。メディカルチェックの結果説明の為に呼ばれていると聞いています」
「よく来てくれたね! 改めてペイラー榊だ。私の隣に居るのが」
「極東支部の支部長をしているヨハネス・フォン・シックザールだ。ああ、私は見学者のようなものなのでね、居ない者として扱ってくれて構わない」
「し、承知しました」
予想外の人物が居たため思わず敬礼を取ろうとすれば、手で制された。居ない者として扱えといってもそれ無茶では? と思うが口に出さないのが懸命だろうし、黙って榊博士の方を向く。
榊博士は本当にシックザール支部長を居ない者として扱うようで、複数のモニターに目を向けながら、手元のキーボードを忙しなく叩いている。
さて、と一区切りして榊博士から結果の告知前の質問が飛んできた。
「以前言ってた酔いや空腹はその後どうかな?」
「酔いの方は慣れてきました。イメージ的には、どちらか片方に焦点を合わせれば酔いにくくなってる感じです。空腹の方はあまり改善は見られません。常に腹3分目? くらいな感じですかね。あ、でも今日の戦闘でオウガテイルを神機で捕喰した際、微かに空腹感が薄れた気がします」
「ふむ、やはりそうか」
どうやら榊博士にとっては予想通りの結果らしい。
「まず君の適合率に関して話さしてもらおうかな。
君の適合率は一般神機使い達に比べて遥かに高い。
現在の神機使いに投与されている、P53偏食因子の中でも歴代最高の値である雨宮リンドウ君。彼の次に高い値だ」
榊博士がモニターアームを1つ、私の方に向けて画面を見せてくる。内容としてはゴッドイーターの平均値とリンドウさんの値と私の値の比較だった。
たしかP53偏食因子は適合率の高さが強さに直結する......とまではいかずとも身体能力等のブースト値が決まるんだったかな。
リンドウさんが平均的なゴッドイーターより3.2倍位の適合率を誇ってるわけだから、私も凡そ3倍位は身体が強化されてるのか。
「とはいえ、先のオウガテイル討伐時の君のモニターを見ていたが、適合率の高さ程の身体能力は発揮されていなかった。そして、検査当日君に質問しながらさせてもらった、あのメディカルチェックで分かったことが、このモニターに映ってる通りだ」
そう言った榊博士が、もう1つモニターを吊るアームを此方に向けた。
そこには人型に数多くの細かい線が入っていて、6割ほどが灰色から緑色に変わっており、特に頭付近は大体緑色に変わっている。
......つまり?
「つまり、君の身体の神経の約6-7割、特に頚部から頭部にかけては驚異の87%がオラクル細胞に置き換わっている。君の異常に湧いてきた喰欲、そして新たな感知能力ことユーバーセンスと、その過剰情報の処理。それら全てを可能にしてるのがコレだろう」
それって本当に人間って言っていいんだろうか? というかアラガミ化の可能性が高そうで怖い。
というかまだ試していないけど、活動中のアラガミを捕喰した際のバーストモードが怖くなってくる。
不安が顔に出ていたのか、榊博士が感心したように眼鏡をクイッと上げた。
「ふむ、もう危険性に気づけたのかな? どの程度まで察してくれたのかは分からないが、我々研究者側から君の状態を簡単に説明しよう。
加納ニーナ君、現在の君の状態はP53偏食因子によって制御していたオラクル細胞が、過剰に君の身体を侵食しているような状態だ。ああ、アラガミか人間かでいえば、間違いなく人間だから殺処分なんてことにはならないから安心したまえ。
そして、我々が君に求めることは、基本的に他の神機使いと変わらないし、制約が増える訳では無い。ただ、その特異な身体状態は、他では見れない有意なモノだから研究にはできる範囲で協力してくれ。と言った具合かな。
さて、なにか質問は?」
とりあえずはアラガミではなく、人扱いなのが聞けただけで正直十分すぎるかな?
「いえ、今思い当ることは特にないです」
「そうか、ではヨハン。君の番だよ」
そう言って榊博士がシックザール支部長に声をかける。
やはりただの見学ではなく、何かしら用があって居たらしい。
壁際に立っていたシックザール支部長は、咳払いをして話し出した。
「君も知っていると思うが、この極東支部周辺でアラガミが急増している。
現状は大きく討伐部隊の第1部隊。防衛部隊の第2、第3部隊のみでゴッドイーターを編成しており、その中に細々とした偵察部隊や巡回部隊が存在している。
そして来年には捜索及び回収を目的とした、第4部隊を新たに増設する予定だ。職務内容は言った通り捜索と回収。つまるところ
話の流れに、凄い嫌な圧を感じるのは私だけだろうか。
なんだろう、こう、お前がやるんやでと言われてるような気がする。
「加納ニーナ君、話の流れから察してはいるとかもしれないが、君には1年後にこの第4部隊を率いてもらいたい。それまでは第1部隊にて腕を磨き、第4部隊に欲しい人材を何人か選抜してくれ。希望を通すと断言は出来ないが考慮しよう」
どうやら配属2日目の新人に、1年後の栄転(笑)を宣告してくるブラック企業があるらしい。