最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
月が綺麗ですね。
感想、評価、ここ好き、誤字報告いつもありがとうございます!
アリサの錯乱、同一区画での討伐チーム被り、
この前エイジス島を覗いたのがバレたか? あそこで建設してるもんはロクなもんじゃないことまでは分かってるが……なんにせよ、俺はフェンリル上層部の連中に目を付けられて誅殺されようとしてる。それだけが確かなことだ。
そんで、俺がこの状況を生き残る。たったそれだけで上の連中の策を圧し折ることができる、ハズだ。
既に女神像みたいな面した青白いヴァジュラ神族の新種は倒した。
外の戦闘音が止んでる辺り、ソーマはしっかり全員を統率して撤退したらしい。ニーナが居たなら外も逆転の目もあっただろうが、無い物ねだりしてもしょうがねぇ。
俺の方はこの黒いヴァジュラさえ倒しちまえば、区切りがついてなんとかなる筈だが……
「チィッ! 全性能がヴァジュラの強化版かよ! 新種のバーゲンセールだぜこりゃ」
この前ぶっ殺したウロボロスは果てが見えないって意味でキツかったが、コイツは攻撃する隙は少ねぇし、身体は硬ぇし、動きも速いしでこの閉所での戦闘はなかなかキツイものがある。
本当なら助けが来るまでどっかに息を潜めたいところだが……生憎アリサがパ二ック起こしたときに道は塞がれちまったしなぁ。ここで俺が死んじまったら無駄に気負わせちまうだろうし、なによりサクヤを残して死んでたまるかっつうの。
「……気合でどうにかするしかねぇ」
雷の攻撃方法が多彩になったくらいで基本行動はヴァジュラと同じだ。髭面が軟そうなのも変わらねぇが狙いにくさは段違いだ。
他の所をチマチマ削ってお帰り願うとするか。
「おら、よ!」
スタングレネードを目の前で炸裂させて目くらまし、前足を神機で捕喰して神機解放、疲れた体のどっから湧いてくるのか分らんがこれでエネルギーはチャージ出来た。前足を捕喰されて気が立ったのか、雷を纏い出しやがる。どんなもんが来るかわからんから一旦壁際まで引いて様子を見る。
「~~~っ!」
壁に寄った瞬間、大気が爆発したのかと見まがうほどの放電だった。ヴァジュラも似たような行動をするが、次元が違うな……。マトモに当たってたら一撃で死んでただろう。
放電を終えた直後だってのに、すぐさま飛び交ってきやがるのをすれ違い、壁を頼りに上を取る。
ヴァジュラ神族はたしかマントが雷を扱うにあたり重要な器官だったなよな。じゃあ、このマントをぶった切っちまえばマトモに雷は撃てないだろ!
「ぜぇい!」
神機解放のエネルギーをチェンソー稼働にフルで回す。随分硬いマントだが、ここまでやりゃ斬れねえモノはないんだよ!
唸りを上げた神機がマントを引き裂く。相変わらずコイツはいつだって頼もしい相棒だぜまったく。
マントを引き裂き着地すると、黒いヴァジュラは随分お冠のようで活性化したのが分かる。
上がるだろう攻撃速度に注意しようと、シールドを出せるようにしつつ、一挙手一投足を見落とさないように注視した。
「そりゃあ、ズルだろ」
一瞬で、目の前に居たはずのコイツはぶっ壊したマントの中から展開してきた
とっさに盾を出しつつ身を捩ったが、腕輪を掠めたらしい。神機を唯一制御できる腕輪の破損、すなわち、適切な処置が行わなければアラガミ化まで一直線なわけだ。
こっちの焦りを気にも留めず、大口を開けて噛みつこうとしてくるクソ野郎。
死ぬかどうかは賭けだが、自分の神機に喰われるよりはマシだろ。
「そんなに喰いたきゃくれてやる。しっかり味わいやがれ!」
大口開けた黒いヴァジュラに右腕ごと神機を突っ込み、最後のチェンソー機構を炸裂させる。体表は硬くても体内は柔いらしく手応えがある。
幸いにも右腕が喰いちぎられることはなかったが、体内に神機と接続していた腕輪ごと吞まれちまった。おかげで右手は皮がズルむけだ。
その甲斐あってか、やつにも相応以上のダメージを与えられたらしい。
未だ神機が体内で暴れてるのか苦悶の声を漏らしながらも、自分に歯向かってきた人間を殺そうと近づいてきやがる。
「……流石に死ぬな」
その時、俺と奴の間に降り立つ赤髪の女。
フェンリルの偵察上衣、ボロボロになったバックパックとシユウ神族の素材から作られたショートブレードにバックラー。
人様のピンチに駆けつけるのは相変わらずだが、今回ばかりはもう少し早く来てほしかったぜ。
「ナイスタイミングだ。ニーナ」
「リンドウさん、意識あるなら本当は良くないですけど、アラガミ化の進行が進んでない今のうちに、左手で直に右前腕動脈に偏食因子打ってください」
投げ渡された偏食因子を言われた通りに打ち込む。
普段は腕輪から入ってくるから感じなかったが、ドロリとした粘性の液体が血管からアラガミ化しかけている右手に行き渡る。
俺が処置をしてる間に、コイツは黒いヴァジュラの刃翼をかいくぐり、右目をショートブレードで切り裂いた。
体内で神機が暴れてる中でニーナとも戦うほど馬鹿じゃないのか、アイツは教会上の獣道から撤退していく。
ようやく帰ってくれたか。あのレベルと戦うなら遠距離の援護は必須だな……
「リンドウさん。意識はありますか?」
「ああ……少しなら動けるさ」
「よかった。助けを待ちたいでしょうけど、一旦ここを出ます。通信機器は邪魔なので一旦預かりますね」
ニーナは俺を背負い、バックパックに入ってたロープで固定した後、アリサが崩した天井の瓦礫の上の方にある隙間から教会を出た。
なるほど、どうやって入って来たのかと思えば、随分苦労してくれたらしい。
教会を出た後も、そのまま俺を背負ったまま歩き続ける。
向かう先は鉄塔の森方面か……?
どうやらアナグラから離れるつもりらしい。なにやら複雑そうな顔をしているがどうしたんだか。
「状況はソーマから軽く聞いてます。なにやらかしたらこんな目にあうんですか? 『
「まさか、まぁちとキナ臭かったもんで深りを入れたんだが……随分シャイで秘密主義だったようでな。自身のことを暴いた奴は許さんらしいな」
「だから迂遠に止めてたのに、我慢できなかったんですか?」
「人工アラガミなんて意味わかんねえもんだ。見過ごせるわけもねえだろ?俺らはゴッドイーターだぞ」
思わず語気が強くなっちまう。
エイジス島で見たのはウロボロスなんて目じゃねえドデカイアラガミだった。コアが無かったのにどうやって体組織を維持してるのかはわからねえが、まぁお得意の科学力って奴だろうな。
あんなんが暴れ始めたとしたら、考えたくもねえが遠距離神機使いぐらいしか戦えないだろうし、遠距離だけでチマチマ削ったってジリ貧だろうしな。
「そうですか……ちなみにリンドウさんは向こう半年くらいはアナグラに帰れませんけど、覚悟はできてます?」
「……あまり考えたくなかったんだが、
「ソッチ側っていうかヨハンさん側ですよ」
ぴしゃりと言い切るニーナに思わず体が強張るが、ただ殺そうってんなら、どう考えてもあの黒いヴァジュラの目の前で殺させた方がよかったはずだ。
俺を助ける意味がニーナの中にあったわけか……。
「ならなんで助けた。あのまま俺が死んどいたほうが支部長としちゃ都合がイイだろ」
「私は本当に今回のリンドウさん暗殺計画を知らされてないんですよ。別の『お遣い』をしてたらたまたま第1部隊がプリティヴィ・マータ、青白いヴァジュラに囲まれてるのを発見したので、助けてあげただけです。
状況から見て、ヨハンさんの思惑としてはリンドウさんがアナグラの面々と接触できず、自分の計画の邪魔にならない形だったらなんでもいいはずなので、ここでリンドウさんを生かしたまま逃がすのは裏切りじゃないし無駄な殺しはしない主義なので」
つまるところ、コイツの気まぐれで俺は生かされてるわけか。最近の女は強かすぎて手に負えねえな……。
ソーマも大層な女に捕まったもんだぜ。一周回って同情するなあオイ。
「俺にアラガミ防壁のない何処かでひっそり暮らせってか?」
「神機もないんだからどうせ何もできないじゃないですか。
まあアラガミ化進行を抑える偏食因子は持ってる分はあげるので、後は鎮魂の廃寺付近を探索してみたらいいことありますよ。一応アラガミ化の進行が極遅い前例も知ってますし、リンドウさんの適合率高かったから生き残れる目算は高いと思いますよ」
生きてりゃ何とかなるとはいえ、随分と適当なことを言ってくれるぜ。他人事だと思ってやがるな?
……実際、俺が出来ることはもうないのかもしれんが。
今こんだけべらべら話してるうちに聞くだけコイツの真意を確かめとかないといけねえ。
「なんであんなモノをエイジスで作ってるんだ」
「アラガミの存在しない世界を作るんですよ。その為のパーツですね」
物は試しに聞いてみた核心だが、本当に隠す気がないな。にしてもまた随分とデカく出たもんだ。
「どうやって」
「終末捕喰っていうやつですね、オラクル細胞は地球の再生機構ですから、地球を丸ごと喰わせて地球をリセット。私的には人類誕生以降の地球環境を作れば向こう2000年弱はアラガミが再生しないでしょうから、既存の人類は安寧に暮らせる試算です」
「今生きてる人間も喰われちゃ意味ねえだろ」
「神機使いとその家族、有能な技術者と研究者を資材と知識共にロケットで打ち上げます。
終末捕食が終わった地球2世に再度降り立つ感じですね」
目をキラッキラに輝かして語る夢想。
混じりけなく『ソレ』が正しいと思って突っ走るバカの面をしてやがる。
どうだ! 素晴らしいだろう! と手を広げて演説すればある程度の連中は靡きそうな甘い考えだ。
そして、倫理観の欠如した考えでもある。
「……人類を選定するんだな」
「そうですよ。リンドウさんも私の指示に従っていただけるなら、次世代に行ってもらいたいんですけど……どうでしょう?」
「誰かの席を奪ってまで生き残ろうなんざ神機使いのやることじゃねえよ」
「アハハ、そういうと思いましたよ。じゃあ別にロケット乗らなくていいんで、邪魔だけしないでください」
コイツの中じゃ、見たことのない世界中の人がどれだけ死のうが、見たことのないまだ生まれてない未来の人を未然に救ってるから±0どころか若干プラスなんだろうが……だとしても顔見知り全員救えるわけじゃないだろうが。
「……邪魔したらどうする気だ? 殺すか?」
「ハイ。あぁでも、心苦しいですけどサクヤさんとツバキさんを殺すとかのが効きますか?
私、ちゃんとやりますよ。人を殺すなんて今更ですし、この計画で何千万人と死ぬんだから一人二人は誤差なので」
「アラガミのいない世界ってのはそんなに大事かよ……!」
「大事にきまってるじゃないですか。
私の命より大事なアリアが自然に生きて! 普通に苦労して! 幸せに死ねる! ……この世にそれ以上大事なことなんて、私の中には存在しないんですよ」
サクヤと姉上の名前を出されて思わず熱くなったが、ニーナの悲痛じみた声に冷静になる。コイツに人の心がない訳じゃない。むしろ家族思いだからこその行動。家族思いすぎてイカレちまってるが……こんなこと妹ちゃんは喜ばんだろうに。
「ニーナ……人を殺す理由に、妹ちゃんを使うなよ」
「私がそうしたいからするんです。
アリアの為を想って実行するこの愛は、周りからも、アリアからも理解はいらない。お節介でも、望まれてなくても、これでアリアの人生の障害を排せるならやります。
わたしもリンドウさんを説得できるとは思ってませんけど、リンドウさんも私を説得できるなんて思わないでください」
止まらんか。そこそこよくしてやったつもりだったが、所詮職場の先輩程度。こういう役割はソーマか妹ちゃん自身にやってもらわんと意味がない、か。
「……そうか、じゃあ確かになんにも出来そうにないな。
ニーナここまででいい。ここからは一人で行くわ。
お前は捜索隊の連中をかく乱でもしといてくれ。バレねえ様に生きてくよ」
「そうですか?
じゃあ、お別れですね。……今までお世話になりました」
背負っていた俺を下ろし、深々と頭を下げてくる。まったく、脅してきたかと思えば礼はつくしたりと忙しいやつだ。
悪いヤツじゃないのに、なんで俺らは分かり合えないんだろうな。
「この世界に希望を持たせてやれなかったのは先達として不甲斐無いが……ニーナ。多分だが、お前ソーマと喧嘩するぞ」
「アハハ! そんなことわかってますよ。ホントに、みんな頑固な馬鹿ばっかりですから。でも、本音を話せる最後の機会になるかもしれませんから、少しだけ楽しみにしてるんですよ」
そう言って、ニーナは笑って背を向けた。
さてと、俺にできることは一体何があるかね。
これにて蒼穹の月はおわります。
物語も時間軸にすると大体1-2ヶ月位で本編ストーリーエンドですか。
仕事の現実逃避中に書いてるので、ガチで更新頻度不安定になるかもしれんけどご了承ください
エンディングに影響はないですが調査です。この物語の最後の予想は?
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アーク計画成功。
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アーク計画失敗。