最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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評価100件も突破し、感無量って感じですか。

愉しいデート回です。
偶には分からせねぇといけねぇからよ。


4-7

 アタッシュケース上に格納された神機を足元に、フェンリル式悪路踏破用行動車両──天井の無いジープみたいな車──で私はソーマの提案で浜辺付近のドライブデートに出かけていた。

 旧時代は日本海はキレイだけど太平洋は汚い。なんてイメージがあったけど、ここは太平洋側の浜辺だけど意外とキレイに見えるもんだね。

 これも人類が減ってごみが減ったからなのか、オラクル細胞がゴミを喰いまくってるからなのかはわからないけど。

 

 大車の暗殺後、任務に来るように調整されていた現地の神機使いと合流した私は何食わぬ顔でアナグラに戻った。

 ヘリのロストに関しては大車の心中テロのようなものとして処理されていたし、ヘリが本来本部に到着する予定とほぼ同時に回収されたので、私は行方不明扱いにもなってなかったので特に誰かを心配させることもなかったと思う。

 にしても予想より2日ほど早く合流できたのは幸いだった。

 普通にお腹がペコペコだったので、その辺のハーブを喰うかちょっと真剣に悩んでたからね……。最近は考え事が多いからか、それともシンプルに働きすぎなのか、燃費が悪くなったように感じる。

 

 体型は鏡で確認する限りばっちり維持できてるし、髪艶も落ちてないから神機使いの身体ってすごいなぁ、と実感するところではあるんだけれどね。

 

 けどどうやら大車が死んだことで、犯人が死んじゃいました。ちゃんちゃん。で終わらせた報告書を昨日になってようやく見たらしいソーマはなんで報告しねぇんだよ。とばかりに不貞腐れちゃったけど。

 

 私としてはこうしてキレイな景色を見ながら風を感じつつドライブ。イイ休日でストレス発散! って感じで休めてるからありがたいんだけど、ソーマはずっと仏頂面のままだ。まあニコニコしてるソーマは解釈違いだけど。

 

「風が気持ちいね~。そういえばなんか全然アラガミの気配感じないけど、事前に掃除でもしてくれたの?」

 

「……まぁな。サクヤが少し持ち直したから、リハビリがてらの掃除につきあって貰った」

 

「ひゅ~! ソーマってば出来る男! かっこいいねぇ!」

 

「茶化してんじゃねえよ」

 

 機嫌取りとばかりに話しかけて、腕をうりうりと突くと眉をひそめながら、苦言を漏らす。

 その様子があまりにも可愛らしくて笑えてくる。これがキュートアグレッションってやつかな? まぁでもやりすぎは注意だね。男っていうのはどんな人間でもプライドが高いし。……これは男も女も関係ないのかな? 少なくとも私は高いしなぁ。マウントなんて取れば取るほど気持ちいし。

 実績がちゃんとあると一周回って嫌味にならないから、実績がないならやっちゃダメなことではあるけども。

 

 まあ、なにはともあれ、掃除してくれたっていうのなら、神機を使う機会は無さそうだ。

 

『ユックリシアダッ! 蹴ルナ!』

 

 勝手にしゃべりだそうとする神機を脚で小突いて黙らせる。私にしか聞こえないとはいえ、不用意に話しかけないでほしいよね。どうせあと数か月の関係なんだからさ。

 

「……? 珍しいな、足元が邪魔なら後ろに置くか?」

 

 普段から神機を丁寧に扱っていると思われてるからか、私が神機の入ったケースを足蹴にするのが意外に思ったのか気遣ってくれたソーマに首を振る。 

 

「いーよ、足組み替えた時に当たっちゃっただけだから。……別に脚くらい運転終わればいくらでも見ていいから今は前見なよ」

 

「……ユーバーセンスは今日も絶好調かよ」

 

 海を眺めながら話していれば、チラチラ視線を感じていたので指摘したら気恥ずかしかったのか皮肉が返ってくる。まあ生足出してたら見たくもなるよね。わかるよ。

 ショートパンツじゃなくてスカートのがうれしかったかな。あんまりフリフリしてると、情報が多くて鬱陶しいから好みじゃなくてこんなにしてきちゃったけど。

 

 上は流石にパーカーとかじゃなくてロンTに革ジャンを羽織ったパンクスタイルなわけだけど、ソーマも別に何時もより身ぎれいにしてるくらいだしお相子だろう。

 いや、デートは女が気合いを入れるのが旧時代からの習わしだしお相子じゃダメか……? 髪くらいはと思って編み込もうかと思ったけど、どうせ大した感想を貰えないだろうからやめて後ろで一つくくりにしてるだけなんだよなぁ。

 それに服飾って意外と高価な嗜好品だし……。

 なんでサクヤさんとかアリサちゃんがあんなにエロいお洒落な格好してるかっていうと、あのレベルの布をふつうの服程の量を用意すると滅茶苦茶お金飛ぶからだし……材料が高いのはこの崩壊世界あるあるだけど、食料、燃料、工業材料のさらに次に集められる嗜好品材料は高いうえに存在がそもそもなくて、金があっても手に入れられなかったりとかいう裏事情があったりもする。

 だから特異点に着せてたあのウエディングドレス、素材とか技術費も考慮して、仮に正規発注があったと考えると実は滅茶苦茶高いのだ。多分職に就けてる外部居住区の人の1年分の生活費くらいはする。

 

 まぁそういう理由で薄着が流行るんだけど、ああいう格好に慣れてくると、非日常感とか出てきててハマっちゃう人もいるから、あの二人はそういうクチなんだろうけどね。

 

「そういえばソーマはファッションの好みとかあるの? 好きなタイプとかフェチでもいいけど」

 

「急になんだよ」

 

「いやぁ、せっかくだし次の機会があれば参考にしてあげようかなと思って。あ、アリアの教育に悪いえっちすぎるのはダメだからね?」

 

「……報連相が出来る女」

 

「かっちーん。ここで自分の性癖も言えない男に育てた覚えはないよ」

 

 何なんだこのソーマとかいう男は、偶にはご褒美をやろうとチラつかせたら嫌味で返してきたぞ。都合の良い女の扱い下手くそか? こっちはクラシカルサンタ位は着てやる気だったのにさぁ。

 まったくもって解釈一致だよどうもありがとう。馬鹿が。

 

「育てられた覚えはねぇよ。そういうお前はその、どんなのがタイプなんだよ」

 

「ソーマだから今ここに居るんですけどね! 頑張って予定こじ開けたんだけどね!」

 

「……じゃあ俺もお前に決まってるだろうが」

 

 珍しく素直に言ってくるじゃん、エリック君辺りの入れ知恵かな。

 彼は彼でセクメト倒した辺りから、地味にアナグラ内でも人気が出てきてるから慣れてるのか、それとも教育の賜物か。まあ、どんな理由でも言われて悪い気はしない。今となってはGODEATERの記憶と教養以外は微かな残渣となって消えた前世の記憶では、乙女ゲーやギャルゲーなんかは触れてなかった気がするけど、攻略の選択肢が正しかった時の反応の嬉しさってこういうのなのかもしれない。

 ズズ、と気恥しさを誤魔化すように持ってきてたボトルに口をつける。

 

「……やけに素直だね? 何かあったの?」

 

「エリックから色々言われたが、1番はこの前のお前との別れ際だ」

 

「……?」

 

 別れ際……? エリック君と最後に話した位で、他になんかあったっけ。あの時は大車に罪を擦り付けるコトしかあんまり考えてなかったから大体ライブ感で話してたんだよね。

 ああ、でもなんか心配してる風な感じのことは言われてたような……? 

 

「私なんか言ったっけ? デートしよう位しか覚えてないんだけど」

 

「お前の認識はそんなこったろうと思ってたよ」

 

「えーっと、なんかごめんね? 何が悪かったかわかんないから教えてくれない? ……この立ち位置はもう少し手放したくないし」

 

「愛することとは、互いの顔を見つめることではなく、同じ方向を共に見つめることだ」

 

「あーっと、星の王子様だっけ? こんな時代によく知ってるねぇ」

 

「ニーナにも言える事だ、これは一部好事家の書斎や孤児院を除いてこの世に『存在しない』」

 

 ソーマがアクセルを緩める。

 車両の速度が落ち、浜の砂にタイヤが沈みやがて止まる。

 ソーマはこっちを見ずに前を見たままだ。私も同じく前を見たまま固まっている。

 なるほど、そもそも私より旧時代に詳しい人はこれまで居なかった。正確に言うと、覚えている人が少なかったし、詳しい人は私が何かを知っていても、自身と同様に、加納ニーナもどこかしらで旧時代の娯楽を漁っているのだろうと、勝手に納得している人が多かった。

 

 ソーマがこういってくるということはきっとアリアが通っていた狼谷学園附属の保育園や学舎にもないことは調べが付いてるんだろうな。

 さて、バレて困ることは無数にあることがバレちゃったな。どう処理しよう。

 

「ニーナ、お前はこの前俺に自分自身を都合よく扱えと言ってきた。だが、俺は少なくともそういうつもりはねぇ。お前は勿論、妹までまあ、その、なんだ、大切にしたいと思っている。

お前の普段の感じからして、俺を気に入ってるのは本当なんだろう。だが、リンドウとサクヤみたいな、タツミがヒバリに向けるみたいなものをお前から感じない。

 

 お前が俺をどう思っていようと構わねえさ、ただ、俺がお前の見ているものを一緒に見てぇ。だから教えろ。お前は何を見て、何を考えて、何を目標に動いてる」

 

 ソーマの言葉を横で聞きながら空を見上げる。

 憎らしいほどの快晴が、痛々しく輝くお天道様が、まるで悪者の私を照らす。

 ああ、こんなポエムみたいなことじゃなくて言い訳を考えなきゃだめだな。

 

「……ソーマが何言ってるのかよくわかんないけど、私が星の王子様を知ってるのは本部に行ったときに、待ち時間の間暇だろうからって解放された書斎にあったモノを読んだからだよ」

 

「Regarde-moi」

 

「え? なに?」

 

「本部にあるのが保管されてるとしたら原典、あるいはフランス語で記されてるモノだ。そして、ニーナはフランス語を知らないだろ。なんせ大崩壊以降ほとんどの地域で極東語……日本語と英語が共用語として使われてるからな」 

 

「あ、アハハなるほど、さっきのはフランス語なんだ。意味は?」

 

「俺を見ろ、だ」

 

 いつの間にか、前を向いていたソーマは私の方に身体を向けていた。

 考えることに過集中して気づかなかったのかな。すごいや、こんなに動揺してるのはかつてないよ、親が目の前で死にそうだった時くらいかもしれない。下手な言い訳は完全につぶす形で理論武装して来てるんだ。私が普段から理屈で話してるから。仮に感情的になっても落ち着くまで二人でいられるように、こんなところまで連れ出して。楽しいデートを返してもらいたいよ全く。

 

「私は、そんなに見られたくない気分だな」

 

「お前の手をつかむ機会は環境も、心情も含めてここしかないからダメだ。それに運転が終わればお前のことを見ていいんじゃなかったのか?」

 

「アハハ、キミは本当にナマイキな子だなぁ……ちょっと、考えさせてよ。何をどう話せばいいか、私自身わかんないから」

 

一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます

  • 藤木コウタ
  • 雨宮ツバキ
  • 橘サクヤ
  • アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
  • 楠リッカ
  • 竹田ヒバリ
  • 大森タツミ
  • 台場カノン
  • 加納アリア
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