最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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「だ、第4部隊の隊長......ですか? 1年の猶予があるとはいえ、まだ私は16歳の小娘です。周りからの反発といいますか、その、私よりも適任の方がいると思うのですが......」

 

 確かに捜索、回収の任務を請け負う第4部隊であれば、私のユーバーセンスは非常に有用なのは分かる。無論、原作においてユーバーセンス、またはその類似を発揮しているのは、強化パーツによってスキルを得る主人公と、ナンバリング2番のシエルの血の力【直覚】位である為、名も出ないモブが得ていたとて、適合率が私より高い適任が出てくるとは思えないけれど、それはそれとして買われすぎだと思う。何度も言うがまだ16歳、1年後でも17歳の小娘ですが? 

 

「ふむ、随分と真面目な性格のようだな。

 アラガミによって荒廃する前の世界ならそうかもしれないが、今は一定の地位迄ならば、就くのは実力、能力があれば問題ない世界と言える世界だ。仮に問題になるほど反発が起こるのであれば、私が黙らせることも出来るからな」

 

 反対意見は実力行使で消す。と部下に笑顔で宣言するブラック企業があるらしい。

 このまま謙遜して逃げようとしたら、家族を消されそうな勢いまであるな。無いかな。ありそうだ。無くあってくれ。

 まあ、隊長ともなれば給与とかも良くなるのだろうし、嫌なことばかりではないのかな......? 労働はそもそも嫌だけど。

 

「シックザール支部長がそこまで言ってくださるなら、わかりました。1年後に私以上の適任が見つからなければ、その話慎んでお受けします」

 

「若い身にプレッシャーを与えるような真似をして済まないな。その決断に感謝する。今後も励んでくれたまえ」

 

 シックザール支部長の固い言葉に敬礼を以って返せば、榊博士の研究室から退出しようとした。

 

 けたたましいアラートが研究室、いやアナグラ中に響いていた。

 

『アラガミ防壁の一部破損を確認。アラガミ多数。出撃可能な全神機使いはエントランスに集合せよ』

 

「ペイラー」

 

 シックザール支部長が呼びかければ、既に動き始めていた榊博士が被害状況と侵入してきたアラガミの数を告げた。

 小型が15体、中型が5体、大型が2体だそうだ。そして、損壊したアラガミ防壁はどうやら私の家族の住まい付近の様だ。

 ......両親と妹が危ない! 

 

「榊博士! シックザール支部長! 私はエントランスに向かうので失礼します!」

 

「ああ、頼んだよ」

 

「武運を祈る」

 

 失礼だとは思うが、2人が話切る前に駆け出してしまった。

 エレベーターは今全てが使用中、なら、階段のが早い! 

 

 神機格納庫に向かえば、既に整備の人が再出撃の為の準備を済ませておいてくれたようだ。

 

「ありがとうございます!」

 

 お礼だけ伝えてまた走りだす。今度はエレベーターが使えたので、エントランスに着くまでの10数秒で息を整え、持ち物の確認をする。

 幸い、任務後にそのまま榊博士の研究室へと向かった為、回復錠は持ち合わせていた。スタングレネード位は欲しいものだけど、ワガママを言ってる場合じゃない。

 

「加納ニーナ新兵到着しました!」

 

「よく来た! これ以上は待たん! このメンバーで出撃する! 動きは行きながらオペレーターから伝えられる、インカムの電源は入れておけ!」

 

 ツバキ隊長の言葉に各々が装備を整える。周りにはリンドウさんとツバキ隊長、それと名も知らない旧型近接神機使いが1人と、遠距離神機使いが1人、それと旧型も旧型、ゲームでも見た事がないピストル型神機を持っている男性が1人。

 

 

「1人でも多くを助けるぞ! ──出撃!」

 

 ツバキ隊長の檄を聞いて、私を入れて6人の神機使いが、外部居住区に侵入したアラガミ掃討の為、駆け出した。屋根から屋根へと飛び移り、全員が、ほぼ一直線のルートで向かうとしても、到着まで約5分はかかってしまう。

 妹、アリアは無事だろうか......。

 心が不安に押し潰されそうになったタイミングで、インカムから音声が流れた。

 

『百田ゲン中尉と加納ニーナ新兵のオペレートを担当するシックザールだ。立場の差を気にして言葉を選んでいる場合ではないので、言いたいことは全て言ってくれ。

 今回大型2体は雨宮姉弟が、残りを君たちともう2人で掃討する。

 加納ニーナ新兵は避難民、アラガミの状態、位置、その他なんでもわかり次第報告してくれ』

 

「了解しました! 今感知している範囲では大型アラガミの種別は一体は輪郭的にヴァジュラ! もう一体はボル......蠍型をしています! 

 中型はコンゴウが2体シユウが3体! 小型はオウガテイルが10体、ザイゴートが5体です!」

 

『でかした新兵。位置は分かるか』

 

「細かい所は分かりませんが、アラガミ防壁破損部付近で大型は暴れてますが、小型中型は扇状に広がっていて、民間人が、今も多数死んで、いってます。まともに避難出来ているのは、......500m以上破損部から離れている人達だけです!」

 

 ユーバーセンスで感知出来る範囲の情報は、余すことなく全て伝えた。

 

 家族が住んでいる場所は破損部から400m弱。避難出来ていてもおかしくない位置だ。ちゃんと避難に遅れていなければいいんだけれど。

 

 焦りが顔に滲むのを自覚して、眉を顰める。

 

「おい加納、落ち着けよ。俺たちの焦りは取りこぼしに繋がる」

 

 ハッとして隣を見ればピストル型神機を持っている男性、百田ゲンがバシンと背中を叩いてくる。

 

「今のお前さんが言った情報はな、値千金の情報だ。あの情報があっただけで、俺たちはグボログボロとコクーンメイデンの狙撃に警戒しなくてよくなるし、雨宮姉弟はボルグ・カムラン、お前が言った蠍型とヴァジュラを相手にするにあたっての打ち合わせが出来るようになった。それだけで俺ら神機使いは救える民間人が50人は変わってくる。これからやる俺らの仕事は、その救えたはずの命を零さねぇようにするだけだ。わかるな?」

 

 背中の痛みと共に、百田さんの言葉が身体に染み入る。

 既に50歳は過ぎてる筈なのに、やけに逞しく見える身体は、きっとこれまでの彼の行動が作ってきたんだろう。

 会って間もないというのに、私のような新兵の機微にまで気が回せるのは、百田ゲンという男が優秀な人材である証左だと思う。

 それに、なにより百田さんの言う通りだ。家族が無事かどうかは、後で確かめればいい。私が1人でも多く取りこぼさなければ、結果的に、家族を助けることにも繋がる。

 

「はい! もう大丈夫です! 私は助けられる人を助けます!」

 

「よく言った!」

 

『気合いは充分なようだな。今他との情報共有も終わった。2人にはアラガミと接敵し次第、新兵の言う扇型に広がる被害の右側を担当してくれ。左側は防衛部隊所属の2人に、雨宮姉弟には、大型にたどり着くまでにいるアラガミ全てを担当してもらう。君達は担当地域を掃討次第、中尉は避難の補助、新兵は他の交戦地帯への援護を頼む』

 

「「了解!」」

 

 最初に会敵したのはツバキ隊長とリンドウさんだった。ザイゴートを撃ち落とし、オウガテイルを両断し、左右のアラガミに目もくれずに、防壁破損部にいる大型2体を目指していく。

 

 名前も知らない防衛部隊の2人と、アイコンタクトで散開し、私が前衛、百田さんが後衛と言うには近すぎるほどの距離から、銃撃で援護してくれる。

 

 流石神機使いの黎明期から戦っているだけあり、アラガミの移動に合わせて弾丸を前置きしていく。

 アラガミが動いた先々で、全て急所と呼べる位置に弾丸が当たるのは、正直怖くて引く。

 けれど的確すぎる援護は頼もしい。

 

 オウガテイルを2体、3体と切り伏せ、空を舞うザイゴートを地に叩き落とす。

 都度アラガミの位置を報告し、シックザール支部長のオペレートに従って、アラガミを掃討する。

 

 しばらくそんな切った張ったを繰り返せば、私の家族が元々住んでいた付近まで来た。流石にもう居ないだろうと思いつつ、つい、ユーバーセンスで家の中を知覚した。

 

 私たちからは死角となる。向こう側の壁が壊れていて、そこにシユウと、その前に棒状の物を持って壁に打ち付けられた父さん。妹を抱いて逃げようと、玄関へと走り出す母さん。

 どういう訳か、逃げ遅れていた家族の姿を知覚してしまった。

 

 数瞬、呆然としてシックザール支部長のオペレートを聞き流し、異変に気づいた百田さんから肩を掴まれた。が、しかし

 

「すいません、無理です」

 

 気が付けば走り出していた。後ろから焦って追ってくる百田さんの声を振り払い、母さんが未だ辿り着かない玄関を切り飛ばして道を開く。

 母さんの驚いたような声が聞こえたけど、無視して腕を引っ付かみ、アリア諸共、後ろから迫る百田さんに投げる。

 

 そしてその直後、時間にしてコンマ4秒後、シユウの巨体が此方に空から迫っていた。滑空攻撃。ゲームで培った知識が脊髄反射で判断してくれる。

 

 今の私のバックラー性能では受けきるなんて到底不可能。避けるしかないが、後ろに家族がいる。ゲームでは無理だったが、相打ち覚悟の捕食しかない! 

 

 アラガミの中枢(コア)などと呼ばれるのだ。グボログボロのような肉厚ならいざ知らず、シユウのように人型の薄い肉体であれば、頭から胴にかけてを喰いちぎることによるワンパンは、理論上可能な筈! 

 

 さぁ──

 

「喰事の時間だよ」

 

 イメージは一本背負い。

 シユウの攻撃が当たる前に捕喰形態で喰らいつき、喰らいつくと同時に、身体を反転し、滑空の勢いを利用して地面に叩きつける! 

 

「ぶっっっっ潰れろ!!!」

 

 しかし、如何せん滑空の勢いが強すぎた。

 シユウを地に叩きつけることには成功したが、私も家の天井へと叩きつけられ、次いで重力に従って地面へとダイブした。

 咄嗟に受け身だとか、そんなことも考えれない程の急激な視界の変動に対応ができなかったらしい。

 

 荒れ果てた我が家で、頭を打ったのかチカチカと明滅する視界の中で神機が視界に入る。

 ゲームだと捕喰したあとは多少の溜めの後、元の姿に戻っていたが、現実ではそんなことないらしい。

 それとも私の扱いが杜撰すぎたのかもしれない。

 ともあれ、私の神機は凡そ3秒ほどかけて、ゆっくりとその捕喰形態から通常の近接形態へと移行した。

 

 ──ドクン──

 

 心臓が、かつてないほどに大きく脈打つ。

 

 ──ドクン──

 

 朦朧としていた視界が、急激にクリアになっていく。

 

 ──ドクン──

 

 動かなかった身体に、再び力が入る。

 

 打った頭から流れてきた血が目に入り、視界は覚束無い。

 だが、私のユーバーセンス(超感覚)が告げていた。

 付近にコンゴウが2体。対峙するのは軽く負傷している百田ゲン中尉と、その後ろに庇われる母親と妹。

 

『全テ喰イ散ラカソウ。喰事ノ時間、ソウナンダロ?』

 

 何処かで聞いたことのあるような気のする、私の頭蓋に直接響く男の声。全然知らない筈なのに、不思議と敵ではないと確信できた。

 

「うん、アラガミは! みんな、みーんな! 喰い尽くしてやろう!!!」

 

 いつの間にかインカムがどっかにいったなとか。

 そう言えば、父さんは生きてるのか死んでるのかとか。

 こっからあのコンゴウまで、何歩でたどり着けるかなとか。

 シックザール支部長や百田さんに、後で怒られるだろうかとか。

 

 そういった取り留めのない事が、頭に浮かんでは消えて、最後にはコンゴウ2体(目の前の敵)を喰い殺すことと、妹の無事しか考えなくなった。

 

 満身創痍の筈なのに、身体が羽のように軽い。

 疲労困憊の筈なのに、思考が冴えている。

 視界不良の筈なのに、(プレイヤー)の視点を持ってるみたいにすべてが見える。

 

 コンゴウ2体、内1体はパイプが結合崩壊してる。

 

「ベリーイージーって所だな」

 

 初期武器かつ近接のみという縛りがあるとはいえ、()ならこれくらい1発も貰わずにクリア出来る。

 この高揚感が神機解放(バースト)モードだとして、体感後20秒位で切れてしまうんだろうが、深く考える必要も無く終わらせれるな。

 

「んじゃ、喰事の時間なんでな! コンゴウ2体いただきますか!」

 

 言葉と共に駆け出し、空気砲を撃とうとしている一体へと飛びかかる。

 宙を1度蹴り高度をつけて、落下のエネルギーすら力に変えて、上空から無傷のコンゴウの短い頚部を串刺しにする。

 

 衝撃に耐えかねたのか、はたまた内部で空気砲を撃つパイプに傷がついたのか、空気が奔流の様に漏れでそうになるのを感知。

 反射的に飛び退けば、コンゴウの周囲に暴風が吹き荒れるが、弱点である尻尾はギリギリ暴風域の外。それを狙い、穿つ。

 

 渾身の一突きを繰り出せば、その一撃で尻尾は本体から切り離された。

 コンゴウの絶叫は頭にガンガンと響くが、気にしていられない。

 コチラに振り向き、俺を叩き潰さんと右腕を掲げるコンゴウに、真正面から向かい合い攻撃を誘発させる。

 苦しんでるような、怒っているような鳴き声を上げながら、突進してくる。

 距離がつまり、コンゴウの剛腕が頭上から迫る。

 そしてそれに合わせてバックラーを展開し、体側へと受け流す(ジャストガード)。ゲームと現実の差異があるだろう一つ、ジャストガードはどうすれば可能か、その俺なりの答えがこれだった。

 

 剛腕が俺に当たらなくなる所までズラせば、バックラーを解除し、ナイフをコンゴウの頚部に添える。

 後は、コンゴウの勢いと、自身の力で首を落とすだけだ。

 

 ゴトリと、重々しい音を立てながらコンゴウの首と胴が離れ、その活動を停止した。

 もう一体。そう思い意識を向ければ、既に活動を停止しているコンゴウと、そのコンゴウの口に、神機ごと腕を突っ込んでいる百田さんがいた。

 




展開が早いですが、序盤でだれたくないので仕様です。
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