最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
読者の鑑みたいな人もいて高まるね。熱が。
ニーナの中で、ソーマに対する解釈違いと解釈通りが交錯する。
そういうソーマ視点になります
「考えさせて」といってニーナはアタッシュケースだけ持って車から降りた。
歩くのかと思えば波打ち際で海水を、膂力に任せて砂にかけて、砂遊びを始めた。
見るからに虚無というか、感情の抜けたツラで黙々と作っているのを俺は眺めていた。途中途中で手ごろな石を取って来いというので、手のひら大の石をその辺の瓦礫を砕いて持っていく。
石を渡せばナイフ代わりにして、水を含ませた砂の塊だったものを彫刻し、小一時間で洋城、あるいは洋館と言えるようなものを掘り出していた。
相変わらず妙なところで器用な奴だ。
ニーナの妹が作ったという手製のサンドイッチに舌鼓を打ち、ある程度考えが固まったのか、コイツはようやく本題を口にした。
「ソーマはさ、多分、私の実力を信用して、信頼してくれてるじゃん」
「ああ」
「でも、私のことは信じてないでしょ」
「盲目じゃないっていう意味ならそうだな」
「……賢いね。本当に、馬鹿みたいな意志力で、嫌になるような運命力だ」
儚く微笑むコイツの言葉に俺らの関係性が変わる気配を感じる。
ここが俺とニーナの今後を決める日になる。俺からすればこれはポジティブな意味だったが、ニーナからすれば計画外、意図の外なタイミングだったに違いない。そして、アドリブに富んだおおよその計画性で動くコイツはこういう完全な予想外を嫌う。だからニーナからすれば今は最悪な気分なんだろうな。
「うーん、やっぱりさんざん考えたけど、ソーマに全部を話す気はないよ」
「なんでだよ」
「女っていうのは秘密を着飾って美しくなるから?
……ごめんウソ。でも一個確認させてほしいな、ソーマは私の何が聞きたいの? 何が聞ければ満足なのさ」
「俺はニーナを大切にしたいと思っている。そのうえで、お前が考えてること、視ているもの、識っていること、目指している理想が知りてぇ」
「なら、なおさらこれ以上知る必要はないでしょ。
ソーマの知っているとおり、私の至上目的はアリアの平穏だもん。私はその次に幸せになれたらラッキー程度にしか考えてないからね」
超が付くほどのシスコンのコイツらしい答え。
そして、ここまではエリックと話してて予想がついていたところだ。さらに一歩踏み込むところが俺のスタートライン。
『具体性は伴わせず、あくまで知っている事だけを匂わせる』だったか。つまりこうだろう
「エイジス計画、終末捕喰、情報集積体の特異点たる人型アラガミ。関係性が深いのはとりあえずこんなところか?」
壊れたブリキみたいな、ギギギという音でも聞こえそうなほどにゆっくりと、こちらに視線を寄越して来るニーナに、挑発的に笑う。
「緘口令の類なら気にしなくていい。知ってる側だ」
「榊博士か……本当にこっちからみたら余計なことしかしないなぁ。普通に命令違反なんだよね、あの人。技術力を担保にのうのうと生きてるけど、今度詰めなきゃな」
「今度いくらでも詰めりゃいい。今は俺とお前の話だ」
「大体さ! ソーマもそこまでわかってるなら何が知りたいわけ?」
「ニーナの口から聞きてぇだけだ」
「うぐぐぐ、でもこれってソーマが知ってる以上に私が話しちゃったら榊博士詰めるときに『おやぁ? それ以上に話したニーナ君にも人のことが言えないんじゃないかい? ここはお互いがお互いの悪事に目を瞑ろうじゃないか』とか言って笑われながら逃げられる罠じゃん! あのクソ糸目マッドサイエンティスト! 榊! スターゲイザー笑! ふざけるなぁ!」
自分で作ったそこそこデカい砂の城を蹴り壊しながら、駄々をこねる悶絶する様を見て思わず吹き出しそうになるが、堪える。……せめて名前を悪口に使うのはやめてやれよと思わなくもない。
まぁ、確かに昨日エリックから榊博士の元に連れられて、この話を聞いた時に俺に話して良かったのかと聞けば、まったく同じことを言ってたから予想は正しい訳だが。そういえば、エリックの野郎は他にも何か言いかけてたが、榊のおっさんが話を逸らしてから頑なに口を開かなかったな。
そこはニーナから割らせろ、ということだと認識したが。
「わかったよ。ソーマ、榊博士とエリック君だけがさっきの話を知ってるでいいの?」
「ああ、俺の認識の範囲ではだが」
「ふーん……わかった。じゃあ話す……というか講義の時間だね、この場で以外は緘口令が敷かれている限り説明できないからよく聞いてほしい」
「わかった」
ニーナが砂浜をボードに細長い棒を使って講義を始めた。終末捕喰というのがカルト思想のことではなく、実際に存在することだと榊博士の手により、科学的に証明されていること。
エイジス計画はそれを乗り越えるための計画であること。方法論としては、海という大量情報の壁と、無数の偏食因子による終末捕喰の対応らしいこと。
それから特異点について。
人型と言っても、少女のような体型。おそらく言語は未発達であり、この前の蒼穹の月以前から一人で遠征に行ったのはこの特異点の確保が目的であること。
この前の追いかけっこで、ニーナは一人で特異点を捕獲することを諦めたらしいこと。おそらく今後榊博士かクソ親父の指示で第1部隊と第4部隊の合同任務があるはずとのこと。
そして、
「……あと、リンドウさんはディアウス・ピターじゃなくて私が殺したよ」
ということが打ち明けられた全容だった。
最後の最後に意味が分からないことを言われてグラグラする頭を抑える。
「どういう、意味だ」
曖昧に笑うニーナは、眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をする。
「勘違いしないでよ? 私がリンドウさんの暗殺を企てた訳じゃないし、暗殺するコトを知らされてた訳でもない。
神機使い葬送規定第7条3項は知ってる?
簡単に言うと、アラガミ化した神機使いを強力なアラガミになる前に処分する規則なんだけどね、ソーマは知ってるかな。私たち第4部隊の仕事」
「本部や支部の各部署が望んだモノの捜索と、KIA、MIAになった神機使いの神機と腕輪、それから出来れば遺体の回収……だったか」
「うん。遺品を回収した回数は54回。それから、アラガミ化した、しかけた神機使いを人間のうちに殺した回数はリンドウさんを入れれば19回だ。ああ、安心して、汚れてるのは私だけ。ハルオミさんにも、エリック君にも1度たりとも私の部下にこの仕事はさせてない。手伝ってもらったことはあるけどね」
ナイショだよ。なんて、指を口に当てて大した事ないように語るコイツは、一体どれだけ目の前で人が死んだんだ。たかが数人、同行者が死んだ程度の俺とは違う。
自分の手で、誰かを殺すなんてこと、俺はやってこなかった。ただ目の前で死んだだけであんなに滅入っていたのかと思えば情けなくなる。
おもわず、何でもないように語るニーナが突然目の前から消える気がして、抱き寄せた。
「なんで、おまえがそんな目に遭わないといけねぇ」
「勘違いしないでよ? 私がこういうコトを任されてるのは偶々なんだ。ヨハンさん……支部長は最初私に、特異点さえ探してくれればよかったんだろうね。
だけど、私が支部長の想像以上に優秀だったから。
私が、他の人より隔絶して強かったから。
本来は間に合わない筈の現場に、ギリギリ間に合いかけてしまったから。だからそういう現場によく遭遇するんだ」
俺の背中をあやすように、一定のリズムで叩きながら言い聞かせるように説明してくる。ニーナが、話を終えて俺を押し返す。
「だから、ごめんね。ソーマ。【死神】は本当は私で、人殺しをしておきながらのうのうと生きてる【怪物】も本当は私だったんだ」
違うだろ。お前の言う通り、偶々現場に出ただけなら、偶々役回りを被ってしまっただけなら、ニーナの性じゃない。
「汚れた私を、抱かせてごめん。
歳下の君を誑かして、大事な一瞬を奪ってごめん。
だけど、私は汚いけど、私以外はキレイなままだから、この先私になにかあったら、アリアだけは、あの娘だけは助けてあげてほしい。
卑怯で、汚くて、ごめんなさい。
私にはこういうやり方しかできないから。
私は主人公になれないから。
私は君たちみたいに眩しく生きれないないから。
だけど、最後はみんなが笑える世界を創って見せるから。どうか、私の我儘を赦してください」
頭を下げて、蹲り、俺の脚に縋りつくようにして、堪えてきたものが決壊したようにボロボロと涙が落ちて、浜に吸われて消えていく。
これは、おそらく、きっと、今までコイツが一人で抱え続けたものの一端だ。言うことに具体性は少なくて、勘だが、きっとまだ俺に話していないこともある。
だけど、少なくとも今コイツにかけるべき言葉がもっと具体性をもって話せとか、そういうことじゃないのは俺でも分かる。
「ニーナ、勘違いするな。
あの日、お前が俺に言ったように、お前ごときは【死神】でも【怪物】でもない」
ニーナの胸ぐらをつかみ上げて、無理やり目を合わせる。
「お前は、善人じゃないかもしれねえし、まだ言ってない後ろ暗いこともあるかもしれねぇ。だが、確かなことがある。
少なくともお前は、汚くない。俺はお前と共に生きようと決意することを後悔しない。
お前が間違った時はぶん殴ってでも止めてやる。
だから、お前も自分の選択に胸を張れ」
言い切った。それに瞠目したニーナは、思わずといった様子で笑いをこぼした。
「ハハハ、カッコいい。流石タイトルロールだねぇ。こんな世界で、そんなにカッコいいのは主人公だからかな。でもダメだなぁ、良くないよ。勘違いしちゃうでしょ」
「勘違いだ?」
「そんなこと言われたら、都合の良い女の立ち位置じゃ満足できなくなっちゃうじゃん」
「そう言ってんだよ。
俺はクズでも何でも言えばいいとはいったが、クズであり続ける気はねぇ。満足できなくなるっていうなら、お前が俺の隣を歩きゃいい。
だから、勝手に一人でどことも知れないところを歩こうとするな」
「ええっと、つまり、その、え、なに? 解釈違いというか、なんというか、私がそこに収まるのは嬉しいんだけど、違うというか」
「ゴタゴタ言ってねえで俺と付き合えって言ってんだよ」
「……私、結構すごいことするよ?」
「それを説明してくれりゃ最高だが、いいぜ。間違ってたら止めてやる」
「アハハ、やりづら~い。
……まあそっか、じゃあ、その時が来て意見が決裂したら勝負に勝った方が従わせる方針で行こう」
「上等だ。極東じゃ今お前より強いのは俺だけだからな。勝てると思うなよ」
「うるさいよ、ド素人。言っとくけど、正々堂々不意打ちするから。
……まぁ。そこまでいうなら、勝っても負けてもいい保険かな。ソーマ、これからよろしくね」
夕日に照らされて顔を赤くするこの腹黒女の戯言は、きっと戯言じゃないんだろう。
本当にこっちの度肝を抜くような壮大な企みがあるのかもしれない。だが、一度口に出した身だ。吐いた唾を飲む気はねぇ。その為にニーナに置いて行かれないように、俺は俺で、エリックや榊のおっさんを使って賢しく、強くならねえとな。
一先ず、返事の代わりにコイツの手を握り、浜辺の波打ち際を連れ歩く。この世に神なんていねぇけど、せめて、こんなに頑張ってるニーナの行く末が幸多からんことをと心の中だけで願う。
「そういえば結局、お前はなんで旧時代に詳しいんだよ」
「ん~そうだね、クイズにしようか。
ソーマがそれを当てれたら、何でも言うこと聞いてあげるよ。女は、秘密を着飾って美しくなるものだからね」
泣きはらした目で、精一杯の虚勢を張るように穏やかに笑うニーナを、俺はひどくキレイだと思った。
話したようで話してなくて、嘘をついてないようで嘘もついてる、挙句光にも目が眩む、本当に汚い女だね。
という人と、辛かったね……という人がいそう。
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア