最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
アンケートの奴でいうところのリッカちゃん回ですね。
「優れた神機整備師は、神機の状態を見れば神機使いがどのような攻撃を受けて、どのように攻撃したかがわかる」
既に亡くなった父から、私はそう教わった。
そして、こんなことも良く言っていた。
「神機っていうのはみんな生きてる。それは使い手を気に入って活かそうとするやつもいるし、逆に雑な扱われて能力を十全に発揮しようとしないやつも居る」
子供の頃はよくわかんなかったけど、最近になってようやくわかってきた気がする。
脈動、と言えるような、神機のコアの震えと明滅。メンテナンスをするごとになんとなく温かい気持ちが流れてくるような感覚があるんだ。
特にニーナちゃんの神機はアナグラに所属する全神機使いの中でお手本にしたいくらい丁寧に扱っていた。
頻繁に採用してるバックラー類では真正面から攻撃を受けることがないのか、装甲がひしゃげることがないし、刀身も歯の通し方が良いことを示すように曲がったりかけたりしてることが滅多にない。刀身に関してはショートブレードの採用頻度が高くて、ショートブレード特有の刀身の短さを活かした捩りながらの切り上げ──ライジングエッジだっけ? ──をよくやってるみたいだけど、シュン君とかが見様見真似でやるそれは酷いもので、刃が歪みまくりだったんだけどニーナちゃんのはすごいキレイなままなんだよね。技術の概要聞いた時はなんだその刀身に負荷をかける技は! って整備課全員怒り心頭だったけど、蓋を開けてみたら閉口せざるを得なかったのを今でも覚えている。
それが接触禁忌種相手でも消耗の仕方は変わらない。精々誰かを無理に庇った時に目立つキズや歪みが出るくらいかな。
そんなニーナちゃんだったんだけど、最近になってなぜか急に汚れとかキズが増えてきてる。……まあそれでも他の神機使いに比べたら少ないんだけどね。
特に一昨日からニーナちゃんが連れまわしてるらしいコウタ君とかは砲身の焼き付きとか、転がりながら攻撃を避けるときについたであろう汚れとかに比べたら、ほとんど新品に等しいし……。
おかしく感じてるのは、ニーナちゃんの神機についてる汚れがアタッシュケース状に格納してる時に付いているっぽいからかな。
神機っていうのはアタッシュケース状に折りたたむことが出来るわけなんだけど、どうにもニーナちゃんの神機はそこだけがキズついたり汚れてたりするんだよねぇ。アタッシュケース状にしてる時にだれか殴ったりしてる訳ないだろうし、今度あった時聞いてみようかな。
なんとなく感じた程度の違和感をグルグル考えていれば、保管庫内にある整備室のドアが開かれた。
「こんにちは〜! 神機の整備お願いします!」
「同じく、私のもお願いします」
「ユウ君とアリサちゃんか。
こんにちは、預かるから少し待ってね」
タブレットで神機整備用のアームを操作して2人から神機を受け取る。うんうん、ニーナちゃん程じゃないけどかなり丁寧に戦ってるみたいだ。装甲もしっかり使っていて、神機へのダメージは最小限になってるし、最近は2人で色んな人を連れ回しながら特訓してるみたいだけど、以前に比べて刃の通し方が良くなってるし砲身への負荷が減ってる証拠だろう。
現場の神機使いの戦い方としての点数は知らないけど、整備する側からしたら高得点な戦い方だ。
「2人とも丁寧に戦うようになったんだね」
「おお、整備士のリッカさんにそう言ってもらえると自信がつきますね! な、アリサ」
「ええ、思い返せば刀身の歪みが酷いものだった気がしますから」
「新兵っていうのは道具を大事にする前に自分の命を大事にするのが仕事だしね。その辺は気にしなくていいと思うよ? とはいえ、ここまでダメージが少ない神機も中々見ないからね。
ニーナちゃんとサクヤさんの次くらいには丁寧な使い方出来てるよ! きっと、この子達も喜んでると思う」
「「この子達?」」
話をしていれば何か引っかかったのか、首を傾げる2人に手を打つ。そうか、この手の話は現場組からすれば眉唾モノで信じてる人のが少ないんだっけ。
「そう、君たちの神機の事だよ」
「まるで、神機にも意思があるみたいな言い方をするんですね……?」
「アリサちゃんの言う通り、この子達には意思があるよ。丁寧な戦いを長く続けた神機使いの神機は潜在能力の100パーセントを発揮するように協力してくれるし、ずーっと雑に扱い続けられた神機は臍を曲げてその子が持つ能力を発揮出来なくなっちゃう。
……まあ適合率によるところもあるから一概には言えないけど、極端な例を出すと同じショートブレードをメインで使ってるニーナちゃんと防衛班のシュン君じゃ大分違うでしょ?
メンテナンスしてるとね、それぞれの神機がどれくらい大切に扱われていて、どれくらい神機が喜んでて、悲しんでるのか。そういうのがなんとなくわかるんだ」
「へぇ、確かに神機もコントロール下にある兵器型アラガミと考えれば、意思があってもおかしくないですもんね」
「じゃあ、私達がこれからも丁寧な戦い方を心がけていれば、彼、あるいは彼女達神機が応えてくれると」
「飲み込みが早いね! まあ迷信と思うかもしれないけど、神機は丁寧に扱えば扱うほど修繕費が安くなって君らにとっても得だから、頭の片隅にでも入れといてよ」
「分かりました! にしてもニーナ先輩ってそんなすごいんですね? 実はオレもアリサもニーナ先輩が戦ってるところしっかり見たことないんですよね」
「私に至っては顔こそ知っていますが、会ったことすらありません。……やっぱり嫌われてるんでしょうか。当然ではあるんですけど」
2人の呑み込みの早さにうんうん頷いていれば、衝撃的な言葉に愕然とする。
そういえば確かにこの2人とニーナちゃんの神機を一緒にメンテナンスしたことない気がするな……。ニーナちゃんはアナグラで唯一ほぼすべての神機使いと共闘経験のある神機使いで、ある種の共通認識の指標だったんだけど、なんでこの2人とは共闘しないんだろう。ニーナちゃんにしたって新型の開発者の1人としてデータは欲しい……っていうか報告書上げるのに必要だと思うんだけどな?
いやでも忙しすぎてそれどころじゃないだけって可能性も大いにある。最近はアリアちゃんの保育所代わりに整備室に2時間だけ預けに来たりとかするくらいだし……。アリアちゃんももう大きくなったから1人でお留守番できそうなのに、親バカというか姉バカというかね……まあアリアちゃん可愛いし、整備室のマスコットとなりつつあるからいいんだけどね。ウチに居ても暴れたり散らかしたりしないで宿題やってるし。
「う~ん、ニーナちゃんに限って嫌ってるとか、そういう理由はないと思うんだよね。単純に忙しいんじゃないかな? 新型神機の開発に携わった一人として、現場での状態報告求められてるだろうし、2人とも一緒に任務に出ることが近いうちにあると思うよ!」
「……そうならいいんですが」
「まあ確かにアリサが入院してた頃、アリサのこと気遣う感じのことを言ってたし、嫌いってことはないと思うよ。この前エリックがアリアちゃん使って無理やり休ませてたくらいだし、本当に忙しいんだって」
「あ、そうだ。2人とも今度ニーナちゃんと一緒になる機会があれば彼女が格納状態の神機をどういう風に扱っているか見といてくれない?」
「格納状態の神機の扱いって手で持ち歩く以外の扱いがあるんですか? リフティングみたいな?」
思いついた頼み事を言ってみれば、ユウ君はボールを蹴り上げる振り、たしか旧時代のサッカーだったけ。それのまねをする。
ニュアンスとしては近いんだけど、違うんだよね。
「ニーナちゃんの神機になんか最近までは付いてなかったんだけど、ここ数ヶ月くらいからなんかアタッシュケース状の外壁部にだけ土汚れ……? というかなんかよくわかんない汚れが目立つようになってきてさ。さっきも言ったけど丁寧に神機扱ってるニーナちゃんだからこそ気になるっていうか。本人にも聞くつもりだけど、ちゃんと教えてくれるか分かんないから、念のためね。頼んだよ?」
「は、はぁ。了解しました?」
「土汚れ……マジで蹴ってたりするかもですね! 足で拾い上げるみたいな?」
「ニーナちゃんに限ってそれはないと思いたいんだけどね」
神機を大事に扱おうっていう気持ちがいっぱいあった筈のニーナちゃんがそんなことしてるって思いたくないだけなんだけどね。
新型神機の共同開発してた時期はよく会って話してたけど、最近は神機整備の時とアリアちゃん預けに来るときだけしか会いに来てくれないから、少し寂しいね。
「ああ、でもソーマなら何か知ってるんじゃないですか?」
「ソーマ君が?」
「だって、ほら。付き合ってるらしいですし」
「えええええ!? そうなの!? あの2人が、っていうかソーマ君が付き合ってるんだ。
まぁでも、納得と言えば納得だけど……」
「アナグラ内でここ一週間くらい結構話題じゃないでした?」
「え、そうなの? 最近は整備室と家の往復だったから知らなかったよ」
ユウ君から聞いた衝撃的なニュースに空いた口が塞がらなかったけど、まあしょうがない。最近は榊博士や支部長が頼んでくる新規依頼や新型神機関連で立て込んでたしな……。
にしてもあのぶきっちょソーマ君がねぇ。最近は確かに物腰が柔らかくなったというか、開発研究関連に手を出し始めたのか私に色々聞いてくることもあったけど、そういうワケだったんだ。
確かに男の自分より彼女のニーナちゃんのがスゴイっていうのはなんだかこう、やるせないというか、情けない気持ちになっちゃいそうだしね。男の意地ってやつかな。
「ま、まぁソーマ君がなんか知ってそうなら今度整備で会うときに聞いてみるよ。2人はさっき言ったように任務で一緒になった時に気づいたことがあったら教えてね」
「了解です」
「また来まーす!」
雑談を切り上げて2人を見送ったら、預かった神機の状態を見る。
アリサちゃんのはThe 優等生みたいな消耗の仕方だ。搭載された機構を満遍なく使っている。
対するユウ君のは適合率の高さからか力押しが目立つけど、刃の通し方はキレイだけら神機へのダメージが少ない。前依頼してたインパルスエッジの使用だけど、ちゃんと使ってくれてる、というか気に入ってるのかな。結構な消耗がみれるけど、許容範囲内。連射はしないように注意は払ってくれてるみたいだ。
にしても、ユウ君の神機のコアの駆動波形パターン。やけにニーナちゃんの神機と似てるんだよなぁ。偶々だろうけど不思議だ。なんか法則でもあるのかな?
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア