最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
あと前話までユーパーセンスと記載していましたが、誤字報告、及び感想にてユーバーセンスやでと教えてくださった方が居たので修正しました......(小声)
教えてくださった方々にはここで改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
「百田さん!」
悲鳴じみた声だなと、どこか他人事めいた感想を自分の声に抱く。
慌てて百田さんに駆け寄れば、神機解放モードのリミットだったようで、俺の身体から力がぬけて、私の膝が地に突いた。
思い出したみたいに激痛が身体中に走る。戦闘が一段落して脳内麻薬が切れたのか、それとも神機解放モードの最中は、痛みを忘れる程に『喰い殺す』意思が強かったのか。
無駄な思考で飛びそうになる意識を繋ぎ止めながら、ウエストポーチに入れてあった回復錠を取り出す。
見かけはただの錠剤だが、過剰服用厳禁として新兵の私は、まだ5つ程しか支給されなかった。
貴重なものだが、今は四の五の言ってられないため、急いでソレを噛み砕いて嚥下する。
ジュクジュクと嫌な音を立てながら、身体が再生するように傷が塞がっていくのがわかる。無理だとは思うが、欠損とかも治せるんじゃないかと錯覚する回復の仕方で、過剰服用厳禁な理由は、詳細を言われなくても何となく分かるほどだ。
頭からの出血が止まったので、血を腕で拭い目を開ければ、まだ薄紅く滲んではいるものの、ようやく景色がちゃんと見えるようになった。
身体が動くようになったので、ようやく百田さんの元へと辿り着けば、丁度コンゴウの口から、無理くり腕を引き抜いたところだったらしい。
血だらけの腕と、ピストル型神機と共に変形、破損した拳が目に映る。慌てて回復錠を手にとり、急いで差し出そうとすれば手で制された。そして、
「すまない、お前の母親を、守りきれなかった」
痛みに堪えた表情ながら、澱みなくそんなことを告げてきた。
「は?」
唐突な謝罪。アラガミにだけ意識を向けていたユーバーセンスを、百田さんの背に隠れていた母さんと妹に向ける。百田さんも道を開けるように退いてくれた。
そこにはコンゴウの撃つ空気砲に当たったのか、それともその余波の瓦礫が飛んできたのか、妹を抱きすくめる母さんの足がひしゃげる、と言うよりは完全に潰れて無くなっていた。
痛みによる苦悶の声が漏れないように歯を食いしばりながら、引き攣った笑顔で私を見る母。
「ニーナ、よく、よく頑張ったね」
アリアを左腕で抱きながら右手で私の頭を撫でる。
「私はへっちゃらだけど、母さん、脚がもう」
「大丈夫よ。ニーナ、痛いけど、それ以上に、ニーナが生きていてくれた。それにアリアも護りきれた。そこのゴッドイーターさんにも後でお礼を言っておいてちょうだい」
足からの血が止まらなかった。
止血もしてないのに、ずっと喋ってるから当然だ。
母さんはまるで最後の仕事が終わったみたいに、痛みに苦しみながらも、凄い晴れやかな顔をしている。
それからも、なんだか遺言みたいに、私に洗濯物を取り込む時のシワをとることだとか、嫌いな人がいても笑顔で流すこととか、ちゃんと3食食べることとか、そんな当たり前の事をずっと言ってた。
それから、最後に──
アリアをよろしくね
──そう言って、母さんは死んだ。
それからのことはよく覚えていない。
後で聞くところによると、百田さんにアリアを任せて、半狂乱になりながらアラガミを殺して回っていたらしい。
らしい。というのは、あの時共に出撃した防衛部隊の片割れだった人が私と同じ医務室の隣のベッドに入院してた為教えてくれたことによる又聞きの為だ。
それとは別にツバキ隊長から、私は作戦行動違反と、上官命令無視の2つで、私は1週間の謹慎処分が下された。謹慎処分と言ってもこれは、シックザール支部長からの謹慎処分と言う名の休暇のプレゼントらしいので、有難く傷心を休ませてもらっている。
百田さんにも勿論しっかりと謝った。その時に百田さんの経歴──軍人上がりの事とか──を改めて聞かされた。
結論として百田さん的には新兵を止めれなかった責任、戦場だとしても、自分の手の届く範囲に居た民間人を守れなかったオレの責任。と言い、終始私に反省はしても自身の行動に後悔するなと言いながら、頭を撫でられながら逆に謝られてしまったが、私が迂闊な行動をしなければ、腕を怪我して引退することもなかった筈だ。
原作だといつ怪我して前線を退いたのかは知らないが、少なくとも今生では百田さんのキャリアに終止符を打ったのは私だ。私がもっと強く、怪我なくシユウを殺せてれば、あの2体のコンゴウも問題なく倒せた筈なんだ。
兎にも角にも、これから少しづつ償って行こうと思う。
父さんと母さんは幸いにも遺体が遺ったので、極東支部の共同墓地にて供養した。
妹のアリアも、まだ何が起きたかは分かってないんだろうけど、それでも両親にもう会えないことが分かったのか、大いに泣いていた。
今はアリアと一緒にアナグラで宛てがわれた自室にいる。
アリアも落ち着いたのか、はたまた泣き疲れたのか今はぐっすりと私の腕の中で眠っていた。
あんなことがあってもやっぱりアリアは可愛らしい。
母さんに託された、この愛しい妹を護るためにも、私は謹慎が明けたらまた戦いに行かないといけない。
そう、またアリアを置いて戦いに行かないといけない。
この世界はクソだ。
ナンバリングが進んでもアラガミはずっと消えない。
アリアはいつまで経っても、アラガミの脅威に脅えながら生きていかないといけない。
この子は何もしてないのに、あまりに無慈悲じゃあないだろうか。
私だけだったら良い。
死ぬほど辛い目に会うかもしれないが、原作をそばで体験出来るかもしれないなんていうミーハー心で、苦しいながらも楽しめたかもしれない。
どうしたらアリアを護れる?
どうしたらアラガミを駆逐し切れる?
どうしたら、どうしたら、どうしたら......。
「失礼する」
思考の悪循環を打ち切ったのは、ノックの後返事も待たずに入ってきたシックザール支部長だった。
返事くらい待ってくださいっていう文句とか、敬礼しなきゃなとか、アリアをベッドに置かないといけないだろうかとか、思考がまとまらないなりに動こうとした私を、支部長は手で制した。
「そのままで結構だ。
先ずいきなり入ってきた非礼を詫びよう。申し訳ない」
「い、いえ、それで支部長はなんの御用ですか? まだ謹慎中だと思いますが」
「加納くん、いや、加納ニーナ君と、加納アリア君の今後について、幾つか提案をしにきたんだよ」
私と、アリアの今後についての提案を、支部長がわざわざ自ら?
「神機使いの血縁を内部に優先的に招く、という事を謳って募集していたにも関わらず実現する前にあのようなことが起きてしまった。その贖罪だと思ってくれて構わない。
先ずニーナ君には今後も神機使いとして働いてもらう。君が神機使いとして仕事に従事してる間のアリア君は、極東狼谷学園附属の保育所にて預かろう。年月が経ち、小等部や中等部の年齢になった場合は、君とアリアくんの意志次第でそのまま学園へと入学してもらっても構わない。費用の大部分は免除し、残りの分も君の給与から天引きで対応しよう。
また、誠に残念な事だが、仮に君が早くに殉職した場合もアリア君の意思次第で学園に入学してもらって構わないし、その間の後見人も信頼できる人物を宛てがうと約束する。
君が今感じているだろう目下の不安の大体は網羅したつもりだが、どうだろうか?」
いくらなんでも、話が上手すぎやしないだろうか?
ここでただ頷くだけでいいのは分かる。
破格、それも度が過ぎると言っていいレベルだ。
殉職したゴッドイーターに、フェンリルにとって価値など無いはずなのに、その後の親族の面倒まで見るなんてまるで、代償にクソみたいな仕事をさせると言外に言っているようなものだ。
そう、確認が必要だ。
たとえ両親の事がショックで頭が上手く働かなくても、ここでただ頷くだけでは私だけじゃなくてアリアまで、将来奴隷の様にこき使われるかもしれないなんて嫌だ。
「......本当に有難い申し出です。今すぐ手を取りたいほどには。
ですが、その前に確認させてください。神機使いとしての仕事とは、アラガミの駆逐、アラガミ防壁の防衛、それから以前言っていた1年後の第4部隊にての遺体や神機の捜索、回収任務と空いた時間の他所の部隊の補助。それ以外になにかあるんですよね?
16歳そこそこの私でも分かります。余りに条件が破格すぎますから」
私が質問すれば、シックザール支部長の顔が少し強ばった。
すぐにでも手を取ると思われていたのかもしれない。
数秒無言の空間が続いたが、ついに口を開いてくれた。
「現在はまだ公にはしていないが、もうすぐエイジス計画というものが始動する。
簡易的に説明すれば海の孤島にて地下から地上にかけての大型コロニーを建設し、そこに人々を移住させる計画だ。
海を隔てているため、凡そのアラガミからの侵攻を受けることなく、ザイゴート等の空を飛ぶ類のものに特化したアラガミ防壁をコロニー上部に設置することで向こう数十年から百年の安寧を確保する計画だ。
そして君には任務の傍ら、エイジス計画に必要になるであろう素材を始めとした様々のものを取得、その後提出してもらいたい」
エイジス計画、アーク計画の隠れ蓑扱いだった筈。いや、この時間軸ならまだシックザール支部長もエイジス計画路線だったか? 曖昧な記憶だ。
だが、そう、アーク計画! アーク計画があった!
現時点ではまだ構想されていないとしても、この男は確実にアーク計画を再度実行する筈だ。
終末捕食と呼ばれる地球のリセット、そしてソレが行われる間必要な物資と最低限の人間を宇宙に飛ばす計画。
ああ、そうだ! この世界はナンバリングがどれだけ進んでもアラガミが消えないクソみたいな世界!
なら、私が主人公達を止めれば、ナンバリングを最初に止めてしまえば、アリアをアラガミの居ない、新世界に、幸せな世界に住まわせてあげることが出来る!!!
「分かりました。アリアの為なら、私は文字通り
アリアを抱きすくめ、頭を下げる。
私の思いなんて知る由もないだろうシックザール支部長は神妙に頷き、追ってまた連絡するとの事で、忙しいのだろう、足早に私の部屋から出ていった。
しばらく頭を下げたままだったが、いつの間にかアリアは起きていて、私の髪で遊んでいた。
「私が絶対、普通の世界に連れて行ってあげるからね、待っててアリア」
頬を指で撫ぜれば、キャッキャと無邪気にはしゃぐ天使に安堵しながら、私はそのままベッドに倒れ込み、眠りに落ちた。
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「という訳で! 本日から第1部隊に復帰させていただきます! 加納ニーナ新兵です! 配属2日目なのに謹慎くらってしまって申し訳ありません!」
整備班に神機の扱いについて──シユウを捕喰形態で一本背負いするな──怒られ、オペレーター一同から勝手な行動をするなと──インカム外すのは以ての外──怒られ、第1部隊の面々からは──ソーマ君は除く──ゲンコツを頂き、極東狼谷学園のお偉方に挨拶をして、榊博士とシックザール支部長に改めてお礼と挨拶をして、とやっていれば、謹慎期間+3日程経ってようやく神機使いとして活動を再開できた。
アーク計画のためにも、自分が生き残るためにも先ずは神機を強化しなけりゃいけない。決意を新たにそんなことを考えていれば、ツバキ隊長が1歩前に出て声をかけてくれる。すごい笑顔だった。
「加納ニーナ新兵」
「はい」
すごい怖い笑顔だった。
「次命令違反したら、分かるな?」
「本当にすいませんでした」
心の底から頭を下げた。本当に怖い。美人が怒ると怖いんだから怒らないで欲しい。
絶対に次やったら殺す。みたいなことが副音声で付いてる。
本当に反省しているので本当に許して欲しい。いや許されることでは無いんだけども。
「まあまあ隊長殿、ニーナのお陰で助けれた命も多かった訳ですし、これから任務なのに落ち込まれちゃ敵わないんでそのへんで」
頭を下げ続けてたら、リンドウさんが助け舟を出してくれた。
ツバキ隊長も、リンドウさんの言葉に溜息をつきながらも、同意し、頭を上げろと言われるのでそうする。
「では、お前の今回のヤラカシは今後責めん、その代わりにこれからの働きで取り返せ、以上だ。
これより本題の任務のブリーフィングを始める!
ソーマ、ニーナ、リンドウ、私のフルメンバーで出撃する。
対象はシユウ1体にコンゴウ1体、それとヴァジュラが1体だ。
ニーナはシユウとコンゴウの討伐及びアラガミの状況報告を命ずる。
中型アラガミとその他小型アラガミ掃討後、ニーナを除く3名でヴァジュラを討伐する。
極東ではヴァジュラを倒せる、その実力が付けば一人前の神機使いだ。ニーナはよく観察し今後に活かせ」
「分かりました! シユウ、コンゴウ、及び小型を掃討後は後学のために先輩方の戦いを観察します!」
「よろしい、それでは15分後に出撃する! 各員装備の最終確認を済ませ次第集合!」
ツバキ隊長の号令にソーマ君は首肯で、リンドウさんが真面目ぶって、私が元気よく返事をする。
神機使いになってから10日と少し、ようやくチュートリアルと緊急事態以外の任務だ。両親の事は悲しいが、アリアの為にも頑張るしかない。
今は先ず、獣剣の素材が取得出来ることを願おう。
......そういえば現在の神機の強化メニュー、みたいなのまだ知らないな。あるんだろうか......?
展開が早いですがコレで新兵時代の話は終わり(の予定)です。
理由としてはあんまり新兵時代やっても原作にたどり着けないと思うからです。なので後から新兵時代の話を幕間として出すかもしれませんが、次話からは1年後、第4部隊の隊長に就任するか、したあたりを書こうと思います。
あ、あと!感想くれて嬉しい、評価者もいてびっくりして嬉しい。あと何よりこんなにお気に入り登録してくれる人がいて、私はとても嬉しかったです。
こんな作品読んでくれるみなさん、ありがとうございます。
仕事の合間にですがチマチマ書いていこうと思います