最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
ちょっと仕事が本当に忙しくなってきて滅って感じです。
今回は繋ぎじゃないですよ。2話構成になりますが……
「おや? 予想より750秒は早いね」
「ユウ君とアリサちゃんが意外と素直に言うことを聞いてくれたおかげですよ」
エリック君に元々アポイントメントを取っておいてもらった時間、それより大体10分近く早いけど、まあ常識の範囲内だろう。
榊博士のラボラトリに訪れた私は、後ろ手に鍵を閉める。
天井、物陰にまで視線を巡らせて、私と榊博士だけであることを確認する。以前のソーマが試飲してた偽装フェロモンの改良版が正式手配されたとは聞いてないけど、少なくとも今はこの部屋には私と榊博士の2人きりらしい。
「ふむ、強い警戒心だね。前々から思っていたけれど、ニーナ君はどうにも私を信用していないように見える。……何か私に知られると都合の悪い事でもあるのかい?」
キーボードを叩きながらも視界の端で私をとらえていたんだろうけど、急にぶっ込んでくるなこの人は。そりゃあ都合の悪いことだらけではあるけど……
「榊博士の頭脳は信じてますよ。でも、榊博士の人格は信じてませんね。ソーマとエリック君への機密漏洩、私ちゃんと怒ってますから。他に誰かに何かを伝えましたか?」
「いいや、特異点や終末捕食のことは他の誰にもまだ伝えていないとも。緘口令を軽く見ているわけではないからね」
「どうだか……」
あんまりにも信用できないので、思わずため息をつきそうになるのをぐっとこらえてカノンちゃんにもらった茶菓子を小皿にあけて、給湯器でコーヒーを2人分淹れる。勝手に入れてるけど何も言ってこないので大丈夫だろう。
話し合いの茶請けの準備が終われば、榊博士も何かの研究の区切りがついたらしく、ソファに腰掛けた。
「どうぞ、コーヒーでいいですよね? フレッシュや砂糖は使うか知らないのでご自由に」
「ありがとう、いただくよ。……さて、にしてもキミが単身私を訪ねてくるのも珍しいね。ユーバーセンスの研究が一区切りついた以来じゃないかな」
「支部長と付き合うことが多いので、榊博士とまで話してると気疲れしそうになるだけですよ。人間としてはあなたのことが嫌いなわけではないので、赦していただきたいです」
「素直さはキミの多くある美点の一つだね、研究対象が違う研究者に会いに行くのは多くの場合時間の無駄になることが多い。気にしているわけじゃないから構わないさ。それで、今日の要件は?」
雑談を適当なところで切り上げて早速本題に入る。お互いに忙しい身だ。時間あまりないからね。
胸元から吸引型の栄養剤を取り出して、一吸い。
「……さっき言ったことも本題ですよ。どういうつもりで緘口令の無視を?」
「ソーマは元々ヨハンが特務の名目で特異点捜索に当てていたんだ。キミが特異点捜索を一人では無理だとあきらめた時点で、第1部隊と第4部隊合同で探すことになるのは予想済みだろう? なら話が伝わってる頭のいい人には早めに事情を話して協力してもらった方がいいとは思わないかい」
「思いませんね。頭のいいとはいっても研究職に就いてないなら意味がないで……まさか、エリック君の方は私が最近手伝わせてるからとか言わないでしょうね」
「まさにその通りだね。とはいえ、ソーマだけに伝えるときのメンタルヘルスも兼ねていたよ。彼は心が強いわけではない。普通に傷つく子だ。だけど友人2人に教えることで支え合えるだろう?」
「相変わらず楽観的ですね。お忘れかもですが世界は結構世紀末なんですよ。研究も現場もやらされる私みたいな超人枠って事故ととなりあわせだから増やさない方がいいと思うんですよね。少なくとも、私の部下に対するマネジメントでは知ればアラガミの討伐に活かせる分野以外は詰めなかったんですけど、榊博士は現場に出ないからそういう考慮ができない感じですか?」
「現場の気持ちか、手厳しいね。そういわれてしまえば謝罪する以外に方法がない。すまなかったね」
「謝罪は一片の絶望を与えた現場の二人にしてくださいね。
ただでさえアラガミ討伐なんて言う終わりのないマラソンを強いられてるんですから、ふとした拍子に心が折れて現場で死ぬなんて話になりません。これ以上は来る終末についてやたらと触れ回らないようにお願いします」
「わかった。肝に銘じておこう」
ふぅ……。一先ずは釘はさせたかな。実際問題、ただでさえ絶望的なアラガミVS.人間の構図は、神機使いにとって苦しいものだ。命がけで戦っても外部居住区の人間に、妬みや貧困からくる余裕の無さから罵詈雑言を浴びせられるのなんて珍しくはない。心が強ければその限りでもないかもしれないが、心の限界は誰に訪れるかわからないものだからね。不要なストレスは死を招くってことを榊博士には理解してもらう必要がある。
というのはが本音の2割くらいで、後の8割は訳知り顔をこれ以上増やされたら困るっていう私情だけどね。
「じゃあ、本題の二つ目ですけど、特異点、そろそろ捕えれますよね? 殺していいですよねっていう確認に来ました」
「……やはりその話か。正直に言うとやめてほしいというのが本音だね」
私と榊博士の間に火花が散ったように感じた。当然だけど、榊博士は原作通り特異点にアラガミと人類の共存という意味のないことに可能性を見出している。
まあ、完全に無意味とは言わないし、芽がないわけではないけど、結局アラガミが一匹人間のフリが出来るようになったからと言って、他のアラガミが絶滅するわけでも、他のアラガミが人を襲わなくなるわけでもないし、この星の資源が復活するわけでもない。やるだけ無駄で、新たなリスクが出るだけだ。
無論、私の特異点を殺すという発言はさっさとコアにして、好きなタイミングでノヴァと融合させるという話なので、特異点を次々と殺すわけでは勿論ない。
「うーん、まあ何となく理由は分かる気がしますが、榊博士はネームドですから話くらいは聞いてあげますね。なんでダメなんですか?」
「簡潔に言えば、私はエイジス計画に疑問をいだいている。だからこそ別方向のアプローチが必要なわけだ」
「続けてください」
「エイジス計画は簡潔に言えば、あらゆる偏食因子を使って建築した島で終末捕喰を乗り切ろう。という話のわけだが、終末捕喰は好き嫌いなく、一度全てを喰らい、リセットするだけの絶対性があるのではないかと私は考えている。
そして、ニーナ君の言う通り、特異点が出てくるたびに殺し続けるというのは一つの解だが、どこまで行っても対症療法だ。見ず知らずの所、例えば海とかで特異点とノヴァは現れ融合するかもしれないだろう?」
「コアだけ残しておけばよくないですか? アラガミは結局存在証明するのは周囲のオラクル細胞じゃなくてコアなんだから。それに特異点のコアで神機を作ればもっとアラガミを効率的に殺せるすごいのが出来ますよ?」
「コアは一定以上の時間が経つと再生しなくなるのはもちろん知っているね? つまり、特異点を超時間確保し続けるのは不可能だ。精々が特異点だったコアとなるのが関の山さ」
榊博士の言葉に考える振りをする。勿論榊博士の言うことすべてではないが、私を説得するために言うおおよそのことは予想済みだ。つまるところ、これは私を含めて原作通りの展開にするための伏線にすぎない。
「……じゃあなんですか? まさか、アラガミに身近な人を殺された経験がある我々に、アラガミとオトモダチになろうなんて言うつもりですか?」
「第1部隊の皆にはそういうつもりだ。だが、ニーナ君にはこう言おうか。
アラガミを人間が調教するんだ。特異点はおそらく躾を理解するだけの知能があるからね」
原作を見ればわかる。確かに原作の特異点には分別をつけるだけの躾が効果を発揮する程度の知能は有った。なんせ普通にコミニュケーションを取って、普通に他人の地雷を踏み抜いて、普通にミッションに参加していたくらいだ。可能か不可能かで言えば、私が最も可能だと理解している。
問題があるとすれば、その分別がつく知能が他のアラガミに伝播しないということと、知能があってもGE2のラケル博士みたいに破滅の道を自ら選ぶ可能性があるということだ。
結局、今回の特異点を使って星のリセットをすることはベターどころかマストなことに変わりはない。
「……ちなみに、私がこの話をしに来なければ、黙って実行するつもりでした?」
「さて、そんなことは無いと思うよ。なんせユーバーセンス持ちのニーナ君がいるアナグラで、隠し事は実質不可能に近いからね」
「ふぅん、そういう事にしといてあげます」
「それで、キミの回答はいかがかな?」
「条件次第で協力してあげてもいいですよ」
「ふむ、条件とは?」
「年頃の子を相手にする経験は皆薄いでしょうから、特異点の教育係を私にさしてください。そうすれば、榊博士の共犯になってあげます。勿論支部長にも黙っていてあげますよ」
にっこりと笑顔を張り付けて榊博士に応えれば、榊博士は神妙な顔をして頷いた。榊博士からみればおそらく私はまだ支部長の完全な駒かどうかの判断がつかないハズだ。もし完全に駒だと思われてるなら、エリック君に今朝見してもらった特異点の位置特定の為の資料を作らせても私に見せないように手を回しただろうし、私を支部長と一緒に他所の支部か本部に呼び出させて今回の件から引きはがそうとするはずだ。つまり、榊博士からしても今回のは賭けなわけだ。
私が言う「支部長に黙っていてやる代わりに権利を寄越せ」というこのタイミングでの交渉は、絶対に断れない。
「……教育係の権利が欲しいのは、キミが特異点の近くにいることでいざというとき討伐するためかな?」
「ええ、アラガミのせいで誰かが死ぬなんて悲しすぎますし、自分達でやる外患誘致の責任を負うためには譲れませんね」
「人道的な教育をしてくれると約束してくれるかい?」
「ダメなことはダメ。それを躾けた後であれば」
「わかった。ニーナ君に任せるとしよう。教育内容には小言を言うかもしれないがね」
「考慮はしますよ」
交渉成立。クッキーを取った手をハンカチで拭いて、榊博士と握手をする。
特異点への教育権さえ得てしまえばこっちのものだ。あとはいい感じのタイミングで特異点をさらってしまえば私の勝ちだ。
内心で勝ちを確信していれば、榊博士が変わらず胡散臭い顔で口を開く。
「そういえばニーナ君」
「なんですか」
「リンドウ君の居場所はちゃんと捕捉しているのかな?」
「は?」
なんでバレてる。まさか見つかった? いや腕輪も神機もないし正気を失ってる可能性が高いとはいえ、見つかるはずがない。なぜなら原作ですら見つかってなかったんだから。
だから落ち着け。ハッタリに決まっている。
そんなことを自分に言い聞かせる私の心根を暴くかのように、榊博士の糸の様に細い眼が開かれた。
……少なくともリンドウさんが見つかってるなら今頃もっと大騒ぎの筈だ。それがないということはつまり、榊博士も確証が無いということ。私の反応で確証を作ろうとしているんだろう。
「……ペイラー・榊博士、あまり気分のいいものじゃないですね。ソレ」
「うむ、本当に彼が死んでいるのならさぞや気分が悪い話だろう。私としても悲しみを覚えたものだからね」
「なるほど、エリック君やソーマ以外にツバキさんにも何か吹き込んでたんですね。
以前サクヤさんとツバキさんと私で話したとき、あの人の反応は何かおかしかった。
リンドウさんの件で謎の希望を持っているかのような口ぶりはあなたのせいですか。心底軽蔑しますよ。人に絶望を与えるだけじゃなくて、まやかしの希望まで与えてるなんて。人の心はマーナガルム計画や神機の開発でなくなりました? そんなんだからあなたも支部長も、ソーマとまともにコミュニケーションが取れないんだ」
「……ソーマのことは私も済まないと思ってるよ。だが、今は人命を優先させてもらおう。私だって無根拠にこんなことを言ってるわけじゃないからね」
思わず饒舌になる私と対照的に榊博士は落ち着いてそう言って、モニターの一つを私に向けた。
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア