最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
今月の残業がまだ60時間くらいしかやってないので初投稿です。今回は榊博士視点だ!これでようやくこの長話が終わる。
前回までは榊博士に「リンドウくん生きてるっしょ?なにしてん?」されてニーナがビクンビクンしてた所まででしたね(?)
ニーナ君が話す言葉は常に違和感が付きまとう。
彼女の話す言葉は、当事者意識が他人より薄く、友や部下、恋人のことを話すときでさえ、まるで所有物や自分が気に入っている遊びを自慢する子供のような語り口の時があるし、なによりここ1年は他人の名前を憶えなくなったり口にしないことが増えた。
フェンリル入隊当初は偵察班、医療班、防衛班、オペレーターや整備士、学園関係者等一度名前を聞いた人の名前は常に名前で呼んでいた筈だが、最近はめっきり人の名前を呼ぶことがなくなっている。個人に対する興味が薄れたのか、それとも能力と地位の向上によって他人を見下すようになってしまったのかと思っていたが、どうも違うように見える。防衛班のカノン君やシュン君、討伐班のコウタ君といった他と比べて能力がイマイチ発揮できていない人物の名前はしかと憶えているのに、その三人よりよほど有力な働きをしているように見える人物の名前は呼ばなかったりしていて、期待を含む接し方をしていないように見られた。
この妙な選民についてソーマから聞いた話だと、どうやら彼女は時々人のことをネームドと言ったり、モブと言ったりするようだ。
ネームドの基準はわからないけれど、少なくとも彼女が名前を今も呼んでいる人物はネームド扱いらしく、用法としては「流石ネームドだねぇ」といった形で人を褒めるときに使っているようだ。反対にモブと称している方は蔑称として使っているようで「モブの意見聞いてもしょうがないでしょ」という使い方らしい。
入隊当初から明け透けな物言いをしていた彼女ではあったけど、言葉を選ばず言えば俗な悪口を言うような人物ではなかったはずだが、ストレスから精神が消耗している結果なってしまった可能性があるのかな。
つまるところ何が言いたいかというと、加納ニーナは現在何かの強迫観念や他の精神疾患を抱えている可能性があるのでは、と私は懸念しているわけだ。
これは戦場に立つ人間には珍しい事ではないし、組織の上に立つ人間にもよく見られるからことだからナニカを持ってるからと言って問題があるわけではないのだけれど、有り体に言えば心配なワケだね。
「榊博士も王手を打つまで現場に意見の全貌を明かさないのでわかると思いますが、リンドウさん生存説は優秀なネームドも、数合わせのモブも活気づいちゃいます。けど無駄な活気は現場の混乱、それから無用な死が訪れるのは分かりますよね?」
「言いたいことは分かるがね。少なくとも【現状維持が出来てるからヨシ】それで見過ごすのは我々から彼への裏切りであり、不要な拷問だ」
「リンドウさんは優秀なネームドなんですから大丈夫ですよ。戻ってきてから最初は文句を言うでしょうけど、話せばわかってくれるでしょう。
それに今戻られても本部から新しい刺客が来た時に、リンドウさんや他の人間が殺されるのがオチです。リンドウさんが死んだことによって極東の士気が下がっているという現状が、唯一本部のカス共……失礼、暗殺を企てた連中の留飲を下げれているわけでしょう?
だからリンドウさんには時が来るまで息を潜めていてもらうべきです。私が思い描くみんなの幸せにとって、これは最善ではないかもしれませんが、最適なはずですよ」
眉間に皺を寄せて、真剣味を滲ませながら悲観的で現実的な理想の語りをする彼女の中にヨハンの影を見そうになる。私と比べて仲がいいのは知っていたけれど、どうやら気質も近しいらしい。
やはり彼女にだけでもブレーキ役が必要そうだ。……ヨハンはマーナガルム計画以降止まることを忘れてしまったからね。
「じゃあせめてもの妥協案をだそう。リンドウ君にはこれまで通り外で過ごしてもらうことになるが、状態の確認はしないといけない。今後の説明も必要だろう。
キミの言う”時”とやらが来るまで正気を保ってもらうためにもね」
「……わかりました。確認は私が行います。榊博士にも報告はします。その代わり、ツバキさんにもサクヤさんにもアリサちゃんにもソーマにもエリック君にもコウタ君にもユウ君にもその他の人物全員に内緒です。そこは譲れませんね。絶対に会おうとしてその不用意な動きから本部に行動が捲れます」
「ふむ、妥当な判断だ。今度の特異点捕獲作戦時に私も現場に赴くつもりだからね。その際に私とニーナ君で見に行こうか。それまでにニーナ君はリンドウ君の位置把握を終わらせてくれるかい?
当日、ソーマには付近の露払いしてもらって、我々でリンドウ君と接触を済ませた後、特異点を捕獲しよう」
「第1部隊とエリック君を使った周囲の掃討によって偏食を貫通する飢えで釣るってことですね? その後の大量発生のことを考えると嫌になりますが……まあ餌の確保に困らないと考えればいいですか。
皆が兵糧攻めをしてる間に私がリンドウさんを探せばいいんですね? 期間はどれくらいを目途で?」
「うむ、話が早くて助かるよ。こちらは一週間もかからないと考えているよ」
「思ったより早いし人使いが荒いですね……分かりました、それまでには探しときます」
ふむ、私が一緒に行くことに対して否がないのか。てっきり意地でも一人で会おうとするものかと思っていたけど、本当に善意でリンドウ君を逃がして隠していたのかもしれない。
ヨハンの事は随分と信用してるようだが、彼女が妹のアリア君を含めた待遇を考えると納得のモノではあるからそこに違和感はない。
盲信では無いのは見ていればわかるけれど、妹を守る、自分が全てをやる。という面が強いとこれまでの言動から感じられるね。
専門ではないが
だから
だけど、それだけではない。何かが足りない。ニーナ君を形容するには何か一つ視点が足りてないように感じるね。彼女は私や、ヨハン、他の神機使いとは別のところを常に見据えて行動しているように見える。
これは彼女が携わってきた研究結果からもわかってる事だ。
アラガミ生態、神機デザイン、それら全てに彼女はほぼ理論値じみた速度の研究をしている。無駄な検証がなされてないから彼女の研究は成果が出るのが非常に早い。まるで研究の先に出る
「そういえばニーナ君、話は変わるんだけどね、キミは普段の研究の検証期や理論構想期において1人で考えてるのかい?」
「え? あぁ、まあはい。大体はそうですね。自分の考えを検証するのが楽ですし、他人の考えなんて大体間違ってるのに聞く意味無くないですか? 最後の査読とか、検証理論に穴がないかの確認くらいは頼みますけどそれくらいですけど、それは榊博士もですよね?」
「まさか。たしかに私は天才と持て囃されてこそいるがただの人間だからね。人と話してアイデアを閃くことがほとんどだよ」
「……嘘だ~」
また綺麗ごとを言ってるよ。みたいな顔で私をみてくる彼女だが、この件に関しては私の方が一般論だと思うがね。
にしても、やはり一人で考えた独学か。アリアくんが先日リッカ君に報告していた神機の駆動波形の法則があったそうだが、まだ私は詳細を聞いていないけれど、この姉妹は自分で結論を見つける直感が人より優れているのかな? 数学の天才ラヌマジャンではないが、神とやらが教えてくれるのかもしれないね。
「もしよければ教えてほしいんだが、これまでの理論はどうやって閃いたんだい?」
「え? あーなんでしょうね。自分の中にあるものをそのまま出しただけなので……まあ運が良かっただけですよ。思い付きが、たまたま正解だったていうことにしといてください」
そうやって、自慢するわけでもなく、どちらかというと気まずそうにする彼女。まるで感想文を代筆してもらったら入賞してしまった学生みたいな感じだ。流石にこれだけの量の思い付きをわざわざニーナ君を通して発表する人間もいないだろうから盗作研究ではないんだろうが……。
本当に、ニーナ君は興味が尽きないね。
「じゃ! リンドウさんを1週間足らずで見つけるとなると本当に時間無いので、私はこの辺で失礼しますね。重ねて言いますが、本当に誰にも言っちゃだめですよ。
榊博士は、私を裏切らないでくださいね」
「分かっているとも、捜索の方、よろしくお頼むよ」
釘をさすようにジトっとした湿度の伴う視線と言葉に頷いておく。
私としてはニーナ君が完全な敵ではないという時点で賭けに半分近く勝っているのだから、態々不興を買う必要もないからね。
「さて……」
ニーナ君が部屋を出てエレベーターに乗ったのをカメラで確認し、彼女のユーバーセンスの範囲内からこの部屋がのがれたところで私は本棚と壁をスライドさせる。
特異点を匿うために特急で作った隠し部屋だったが、この部屋の存在を彼女は気づけなかったらしい。
先日ソーマに協力を依頼した新しい製作物偽装フェロモン改のスプレー塗装版は数日たてば効果も落ちるだろうが、少なくとも1日は彼女の目もくらませれることが分かった。
これは、大きな収穫だね。
「ニーナ君。願わくば君の方こそ、私を、アナグラの皆を裏切らないでくれたまえよ」
エタってはないから……
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア