最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう   作:勝てなくても努力して勝つのが好き

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今回はリンドウさん視点です。
サクサク行きます。


4-21

 加納ニーナは優しい奴だ。だけど、少しばかり易しくない奴でもある。

 俺をフェンリルから無理やり引きはがし、アラガミ化しかけながらでも放逐したところを見てもそうだ。

 

 俺は支部長、ヨハネスを怪しんでた。エイジス計画なんていう大それた計画を掲げちゃいるが、その詳細を知っている人間がアナグラには少なすぎた。

 現場の一兵卒が知らねえっつうのは分かるが、リッカや榊博士まで主導は支部長ということと計画は順調に進んでいるとしか聞かないし、決算報告の類にも詳細の皮を被った上っ面だけが書かれてたらしいじゃねえか。

 俺はその辺読んでもよくわからなかったが、あの2人がそう言うし姉上も似たようなもんだったから間違いは無いだろう。

 とはいえ証拠もないのに騒ぎ立てるのも違うから探ってみたらあのミッションでの暗殺未遂。

 

 俺が怪しんで慎重に探っていたつもりだが虎の尾を踏んじまったらしい。

 間一髪のところでニーナに助けられたし、支部長側だと言っておきながら俺を助けてくれた当り優しい奴だ。

 だけど、あのイカレタ計画に乗るのに全Betしてるコイツを説得するのは容易くないし不可能だと思う。そう考えていた。

 

 俺のことはもう捨ておくもんだと思ってたニーナが、なんで今更俺に会いに来たのか、だが。さっき見た自分と関係ない奴に対する攻撃性……いや頓着と容赦の無さを見るに改心したわけじゃないってことは分かるが。

 

「んで、今更何の用だ。俺にフェンリルにもう関わるなと言っておきながら、なんで接触しに来た」

 

 俺への簡易的な処置を済ませて背嚢をゴソゴソと漁るニーナにそう声をかければ、ヘラヘラしながら交渉しようなんて言ってくる。

 

「まあまあ、先にこれどーぞ! 私がお腹すいただけですけど、日持ちするパン持ってきたので一緒に食べながら話しましょう。同じ釜の飯ってやつです。釜っていうか窯ですけど」

 

 渡されたのはドデカイ……フランスパンだったか? それを半分に割って? 折って? 差し出してきたのを受け取り喰らう。久々にちゃんとしたもの喰った気がして、人間味っていうのを思い出す。それに、どこか懐かしい味だ。小麦粉以外にも混ぜ物をして量を出す。その時に出る独特の味。

 

「……美味いな」

 

「まぁツバキさんとアリアが一緒に作った奴ですからね! そりゃ美味しいはずです」

 

「そうか、こりゃ、姉上の、か。どうりで懐かしい訳だ」

 

 思わぬ情報に一瞬込み上げてくるものがある。なにやってんだろうなぁ。俺は。

 アラガミ化が進行した以上、アナグラには戻れないし神機もない。だからってアラガミ化した腕で雑魚を追っ払ってやってここらの住人を守ってやってる気になって、いつの間にか日々を生きるのに必死で支部長の企みもなんもかんもを頭から抜けてた。

 

 ニーナに言われた通り向かった鎮魂の廃寺で妙な奴に会った。

 あの白くて小さい子にはめられた右腕の玉がアラガミ化の進行を抑制してくれてるみたいではあるが、それでも完全な停滞じゃない。徐々に自分が蝕まれるのを感じて、日々自分がすり減っていく感覚がある。

 自分でいうのもなんだが、俺は頑張ってる方なはずだ。

 ああ、ほら、また頭の中が支離滅裂だ。連想ゲームみたいに最終的に関係ないところに着地しちまう。

 

「リンドウさん、今すぐにとはいかないですけどアナグラ、戻れると思います」

 

「……は?」

 

 アナグラに、戻れる……? 

 何を言ってるんだコイツは。俺は既に神機も腕輪もなく、ゆっくりとだがアラガミ化が進んでるんだぞ? あったとしてもフェンリルの規則に則って名誉の戦死という名の処分が下るだけの筈だ。

 

「まずもって私と贖罪の街で別れた時、私が言ったのは結構嘘です。

 あの時はリンドウさんはああでも言わないと本当に暴走してしまいそうだったので、賭けになりますが、私の予想通り特異点とも会えたみたいですしね」

 

「……嘘、それに特異点だ? 

 ニーナ、お前さんのことは嫌いじゃないし好ましい、感謝だってしちゃいるが、今更あの時のお前のマジの言葉が嘘だったって信じろってのかよ。心変わりしたっていうならまだわかるけどな」

 

「リンドウさんの言うことは分かるんですが、あの時は結構私の方も余裕がなくてですね。当時の私は独自で終末捕食について調べてました。その過程で、リンドウさん同様、エイジス計画に探りを入れたんです。第3部隊の救援をしたときに、私のユーバーセンスでエイジスの中身を視ました。

 

 その時に私は勢い任せに支部長問い詰めちゃったんですよね。

【アリアを害する存在を育てるつもりはない】って」

 

 頭を情報でぶん殴られる。

 だがコイツは俺のそんな様子を見ても口を止めない。

 

「その時にまぁ軽く脅されちゃいまして。

【では妹共々庇護から外れるか?】って具合に。

 だから、まあ支部長側につかざるを得なかったんですよ。他に誰が支部長側の人間か、あのデカいアラガミを殺すのを手伝ってくれる側かわからなかったから、ツバキさんも、リンドウさんも、ソーマも、エリック君も榊博士もみんな怪しく見えちゃって頼れないし。

 私からすればアーク計画なんて成功するかわからない計画より、エイジス計画みたいなちゃんとした防壁でアリアが天寿を全うするまでアリアを守り続ける方が安牌ですから。

 

 だからあの時、偶然リンドウさんを助けれたときに、決めたんです。

 リンドウさんには逃げてもらうって。支部長の敵ってことは私の味方に出来ますからね! 

 もっとも、リンドウさんを生かすためにはアナグラ内部で信用できる人を見つけるしかないので、それまでリンドウさんが耐えれるかは賭けでしたけど……現に、ほら! リンドウさん無事ですしセーフかなって……」

 

「なにもセーフじゃねえよ! なんか白くて小さい子供がはめてくれたこの玉が無けりゃ今頃普通にアラガミ化してたわ!」

 

 右手の甲にはめられた蒼く光を放っているようにも見える宝石染みた玉を、ニーナの目の前に押し付けてやる。

 グイグイと顔を潰されたコイツは両手を上げて降参した。

 

「デスヨネ! スイマセン! 

 ……でも、おかげでリンドウさんのアラガミ化、腐ったフェンリル上層部、そのどれもを私の指示に従ってくれれば解決できる目途が立ちました」

 

「誰だよ。まさか榊博士のこと言ってんのか?」

 

 俺の言葉にパチン! と指を鳴らしてしたり顔で頷くニーナ。ちょっとムカついてきたな。

 

「正確に言うと榊博士と第一部隊の面々ですね。

 今度リンドウさんが言うところのその白くて小さい子──特異点の確保任務を極秘で行います。その際に榊博士も外に出るみたいなんで、一旦リンドウさんは榊博士と会って貰ってここに潜伏を続けてほしいです。私が任務の度に足りない資源は持ってくるようにするので、もうちょっと耐えていただきたいですね。

 

 まぁ、まだ榊博士のこと完全に信用してる訳じゃないんですけど」

 

「ニーナ、おまえホントに榊博士疑ってたのか。確かに胡散臭いけど明らかに善いおっさんだったろ」

 

「その胡散臭いが私からしたら致命的だったんですよ~! 研究のスタイルも違うし、こっちが提出納期護っても向こうはそもそもダンマリで勝手にアラガミを第一部隊に狩らせるし! おかげで『アラガミ生態調査課は他と比べて成果が振るわないね笑』 なんて上層部の何もできないデブに煽られる私の気持ちが分かりますか!?」

 

「私怨じゃねえか!」

 

「そうですけど!?」

 

「ハハッなんだそりゃ、認めるところなのかよ」

 

 肩で息をするニーナに思わず笑ってしまう。

 まあ確かに初恋ジュースやらなんやらよくわからんものの研究なんかもよく協力させられてたが、あれ毎度ニーナに報告してなかったのか。通りで毎月毎月発生のメカニズムに外れ値が含まれてる~とかいって発狂してたわけだな……。榊博士がニーナと協調出来ないのは榊博士が悪い気がしてきたぜ。

 

「まあ、榊博士と協調に至ったのは分かった。きっかけとかはまた今度聞かせてくれ。正直まだ実感が湧かないが、一先ずここで潜伏しろってんだな? いつまで待てばいいんだ?」

 

「そうしてください。

 まず潜伏を続けてもらうのはまだリンドウさん生存は私と、榊博士しか知りません。ツバキさんにサクヤさんにも伝えてないです。

 これはリンドウさんが死んだことで意気消沈している極東支部という状況が唯一上層部のゴミが満足する要因だからですね。

 あ、これは今度榊博士に確認取っていただければいいんですが、リンドウさん暗殺に支部長は関わってない可能性が高いので上層部と言ってます。確証はないですけどね。

 

 で、アラガミ化を戻す方法ですが、おそらく今リンドウさんの神機があの黒いヴァジュラの腹の中にあると思いますので、それを回収できれば、その右腕の宝玉と一緒に制御するためのガントレット的なものを榊博士とリッカちゃんなら作れると思ってるので、まあ一旦楽観視してください。

 

 アナグラに戻るタイミングは上層部を刷新してからですね。具体的には出せませんが半年もかからないうちに何とかしますよ。

 方法は私の方でやれることなので、任せといてください!」

 

 半年。これからはちゃんとした偏食因子が打てて、物資の支援もしてくれる。そう考えれば十分耐えれる時間だ。

 ニーナが言ってることがマジならの話ではあるが、流石に数日で捲れるような嘘はつかねえだろうし、その辺は今度来るっていう榊博士に話を聞いて確信を取ればいい。

 

 にしてもあのミッションの件に支部長が嚙んでないってのは本当か? そこばっかりはにわかには信じがたいが。

 俺が調査した範囲……つまるところサクヤに託した記録媒体にある範囲ではニーナのことは何もわかってない。俺が調べれたのはあのドデカイアラガミを支部長が主導で作ってるってことだけだ。状況的にはニーナは支部長に操られてるっていう印象だが、ニーナが出来るヤツ過ぎて本当に操られてる感が無くて怪しいんだよな。

 

 大体フェンリル上層部を刷新する手段ってなんだよ。仮にあったとしてもそういうのは榊博士やそれこそ支部長クラスの政治力がいると思うんだよな。

 腐ったミカンを全部力で処分でもする気か? 俺ら神機使いが出来ることなんて影響力的に限られてると思うんだが……。

 

「……上層部の刷新って、任せるのはいいが何する気だ?」

 

 慎重にそう問いかけたこっちの不安を見抜いたのか、ニーナの奴は不敵に口角を上げて人差し指を立てて口元に運ぶ。

 

「ナイショです。でも、今のフェンリルよりは人道的な方法とだけ」

 

 そう犬歯をむき出しにして嗤うコイツの顔を見て、悟った。少なくとも気持ちのいい方法ではないらしい。少なくとも人道的な方法を考えてる奴の顔じゃないわな。

 まったく、俺と姉上のニーナへの教導はどこで間違えたんだろうな。

 

「で、フェンリルに戻れる。それが俺へのメリットだとしてだ。交渉だったな? 

 俺に何をさせたいんだ」

 

「この生活をもうしばらく耐えてくださいね。ってだけだったんですけど、そういえばこれじゃ交渉じゃないですね……あ、じゃあリンドウさんが調べた情報がどこに隠されてるか教えてください」

 

 ユラリと笑うニーナから仄暗い気配が漏れる。

 ニーナの言葉からサクヤはまだあの記録媒体を見つけてないか、ニーナには明かしてないってところか。少なくとも榊博士とコンタクトが取れるまではあかせねぇよな。

 

「……調べあげた情報をまとめる暇なんて無かったさ」

 

 そう嘯けば、少しばかりの沈黙の後ニカリといつものようにニーナは笑った。

 

「……そうですか、じゃあそういう事にしといてあげます。

 

 さて、と。私は一旦行きますね。榊博士に生存確認はしたって報告しなきゃなので。あ、そこらに居る人と一緒にこれからもいる感じなら次回から食糧配布の量増やすように手だけ回しときますから。さっきのヨー……スケ? イチ? さんに謝っといてください。怖がらせてごめんねって」

 

「ヨーイチに伝えとく。飯の方も助かるぜ」

 

 ……アイツあんなに人の名前覚えるの苦手だったか? 

 去ってくニーナを見送りながら、そのちょっとした疑問をパンと一緒に呑み込んだ。

 

一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます

  • 藤木コウタ
  • 雨宮ツバキ
  • 橘サクヤ
  • アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
  • 楠リッカ
  • 竹田ヒバリ
  • 大森タツミ
  • 台場カノン
  • 加納アリア
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