最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
ようやく頭使うところ抜けました。
リンドウさん捜索を終え、榊博士に報告も済ませたので約5日ぶりのアナグラに帰ってきた感がある。
榊博士への報告が終わるまではなんか気が抜けないからどうにも帰ってきた感がないっていうか、榊博士の身内感が欠片もないんだよね。にしてもリンドウさんが想像以上に元気で驚いたな。記憶では──最大限オブラートに包んだ表現をするなら──もうちょっと我を失ってる感じだったわけだけど、初動で偏食因子を直接ぶち込ませたのが良かったのかな。……私としては都合が悪い方向に進んでるんだけど。
まあ最悪支部長に頼んでおいたモノが完成すれば最悪なんとかなるだろうし、そこまで気にしてはない。リンドウさんが最悪敵に回った場合どうなるか、だけど原作のガントレット製作までの期間を考えるとどうせ完成しないだろうし、仮に試作が出来たところで大した出力は出ないだろうし、そんな状態の人を戦わせないだろうという楽観も多分にあるんだけどね。
それにある意味リンドウさんが主人公組に合流するのは悪い事ばかりじゃない。
ある種の人質が出来るわけだからね。まあそれがどこまで効果のあることかっていうと微妙だけど、こういうことを考えてると、もうすっかり忘れちゃった前世の創作物で聞いた悪役の言葉を思い出す。
護るものが多いせいで、主人公たちは大変だ。
それに比べて私は一つしか気にしなくていいんだから、楽なもんだよね。
楽か? 死ぬほど大変な気がしてるんだけど。
……まあいいか、先手が撃てるのは私なんだし楽ってことにしておこう。
そんなことは置いておいて今は5日ぶりのちゃんとしたシャワータイムを楽しむわけなのでね! 普通に毎日は入れるもんなら入りたいけど遠征とかあると水浴びで精々とかになってくるから、シャワーすると文化的な生活! ってかんじがするよね。
風呂? 寝ちゃうからダメです。
アリアはまだ帰ってくる時間じゃないけど、ターミナルのメッセージをさっき確認した感じ、ツバキさんがサポートしてくれたアリアの発表会は無事終わったらしいし、アリアのよくできました会を今日開くために、さっさと準備しないといけないんだよね。
着替えはアリアが帰ってくる前に済ませればいいから後回しで、頭にバスタオルだけ巻いて、浴場を出る。
部屋の冷蔵庫を開けて、中身を見ればおそらくツバキさんやサクヤさんが作ってくれたであろう料理の作り置きがあった。
元々1週間留守にするかもって話だったし、こうして気にかけてくれるだけありがたい。今日はこれ一緒に食べつつ、私が追加で一品用意したら済むかな。
そうやって献立を考えていれば、おもむろに部屋のドアが開いた。
「あ」
「……悪い」
ドアを開けたのはソーマで、髪だけバスタオルで隠した私と目が合った彼は、数瞬固まった後、気まずげに目をそらしドアを閉じた。
「ラッキースケベってやつか……まあ今更減るものでもないし、恥ずかしい体してないからいいけど」
まあいいか。そういって部屋から出たソーマを置いといて、先に料理を……いや、何か間違ってアリアに見られるわけにもいかないから服を先に着よう。
下着とパーカーを身に着け、ショートパンツだけ履く。
……ソーマ部屋の前にずっと居るな? しかたないから迎え入れてあげるか。
「服着たから入りな~」
「……はぁ、なんで全裸で歩いてんだよ」
おそるおそるといった様子でドアを開けたソーマは、私が服をちゃんと着てることを確認すると開口一番文句を言い出した。
「普通は誰かの部屋に入る前はノックするからね、今回はソーマが悪いでしょ」
「そりゃ、まあ、そうだな。……悪かった。戻ってきたって聞いたからな」
「あはは、ナニソレ。寂しんぼ?」
「ちげぇよ」
軽口を叩きながら、先程の料理の続きを始める。
今回は冷蔵庫の使いかけ全部使って煮込み鍋かな。そんなことを考えながら材料を調理場に出していれば、ソーマが手持ち無沙汰なのか流しに入っていた皿とかを洗ってくれた。頼んでもないけどラッキーだね。ありがたい。
「今回は何しに行ってたんだ」
「どーせ榊博士から聞いてるでしょ?」
「特異点絡みとしか聞いてねぇ」
「正に特異点の位置把握だね。多分第1部隊がこの数日で鎮魂の廃寺付近のアラガミ掃討させられてたと思うけど、それによって起こる飢餓で特異点を釣るんだって。まあ、明日にでも説明あるだろうし、詳細はその時に聞いてよ」
「アイツは知ってんのか」
アイツ?
この場合の代名詞の候補者が多すぎるな。誰のことだ?
「ユウ君?」
「ちげぇ、支部長だ」
「あ〜、榊博士が報告してるんじゃない? 階級的に私が報告する機序じゃないし」
「……そうか。ならいい」
ははーん? さては榊博士からそれとなく見とけ。とか言われてるな? 昨日今日言われてる訳じゃなくて前からだろうけど。
きっと未来ではこのあたりの腹芸も上手くできるようになるんだろうな。その時私はそこに居ないかもだけど。
ああ、そうだ。ソーマをアリアにちゃんと紹介してなかったっけ。後を託すことになるかもだし、そろそろ時間的にちゃんと会わせないとな。
「そういえば私がいない間にアリアとかに会った?」
「いや、俺にあってもしょうがないだろうしな。今日もしばらくしたら戻るつもりだ」
「え~、晩御飯一緒に食べてってもいいよ?
ツバキさんとサクヤさんの作り置きあって配給チケットも余ってるし、ソーマが増える位問題ないしソーマの事もアリアに会わせときたいしね」
「……」
「だから食べてってよ。この後エリック君とご飯食べる約束とかしてるならべつだけど」
「……わかった。けどお前の妹とうまく話せなくても怒るなよ」
「あ~大丈夫大丈夫! アリアがコミュ強だからねぇ。人見知りのソーマ君をエスコートしてくれるよ」
「チッ……そこまでじゃねぇよ」
「ごめんって。その洗ってる包丁ちょうだい?」
拗ねたように無言で洗った包丁の柄を押し付けてくるソーマを微笑ましく思いつつ、受け取った包丁で野菜モドキたちをざく切りにしていく。
ジャイアントトウモロコシ然りなんだけど、この世界の野菜とか肉とかって可食部をめっちゃ大きくしたモノが多いので基本的に水分量が多い。前世の知識として残ってる。キャベツやら大根やらと同じ感覚で料理するとかなりの薄味になってしまう。だから無加水調理が捗るわけでもあるんだけど。香辛料の類が充実したら無加水カレーとか作ってみたさがある。馬鹿じゃねえのってくらい価格が高いので今生では食べれること無さそうなのが残念だけど。ああ、でもGE2ではムツミちゃんという女の子がアナグラの食堂でそれっぽいものを作っていた気がするから、もう少し耐えれば安価に出てくるのかな。
「ああそうだ。ソーマ聞くの忘れてたけど、わざわざこっちの部屋まで来るの珍しいよね。なんか用事だった?」
「べつに、顔見に来ただけだ」
「おお、恋人みたい」
「そのつもりだ」
「……」
ま、まずい。
絶対なんか用があると思ってただけに手痛い反撃を喰らってしまった。
そんな無意味なことする男だとは思ってなかったというか、いやまあ確かにエリック君のお手伝いと任務を除けば彼は基本暇人だとは思うけど、ここまで暇を持て余してるのを私で解消しようという気が合ったのが予想外だ。
一時期はメロメロにしてやるぜ~みたいな気持ちもあったはずだけど、ここまでメロメロになられるとその、なんというか、扱いに困るというか……
い、今はとりあえず無加水鍋を作ろう。
「ニーナお前」
「……なに」
「照れてんのか?」
「照れてませんけど。全然平常心ですけど。寂しんぼのソーマ君に顔見せれてあげてよかった~としか思ってませんけど」
「ハッ、よく回る舌だな」
何だろう。今、何かの格付けがされてしまった気がする。
押してダメなら押し倒せは私の領分だったはずだぞ。いい加減にしろ。
「ニーナ」
「なに!?」
「こんなのが続けばいいな」
すぐにそうだね。と、返すことが出来なかったのは私の心の弱さかな。
嘘なんて、今までいっぱい吐いてきたのにね。
どうせ最後には意見が合わなくて嫌われるのなんて目に見えてるのに、なんて女々しいんだろう。前世の私だったら今の私をきっと鼻で笑ってる。
「……そのためにはまずは特異点をどうにかしなきゃね」
「ああ、俺らを頼れよ。一人でどうにかしようとするな」
「はいはい。もう耳にタコができるくらい聞いたって。さて後はしばらく煮込むだけだし、タイマーかけとけば見とかなくていいし、アリアの3日前くらいにやってた発表ビデオを見るよ!」
ソーマの腕をソファへと引き、部屋に備え付けられた大きめのモニターでターミナルから飛ばしたアリアの論文発表のビデオを流す。
資料の方はタブレットで映して、ソーマに渡してあげる。きっと少し前まではなんで俺がとか、見てもわからなかったであろうモノが、今の彼にはもうわかるだろうから、相応に楽しめるはずだ。
リッカちゃんに査読を頼んでて私には軽い説明しかしてくれてなかったから、私も詳細部分はどんなもんかあんまり知らないんだよね。
『神機の駆動コアことアーティフィシャルCNSの駆動波形の法則』
元々アラガミのコアごとに駆動波形は違うんだから神機作成の第一段階で、慣らしておくことは不可能とされていた技術論に一石を投じるモノになってる。
簡単に言えば、アラガミのコアを討伐者の神機に長時間格納し続けることで、アラガミコアから神機という人工アラガミへの『屈服』が行われる。
屈服したアラガミコアは神機のコアへと加工した際に、討伐神機と波形が9割以上一致する。
そういう研究なわけだけど、これのおかげで今後の研究次第では、神機の複数持ちや、破損した場合の予備、もしくは同一神機に複数の使用者が可能になる可能性があるわけだ。
最悪私がユウ君の神機を使えば新型を自由に振り回せるのかな。波形一緒だからワンチャンできそうだよね。
「ねぇソーマ、私がユウ君の神機使えたりすると思う?」
「お前の腕輪が新型用にコンバートされた後ならともかく、今は無理だろ。
近接型の状態ならともかく、遠距離型は旧型だと腕輪の機能から偏食因子まで若干違うらしいしな」
「だよねぇ。いざというときの為にコンバートしようかな。正直私って遠距離神機使えた方が強い感じするじゃん? アリだと思うんだよねぇ」
「
「新しい神機を私欲のために作る余裕は、確かにないよねぇ」
残念だなぁ。ぐでぇっと、ソーマにもたれかかりながらそういえば、ソーマがすっかり乾いてしまった髪を撫でてきた。
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア