最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
アリア視点回
シスコンは、ひとりじゃない。
ねぇねが遠征っていう任務に出て行ってから早5日が過ぎた。予定だとあと二日以内に帰ってくるらしいけど、実際どれくらいかかるかは分かんないみたい。
寂しいけど、ねぇねに寂しいっていうと悲しい顔をさせちゃうから我慢する。
サクヤさんとかツバキさんとかリッカちゃんとかカノンちゃんとか、ねぇねのお友達や先輩さんたちは私のことをよく可愛がってくれていると思う。
後最近はエリックさんもそうだ。エリナちゃんのお兄さんらしくて、最初はたとぅーがびっしりで怖かったけど、話してみるとびっくりするくらいイイ人だった。
ねぇねの無茶をしっかり止めようとしてくれる、私的極東の中で頼りになる人ランキングがあったら3本指に入る感じがする。
ねぇねはどうにも自分の身に何か起きた時の為に、私を信頼できる人に託せるようにいろんな人に私を会わせようとする。私としては、もう少しねぇねとの時間が欲しいけど、だけど、きっと私の為にしてくれてることだから、笑顔で挨拶して、出来るだけ仲良くなれるように頑張ってるつもりだ。
もう数年たてば私もフェンリルの技術部に入れてくれる。って学校の先生も言ってたし、リッカちゃんも歓迎してくれるって言ってた。この前の発表の後も支部長さんと榊博士の両方から褒められちゃったし、ねぇねの研究成果なんてすぐ超しちゃうんだから! それでそれで、ねぇねはもう働かなくていいよってぐらい稼いで、ねぇねと一緒に壁の中で平和に暮らす。それくらいの高い志が私にはあるんだけど、ねぇねはまるで理解を示してくれないから困りものだ。
そんなことを考えながら誰も居ない居住部屋のドアの鍵を開けて中に入ろうとすれば、おかしなことに鍵が開いてた。
「……ただいま~?」
「おかえりアリア!」
「ゎきゃぁ⁉」
ドアを開けるや否や、おそらくユーバーセンスで感知して待ち構えていたんだろう、ねぇねが私のことを抱きかかえてきたから、私も思いっきり抱き着く。
「も~びっくりした! ねぇねもおかえり!」
キレイな赤髪が、窓から入る夕日に照らされてキラキラ光って、多分シャワーを浴びたんだろう、シャンプーの匂いがする。私をギューッと抱きしめた後に私の顔を見てニコニコと笑う。
その顔が身体が、この世界に遺っているすべての中で、一等キレイで、一等価値があるものだと思う。まだ私が子供だからそう感じるのかもしれないけど、ねぇねの身体は、顔は、髪は、この世できっと一番キレイなんだ。だからねぇねはもっと内勤になったり働かないでほしんだけど、私の力がまだまだ足りないからその願いは叶いそうにない。
って、ねぇねばっか見てたから気づかなかったけど、誰かいる。
「そういえば後ろの人はだれ?」
「ん? ああ、アリアが可愛すぎて忘れてたや!
ごめんごめん、コレはソーマ君です。エリック君のお友達で、この前のアリアの発表に使ったボルグ・カムランのコアを採取して来てくれた第一部隊の私の次に強い人!」
「お前より俺のが強い」
ニコニコのまま紹介されたソーマ君さん……おかしいからソーマさんはねぇねの紹介に口をはさんでいた。珍しいなあ。大体の人は紹介された通りに挨拶してくるけど。
白髪のストレートと褐色肌が印象的なソーマさんに口を挟まれた、どっちかっていうと強さのマウントを取られた? ねぇねが一瞬固まって、凄い意地悪な顔をして口を開いた。
「は~? 討伐数超えてから言ってもらっていいですか~?
誰がなんといおうと2年前からのアラガミ討伐数No.1はフェンリル全支部合わせても私なので」
「索敵が早くて俺より雑魚で数が稼げてるだけだろ。大型の討伐数なら俺が上だ」
「年あたり数体しか変わらないのによく威張れるね~? こっちは研究の片手間にやってることなのにさ?」
「討伐の片手間に研究してる言い訳にしちゃ上出来だな」
「カッチ~ン。怒っちゃいました。キミの今日の晩御飯はサクヤさんとツバキさんの作り置きだけで鍋は没収です」
「オイ、それは今関係ねーだろ……わかった。俺が悪かった」
「分かればよろしい」
言い合いがヒートアップしていくかと思いきや、ねぇねのご飯につられて負けたみたい。でも言い分を聞いてる限り本当にねぇねより強い可能性がほんのちょっとはありそうだ。確かに目つきが鋭くて、長袖長ズボンで隠れてるけど確かにがっしりしてそうだし、嘘じゃないのかな。
「俺は第一部隊のソーマだ。お前のことはよくニーナから聞いてる」
片膝をついて目線を合わせてくるソーマさん。ああ、思い出した。前にねぇねが話してくれたことがあったっけ。たしか、『私並みに強くてイケメンで頭がいいけど不器用な人』だとかなんとか。
ふ~ん、この人がねぇね的にはイケメンなんだ。
「アリアです! 将来の夢は姉を楽させるくらいの大発明をすることと、姉より強い凄腕ゴッドイーターになることです! よろしくお願いします、ソーマさん!」
差し出されたわけでもない手を無理やり取ってブンブン振る。こういうコミュニケーションは大人ウケするっていうのはここ2年で学んだことだ。
元気な子供は好かれる。そうするとねぇねも笑顔になる。そうしたら私も嬉しい。だから今はソーマさんに気に入られるために頑張る時間だ。
……早く帰ってねぇねと二人っきりにしてくれないかな。
「……ああ、よろしく。ニーナに似て元気だな」
「当然でしょ! なんて言っても世界で一番かわいい私の妹なんだから! はい、もう握手タイム終わりです。アリアは私の隣でご飯食べようねぇ」
ソーマさんが手を握り返してくれたと思った次の瞬間にはねぇねがまた私を抱きかかえてきた。2人きりならまだしも流石にあんまり知らない人が居る前だと少し恥ずかしい。
「ねぇね、降ろして。私もう一人で歩けるもん!」
「私が抱きたいだけだからダメ~」
ずんずんと私を抱きかかえたまま洗面台まで連れていかれて、もうなされるがままに手を洗う。
ねぇねは久々に会うといっつもこうだ。これじゃどっちが甘えたなのかわかったもんじゃない。ってツバキさんも言ってたし。やっぱり私が守ってあげなきゃ。
決意を新たに手を洗って食卓の方へと戻れば、もう既にソーマさんがご飯の支度をしてくれていた。
ツバキさんとサクヤさんが作り置いてくれたおかずは、温められて皿に取り分けられてるし、おそらくねぇねが作った冷蔵庫の中身で作った闇鍋──どこが闇なのかは全くわからないけど──が中央にあって各々よそう形になってる。
そういえば、私とねぇねと一緒にご飯を食べるのは女の人以外だとこの人が初めてだ。そんなに2人は仲いいのかな?
「ねぇねとソーマさんは同じ部隊じゃないんだよね? なのにエリックさんより仲いいの?」
「「……」」
普通の疑問だったと思うけど、2人が揃って黙って顔を見合わせた。
なんか変なこと聞いたかな……?
「……ナカヨシではあるよねソーマ?」
「まあ、そうだな」
2人の中にナニカを誤魔化すみたいな雰囲気がある気がする。あやしー感じだ。
「ふ~ん? まぁソーマさんがねぇねにつく”悪い虫”じゃないならいいや~」
ちゃんとケンセーってやつもしておく。ねぇねは私のなんだから、誰にも上げないもんね。
「どっちかっていうと悪い虫は私の可能性ない?」
「黙ってろ」
ねぇねとソーマさんがなんか言ってるけど、小声で耳打ちしてるせいで良く聞こえないので、ちょっと蚊帳の外だなぁと感じつつもねぇねの席の隣に座る。
ねぇねは自分の席に、ソーマさんはねぇねの向かいの席に座った。2人ともなんか気まずそうだけど、気まずいならソーマさんが早く帰ればいいのにな……はやくねぇねと2人きりになりたい。
まあねぇねのご飯はなんでか知らないけど、余り物で作ったとは思えないくらい絶品だから食べたい気持ちはわかるけどね。
同じ手順で私が同じモノ作ってもなぜかねぇねの作ったご飯のがおいしいんだよね。私はこれをこの世の7不思議の一つとしている。
「じゃあ食べよっか! 手を合わせて~、イタダキマス!」
「いただきます!」
「……いただきます」
皆が席に着いたのでねぇねの合図で手を合わせていつもの挨拶? 号令をする。
昔これなんでやるのかきいたら、食材とか生産者さんに感謝するんだってねぇねが言ってたけど、学校の皆はこの挨拶を知ってるのはまばらだった。代わりにお祈りしてる子とかは結構いたけど、富裕層な子には大崩壊前の宗教観がまだ残ってる家庭があるからとかなんとか言ってたっけ。
エリナちゃんの家は公的な場ではお祈りして、プライベートとか学校ではいただきます派だった。エリナちゃんとしてはどっちでもいいみたいだけどちゃんとした方が”華麗”だとエリックさんに言われてからちゃんと手を合わせるようにしてるみたい。
「あ、そうだアリア。この前の発表映像見たよ! 超立派だったじゃん! 流石私の妹だね」
ソーマさんが鍋の中身をよそってくれてるのを待つ間に、ねぇねが例の発表の話を振ってきた。私としてはツバキさんとリッカちゃんのおかげで無事に終わったものだけど、褒められるのは素直に嬉しい。
「みんなの協力あってこそだったけどね! でもあの理論が実証されればねぇねはユウさんっていう新型に任せて戦わなくてよくなるんじゃない?」
「だぁめ。ユウ君は新型だけどまだまだ私のが強いからね。
私なんて居なくてもへっちゃらになったら、神機使いは引退しようかなって思ってるけどもう少し先かな」
「ねぇねが作ったスゴイ神機使いこなせてないの?」
思わずついた言葉に、2人がまた固まった。なんか変なこと言ったかな。ねぇねが新型開発してるとき、「これが使えるってマジ? 最高じゃないっすか」みたいなこと夜な夜なねぇねが呟いてたからすごい神機ってのは私も知ってるのに。
「……ユウ君って結構センスあるよね?」
「少なくともここ数年の新人の中じゃ1番だろうな」
「ごめんユウ君。私が天才すぎるばっかりに……」
「そう思うならもう少し周りのレベルに合わせることを覚えろよ。曲芸染みた動きばっかしやがって」
「ソーマに協調性について苦言を呈されちゃった……ロンリーオンリーなソーマに」
「ぶっ飛ばすぞ」
口では文句を言い合う二人は楽しそうだ。けど、そっか。ねぇねが作ったスゴイ神機はねぇねじゃないから使いこなせてないんだ……なんていうかちょっと残念。あーあ。私がそのユウさんだったらよかったのに。
「んんと、じゃあねぇねが一番すごすぎるってこと?」
「ザッツラーイト! 正解正解! アリアのお姉ちゃんのこの私こそが人類最強ってわけ! だからアリアは安心してアナグラで暮らしてればいいんだからね」
髪が崩れない絶妙な力加減でわしゃわしゃと頭を揺らされたけど思わず反論してしまう。
「むー! 絶対ねぇねは私がいつか守ってあげるんだから! この力関係? も今のうちなんだからね!」
「うんうん、楽しみにしてるねぇ。私という壁は高いから、精一杯頑張りなさい」
けらけらと笑いながら頭を撫で続けてくるねぇねに、ほんの少しの反発を抱く。
ねぇねはいつもこうだ。頑張ったら褒めてくれるけど、私がねぇねより強くなるっていう部分にはまるで頓着がない。あり得ないこと。みたいな感じで扱ってくる。
ねぇねのことは大好きだけど、こういう部分は最近嫌い。
「ニーナあんまり妹をいじめてやるなよ。
……アリアも、まぁなんだ、デザートの配給券やるからそうむくれるな」
ソーマさんが気を使ってくれてるのか、渡してきた配給券はレアモノのプリンだった。しかも合成じゃない高級な方だ。
ソーマさんの気が変わらないうちに慌てて受け取る。
「プリン! ありがとソーマさん!」
ソーマさん、ねぇねの悪い虫かと思ってたけど、イイ人かも!
チョロインでもあるかも。
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア