最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
特異点と顔を合わせるのに3年と10か月かかる二次創作があるらしい。
神薙ユウ視点です。
榊博士の指示の基、第1第4部隊合同作戦──鎮魂の廃寺付近アラガミ掃討──がここ一週間で行われていた。合同とはいえ、第4部隊長のニーナ先輩はなんでも特殊なアラガミの位置観測に榊博士に駆り出されてしまっているので、実質エリックの1人追加だったし、今日はなんでも別行動らしいけど。
そもそもアラガミの掃討をすると大量発生が起きやすいとか聞いたけど、こんな狩りつくしちゃっていいんだろうか。まぁ、オレなんかより頭のいい榊博士の指示だからよっぽどいいんだろうけどさ。
一昨日にニーナ先輩がアナグラに戻ってきていた後、榊博士から今日の討伐で最後だとか言われたけど、ここまでの連続出撃は今までなかったから結構疲れた。とはいえ、たった今倒したシユウで最後らしいのでこれでようやく一息つけるのかな。
「こちらα1、目標の討伐を完了。捕喰後帰投……? もしもーし。ヒバリさん聞こえます?」
いつものように帰投報告をしようとしたとき、突如、発生した通信不良。とはいえ近辺にコクーンメイデンは居なかったし、通信機器の不調かな?
そう考えて、コツコツと自身のインカムを叩いても直らないので、コウタに通信を確かめてもらおうと振り向けば、ソーマとニーナ先輩が榊博士を連れてきていたのが見えた。
「はいは~いストップね! 第一部隊はの皆はシユウの死体は捕喰しないでこっちの物陰に来て~」
「ハイ!」
こちらが3人に気づいたのが分かったのか、ニーナ先輩は声を上げながら手招きしてきたのをコウタが反射的に返事をして駆け足で向かった。
「なんというか、訓練された犬みたいですね。ドン引き、はしませんがなんか変な感じです。普段もあれくらいキビキビ動けばいいのに」
「犬ってのはあながち間違いじゃないと思うわよ? ニーナの戦い方はスリリングだからコウタにとってはいい鞭だったんでしょうね」
「にしても何で榊博士が居るんですかね? ソーマとニーナ先輩が護衛してるとはいえ危険は危険でしょうに」
一緒に出撃していたサクヤさんとアリサと顔を見合わせながらオレ達3人もニーナ先輩たちの方に向かえば、榊博士が胡散臭い糸目の眉尻を下げて揚々と口を開いてくれた。
「いやぁ、みんな。ここ一週間の協力感謝するよ。ありがとう。
キミたちも疑問に思っているだろうことを簡単に説明させてもらうと、最近のこの鎮魂の廃寺付近のアラガミの掃討はとある一匹、いや一体あるいは一人のアラガミを誘き出すためにしてもらったことだ。
そして私がこの場にいるのは、現場のキミたちだけに任せるのは酷なことがこれから起きるからだね」
アチラを見てみるといい。そう言われて、オレたちは揃って指示された方向を物陰から顔をのぞかせる。
「え、は? 人?」
「えええええ⁉人がアラガミを喰ってる⁉」
「あ、あり得るんですか⁉あんなことが!」
オレ、コウタ、アリサが驚きの声を上げていれば、サクヤさんも息をのんでいた。
ソーマとニーナ先輩だけはあんまり驚いてはいないみたいだけど。この二人は知ってたのか?
ともかく、今、オレ達の目の前には文字通り頭kらつま先まで真っ白な子供が、どこかで打ち捨てられていたであろうフェンリルの旗を衣服代わりに纏い、そしてオレ達が討伐したシユウの死骸を喰い散らかしていた。
まるで獣のように荒々しく、まるで人の様に手を使いながら喰事をしているんだ。
「あれは通称特異点。アラガミの進化の系譜の特異点だからそう呼ばれてるよ。私やソーマがお遣い、野暮用と称して単独行動で探させられていた存在でもある」
「便宜上彼女と呼ばせてもらうが、彼女こそ人とアラガミの共生の可能性……だと思ってるわけなんだが、話が長くなってもいけない。一先ず彼女に付いてきてもらうところからだね。ニーナ君、丁重に頼むよ?」
「ハイハイ。人間に対する危害性の無さは確認済みですから、任せといてください」
おそらく榊博士と事前に話を共有されているであろうニーナ先輩が、神機を担いで物陰から出ていき、特異点と呼んだ子供の前まで歩いてく。
足音に気づいたんだろう。子供は振り返りニーナ先輩と相対した。
「はじめまして。私の言葉は分かるかな?」
「ッン!」
「エリック君私から右に7m前に4m地点」
ニーナ先輩が話しかけた瞬間、白い子供は走って逃げだそうとするが、ニーナ先輩がインカムでどこかにいるエリックに指示を出すと、遠方からドガン! というブラストとも違う砲撃染みた音が聞こえてきた。そして数秒後に白い子供の行く手を塞ぐ形で鉄の塊が降ってくる。
「ッ! ウ~? ゴハン!」
反射的に目の前から降って来たものを避けるように飛び下がると、その白い子供は丁度ニーナ先輩の目の前まで来ていた。
にしてもゴハン? まだ語彙が発達してない感じ? なのかな
ニーナ先輩が子供の肩に手を置いて逃がさないように力を籠める。
「言葉はまだわかんない感じね。 ご飯、ほしい?」
自身の神機の格納スペースからアラガミのコア──おそらくサイズ的に大型アラガミのもの──を出して器用に刀身に乗せると、刃先ごと子供に差し出す。
「ゴハン! イタダキマス!」
「行儀が悪い」
子供は目を輝かして叫ぶとニーナ先輩が差し出した神機ごと噛みつこうと飛び掛かるが、先輩は神機を翻してコアを上空へ放り上げる。
飛び掛かってきた子供をひらりと躱し、首根っこを引っ掴むと地面に引き倒し、無理やり座らせる。落ちてきたコアを再度刀身の側面で受けると子供の前に出しながら自身も子供の前で足をたたんで座った。
……本当に曲芸染みた動きだな。ジャグリング得意そう。
「こうするの。いただきます」
「う~? イタダキマス?」
「はい、どうぞ」
子供は一瞬目を回したようだったけど、ニーナ先輩が目の前で行う手を合わせる所作を真似するように手を合わせた。
ニーナ先輩もそれを見て満足したように頷いてコアを差し出した。
ムシャムシャと音を立てながらコアに齧り付く子供の姿を見て、少しばかりジャイアントトウモロコシを齧るニーナ先輩と似てる気がしてくる。食欲がスゴイ。いや、たしかここらのアラガミ討伐しつくしてたから飢えてたのかな?
「よし、ご飯もっと欲しい?」
「ゴハン!」
「うんうん、じゃあついておいで」
「う~、ゴハン?」
「ちがうよ。私はニーナ。ニ・イ・ナ」
「いー、ニイナゴハン!」
「私はご飯じゃないよ」
差し出されたニーナ先輩の手を白い子供は確かに手に取った。おそらく言葉を進行形で学びながら。学習力の化け物どころの騒ぎじゃないなこれ。
ニーナ先輩はその子供の手を引きながら、こちらに向かって歩いてくる。
「餌付け捕獲完了で~す。あと20分で通信制御切れる予定なんでさっさとエリック君回収して帰りましょう!
後榊博士この子はどこで飼うんですか? 一先ずは榊博士の部屋でいいですよね?」
「構わないとも。施設内のセンサーは一時的に誤魔化せるように調整済みだからね。
さて、ニーナ君の言う通り時間もない。一旦帰投するとしようか」
「は、はぁ。了解です?」
俺たち全員の気持ちを代弁するかのようなコウタの気の抜けた返事をするのを皮切りに、いそいそとジープに乗り込みエンジンをかける。
こういう時は近接組が運転して遠距離組には警戒してもらうのが常だから俺が運転するんだけど、ソーマと榊博士とニーナ先輩と白い子供の方はものの見事に近接しかいないけど、あっちにはエリックが後から乗るだろうし大丈夫か。
ていうか今気づいたけどエリックってあんな精密狙撃出来るんだ。何処から撃ってたかはわからないけど先輩の指示を聞くに誤差10m未満ってことでしょ? 先輩は先輩で怖くないのかな。オレだったら頭に当たったら普通に死にそうで怖いんだけど。
「いや~にしてもすごいね。完全人型のアラガミってことでしょ?」
後部座席に座るコウタが呑気にそんなことを言う。
たしかにその通りだが、それってつまりあの子はアラガミが人を喰らって学習した姿ということなんじゃないのかな?
ああ、でも人間への危害性はないってニーナ先輩がさっき言ってたっけ。アラガミの進化の法則をよく知らないから難しいな。
「ええ、体内はおおよそ人とは違う形状でしょうが、少なくとも肌の色以外は人間そのものですね」
「それにニーナとの様子を見ると学習能力もかなり高いみたいね。流石は全身オラクル細胞ってだけはあるかしら」
「あれだけ学習が早いならたしかに榊博士のいう共生っていうのも出来るのかな」
「さぁ? どれだけ可愛くて賢くてもアラガミはアラガミかもしれません。ユウはどう思いますか?」
皆の話を聞きながら運転していればアリサから話が振られた。
うーん。説明も受けてないワケだし、どうって言われてもではあるけど。
「榊博士の話を詳しく聞かないと何とも言えないかな。まあでも確かなのは厄介事に巻き込まれたってことだ。オレも気を付けるからみんなも命大事に! で頼むよ」
隊長代理として、しっかり皆を護るのもオレの仕事だ。まだ真面目な話は慣れないけど、早く覚えなきゃな。
順調にアナグラまでの道を運転してればニーナ先輩から通信が入る。通信制御は切れたみたいだ。
『ユウ君聞こえる?』
「こちらα1ユウです。聞こえてます」
『私たちはエリック君回収してからアナグラ戻るから、みんなはアナグラに戻ったら第4部隊から生存確認を受けたって報告ね。たぶん10分遅れくらいで私たちも着くから神機を保管庫に返したら榊博士のラボラトリ前で待機しといて! ”無駄な問答”はアナグラで起こさないでね』
「……沈黙は金ですね。わかりました」
『いい子だね、じゃあそういうことでよろしく』
ニーナ先輩の言外の圧を感じながらも返事を返せば。満足気な声で通信は切られた。
おそらくオペレーターにはニーナ先輩から報告が言ってるんだろう。機器の確認をすれば通話可能状態だけど何の確認の連絡も来ない。
こういう根回しがしこたま上手くなる必要がオレにもあるのか? 出来る気がしないな……。
「ユウ、大丈夫ですか? 難しい顔をしていますが」
「ああ、うん。大丈夫だよ。今後の第1部隊の動きをちょっと考えてただけだから」
助手席のアリサが顔を覗き込んでくるのに一瞬ドキリとしつつも、そう返す。
心配かけちゃうなんてやっぱりオレはまだまだ未熟だ。
「そうですか。私にできることがあれば何でも言ってくださいね。手伝いますから」
「ありがとうアリサ。頼りにさせてもらうよ」
いやほんとに、書類仕事関係がホントに苦手だから手伝ってもらおうかな……。流石に階級的にダメか? いやでもリンドウさんとか絶対自分でできなかったでしょアレ。どうやってたんだ。酒飲んで煙草吸ってアラガミを倒すリンドウさんしかオレは見たことが無いぞ?
※リンドウと榊博士の会話はまた後日どっかで上がります。
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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藤木コウタ
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雨宮ツバキ
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橘サクヤ
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アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
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楠リッカ
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竹田ヒバリ
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大森タツミ
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台場カノン
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加納アリア