最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
感想で滅茶苦茶希望的観測してる人が居て面白い
「つまるところこの子は我々人間と同じく、進化の袋小路に迷い込んだオラクル細胞の可能性というわけだ」
ニコニコで揚々とした長ったらしい解説をする榊博士の話を、ソーマ以外の第1部隊の面々がオーバーリアクションで話を聞く。ゲームのモーション特有のオーバーリアクションだと思ってたけどみんな意外と愉快な感じらしい。
おおよその話は終末捕食まで知っている私とソーマとエリックからすれば茶番でしかないので、部屋の隅の方で淹れたコーヒーを飲みながら話して時間を潰す。
「にしてもエリック君旧時代の大砲なんてよく使えたね? 精度も完璧だったし、どこで覚えたわけ?」
「フッこれでも貴くあれかしとして育てられた時期があってね。昔取った杵柄というやつさ。といってもニーナ君も同じくらいのことが出来ると思うよ? 砲術は数学だからね」
エリック君が髪をかき上げながら得意げに語ってくれる。
「正確な照準、気温気圧に風速風向、対象の未来位置、地球の自転による弾道の変動。これらを正確に測れていれば弾は9割以上狙い通り飛ぶものだ。
これはバレットエディットでも転用できる考え方でね。
ニーナ君の開発したらしい対環境アラガミ殲滅用バレットのメテオなんて非常に高度な計算の基に出来てたじゃないか。
ニーナ君にだって似たようなことが出来るんじゃないのかい?」
「あはは、あれはまぁ滅茶苦茶事前に計算したからね~同じの作れって言われてももう出来ないよ」
言えない。前世のレシピそのままぶち込んだだけですなんて言えない。
砲術は数学とか言ってるけど地球の自転によって弾道って変わるんだ……知らなかったや。
「ちなみにソーマも出来たりするの? 大砲」
「出来るわけねぇだろ。大体地球の自転による弾道の変化ってなんだ。エリックが言うなら実際にあるんだろうが観測のしようがねぇだろ」
「よかった。同じこと思ってる人ちゃんと居てくれた。ほら、カノンちゃん印のクッキーをお食べ」
「……」
ソーマがこちら側だったことを知り、嬉しくなったのでクッキーを口元まで押し付ければ無言でソレを口に入れた。ソーマも大分素直になって来たな。おねぇちゃんは嬉しいです。
「ニーナ! ゴハン!」
ソーマに餌付けをしているのを見て自分も食べたくなったのか、第1部隊の輪の中から飛び出してきた特異点にみんなが反射的に構えるが、私は気にせず抱きとめる。
涎がダラダラなのでタオルで拭ってやり、躾を継続する。
「おーヨシヨシ。ご飯だけじゃあげれないな。ご飯ください。っていうんだよ? ご飯く・だ・さ・い」
「う~ゴハン! ゴハン!」
「く・だ・さ・い」
「ゴハン! クダサイ!」
「イイ子だね」
神機の格納スペースを開けて、特異点にコアを上げる。
一応暴れたら殺せるように神機持ち込んだけど、これだけ聞き分けがイイなら不要だったかな。
「ゴハン! イタダキマス!」
バシっと手を合わせてから私が与えたアラガミのコアに齧りつく姿に、ああ、ちゃんと化け物なんだなと実感する。
教えたことをすぐに出来て継続するのは、流石全身オラクル細胞マンといったところだけどね。後は私が教育権を持ってるうちに他の皆との接触を出来るだけ薄くして、みんながコレに感情移入をするのを抑えたいところだけど、榊博士の人との共存を目指す以上接触は避けられないんだろうな。ソーマとコウタ君だけでも離せたらデカいんだけど。
「あ、そうだ榊博士。特異点の名前、私が決めてもいいですか?」
「ふむ、私はどうにもその辺が不得手だからいい案があるなら任せるよ。いつまでも彼女やその子では不便だしね」
愛着がわかないように名前は私の方でつけよう。別にシオから特に変える気はないけど。
そう思っていればコウタ君が割り込んできた。
「ハイハイ! じゃあ俺! 俺が付けてもいいですか?」
「ノラミとか? だとしたら却下だけど」
「な、なんでわかったんですか」
心底怖いといった表情をするコウタ君だが、さもありなん。
原作に描かれたことであれば大体知ってるわけだけど、そんなころ言ってもしょうがないので笑って誤魔化す。
「アハハ。そんな顔してたからね。
ともあれ、この子の名前はシオにしようと思って。響きも可愛いでしょ」
「子犬、か。フランス語でも勉強したのか?」
「ちょ──っとだけね。まだ全然喋れないよ」
意味をすかさず補完してくれたソーマに笑いかけながらコアをむさぼる特異点、もといシオの頭を撫でる。
直接シオの身体に触れるたび感じるシオの特異点としての役割、即ち情報集積体としてコアの情報量の多さに目を焼かれそうになりながらも表には出さないように努める。
「ね~? シオ、それでいいよね?」
「シ、オ?」
「そう、キミの名前。シオだよ。シ・オ」
「シオ!」
名前の響きが気に入ったのか、コアを食べ終えれば抱き着いてくる。最初に餌付けが出来た人間っていう立ち位置を親として認識する本能がこのアラガミに備わってるかはわからないけど、少なくとも私のアーク計画は非常に順調だ。
この調子で私が描く地球の姿を学習させてアーク計画を実行できれば、待ってるのはアラガミが居ない楽園かな。
皆からもシオという名前に不満はないようで、意見は上がってこない。
「ニーナ先輩、その」
「どーかした? ユウ君」
「いや、その怖くないんですか? いくら近くに神機があるとはいえ、偏食因子があるとはいえその子、シオはアラガミなんですよね?」
おずおずとした様子で些末なことを聞いてくるユウ君に、思わず笑ってしまう。
「アハハ! 怖い訳ないじゃん。だって、シオは私より弱いもん。
私が負けることなんて不意を打たれない限りあり得ないんだから、怖がる必要ないでしょ?」『不意ニ噛マレタラオマエ死ダダダダダ! ヤメロ!』
「……流石ですね。強いや」
ユウ君と話しながら勝手に口を開く──思念だけど──神機のグリップを捻りあげて黙らせる。
今や私を不意に驚かせて来るのなんて専らこの神機位なものだ。ソーマとの浜でのデート以降さらに饒舌になったコレ。うるさいったらない。そういえばコレの声をシオは聞こえてるのかな。
「……」
やだ。すごい私の神機の方見てる。これ本当に声が聞こえてたらマズイな。
『ソロソロ改心ノ時間ダナ。イイ女ハ往々ニシテ主人公ノ傍ニ居ルモンダゼ』
ケラケラと嗤ってくる神機を一瞥し、アタッシュケース状に戻して部屋の隅に放る。
お節介なのは人間だけで十分だっていうのにね。道具の分際で自我を出して使い手に意見するなよ鬱陶しい。
内心で眉間にしわを寄せていればなにやら私を見てアリサちゃんとユウ君が耳打ちしてる。
「ユウ。今のって」
「多分そうだね。……ニーナ先輩、最近神機への扱い雑になりました?」
「え、ああ。そんなことないと思うけど、なんかあった?」
「整備班からニーナ先輩の神機のアタッシュケース状にしたときに外壁に来るところが最近やけに汚れや傷が目立つって話で、確かに珍しいしどうしたのかなって思って」
整備班、リッカちゃんかな。主に面倒見てくれてるの彼女だし。にしてもそんなところまで見てくれてたのか。思い返せば神機が喋りかけてくる度に蹴るなり壁に当てるなりしてたからそりゃ汚れもするか……。ただの道具から意志を持った道具になったせいで躾の観念が私の中に出てきちゃったのが失敗かな。反省して無視するようにしないといけないんだろうけど、中々にムカついて難しいんだよね。
っといけない。先に弁明だけでもしなきゃ。
「大したことじゃないよ。最近忙しかったからそこまで気に掛ける余裕がなかっただけ。
でも、こうしてシオも捕まえれたし今後は少しゆったりできるから前みたいに丁寧に扱うよ。変なところ見せちゃってごめんね?」
「そういうことならしょうがないですよね! ニーナ先輩アナグラの神機使いの中で一番忙しいって聞いてるので、いやほんとに、お疲れ様です」
「ああ、これはどうもご丁寧にありがとう」
「……お前ら何頭下げ合ってんだ?」
ユウ君と一緒に頭を下げ合うという謎の空間にソーマがツッコミを入れれれば、ラボラトリに和やかな空気が戻ってきた。
やっぱピリピリしてるとこっちも動きづらいからね、出来るだけのほほんと腑抜けた空気が蔓延ってくれた方がありがたいってワケ。
「さて、彼女もニーナ君が付けた名前も気に入ったようだし、数日はニーナ君と私の方でシオの教育をする。皆にも声をかけるときがあるかもしれないから、その時はよろしく頼むよ。
明日以降はいつも通りの任務を受けてくれればいいからね。では、私からは以上だ」
「あ、さっき榊博士の長ったらしい説明の中にもあったと思うけど、これ見つかったら外患誘致で死刑とかアナグラ追放とか全然ありうるから、くれぐれも他言しないでね! ツバキさんにも支部長にもナイショだよ~?
じゃあ、今日はお疲れ様でした! 解散解散! 帰るよ~」
パンパンと手を打ってみんなに帰宅を促し、私もシオの頭を一撫でして帰る。
ご飯は榊博士が与えてくれるだろうし、無いと思うがもし死んでくれたらシオを公然と使う口実も出来てラッキーだ。
にしてもお腹減ったな。今日はほとんどアラガミを倒してないから、神機の分も食べないといけない気がする。
腕輪接続してないのに空腹感を共有してくるのやめてくれないかな。これホントにどういう理屈なワケ?
「……まぁ考えても仕方ないか。私は神機返して来るね~」
「あの!」
「うわびっくりした。どうしたのアリサちゃん」
エレベーターで別れるであろうみんなに挨拶をして先に保管庫に向かおうとすれば、アリサちゃんが緊張した面持ちで声をかけてきた。
「神機返却後で結構ですので一緒にご飯でも行きませんか!」
「全然いいけど珍しいね。2人のがイイ感じ?」
「で、できれば……」
ほほ~ん、相談事かな? ちゃんとサシで話したこと実は無かったし、鴨が葱を背負って来たかな。
「オッケー。じゃあユウ君、キミのアリサちゃんは貰ってくね。代わりにソーマとご飯食べてあげてよ」
「喰わぇよ」
「分かりました! アリサはオレのではないですけど、ソーマとは先輩の代わりに一緒に食べます!」
「おい分かるな」
「オレと飯を一緒に喰いたくない……ってこと?」
「……そうは言ってねぇだろ」
「漫才好きだね~。ソーマ? いい子にしてるんだよ。またね」
「ガキ扱いす」
エレベーターのドアがソーマの文句を黙殺した。
必死になっちゃうところがかわいいよね。鳴らしすぎちゃだめだけど、ソーマも結構ツッコミ気質だからついイジメたくなる。
これがキュートアグレッションってやつかな。
「よかったんですか? ソーマ、怒ってましたけど」
「じゃれてるだけだよ。可愛いでしょ?」
「は、はぁ、なるほど。そうかもしれません」
「アハハ、ピンと来てない顔だね。まぁこれに関しては盲目になってるだけかもしれないからしょうがないけど」
ニーナはシオのことはキャラクターとしては好きですけど、ね。キャラクターとしては。
一人称小説なのであくまで目立たないキャラが多く居ますが、こいつの視点みたいかも!とかありますか?気が向けばそのキャラ視点で一話進行させます
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加納アリア