最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
前回はニーナの安全性確認会でしたね。
今回はそれのエリック視点です。
数日前にソーマからニーナ君の状態を聞いた時は驚いた。おそらくソーマから詰め寄ったのだろうけど、施しの英雄、あるいは不死身と称された彼女が過労からオラクル細胞の制御が暴走するとは……世の中何があるかわからないものとはいえ、正直な所これもまた真実とは言い切れないんだろう。ソーマも彼女自身に聞くのを諦めたからこそ僕に相談してきたのだろうしね。
以前榊博士にニーナ君の負傷の欺瞞を報告し、フェンリル上層と彼女自身のことを観察し始めてはや一ヶ月といったところだが、中々面白いモノが探れたと思っている。僕だけではなく父上──フォーゲルヴァイデ閥──の力もフル活用しているのだから当然の結果ではあるにせよ、それでもここまで華麗に成果を上げれるのは僕自身の力に寄るものも大きいだろうね。
見つけた内容と言えばフェンリル内の不自然な資源の動きだ。数としては4件あった。うちリンドウさんの事件があった以降に起きてるモノが1件、約4年前から継続して起きているモノが1件、6年以上前から起きているモノが2件あった。6年前、すなわち大崩壊直後から起きてる物は少なくともただの汚職だろうから置いておくとして、調べるべきは4年前からのモノと、直近のモノだろうと当たりをつけて深堀をしていった。
出てきた名前は当然統一性はなく、部署もバラバラなものが多かったが、頻出する名前は3つ。榊博士、ヨハネス支部長、ニーナ君の3人だった。
おそらく自分の案件の押し通し方が3人とも似ているからだと思うけれど、いささか華麗さにかける強引なやり口だというのが3人に共通しているね。榊博士は分かる。初恋ジュースを筆頭に珍妙なものよく作っているから、それの一環だろう。問題は支部長とニーナ君なわけだ。
支部長の名前では主にエイジス計画用資源という名目でアラガミのコア、素材を主に集められていたが、エイジス計画の報告書にその建設内訳が何処にも書かれていない。
エイジス計画の進捗などは報告されていて現在約8割超といったところらしいが、エイジス防衛班として割り振られているジーナ君、シュン君、カレル君の3人ともエイジス内部に入るのは禁止されているらしく実際の中を見たことは無いという話だった。
つまり、今のエイジスは何か不都合なことを隠し放題なわけだ。
そこに加えてニーナ君のこれまでの取得してきた素材の記録上の消失が著しい。
異常な討伐数を誇っているニーナ君だからこそ、本部の連中はコアや素材を回収しきれずに霧散していると考えているのかもしれないが、僕の知る限りモスクワで行われたテスカトリポカ率いる群の討伐に試験利用されていたバレット『メテオ』によって消失した小型と、救出任務で稀に起きる間に合わなかった場合の救援対象の処理を除いて、ニーナ君はアラガミの素材を無駄にしていることはほとんどない。にもかかわらずニーナ君が回収を報告しているアラガミの素材やコアの総量は推定の約4割ほどしかない。残りの6割はどこに消えたのか、深堀してみればニーナ君は定期的にエイジスへ資源を運ぶ貨物輸送の護衛任務を受けていることが分かった。
消える先があるとしたらおそらくコレだろうね。というのが僕の調査からでた予想というわけだけど。実際の証拠があるわけじゃないし、ニーナ君を問い詰めたところで、「新型神機の試作に死ぬほど使って計上してないだけ」と言われてしまえばそこまでだからね。
フェンリルの経理部は存在してはいるんだけれど、最終的な差がでさえしなければ何も言わないようだから、それがまかり通ってしまう。
ソーマは直情的なきらいがあるから僕からまだ言えることは無いと思っているので伝えてない。ソーマには申し訳ないけれど、もしニーナ君や支部長から何か本当に悪しきものが出てきたとき、最終兵器として動いてもらう必要があるから、今下手な動きをさせるわけにはいかないんだ。暫しの間歯がゆい思いを抱えてもらうのを許容してもらわざるを得ないね。
さて、そんな怪しさ満点なニーナ君に昨日の夜に呼び出されたかと思えば、そこには神機整備班のリッカ君も居た。ニーナ君の執務室で話されたのはおおよそソーマから聞いていた内容と同じで、今日の特務の前段取りだった。
支部長から命じられた神機運用の安全性の確認、というよりは、超過適正の神機使い自身の運用確認だろうね。
余りにあっけらかんに伝えてくるものだからニーナ君自身には根拠のない、あるいは彼女にしかわからない根拠からくる自信があるんだろうけれど、リッカ君の怒りっぷりは凄かったな。アレが極東に伝わる『鬼を背負う』と言う奴だろう。榊博士まで承認をしていて、ニーナ君の発案じゃないというところで、一旦その場では怒りを抑えていたようだけど、今日のこの特務が終われば支部長や榊博士はリッカ君の報告を聞いた後怒りをなだめることになりそうだ。
その肝心な本人と言えば、一週間程のデスクワーク続きで鬱憤が溜まっていたのか、それを発散するようにいつも通りトリップしてるわけだけど……。
「おっそ! 一週間以上ブランクあっても大型と小型の混戦に負ける気しないんだけど! 俺って神機使いが天職なのかも! アハハ! 楽しい~!」
「……チッ」
その様を僕と一緒に見ているソーマの複雑な感情がありありと見える。まぁ、僕に相談してきたときに「アイツにはコレ以上無理してほしくねぇ」とか言ってたくらいだったのに、本人の様子が『アレ』ではさもありなんといったところだけど。
今日はその長い赤髪を髪留め──
ニーナ君の戦い方がキレイなのは本人の容姿もさることながら、全体を通して無駄のない一種の機能美を感じさせるからだろう。
流石にバスターブレードでいつものショートブレードの様に軽やかに舞うことは出来ないみたいだけれど、最適な距離感で、最高なタイミングで、最大の効率を発揮している。
今も背後からとびかかってくるオウガテイルの攻撃を、アドバンスドガードと呼ばれるようになった技術で弾きながら、斬り飛ばしている。切っ先が頭上を通り、地面に接地したらその勢いを殺さず空中に飛び上がり回転、正対していた大型──ヴァジュラ──の頭蓋にその巨大な刀身を叩きこんでいた。
「ちなみにだけどソーマ」
「なんだ」
「アレ、君なら真似できるのかい?」
「……アラガミが全員討伐された状況を作るのは俺も変わらねぇよ」
極東で最も強いバスターブレード使いの1人のソーマがそうとしか言えないんだから再現性は低いんだろうね。最速討伐が正しいとは限らないんだから比べるのもおかしな話ではあるんだけが……まぁ悔しさは否めなさそうだね。
「じゃあ本日最後だ、たんまり味わえ、よっと!」
ヴァジュラの頭部を引き裂いたまま捕喰形態へ移行した神機が、そのままヴァジュラのコア部に至るまでをガブリと嚙み千切った。以前より
それ以外はまあ、いつも通りと言っても問題ない範囲の暴れっぷりだった。
合流しようとソーマとともに歩みよれば、なにやら小声でつぶやいてる様子だ。
「うん、かけあ……ってるでしょ。だか……れっての」
「ニーナ? 誰と話している?」
訝しみにながらソーマが声をかければ、パッと笑顔をこちら側に向けるニーナ君。
「なんでもないよ! 久々の運動だったな~って」
「? ……まあいい。それで、不調は?」
「無いかな。今まで通りな感触だったし。2人から見てもそうだったんじゃない?」
「まぁ、な」
「精々捕喰形態への移行が前より、ホントに0コンマ何秒程度だけどスムーズになってるくらいじゃないかな。気のせいかもしれないけど、見えたのはそれくらいだね」
『ニーナのバイタル、神機ともに異常な数値は出してないよ! 安全のために偏食因子のメンテの頻度は人の二倍のペースでやった方がイイとは思うけどね! 前代未聞だから! 何度もでもいうけど理論上超危険な状態なんだからね! 自覚してよ!』
現場の所感を述べていればリッカ君の耳を裂くような報告と叱責が飛んでくる。ニーナ君も思わずインカムから逃げるように頭を振っていた。
「も~わかってるってリッカちゃん。でも、理論上危険でも、現実問題で安全は確かめれたんだから1日1出撃くらいはしても良くない? 前みたいに3~5回も出撃させろなんて言わないからさ」
『まずは偏食因子のメンテが先に決まってるでしょ! それ以上駄々こねるとアリアちゃんに
「ぐぅ」
見るからに不服そうだけど、最後の抵抗としてぐうの音くらいは出すことにしたらしい。
ニーナ君が言い含められてる姿をみてソーマも鼻で笑っていた。多少は溜飲が下がったらしいね。これなら後でこの部分でガス抜きする必要は無さそうだ。
このまま何事も無ければ幸いにしてニーナ君が現場にいずれ戻ってくるだろうから、彼女も忙しくなるだろうし、もし悪いことをするならそろそろ手一杯な頃だろう。最近事務方の仕事に注力したとはいえほとんどが特異点への教育だったと聞くし、僕からニーナ君に探りを入れてみようかな。手伝うテイで聞けば意外と口を割ってくれる可能性もある。
どんな内容が飛び出してきても証拠をつかむまでは粛々と協力するポーズをとる必要があるだろうから、一応相応の覚悟はしておこう。……父上とエリナには叱られるかもしれないな。
「ニーナ君」
「エリック君はなんか気になることあったの?」
「いや、今回のことではなく、ここしばらくは割と自由にやらせてもらってたからね。それの報告と相談をさせてほしくてね。僕の上司はニーナ君だから」
「最近は完全に放置しちゃってたから耳が痛いや。わかった。今日の夜にでも時間を取るよ」
「明日でも構わないよ?」
「なんか大事な話っぽいし、早めのがイイでしょ」
人好きする優しい顔でそう言ってくるニーナ君に少し驚いた。緊張が見抜かれてるのかな? 僕もまだまだといったところかな。もう少し華麗な振る舞いを身に付けなくては。
「……わかった。お言葉に甘えさせてもらおう」
「あ、ソーマこれは仕事で合って浮気じゃないからね!」
「分かってる。エリックにだって選ぶ権利はあるだろ」
「お? なになに喧嘩かな? 丁度動き足りなかったから相手してあげようか?」
「ぬかせ。お前の相手を"俺がしてやる”んだよ」
2人が始めた神機を持たない手で互いの牽制のしあいは支部長からの苦言が出るまで続いた。
……この平和も見れる期間が限られるかもしれないと考えると、頭が痛くなるね。
やったなニーナ!仲間(笑)が増えるぞ!
次回は一方その頃のシオと第一部隊です。
みんなはハッピーエンド好きですか?
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ハピエン厨ですけど
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どっちでも美味しく食べれます
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いや、バッドエンドの曇り顔が輝くね