最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
前回はエリック君が意を決したところでした。
今回は一方その頃ってやつです。
「暇だー!」
「そうねぇシオ。なにかしたいことはあるかしら」
ニーナ先輩と榊博士、ソーマにエリックとリッカを連れて何やら実験なるものをしてくるらしい間、オレとサクヤさん、アリサとコウタの4人で特異点、シオの面倒を頼まれている。──ニーナ先輩曰く監視と餌やりらしいけど──シオの暇という声に合わせてこの中だと一番面倒見がいいサクヤさんが声をかければ、ン~と伸びてから、榊博士の私物であろう本棚から一冊を引き出す。
「勉強するぞ!勉強するとな、ママ、シオのこと褒めてくれる!するとな、ご飯、豪華になるからな!」
「偉いわねぇシオ。年頃的には遊びたい盛りでしょうに」
「シオの出生の特性上、学びが楽しいことになっているんでしょうか?コウタ、貴方も見習った方がいいですよ」
「ここでも飛び火してくんの!?俺この前フェンリル式の記述教育受けてきたばっかで、暫く勉強はこりごりだよ」
「あ~たしかにアレは嫌だよね。でもツバキ教官のおかげで大分わかりやすくなったらしいよ」
「アレでかよ!?」
みんなで談笑しながらシオの勉強の様子を見る。
頁をめくり、文字を目で追い、少し動きが止まったかと思えばまた頁をめくる。
人間の紙に書きだしたりとかそういう勉強ではなく、純粋に本の情報をオラクル細胞の塊である自身に蓄えているんだろう。見るだけで分からない単語とかが出てくれば、本棚から辞典を取り出し意味を調べて咀嚼している。
コウタは理解できない生き物を──文字通り理解はできない生き物なのは置いておいて──見るように引いた顔をしているが、サクヤさんやアリサは素直に感心している様子だった。
この凄まじい学習速度を目の当たりにするとコウタの気持ちもわからないでない。というか、オレの代わりに勉強してほしいくらいだ。隊長教育、密度がすごいんだよね……小隊指揮、環境知識、アラガミの進化論、神機改良概念、オラクル細胞の偏食システムetc.思い出すだけで頭が痛くなってくる。絶対にリンドウさんこんなことやってなかっただろという確信があるんだけど、ニーナ先輩とか支部長とか、榊博士とかツバキ教官に薦められると拒否できない雰囲気がある。オレより忙しい人たちが言ってるのに無理とは言えないからね。コレって悪いブラック慣れか?
「にしてもスパルタ教育されたって聞いたけど、意外とニーナ隊長に素直に懐いてるよな」
「初会合が大分
「ニーナ的にはママ呼びじゃなくて先生呼びを定着させたかったみたいだけど、なかなかうまく言ってないらしいわね」
「シオはずっと一人だったらしいですし、社会的つながりというものに憧れているんでしょうか?」
アリサの言葉に少し考えてみる。社会的つながり、コミュニティを世界に例えるなら、シオの世界は現状かなり狭い。アリサの言う通り元々一人で荒野を彷徨いながらアラガミを喰い散らかしていた筈だし、他の存在と協調するっていうのは逆にストレスだったりしないのか?いや、そもそもとして
「……シオには”寂しい”とか”憧れ”とかって感じるのかな。見たところ年相応の振る舞いではあるけど、本心……っていうかそういう心みたいなのはあるのかな」
「今日のユウはなんだか哲学者っぽいですね」
「シオは分かりやすく心あると思うけどね。ほら、榊博士とかソーマより何考えてるか分かりやすいし」
「確かに基本的にご飯のことしか考えては無さそうではあるわね……」
皆の意見に頷く。確かにさっきの発現もゴハンが豪華になる──アラガミのコアが中型から大型とかになるのかな?──とか言ってたし、喰欲はあるだろうからそれをベースに学習させられてるのかな。
今のシオの学んでいる内容の本が「古代人類の農業について」なのもある意味食料のことなのが面白いかもしれない。シオは普通の食糧を喰べないのに。
「シオ、その農業についての勉強って面白いの?」
「楽しいし面白いぞ!ユウもやるか?シオが教えてやる!シオ、ユウの
お姉ちゃん。続柄で姉を指す言葉であり、対象に弟や妹がいる場合に有効な言葉。オレが、シオの弟……?
「お姉、ちゃん?」
「ユウ、シオにまで粉かけてたのか?」
「いや流石にユウでもそこまでじゃない筈でしょ」
「ゆ、ユウどういうことですか……?」
「オレが聞きたいよ!?シオ?オレのお姉ちゃんってどういうこと?」
余りにも唐突に出てきた爆弾発言に全員でざわついた。慌ててシオに確認すれば、ニカリと白い歯を見せながらオレの頭を撫でてくる。いや本当になんだ?オレ、シオと話したことすら少ないはずなんだけどな?
「ユウはなー?ママの子供だからなー?シオもママの子供だから、シオがお姉ちゃんだぞ!」
「……は?」
「そ、そんな、もしかして隊長就任時にニーナ隊長に抱かれていたのはそういう……」
「おおおお、おちつけアリサ。仮にユウのお母さんがニーナ隊長なら……ニーナ隊長超人だし、もしかしたらある、のか……!?」
「あるわけないでしょ!にしてもなんでキミのことをニーナの子供だなんていうのかしら。シオ?彼はニーナの子供じゃないわよ?」
「んー?あれー?でも、ニーナの中のと、ユウの中のアラガミは一緒だぞ?人間は、親子で同じものを持ってるんだろー?違うのかー?」
「え、なにこれ。もしかしてやばいやつじゃない?博士もどってきたら相談しようぜ」
「そう、だね」
あまりにもあんまりな爆弾発言に思考がまとまらない。
俺の中のアラガミ……十中八九適合した神機のことだろうけど、ニーナ先輩が製作に深くかかわってるとは聞いたことがある。けれど、時系列的に同一アラガミのコアが採用されていることだけはあり得ないはずだ。アラガミのコアはコアの状態で年単位の長持ちしないはずだし、なによりニーナ先輩が滅茶苦茶大型とか接触禁忌種を狩りまくって作ったって言ってたから、絶対にアラガミも別物なんだけど、シオの目からにはなぜか同一な物に映るらしい。
「ま、オレ達が考えてもしょうがないか。今何事もないんだし、こういうのは研究職に任せるのが一番だしね!」
「ユウがイイならイイですけど……」
「心臓が強いっていうか……」
「楽天的よねぇ……」
あれ、なんか呆れられてない?
おかしいな、でもリンドウさんも大体こんな感じだったし、そんなもんなのかな。
みんなの視線から逃げるように、シオと目を合わせる。
「シオ、オレが仮に弟だとして、他の兄弟やパパなんかは誰になるんだ?」
「姉弟は私たちだけだぞ!でもー、パパか~。う~ん。ママがパパ?なのかー?」
「パパはソーマじゃないんですね?」
「まあ確かにアイツがパパは柄じゃないよな」
「ちょっと二人とも。アリアとの接し方とかで多分本人もうっすら気にしてるんだから止めときなさいよ」
頭を揺らしながら小首を傾げるシオに聞けばオレだけが血縁らしい。にしてもソーマはパパじゃないのか……とはオレも思ったけど、よくよく考えれば全然シオと接触してないんだっけ。捕獲した日と、後はせいぜい1.2回だったかな。どうにもニーナ先輩が会わせないようにしてるように見えた。あるいはソーマが子供が苦手で避けてるのか。
「ソーマは違うの?」
「ソーマ?えーっと、う~ん。あ、ママのお気に入りだな!ソーマはな、えっと、本で読んだぞ。近所のお兄さんってやつだ!」
ソーマの名前を出せば、少し唸って思い出したシオのいいように思わず笑ってしまう。
にしても近所のお兄さんっていったい何の本を読んだんだ?娯楽小説も与えられているのかな。ニーナ先輩のことだから『情緒の発展性の拡張』とか言って榊博士と吟味してる可能性はあるか?あの人、普段はめっちゃ優しいんだけどシオのことになるとめちゃくちゃドライなんだよね。バガラリーに出てくるモルモットを扱う研究者?みたいな感じがする。オレはモルモットなんて見たことないけど。
「近所のお兄さんか。なら、もう少し愛想よくしてもらいたいね」
「そうかー?シオ、別にソーマは今のままでいいと思うぞ!ソーマな、自分がお腹すいててもいっつもママのそばに居るからな。シオには会いに来ないけど、ママがその扉から出るのを外で待ってるからな。ソーマみたいなのを”健気”って言うんだろ?」
「本当に賢いね、シオ。そうだねソーマは健気だ」
此方が頭を撫でて褒めてやればうれしそうに目を細める。外部居住区にいた近所の女の子を思い出すその仕草にますます人間味というものを感じる。
ニーナ先輩は絶対に心を開く気が無さそうだけど、オレはこの調子だと絆されちゃうかもな。
榊博士はこの子はアラガミと人との共存の可能性と称していたけど、シオを見れば現実味ってのも帯びてくるように感じる。
ドデカイロマンを追い求める榊博士のいざというときのブレーキになりうるリアリストなニーナ先輩は案外いいコンビなのかもしれないな。ニーナ先輩は榊博士のことうっすら嫌いそうだけど。
「ユウ!この農業のこと、がいぶきょじゅーくの人たちとか、フェンリルのほごたいしょーがいの人たちに教えてやれば、そこの人たち喜ぶか?シオ、外にいた頃に見た人達は誰も農業なんてしてなかったぞ!もしかして、知らないのか?」
「うーん。確かに知らないってのもあるけど、アラガミが徘徊している壁の外だと、畑をせっかく作っても荒らされちゃったりで、畑の維持が出来ないんじゃないかな?ゴッドイーターはフェンリルの支部の近くにしかいないからね」
「そうかー。難しい問題、だなー?」
「そうだね。戦える人がゴッドイーターも居ればいいんだけど」
にしても本当に賢い。まだ言葉を覚えて数週間ってところだろうに。軽い意見の言い合いが実際に出来るレベルになるとは……ニーナ先輩ってアリアちゃんの教育も、コウタやエリックの教育も上手くやったみたいだし、教導適正が高すぎないか?二つ名は施しとか蒐集とか不死身じゃなくて超人の方が良い気がしてきたね。
「神機だったか?ママがよく持ってたソレを持ってないけど戦ってたヤツ、シオ見たことあるぞ!」
「え?」
「黒い髪でな、片腕がアラガミ化だったか?オラクル細胞が暴れてたからシオが助けてやったんだ!」
「は!?」
シオから本日二つ目の爆弾が落とされた。
あ~チャートが崩壊する音~~^^
みんなはハッピーエンド好きですか?
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ハピエン厨ですけど
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どっちでも美味しく食べれます
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いや、バッドエンドの曇り顔が輝くね