最後の贈り物は幸せなBADENDとしよう 作:勝てなくても努力して勝つのが好き
チャート崩壊の繋ぎ回です。
「じゃあニーナ。神機はもうここで私が預かってくから今日はもう出撃できないんだから安静にすること! わかった?」
「も~、わかったよ。リッカママ~」
「ニーナのが年上でしょ! しっかりする! ……まったくもう」
「……はぁ」
私と私の神機、イースの第一回安全運用が確認できたので無事アナグラに戻ってきた私たちは、肩で怒りながら神機を運ぶリッカちゃんを見送ったらため息をつく。
心配してくれるのはありがたいけど、小言がね……大丈夫だって言ってるのに。まあなんで大丈夫かをまともに説明できない私に非があるんだけどさ。
イースのことなんて喋ったが最後、そっちの研究で文字通り他に何もできないくらい協力させられるだろうから喋れないよねぇ。
「随分しぼられたな。これに懲りたら余計なことに手出しはするなよ、チクられるぞ」
「うっさいよソーマ。こっちは趣味と実益兼ねてんの。身体動かさないとストレスだって溜まるんだからね?」
「……”アレ”の相手がストレスなら手伝うって言ってるだろ?」
「それはダメ。必要な外部刺激は私が決めるんだから。
……本当は今日ユウ君たちに頼むのだって渋々なんだからね? ある程度は躾けたつもりでも不安は不安だよ。何もしでかさなきゃいいけど」
「ニーナ君のアレに対する力の入れようはそうだからね。ソーマ、仕事に対するこだわりは中途半端になると逆に不快なものだし、そこだけはニーナ君のこと尊重してあげるべきだよ。なにせ安全第一なんだから」
思わぬ援護をしてくれたエリック君にフン、と鼻を鳴らすソーマを連れて、一先ず今日一日シオの世話をしてくれてる第1部隊の皆から、シオを引き受けるためにラボラトリに向かう。
道中の自販機で割高な水を買い、飲みながらラボラトリのドアを開けた。
「ニーナ。そこに座って」
開けた途端に、真顔でうっすら怒ってるのが怒ってるのが分かるサクヤさんにソファに座るように促された。
「え、どういう状況で」
「座って」
周囲には第1部隊の他の面々冷や汗を流しながらも真剣な顔で立っており、シオは居ないからおそらく秘匿部屋。
そして榊博士がソファではなく床に正座していた。
いやなんで榊博士は床に正座してるんだ?
私の運用上の安全確認も現地には来てなかったから、ラボラトリに先に戻ってきたけどそれでサクヤさんに怒られるようなことを榊博士がした可能性があって、それで私が容疑者候補として今から尋問されるのか?
やばい、マジで何で怒られるんだ?
とりあえず怖いしソファにおずおずと座る。
「えっと、何か有った感じですかね……?」
「今日わたしたちはシオの面倒を頼まれたわね」
「そうですね……え、シオの躾が足りない部分ありました? 結構様になってたかと思うんですケド」
「ええ、シオはいい子だったわ、農業のことも暇だからって勉強するくらいには。シオと私たちが会話する中でいくつか気になることが聞けたのよ」
あ、これ絶対アレのことだ。
「1つ、シオ曰くユウと貴女の中にいるアラガミが同じということ」
お、違うかもしれない。それはこの前アリアが発表した神機のコアの駆動波形の同一化の論文の通りだから何問題無いか。
ホッとしたのも束の間、私の頬を両手で掴んで顔を覗き込んでくるサクヤさんに思わず冷や汗が背中を伝う。
「もう1つ、リンドウ、生きてるの?」
ですよね!
サクヤさんが私に怒る内容なんてそれくらいしかないですよね! 知ってました! わかってました!
絶対に意味ないけど一応足掻いてみるか。
「え~~~っと、榊博士がそこで正座してるのと何か関係がある感じですか?」
「ニーナ、私は今YesかNoかで答えられることしか聞いないのだけれど」
それはそう。それは本当にサクヤさんの仰る通りだ。
それに分かってることを聞いてもしょうがないのに、かなり焦ってるな。聞いた限りシオからリンドウさんと似た容姿の人のことが漏れたんだろうけど、リンドウさんの名前までは出なかったから確認してるってところかな。
「その、なんていうかですね。わかりますよ? 言いたいことも、確認したいっていう気持ちも分かるんですが、”言えない”というか”言うべきではない”というかそういう事情がありまして……」
「……事情? 榊博士は話してくれたのにニーナはやっぱり隠すのね。私たちのことが信用できないからかしら」
「こ……!」
この裏切り者ぉ! と声に出そうになったがギリギリ耐えた。榊博士を目を動かさずに知覚すれば、申し訳なさそうにこっちに手を合わせている。私言うなって言ったよね!?
どうすんのよ。私たちの不正のオンパレード! 報告書偽造、物資の不正輸出! 数え出したらキリがないんですけど!? ていうか
ディアウス・ピター討伐後だったら、ごたごたに合わせて奇跡的生還か新たな身分偽造してリンドウさんを隔離保護できたかもしれないのにさぁ!
どうすうんのよ! リンドウさんの仇! っていう怒りのパワー無くなって負けてだれか死んだらさぁ! いや、ある程度は死んでくれた方が計画としては……やめよう。私が導いてあげなきゃいけないんだから。
「……あーもう! 分かりましたよ。私が悪うございました!」
降参です。と示すように両手を肩まで上げる。
そこまですれば、サクヤさんが一つ息をついて私の前から一歩退く。
「ニーナ、わかってると思うが」
私がこの場でもリンドウさんのことについて誤魔化すとでも思ってるのか、ソファの後ろから私に声をかけてくる。流石にこの場では味方してくれるつもりはないらしい。
「分かってるってソーマ。流石に誤魔化さずに話すよ。まだ話すべきではないと思うけどね。
まず、確認ですが、榊博士? 本当に公開するんですね?」
「シオから漏れた以上、情報秘匿の維持は不可能だ。ましてや"黙って信じろ" なんていうのは義も筋も通らない。命をかけて前線で戦うことになる彼らに不信感を抱かせるべきではない。と私は思うよ」
飄々と、そして理路整然と言ってくる姿にムカつくものが有るが、今は飲み込む。本当にどいつもこいつも……!
「わかりました。
じゃあ、みんなが疑問に思っていることについて答える方式にしましょう。難しいこと言ってもしょうがないですから。
まず、リンドウさんは生きているか? にはYesです。自我もしっかりしてる状態で生きています」
「ッ! やっぱり生きてるのね! リンドウは今どこにいるの!」
ソファから立上り、ラボラトリの備え付けのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。あ、この豆高い奴だ。嫌がらせにこれいっぱいみんなに配るか……。
「……フェンリルの外、フェンリルが資源物資を外部居住区に慈悲の配給として捨ててる人が住んでる近辺で身を潜めてもらっています。私だけではなく榊博士も肉眼で確認済みですよ」
「たしかに、私自身でもリンドウ君の生存は確認している。ニーナ君の今の言葉に嘘はないと保証しよう」
榊博士の捕捉に頷けばユウ君が手を上げた。目で発言を促せば、おずおずと口を開く。
話してる間に机に珈琲を並べてればエリック君が請け菓子を開けてくれる。これまたラボラトリの奴だけど、文句は言わないでしょ。
「あのー、ニーナ先輩。じゃあなんでリンドウさんが生きてること黙ってたんですか?」
「いろんな事情があるんだけど、簡単に言うとみんなの士気をコントロールするためだよ。期間としてはディアウス・ピター討伐あるいはフェンリル上層部の更新が行われるまではリンドウさんには表舞台から姿を消してもらうつもりだったかな」
ていうか私が今なんか全部隠してたのが悪いみたいな感じでQ&Aしてるけど、リンドウさんの託した記録媒体のこと秘密にしてるのはサクヤさんもアリサちゃんも変わんなくない? ここでソレを口にしたら何で知ってるのかってなるから言わないけどさ。あ、コウタ君が手を上げた。挙手制ではないけど、どうぞ。
「士気のコントロール? はよくわかんないけど、リンドウさんが生きてるって分かった方が俺的には嬉しいんですけど、ニーナ隊長からすると違ったってこと?」
「コウタ君もおかしいって感じたと思うけど、リンドウさんが消えた任務、色々とおかしかったでしょ?
任務のバッティング、新種のアラガミの大量発生、それから……アリサちゃんのPTSDとね。これは尉官以上じゃないと公開されない情報だけど、あれは大車ダイゴを主犯とした暗殺だったんだよ」
「暗殺ゥ!? そんな、リンドウさんがなんで!?」
「それは確定情報じゃないから明言を避けさせてもらうけれど、大車曰く、見下される気がしてやった。らしいよ」
「オイ、その暗殺がなんで士気のコントロールにつながる? 暗殺は無駄だった。そう思わせた方がいいんじゃないのか」
「それはねソーマ。
リンドウさんが生きてたら、みんなでこんなことしたの赦せねぇ! って犯人探しに躍起になるでしょ? そうなると次は誰が狙われるかもわからない。
だからみんなにはリンドウさんが死んだと思い込んで落ち込んでもらって、ディアウス・ピターを復讐心で敵討ちを果たして見事士気も回復した。というプロセスを踏んでもらう必要があった。そうじゃないと上層部からまた暗殺計画を立てられかねないからね」
実際箱舟に乗るべきではない上層部の連中は少しずつ失脚してもらってるから、まあ、実質警戒しないといけないのはヨハンさん位だけど……ヨハンさんは私を味方に置くうえで必要なコストとして紳士的な解決手段に出てくれるはずだ。面倒でも、安く済むに越したことは無いからね。
口と手を動かしなら机に人数分の飲み物とお菓子がセットすれば、みんなもソファや足りない椅子を持ってきて座りだす。こういう何も言わずとも大人しく出されたものを飲み食いしようとする当たり、まだ信用はあるかな? 流石に理由もなく酷いことはしないと思われてはいるらしい。
「ニーナ君その士気のコントロールの部分は理解が出来る。納得はともかくとして理解はね。それで実際の所、君からの報告はどこから虚偽でどこまで本物なんだい?」
士気とか上層部とか難しい話でコウタ君とかユウくんとかを篩にかけて、話に付いてこれなくしようとしたらエリック君が付いてきた。まあ君はこれくらいの話付いてくるよね。
「んー、リンドウさんを蒼穹の月で私が助け出したとき、確かにディアウス・ピターは撃退したんだけど、リンドウさんの神機と腕輪が無い状態だった。幸い私が持っていた偏食因子を使わせたから即時アラガミ化は無かったけど、並みの神機使いなら何時でも殺せただろうね。フェンリル内部で当時だれが裏切り者かわからなかったから連れて帰るわけにもいかなかった。
だから、ディアウス・ピター撃退、リンドウさんの神機と腕輪の喪失、尉官以上向けの大車ダイゴ関連の報告書は本当だけど、リンドウさんの死亡報告、私の腕の骨折は以前榊博士に詰められた時にも吐いたけど自傷で虚偽報告だねぇ」
「せ、せめてサクヤさんとツバキさんには教えられなかったんですか?」
「ダメだよアリサちゃん。
ツバキさんですら生きてるのを察しただけで顔が活き活きとしちゃうくらいだもん。サクヤさんが悲しむ素振りが消えるのなんて予想がつきすぎるからね。みんないい人だから噓が下手。内部にいる裏切り者にバレると危惧したからの判断になるかな。
とはいえ、全部バレたらいくらでも怒られる覚悟はしてましたから、好きなだけ罵って貰って大丈夫です。黙ってて申し訳ございませんでした」
主にサクヤさんに向かって頭を下げる。
サクヤさんも情報量で急に殴られてるから整理がついていないんだろう。言葉を吐こうとしては呑んでを繰り返している様子だ。
「……言いたいことは沢山あるけれど、いいわ。リンドウが生きてるなら。それで、それだけでいいもの。
あの夜、ツバキさんとニーナと私で話した日のツバキさんの意味ありげな眼はそういうことだったってことでしょう?」
「榊博士が何処まで"ベラベラ情報漏洩してた”か定かではないですけど、おそらくそうです。でもツバキさんにもリンドウさんが生きていると直接伝えたことは無いはずですよ」
チクチクとトゲのある言葉を榊博士に向ければ榊博士も降参するように手をあげて話した。
ほかのみんなの様子を伺えばソーマ、ユウ君が反応して、エリック君も脈拍が一瞬強くなったな? 精々喋ってたのは、というか榊博士から何かしらの聞いちゃいけないことを聞いてるのはこの3人か。
「……ツバキ君についてはニーナ君の腕部骨折の虚偽疑惑が出た時に話をした。そうしたら”ニーナ君がわざわざ自傷したとしても、悪しき理由なわけがない。”と勝手に信じていただけだよ。私と違ってね」
「わー、無垢な信頼は嬉しいデスネー」
思いがけずツバキさんからの特大信頼が判明して気まずくなってしまった。コーヒーを飲んで誤魔化していれば、ソーマに鼻で笑われたので頭を振って隣に座る彼に簪の飾りで攻撃しておく。えいえい、見せもんちゃうぞ。
にしてもこれどうしような。流石に神機回収されても腕輪を再接続は出来ない以上、あのガントレット? みたいな神機の制御機構が作られる前にはアーク計画が間に合うと思うんだけど……最悪+リンドウさんした第1部隊と戦うことになるのか。
助けようとなんてしなきゃよかったな……なんかハッピーエンド目指しすぎかな。身の丈ってやつを自覚した方がいいのか、でも、モチベの維持には必須だよね。できうる限り、より良い未来って言う奴はさ。
ニーナほんまにシオのこと嫌いになりそうじゃないですか?
みんなはハッピーエンド好きですか?
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ハピエン厨ですけど
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どっちでも美味しく食べれます
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いや、バッドエンドの曇り顔が輝くね