※末っ子ちゃんの設定
中野藍(なかの らん)
12歳の頃に中野マルオに引き取られ、5つ子の一つ下の妹になる。お姉ちゃん達のことはちゃんと尊敬してるけど、1番上のお姉ちゃんに対してはちょっと複雑な乙女心が。
なお、容姿は似ても似つかない所の話ではないので、最初から義理の姉妹だと周囲に伝えるようにしている。
「藍ちゃーん……」
「はいはい、どうしたの?」
「フータロー君がね〜?」
まーた始まった。一花お姉ちゃんの、上杉先輩の話。お姉ちゃんがわたしに彼のことを相談するのは、こんなことわたしにしか話せないからだって、頭では分かっているのだけれど、でもやっばり聞きたくないってワガママを言うわたしが心の中にいる。
お姉ちゃんが恋をしてから、お姉ちゃんはすっごく可愛くなった。ううん、元からとても美人さんで自慢のお姉ちゃんだったけど。
そうじゃなくて、ふとした時に見る表情に見蕩れることが多くなった。例えばほら、今みたいに彼のことを思い浮かべている顔とか。
「……だって!ニブチンにもほどがあるよねえ」
「うんうん、上杉先輩ってそういうとこあるもんね」
「でね、あんまり気にしてくれないなら、お姉さん次は大胆に行こうと思って!」
「一花お姉ちゃん、常に結構大胆だと思うけど……?」
「押してダメならなんとやら!」
「いやそれダメ押しだから!」
「じゃあどうしろって言うの?フータロー君のことだから、ちょっとの事じゃ気にしてくれないよ?」
「うーん……」
わたしはどうして、想い人の片想いを助けなくちゃいけないんだろう。たまにそういった疑問が湧き出てくることがある。考えちゃいけないことなんだけど、お姉ちゃんに振り向いて欲しいのと同時に、お姉ちゃんに頼られて嬉しいなんて、複雑な気持ちが邪魔をするんだ。
「……お姉ちゃん、ごめん。わたしじゃ思いつかないよ」
「そう?私も妹に何聞いてるんだろ、自分で考えなきゃね」
「ごめんね、一花お姉ちゃん」
「んーん、気にしないで。そうだ、今日はお姉さんと一緒に寝よっか?」
「へっ……い、いやいやいや!いいよ、1人で寝れるよ!」
「遠慮しないの!」
「遠慮とかじゃなくて……!」
「それとも私のこと、嫌いになっちゃったかな?」
「嫌いになんて……好き、だよ」
「ん、良かった。じゃあまた後でね」
そう言って頭を撫でてくれた、一花お姉ちゃんの笑顔。それは今まで見たことがないようなくらいに綺麗で、思わず釘付けになる。なかった表情を、どうしてわたしに向けているんだろう。聞くより先に、お姉ちゃんは部屋の扉を閉めてしまった。
__今夜、どんな顔して会いに行けばいいの?
「やっ……ば……」
我ながら馬鹿だったなぁ、ほんと。可愛い妹をからかって、その結果がこれ。照れて照れまくって逃げ出して、自爆もいいところ。
さて、嘘つき一花お姉さんは、どこまで妹に嘘を吐き続けられるだろうか。いつまで妹に、彼を好きな振りを通せるだろうか。
あの子があんなんじゃ、きっと早いうちに根を上げてしまうのだろう。だって私の妹は、私たちの妹は、世界で1番可愛いんだから。
「……好きだよ、藍」
誰にも譲りたくない、五等分なんて出来やしないたった1人の女の子。私のことが好きで、ありもしない私の相談に乗ってくれて、それでも不満そうに眉を顰める愛おしい子。隠せてると思ってるのかな。バレバレだよ?私だって、同じくらい君のことを見ているんだから。
あんな"好き"でも喜べる、単純な頭はまだ浮かれてる。
__さぁ、今夜もまた、良い夢を見させて欲しいな。