ジャンルごちゃ混ぜ百合   作:昼瀬七

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今回はプロジェクトセカイから、東雲絵名と夢主ちゃんのお話です。


軽い設定は話の中に出てきますが、一応記載しておきますね。

優(ゆう)


金髪を肩甲骨あたりまで伸ばし、若草色の瞳は前髪でほぼ隠れている。美形であり可愛い顔立ちをしているが、本人は過ごしやすいパーカースタイルを好む。


2人きりのお城の中で【プロセカ】

暗い部屋でPCの起動音だけが響く。どうせ聞こえていないだろうけれど、出来るだけ音を立てないように布団の中で体の向きを変えた。

 

高校を卒業してニーゴの活動がプロと遜色無いようになってきた今、大学に通いながらも絵名は変わらず絵と向かい続けている。

 

頑張る彼女を見るのは好きだし、かれこれ3年も恋人として過ごしているから、もう不満はない。というより、私の方が諦めたような感じだったと思う。彼女の描く絵も、大好きだしね。

 

 

「……えな」

 

 

当然、名前を呼んだってヘッドホンを突き抜けるようなボリュームでは声を掛けられず。邪魔をしたいわけじゃない、ただ顔が見たくて声が聞きたくて……一緒に、眠りたいだけなのだ。

 

でもやっぱり、絵名のことは応援したい。それが彼女が私に求めることだと、分かっているから。

 

 

「優、呼んだ?」

 

「へっ」

 

「今、絵名って聞こえた気がしたんだけど」

 

「う、ううん、呼んでないよ。サークルの皆じゃなくて?」

 

「ナイトコードでは名前を呼ばないし、それに私は優の声を聞いたんだけど」

 

 

どうやら確信を持っているらしい。そんなに大きな声ではなく、小さくて布団に吸い込まれるくらいのボリュームだったと思うんだけど。良く聞こえたね、皮肉は飲み込んだ。

ヘッドホンをデスクに置いて、絵名は流れるようにナイトコードをログアウトした。作業中のモニターはそのままに、チェアを引いて立ち上がる。

 

 

「絵名、もういいの?」

 

「呼ばれたし、そんな顔してるし」

 

「どんな顔……」

 

「それに、私もちょっと気分を変えたいのよね。優に聞かなきゃいけないこともある」

 

「私に?」

 

「昼間、優のスマホにかかってきた電話の相手、私の知らない女の名前だったんだけど、何?」

 

「知らない女の子……え、なんで?」

 

「私が聞いてるんだけど」

 

 

戸惑いを浮かべた表情で、慣れた手つきで私のスマホのロックを解く絵名が、次に見せた画面は着信履歴。確かにお昼頃に誰かが私に通話を試みようとしていたのが残っている。そういえば私、今日のお昼何をしていただろう。閑話休題。

 

お生憎様、表記されている名前に聞き覚えはない。私が人の顔と名前を覚えないというのもあるのだろうが、そうだとしても心当たりが無さすぎる。

 

それに、絵名と私は同じ学部でサークルには所属していない。キャンパス内で常に同じ時間を共有している私たちが、お互いの知らないうちに交友関係を広げているなんてことは無いはずだ。私は人見知りだし、絵名は私に虫が付くのを嫌う傾向にあるし。

 

頭の中を必至に探して、ようやく一つだけ、思い当たる節を見つけることに成功した。それは1週間前のこと。

 

 

「……連れてかれた飲み会、この人いたと思う。確か学部が違うとかだった」

 

「飲み会……あぁ、優のこと一点狙いのあれね。なぁんで恋人持ちの女狙うんだか……しかも、女が」

 

「私、だった?絵名じゃなくて?」

 

「優だった。みんな酔わせようとしてたじゃん、強いから全然潰れなかっただけで、多分持ち帰るつもりだったわよ。最悪私以外みんなグル」

 

「……よく気づいたね」

 

「あー、うん、まぁね。前から色目っていうかなんていうか、そういう視線送ってるのには気づいていたのよ。アンタ仮にも配信者だし」

 

「あの子たち、私が配信者だって知らないと思うけど」

 

「いや、メンバー入ってる」

 

「珍しいね、女の子なのに」

 

「多分ガチ恋、うちのチャンネル本当に見てるのかしらね」

 

「んね」

 

 

大学に進学してから、私は動画投稿サイトにチャンネルを開設した。ニーゴの活動が羨ましかったのもある。余談だが、絵名や他の3人にとっては私もニーゴのメンバーの1人らしい。時たまに頼まれて曲を歌うこともあるし、定期的にうちのチャンネルで歌ってみたを投稿することもあるけれど、曲作りに私が関係しているわけでもないのに。

 

閑話休題。今日はどうやら話を逸らしたい気分らしい。

 

主に配信するのはゲームや雑談で、それには何度も絵名が写り込んで来た。声や顔だけでなく、多分絵名は画面の向こうのリスナーに嫉妬しているんだと思う。何度もしつこいくらい、私のモノだからって釘を刺してマーキングして、その度にリスナーさんは「またか」「仲良し」「幸せにな」なんて、茶化すようなコメントを残していく。

 

まぁようするに、私は絵名と付き合っていてそれを公言していて、それを知っているはずなのに私に恋をして、あまつさえ絵名の見ている前で私を連れ出そうとしていたわけだ。気づかないうちにアドレス登録までして。納得出来る着地点を見つけたからか、絵名の顔が段々と不機嫌を訴えてくる。ここからしばらくご機嫌取りに勤しむことになる。最初は、寂しがり屋の私を甘やかすつもりだったらしいのに。

 

 

「まぁ、次会った時に忠告しておくわ。しかし本当、昔から優は女にばっか好かれるわよね」

 

「そうだね、男の人はあんまり来ないかも。なんで?」

 

「なんでって……アンタ、自分の容姿考えなさいよ。派手な金髪のくせに目立つのは好きじゃないし、せっかく綺麗な瞳なのに大半が前髪で隠れてるし、顔がいいのにパーカーばっかり着てるし」

 

「……貶してる?」

 

「褒めてる。ていうか、これでも私、優が私のコーデ着てくれるの嬉しいんだからね」

 

「ん、そっちじゃないからね」

 

「とにかくね、優は女に好かれやすいルックスだと思うのよ。可愛がりたい欲が刺激されるんだわ」

 

「よく分からない」

 

「まふゆみたいね、そういうとこ」

 

「だって昔から、褒めてくれるのは絵名と愛莉だけだもん。大体、整えればいいのにとか言いながら、絵名は着飾りすぎないよね」

 

「優の魅力に私たち以外が気づくのなんて真っ平ごめんよ」

 

「絵名、寝てないならそう言って」

 

 

眠くないし、そう反論する彼女が、私の胸にグリグリと頭を押し付ける。私の背中へと回っていた手がモゾモゾと動き出し、下へと向かっていく。やがて部屋着の中へと侵入すると、ようやく何をしようとしているのかを理解した。こんなだから、絵名に鈍いだのなんだの言われるのだろうか。

 

 

「絵名?」

 

「寂しかったんでしょ?」

 

「……だって、背中しか見えなかったから」

 

「知ってるから、優がヤキモチ妬きなの……かわい」

 

「……えな、明日も一限からある、よ」

 

「っは、囁いただけでそんなカオされてもね。あるから何?止めてってお願いしてみてよ」

 

「……絵名」

 

「続けていいの?」

 

「……止める気ないでしょ?」

 

「ん、正直全く無い。他の女から連絡来るわ男から好かれない理由考えるわ、あまつさえ疲れた恋人を誘惑するわ。今日の優、ぶっちゃけ食われるために存在すると思う」

 

「私は寝るべきだと思うよ、絵名。ほとんど私悪くないし」

 

「じゃあこの欲どうすればいいのよ」

 

「明日じゃ、だめ?明後日なら講義無いよね」

 

「このまま眠れそうにないんだけど?」

 

「キスマーク、見えるとこに付けていいよ。明日それで1本動画撮ろ」

 

 

それがこの間の女の子たちに分かりやすく証明出来るでしょ?そう言えば、あからさまに嬉しそうな声色で、でもどこか渋々といったふうに、仕方がないわねと零した。

 

だいぶ適当にあしらったはずだが、これで気が済むのなら構わない。単純だなぁと思いはするが口にするのはやめた。寝かせて貰えないのは分かっていた。

 

 

「何撮るの?」

 

「いや別に、考えてないけど。コメント返信でいいかな、ガチ恋コメ拾って叩き折って、あとは絵名がちゅーして終わりでいいんじゃない」

 

「生配信の方が分かりやすくて良さそうね」

 

 

絵名は私の髪を撫でて、ようやく布団の中に入ってきてくれた。優しく抱きしめてもらって、忘れかけていた眠気が波のように襲ってくる。

 

 

「えな」

 

「なぁに?」

 

「……起きるまで、隣だよ?」

 

「善処する」

 

「おやすみ」

 

「ええ、おやすみ」

 

 

好きな人の匂いってどうしてこんなに落ち着くのだろう。すぐに私は夢の中に沈んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健やかな寝息を聞きながら、私はずっと眠る彼女の髪を撫で続けていた。動画を投稿し始めることに賛成したのは、そこに私も写れば彼女が私のモノであることを証明出来るからだった。

 

昔から、優は面倒な女に好かれることが多かった。同性から見ても可愛くて守りたくなるような子で、それが恋でも友情でも、優の傍に執着を見せる女は少なくなかったのだ。

 

今までにないくらい綺麗に付けることが出来たキスマークを撫でれば、寝ているはずなのに小さく声が漏れる。この子、本当に手を出させないつもりなのだろうか。

 

 

さて、明日例の女に会ったら今度こそ約束させる。再三に渡って行ってきた忠告も、別の女友達を使えば抜けられるとでも思っていたのか。何度言っても聞かなくて、そこまでしてくるのなら私も彼女のことは同期とは思わなくていいだろう。

 

赤の他人。そう認識していた方が制裁を加えやすい。

とは言っても、やれることなんてたかが知れているから、注意喚起の動画を上げるくらいしかもう残っていない。何度でも言うが、私は「優は私の恋人」だと幾度と無く伝えているのだから。

 

とりあえず連絡先は消しておいて、彼女の頬を撫でる。起きる気配は無い。こうも無防備に過ごしているから厄介なのに付きまとわれたりするんだ。せっかく虫除けに全力を注いだって、これじゃまるで意味が無い。

 

 

「……優」

 

 

幼子のように丸まった彼女を抱き寄せ、私にもようやく眠気がやってきた。

 

私の女、私の所有物。他の誰にだって渡さない、私だけの優。

初めて出会ったあの日の彼女を思い出して、その額に口付けた。

 

ずっとずっと、守ってあげる。私の腕の中で、2人きりで。

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