【完走】ようこそ実力至上主義の教室へAクラス最速卒業RTA:1億ポイントルート 作:enari_K
坂柳有栖曇らせRTAはーじまーるよー
カチコチカチコチと部屋には時計の音だけが響いていました。時刻は正午を指しています。今日は休日ではなく平日ですが私は学校に行く気になれません。あの日から私は現実を見ないことにしたのです。
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─────最初は路傍の石程度の存在でしかありませんでした。
5月Dクラス主導で各クラスで同盟を組もうとする提案がありました。内容は全クラスのクラスポイントを0ポイントにしてみんなで同率Aクラスになろうと言うものです。この学校で重要な教師からの話をちゃんと聞いてないとしか思えないような同盟。正直笑いをこらえるのが大変でした。そしてその同盟に罰則を設けない以上情報を盗むだけ盗んで裏切ってくださいと言っているようなものです。このDクラスによるお粗末な同盟とも呼べないような同盟にあえて乗ることにしました。このときそれによって今後有利になると本気で信じていたのです。─────それが巧妙な罠だとも知らずに。
やはりすぐに龍園くんが裏切り、期末テストで各クラスに攻撃を仕掛けてきました。葛城派の戸塚弥彦という生徒が期末試験で捏造された過去問をクラス内に配布したのです。それを見て私はAクラスの自派閥の生徒にその過去問を使わないことを命令しました。
結果としてAクラスでの私の支配が強まりました。学年の大半は龍園くんがやったと思っていましたが彼はこの件で自身の駒が何人か退学しています。本人はクラスに使うなと呼びかけていたようですが言うことを聞かない者達がいたらしいのです。一方Aクラスの自派閥からは誰一人退学者が出ていません。それのおかげでAクラスの一部ではこれは私の仕業だと思われているみたいです。退学を防げなかった葛城くんの評価は失墜し私にターゲットにされたくない生徒達は私の派閥に入ってくれました。葛城派の一部の生徒達からは親の仇のように逆恨みをされましたがそれすらも些細なことと思えるほどにこの件で私は得をしたと思っていました。────────特別試験で葛城くんが指揮できない状況を作り上げることが目的だった彼が一番得をしたとも知らずに。
あのお粗末な同盟の発案者である彼がリーダーを務めるDクラスの惨状は酷いものでした。10名のクラスメイトを退学させ、クラスポイントが0に戻ったことにより学級崩壊それに加えていじめまで発生しているらしいのです。傍から見て彼がDクラスのリーダーに相応しくないのは明らかでした。
だから私は警告しました。今すぐにでも綾小路くんにリーダーの座を譲るべきだと、その時からです。彼が私に向ける眼差しが路傍の石に向けるものに変わったのは。─────────今となってはありえない話ですがこの時の私は彼の目を負け犬の遠吠えだと本気で信じていたんですよ?
時が経ち、彼らがバカンスと称した特別試験から帰ってきたときもDクラスのクラスポイントは0のままでした。だから私は再度善意のつもりで彼に警告しに行きました。Dクラスのリーダーの座を降りるべきだと。………そこで彼に聞かされた計画は私が想像すらしていなかったことばかりで、彼は勝ち逃げをして私は気づかない内に敗北していたのだと知りました。そして彼は私が天才であるということを否定してきました。このとき私が自身が天才ではないと認めていればこんな未来は訪れなかったのでしょう。でもそうはならなかった。過度な自信家だった私は父が天才である以上自身が天才であると疑っていなかったのです。────────その日からすべての歯車が狂いだしました。
彼がいなくなったことでDクラスのリーダーは綾小路くんになりました。私は体育祭の後彼を呼び出し宣戦布告をしました。────偽りの天才を葬るのは私にこそふさわしい、と彼はそもそもこの学年に天才はおらずお前にも興味がないと言いそのまま去っていきました。この彼の言葉を愚かな私は挑発だと受け取ってしまったのです。私はより一層闘志を燃やし彼に挑まんと決意しました。──────もしもの話ですがここで折れていれば自身が天才ではないと認めていればここまで悲惨な未来は訪れなかったでしょう。でもそうはならなかった。どこまでも愚かだった私は自身の父が天才であるという不変の根拠のもと自身が天才であると信じて疑わなかったのです。
その不変だと思っていた根拠が近い将来崩れてしまうことも知らずに…。
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3学期になり始業式が始まりました。その始業式で理事長の交代が発表されました。そして父が居るはずだった場所に代わりに立ったのは彼でした。この学校のAクラス特典は学校が生徒が願った仕事に就くのをサポートするだけです。これまでも歴代のAクラスのメンバーでこの学校の理事長になることを願った生徒はいました。その度に父はその生徒と理事長の座を賭けて勝負をし父はそれに勝ち続けたからこそ私は父が天才であると疑わなかった……。ですが今理事長の席に座っているのは彼です。つまり父は負けたのです。この日父は天才ではなくなり私が自身を天才であるとしていた根拠はなくなりました。その結果私はただの哀れな障害者に成り果ててしまいました。
──────路傍の石と思っていた彼は実は巨大な大岩で私そして私の父までもを粉々に砕いていきました。
◇◆◇◆◇
私は見たくありません。
彼が父の教育は間違っていたとばかりに学校を改革していくのを。
私は聞きたくありません。
彼の変革によってこの学校がより良くなっていくのを。
ですが部屋に閉じこもっていても情報は伝わってくるのです。とあるニュースによると理事長が彼になってからこの学校は急成長したとあります。違うニュースによると彼が理事長になってからこの学校の評判は良くなったとあります。
……いつからか私は外の情報を取り入れないようになりました。それでも外から伝わってくるのです。かつて死人のような顔をしていたDクラスの生徒の楽しそうな笑い声が。かつてお互いに敵視しあっていたクラスが違う生徒達が互いに仲良くしている様子が。
………私はどうすれば良かったのでしょうか。今からでもあの輪に入ることができるのでしょうか。いいえ、分かっています。私がたくさんの生徒を退学させたと思い込んでいるAクラスの生徒達はもはやなんの力も持たない私を許さないでしょう。学校を欠席し続けただいたずらにクラスポイントを減らし続ける私を許さないでしょう。今だって時々私を恨んでいる生徒が扉を叩き「善くも私の友達を!」といった内容の怒号を撒き散らして帰って行きます。もはやAクラス内で事実となっているそれを、当時支配に有利になるだろうと私が否定しなかった結果事実となっているそれを否定したところで無駄なのは分かりきっています。
だから私は今日も部屋から出ていきません。毎月振り込まれるプライベートポイントで出席日数を買い続ければ見たくない現実から目をそらし続けることが出来るのですから………。
多分これが一番早いと思います。
もしかして【本編完結】って詐欺?
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詐欺
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詐欺じゃない