ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

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プロローグ
もう一度、箱庭へ


 

 我々は望む、七つの嘆きを。

 我々は覚えている、ジェリコの古則を。 

 

 ■

 

「……私のミスでした」

 

 ――白い車内。

 

 流れゆく雲に、照らされる朝日。窓から差し込む昇ったばかりの日差しは、車内に腰かけた二人に影を伸ばす。

 正面に腰かけた彼女の頬には、赤い血が滲んでいた。

 ヘイローを喪った彼女は既に弾丸のひとつでも致命傷と成り得る。銃弾の掠めた頬は、今尚血が止まっていない。人と変わらぬ、脆弱な肉体。

 

「私の選択、そしてそれによって招かれた全ての状況」

「結局、この結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて」

 

 ゆっくりと、語り掛ける彼女。

 俯いたままの表情は影に隠れ伺えない、そも見え隠れする感情は察して余りある。彼女の選択――それを、自分は否定できない。

 する権利など、存在しない。

 この選択肢に至って尚、それでも確かに彼女はキヴォトスを想っていたのだから。

 

「……いまさら図々しいですが、お願いします、先生」

 

 強く、言葉が耳を叩いた。

 それは彼女が最後まで通した意地を投げ捨てて行う――懇願。

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」

「何も思い出せなくても、恐らくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから」

「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」

「あなたにしか出来ない選択の数々」

 

 繰り返す世界で大事なのは経験ではない、選択。

 積み重ねた『経験値』(レベル)などではない、あの時、あの場所で、【私】(先生)が果たせなかった選択を――今度こそ。

 瞼裏に浮かぶ情景。

 

 砂漠に沈んだアビドス。

 壊滅したゲヘナ、トリニティ。

 影の中に消えたアリウス。

 赤に沈む――キヴォトス。

 

 例え記憶の中であったとしても、それを見届けたのは他ならぬ自分自身。対峙した連邦生徒会と連邦捜査部――何かを犠牲にし続けてでも、キヴォトスを生かす為に彼女は進んだ。それを自分は否定し、そして残ったのは――彼女と自分の、二人だけ。

 

「だから先生、どうか――」

 

 そうだ、だからこそ。

 果たさなければならない。

 今度こそ――私の生徒を救う為に。

 彼女の存在しない、箱庭(キヴォトス)で。

 

 ■

 

「……先生、起きて下さい」

 

 声が聞こえる。

 誰かが――呼ぶ声だ。

 

「先生!」

 

 直ぐ横から響いた声に、思わず目を開いた。

 視界に飛び込んでくるのは、尖った耳に黒い髪を持つ女性。そして場所は――見慣れた連邦生徒会のロビー。先生と馴染んだ声を出した主は、何とも言えない表情で此方を見下ろしていた。

 

「……」

「少々待っていて下さいと云いましたのに、お疲れだったみたいですね、中々起きない程に熟睡されるとは」

 

 どこか――聞き覚えのある言葉だった。

 先生と呼ばれた男は目元を二度、三度拭い周囲を見渡す。まるで此処がどこか、注意深く確かめる様に。そして呼びかけた女性を見つめた後、静かに呟いた。

 

「リン――」

「はい、七神リンです……寝ぼけている訳ではないようですが、状況の説明は必要ですか、先生?」

「……いや、問題ない」

 

 告げ、立ち上がる。ソファで寝入っていた為か、少しだけ腰が痛んだ。

 自身の手足を見る、爪先で床を打ち両の掌を握る。見慣れた腕だ、使い慣れた足だ――けれど、違う。

 

「随分、落ち着いていらっしゃいますね……呼び出されたばかりだというのに」

「うん……まぁ、慣れているからかな」

「慣れている――いえ、失礼しました、野暮というものでしたね、詳しくは聞きません」

「助かるよ」

 

 先生は静かに笑って手を振った。調子を見るに問題なさそうだ、と判断したリンは「こちらへ」と告げ歩き出す。行き先はロビーに存在するエレベータの一つ。ボタンを押し込み、中に入り込んだリンは先生を促す。数秒、目を細めた彼はエレベーターに乗り込み、ガラス張りの街を眺めながら上層へと昇って行く。

 硝子の向こう側に見えるのは廃墟ではない――美しい、そして懐かしいキヴォトスの街並み。

 それを、じっと見つめる先生。その様子に驚いたと思ったのか、或いは単純に別の感情を見たのか。ふっと笑みを浮かべたリンは彼に告げた。

 

「――キヴォトスへようこそ、先生」

 

 ■

 

「ちょっと待って、代行! 見つけた、待っていたわよ! 連邦生徒会長を呼んで来て!」

「主席行政官、お待ちしておりました」

「連邦生徒会長に会いに来ました、風紀委員長が現在の状況について納得のいく回答を要求されています」

「トリニティ自警団です、連邦生徒会長に直談判を――」

 

 レセプションルームに足を踏み入れた途端、四人の女性が隣にいるリンを見つけ声を張り上げた。どれも見覚えのある顔だった。ユウカ、ハスミ、スズミ、チナツ――懐かしい顔ぶれだ。その対応を迫られていたのだろう、行政官の面々は助かったという表情を浮かべている。反対に、リンは露骨に表情を歪めた。

 先生は小さく呟く、あぁ、【ここから】なのかと。

 

「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね、まぁ理由は分かり切っていますが」

「分かっているなら何とかしなさいよ! 数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!? この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました」

「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の不法流通も2000%以上増加しています、これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの、今すぐに会わせて!」

 

 ユウカ、チナツ、ハスミの順に不満――というよりも現状を捲し立てる生徒たちに、リンは額を押さえている。これから行動する時に、と思っているのだろう。その対応すら惜しいと。先生はそんなリンを尻目に、一歩踏み出し告げた。

 

「――連邦生徒会長は今、席に居ない、現在行方不明だ」

「え!?」

「……!」

 

 普段見ない大人だからだろうか、それともこの学園には珍しい人間だからか、或いはその発言の内容からか。目を見開いた彼女達は一瞬目を見合わせ、それから問いかけた。

 

「この大人の方はいったいどなた? どうして此処に?」

「私は――先程このキヴォトスに呼び出された、先生だよ」

「……先生、なのですか?」

「えぇ、先生の身元は保証します、彼は連邦生徒会長が特別に指名した方です」

「連邦生徒会長が指名って……今、先生が行方不明になったと」

「事実です、結論から言うと、連邦生徒会長が失踪しサンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなった為、連邦生徒会の行政制御権が失われました」

「はっ!?」

 

 驚愕の声を上げる青髪の女性――ユウカ。

 ミレニアムのセミナーに所属する彼女の事はよく覚えていた、以前も何かと理由をつけてシャーレを手助けしてくれた彼女。尤も、既に彼女自身その記憶はないだろう。

 そして彼女の愕然とした表情の理由も察して余りある。

 連邦生徒会の持つ行政制御権――それが失われた場合、連邦生徒会は文字通りあらゆる機能が停止する。何せ連邦生徒会を連邦たらしめる源である。キヴォトスの管理は当然、ごく一部の自治区の管理すら危うい。鎮圧行動など以ての外――キヴォトス全域が混乱に呑まれるのも無理もない。

 リンは眼鏡を指先で押し上げながら云った。

 

「認証を迂回出来る方法を探していましたが、先程解決しました――この先生が、フィクサーとなります」

「……先生が?」

「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活の担当顧問として、此方に来る事になっていましたから」

「それは?」

「連邦捜査部、シャーレ」

 

 彼女の言葉が鋭く響く。連邦と名が付く以上、この連邦生徒会に属する組織である事は確実である。そして、そのような話を彼女は全く聞いた事が無い。前例もない。

 

「便宜上部活と呼称しておりますが、一種の超法規的機関です、所属は連邦組織になりますのでキヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させる事が可能なものです、更に各学園の自治区で、制約なしで戦闘行動も許可されています」

「――とんでもない部活ですね、いえ、部活というよりは最早一個の戦力ですか」

「チナツさん、あくまでシャーレは部活、そして現状所属しているのは先生のみ、今動かせる戦力はありません」

「………」

「シャーレの部室は外郭地区にある一棟です、連邦生徒会長の命令でその建物の地下にあるモノを――先生を其処にお連れしなければなりません」

 

 どこかぼかした云い方に白髪の生徒、トリニティ自警団であるスズミが問いかけた。

 

「その、あるものとは?」

「連邦生徒会の行政制御権を取り戻す為のもの、と云っておきます」

「――かなり重要なものらしいですね」

「えぇ、ですから直ぐにでも向かう必要が」

 

 云うや否や、リンは手元の端末を操作し何処かへと連絡を入れる。数度、コール音が鳴った後、投影されたホログラムには菓子を片手にのそりと身を揺らす少女の姿が映った。一瞬、リンの表情が苦々しいものに変わるも、もう慣れたものなのか苦言を飲み込み要件を告げる。

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリを手配して」

『シャーレ? ああ、外郭地区の……あそこ今、大騒ぎになっているけれど』

「大騒ぎ? どういう事ですか」

『矯正局を脱出した停学中の生徒が暴れているの、もう戦場だよ、戦場』

「……は?」

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に周りを焼け野原にしているみたい、本当かどうか知らないけれど巡航戦車まで手に入れて来たみたいだよ』

「何て、タイミングの悪い……」

『連邦生徒会所有のシャーレ部室を占拠しようとしているみたい、まるでそこに大事なものがあるみたいな動きだけれど――あ、頼んでいたデリバリーが来たから、また連絡するね先輩!』

「………」

 

 ブツ、と通信が切れる音が響いた。訪れる沈黙、リンが手に持った端末がみしりと軋みを上げた。心なしか四人が一歩距離を取っている気がする。先生は静かに、「大丈夫?」と問いかけた。

 

「……大丈夫です、少々問題が発生しましたが大したことでは」

 

 眼鏡を押し上げ、僅かに震えた声で告げるリン。それから彼女は目前に立つ四人を見つめる、じっと、穴が空く程に。

 

「……な、なによ?」

 

 悪寒が走ったのだろう、ユウカは身を捩りながら訝し気な表情を浮かべる。反しリンは満面の笑みを浮かべ、まるで何でもないかのように云った。

 

「いえ、丁度此処に各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいらっしゃったので、心強いなと思いまして」

「――え?」

「さて、キヴォトスの正常化の為に働きましょうか、皆さん」

「え、ちょ、ちょっと待って!? どこ行くのよ!?」

「それは勿論」

 

 笑みを浮かべたまま、彼女はいっそ爽やかな口調で告げた。

 

シャーレ(戦場)です」

 






『クソ程長い後書き』

 普段はクソ長い後書きとか、前書きとか極力書かない様にしているのですが、どうしても抑えられなかったので此処で発散します。

 サオリピックアップの頃に始めたのですよ、ブルーアーカイブ。
 それでね、チュートリアルガチャを回して出て来たのがヒフミ。
 その次に貰った石で出て来たのがヒフミ。
 スタートダッシュガチャで出て来たのもヒフミ。
 君、そんなに私の事好きなの? と思っておりました。
 でも君のEXスキル強いですね、デコイペロロ様、お世話になっております、火力ないけど。

 しかし生徒は皆可愛いですね、皆さん個性があって大変に宜しい、爽やかグラセフとは良く云ったもので。
 トリニティもゲヘナもアビドスも素晴らしい、初めて一ヶ月も経っていないから全然分からんけれど。
 ストーリーが良いと聞いていたので、ちまちま見ております、楽しいですね。
 けれど任務を進めないと先が見れないのがつらいです、先生もっと早くレベル上がって大人でしょう? 
 はやくしないとレポート口にぶちこみますよ。
 
 しかしあれですね、大人でありながら生徒とは異なる肉体というのが良いですね。
 生徒と違って先生は弾丸一発が致命傷ですから。

 あーあ! 便利屋68の皆が強盗に向かった場所に偶々先生が居て、「先行制圧は基本」みたいな感じで爆弾なり銃弾なり叩き込んだ後、ズタボロの腕とか足もげた先生の姿を見て、「先生……?」とかなって自分のしでかしたとんでもない真実に絶望するハルカとか見てぇなぁ! 私もな~!
 後、散り散りになったアリウススクワッドを散々甘やかして依存させて、デロデロに幸せにした後、任務の最中に先生が狙撃で心臓ぶち抜かれて愕然とした表情で手を伸ばすサオリとか見てぇなぁ私もなァ! きっと凄く可愛いンだろうなぁ!
 その後、先生の心臓ぶち抜いた相手に憤怒の形相で仇討ちに向かったら花丸百点。

 でもやっぱり個人的に本編で最高に盛り上がったシーンは、ヘイロー破壊爆弾から身を挺してヒナを救ったシーンですね。
 爆炎が去った後に自分を抱きしめて倒れた先生に、「先生!」と嬉しそうに云った後、先生の下半身が丸々無くなっている事に気付いて蒼褪めたCGは正に芸術でした。はー、最高ですねシロコのファンになります。

 最後はちょっと辛かったですね、キヴォトス全体を救う為にキヴォトスを裏切り、最後の大人としてアロナを除く全ての学園と敵対した先生が嘗ての生徒たちと対峙するシーンは胸が苦しくなりました。まぁそれを救う為に連邦生徒会長が出て来た所とかめちゃ熱くなりましたが! 全くブルアカは最高だぜ!まだ私の先生レベル40だけれど!
 
 皆さんもブルアカの二次創作書いてねはやく役目でしょ。
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