ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

112 / 340
誤字脱字報告助かりますわ!
今回は一万四千字ですの!


私達の物語(希望に満ちた明日)を、もう一度。

 

「あなたは――」

「……百鬼夜行の」

 

 突如現れたワカモを前に、アビドス対策員会の面々は驚いた表情で彼女を見つめた。アビドスでの騒動、及びトリニティでの一件で彼女達の間に面識は存在する。故に彼女が此方側の存在である事は理解していた。

 ホシノは小さく息を吐き出し彼女に向けていた銃口を下げ、盾を静かに地面へと降ろす。皆も無意識の内にトリガーへと伸びていた指先を離し、安堵の息を吐いた。

 

「ワカモさん、でしたか……」

「何、居たなら声を掛けてよ、びっくりするじゃない……!」

「ん、でも無事で良かった……あなたも、トリニティに来ていたんだね」

 

 ノノミは露骨に安堵の表情を見せ、セリカは胸元を摩りながらそう口にし、シロコは小さく肩を竦めるに留める。しかし、それらの声にワカモが反応を返す事はなく、銃を抱えたまま沈黙し続ける。その姿は不気味で、一言も喋らないワカモに対し対策委員会の面々は徐々に戸惑いの感情を滲ませた。

 

「………」

「……えっと、どうかしたのですか?」

 

 流石に何かがおかしいと感じたアヤネが、恐る恐る問いかける。しかしその問い掛けにも答えず、ワカモはアビドス対策委員会を――正確に云えばホシノを注視し続ける。困惑し、皆が視線の先に居るホシノを見つめた。その瞳が、「何か心当たりは?」と問いかけている。ホシノは小さく首を横に振り、それから少し思案した後に口を開いた。

 

「ねぇ、そっちで何かあったの?」

「………」

「黙っているだけじゃ、分からないよ」

「………」

 

 それでも、彼女は黙して語らず。ワカモは自分達と異なり、単独で動いていた筈だった。戦闘中彼女の姿を目する事はなかったが、古聖堂の方で動いていたのか、或いはまた裏方として暗躍していたのか――彼女の具体的な動きは分からなかったものの、その擦り切れ、血の滲んだ格好から戦闘があったのは想像に難くない。

 今接触して来たからには、何か理由がある筈だった。

 しかし、今のアビドスに余力があるとは云い難い。弾薬の残量でも、体力的にも、連戦は厳しいだろう。ホシノは軽く頭部を掻き、一度トリニティに撤退する旨を彼女に伝えようと口を開いた。

 

「そっちで何があったのかは知らないけれど、おじさん達はこれから先生と合流しに行くから、云いたい事があるならそっちで――」

先生(あの御方)が」

 

 ワカモの声が、ホシノのそれを遮った。

 彼女の声は妙に強張っていて、路地裏に良く響く。目を向けたホシノの視界の中にワカモの顎先を伝う透明な何かが見えた。それは涙だった。暗闇の中できらりと光るそれを見た時、ホシノは自分でも驚くほどに動揺した。

 それはワカモという存在が見せた涙に、自分が思っていたよりも重い事態を予感させるだけの価値を見出していたからだ。彼女の本能が警鐘を鳴らす。ホシノが何かを口にしようとして――けれどそれより早く、彼女の発した言葉が耳に届いた。

 

「先程、息を引き取られたそうです」

「……――」

 

 全員の時が一瞬、止まった。

 ずしりと、目に見えない何かが体を圧し潰す。それは絶望だとか、恐怖だとか、そういう目に見えない何かだ。空気が張り詰めるのが分かった、全員の視線がワカモに注がれ、思わず息を呑む。

 

「息を引き取るって……」

「そ、それって――」

 

 目を見開き、震える声で問いかけるアヤネとセリカ。戦々恐々とした様子でワカモを見るシロコが、続けて小さく呟いた。

 

「死んだ、って……事?」

「………」

 

 ワカモは言葉を紡ぐ事も、首を振る事もしなかった。しかし、この場合は沈黙が何よりも雄弁な回答でもある。彼女の纏う雰囲気が、その気配が、何よりも重い事実を語っていた。

 

「な、何それ、嘘でしょ……そ、そんな、そんなの」

「せ、セリカちゃん……!」

 

 思わずと云った風にその場に座り込んだのはセリカだ。持っていた愛銃を取り落とし、力なく足を震わせ、ゆっくりと座り込む。両手を地面に突き、呆然とワカモを見上げた彼女は縋るような視線で以て問いかけた。

 

「じょ、冗談だよね? せ、先生が、し、死んじゃったとか……」

「………」

「ね、ねぇ、嘘だって、云ってよ……ねぇ!」

 

 ワカモに手を伸ばし叫ぶも、彼女は応えない。最後は最早、懇願に等しい声色であった。

 蒼白となった表情をそのままに、声は徐々に小さくなりを顰める。項垂れ、涙を零すセリカは途切れそうな程か細い声で呟いた。

 

「そ、んな――……」

「………」

 

 アヤネは両手を胸の前で組み、視線を左右に泳がせる。心臓が、恐ろしい勢いで早鐘を打っていた。涙は出なかった、それは決して薄情だからなどではない、ただ現実感がなかったのだ。先生が死んでしまったのだという、質感を伴う現実性(リアリティ)が。

 震える指先で眼鏡に触れ、ゆっくりと外す。フレームが揺れる、微かな音が鼓膜に届く。

 

 思い返すのは先生の負傷、その状態。確かに危険だという事は理解していた、直ぐにでも然るべき場所に搬送しなければ助からないと――そう判断したのは自分だ。

 けれど、心の何処かで先生が死ぬ筈がないと思っていたのも事実だった。

 それは楽観的なモノの見方というよりも、アヤネの善性に因るところが大きい。即ち、この人は、こんな死に方をして良い人ではないと、そう感じていたのだ。

 アヤネは、別段何かを信仰している訳ではない。けれど、物事には順序がある筈だと考える。誰かが亡くなったり、悪い事が起こるには、それ相応の原因と因果がある筈だと。

 先生は多くの生徒を救って、助けた。

 私達(アビドス)の事だってそうだ。

 毎日忙しそうに、誰かの為に奔走している事を良く知っている。

 

 だからこそ彼は、報われるべきで、もっと大勢の人に看取られて、暖かな光の中で生を終えるのだと。

 そう信じていた。

 善人には善人の、正しい報いがあるのだと信じていたのだ。

 

 だから、現実感が無い。

 こんなあっさり、何の別れの言葉も無しに。

 先生が――いなくなってしまうなんて事が。

 

「……先生」

 

 ノノミが、俯いて唇を噛む。痛い程に握り締められた拳が、掴んでいる愛銃の持ち手を軋ませる。シロコに至っては呆然とし、何の反応を返す事も出来ずに居た。

 各々が、その溢れ出る感情に支配され、激情を湛えていた。ひとつ、たった一つの切っ掛けで崩壊してしまいそうなそれを、彼女達は自覚している。故にワカモは、努めて淡々とした様子で告げた。

 或いは、彼女もその激情を必死に留めているのかもしれない。

 

「……トリニティより、浦和ハナコさんを中心とした戦力がアリウス排斥に動くそうです、私もシャーレ側の戦力として参戦致します」

「………」

「あなたは、どうしますか――ホシノさん」

 

 顎先から、涙が滴っているのが分かる。

 仮面の向こう側で、彼女(ワカモ)は涙を流し続けている。幾度も、幾度も、決して消える事のない悲しみを。

 ホシノは俯いたまま微動だにしない。その表情は影に遮られ、確認する事が出来なかった。

 

「は――は、はっ……」

 

 不意に、声が漏れた。

 それは酷く乾いた笑い声だった。

 ふらふらと、覚束ない足取りで二歩、三歩蹈鞴を踏んだ彼女(ホシノ)は肩を震わせて嗤う。持っていた防弾盾が音を立てて倒れ込み、ホシノは片手で顔を覆い隠した。その指の隙間から、見開かれた瞳が覗いている。ぽろぽろと、涙が零れ落ちた。

 

「は、はははっ、ははッ……!」

「ッ、ホシノ先輩……!」

 

 ホシノを見たノノミが、思わず声を詰まらせる。その笑みに、途轍もなく嫌な予感を抱いた。

 悲哀が、慟哭が、その激情が伝わって来るような声。背を折り曲げ、震えるホシノに手を伸ばす。けれどその指先は届かない。彼女の手を取らないといけないのに――そう強く思うのに。

 ノノミの身体もまた、縫い付けられたかの様にその場を動けない。先生の死と云う重すぎる事実が、その余裕を持たせてくれない。

 このまま何もしなければ、ホシノは――。

 

「は、はは……結局、結局こうなるんだ――私は、また、こんな風に喪って……」

 

 顔を覆い、胸元を握り締めた彼女は呟く。手から零れ落ちた愛銃(守ると決めた証明)が、ゆっくりと地面に転がった。それを滲んだ視界で見届けながら、ホシノは口元を引き攣らせる。

 胸が、苦しい。

 心臓が痛い。 

 呼吸が荒くなって、視界の四隅が暗がりに支配され、どんどん狭まっていく。

 

 そうだ、久しく忘れていた。

 世界は、現実は、こんな事ばかりだ。

 こんなに辛くて、苦しくて、痛くて――。

 

 ユメ先輩も。

 先生も。

 守りたいと思ったものが、守ると心に決めた人が、この小さな手からどんどん零れ落ちて行く。

 (ホシノ)はそれを、ただ見ている事しか出来ない。

 あの時だって、そうだった。

 

「私は――」

 

 声を、絞り出す。

 それは独白だった。彼女にとって、この世界に対する独白と云う名の怨嗟。それを涙に塗れ、唸る様な形で吐露する。

 

「一体……何の、為に――」

 

 ――此処まで歩いて来たのだろう?

 

 膝から力が抜け、ホシノはその場に崩れ落ちる。這い蹲り、ぽつぽつと頬を流れる涙を感じながら、ホシノは嗚咽と共に息を吐き出した。指先が震える、視界が滲む、暗がりに包まれた世界は酷く醜く、寒い。

 その寒さには――酷く憶えがある。

 

「もう……」

 

 ――もう、良いんじゃないか。

 

 そう、弱い自分が囁き掛けるのが分かった。心の中に住む、嘗ての自分。立ち上がる為に否定していた己が、顔を出す。色のない世界の中で一人きりとなった彼女。その内なる存在が語り掛けて来る。

 

 ――もう、苦しまなくて良いんじゃないか?

 

 二年前の己が、淡々とした様子で呟いた。

 そこには何の(感情)も、力もなかった。ただあるがままを、現状を受け入れろと。どこまでも無機質で理知的な響きだけがあった。

 

 その言葉が降りかかる度に。

 その甘言が意識を揺さぶる度に。

 ゆっくりと、心が死んでいく。

 

 こんなに努力したって、こんなに頑張ったって、世界はちっとも優しく何てなくて。 何をしたって、どう足掻いたってきっと結末は覆らない。この世界の運命は、ホシノという存在の味わう苦しみはきっと――決まっていたのだ。

 あの聖人の様な先生が、心優しく強い先生が。

 必死に足掻いても、あんなに沢山の代償を支払って、血を流したとしても。

 変えられない程、強固に結びついている苦しみの運命。

 

 もし、そうなら。

 それが、変えられない運命(世界の真実)と云うのなら。

 

「……私達は」

 

 私達は一体――何の為に、生まれて来たのだろう?

 

 そう思ってしまう。

 考えてしまう。

 

 私も、皆も。

 こんな運命に翻弄される為に生まれて来たのか。必死に足掻いて、大切なものを守ろうと頑張って、努力して、血を流して、その果てに待っている結末が、ただ苦しむだけのものならば。

 足掻く分だけ、苦しんだ分だけ、生きた分だけ苦しみが増すだけの世界ならば。

 

 私達は――苦しむ為に、生まれて来たのか?

 

「―――」

 

 そう思った途端、もう駄目だと思った。

 頑張れないと、そう感じてしまった。

 この世界の結末が、苦しいだけならば。

 ならば、もう。

 

 ホシノの目が、そっと閉じられる。現実から目を逸らすように、内に秘めた希望の光をそっと手で包むように。

 もう、苦しみたくない。

 辛い思いを、したくない。

 大切な誰かが失われる事に耐えられない、それを守る為に立ち上がるだけの勇気がない。

 だから――これ以上喪う苦しみを(アビドスの皆が)味わう位なら(消えてしまう位なら)

 

 彼女の頭上に輝く、そのヘイローが――僅かに欠ける音がした。

 

「――先輩ッ!」

 

 けれど、ホシノの心が完全に砕ける前に。その肩を掴み、引き起こす存在が居た。

 蹲っていたホシノを強引に引き寄せ、傍の壁に叩きつける。衝撃と痛みがホシノの身体を突き抜け、思わず目を開く。積み上がった小さなコンテナが崩れ落ちる音が周囲に響き渡った。

 視界一杯に、大粒の涙を流し、自身を睨みつけるノノミが映る。

 

「何を……ッ、何を考えているんですかッ!?」

「―――」

 

 怒鳴りつけられ、呆然とホシノは目を瞬かせる。彼女の視線はホシノを、そしてその右手を見つめていた。

 気付けば――。

 本当に、ふと気付いた時。

 ホシノの右手には、自身の愛銃が握り締められていた。

 

 地面に落ちていたそれを、無意識の内に拾い上げていたらしい。

 けれど、持ち方が変だ。

 まるで自分に銃口を向けていたかのように、親指をトリガーに掛け垂直に握り締めている。銃口は、自身の考えが間違いでなければ。

 己の頭部に向けられていた。

 

「ッ……!」

 

 ノノミが叩き落とすようにホシノの愛銃を振り払い、手の中から零れ落ちたそれが地面に転がって軽い音を立てる。普段からは想像も出来ない程に必死の形相を浮かべたノノミは、そのままホシノの胸元を掴んで叫ぶ。

 他のアビドスの仲間達が、信じられない様な表情でホシノ()を見つめていた。

 

「何で、そんな顔を……っ!? そんな目をしてッ、あの時と同じように、何で、あなたはッ――!?」

「……ははっ」

 

 震える拳で胸元を掴み、言葉を吐き出すノノミを前に、ホシノは力ない笑みを浮かべる。それは普段と同じような温厚な、それでもいてどこか諦観を滲ませた笑みだった。けれど、決定的に違う点がある。

 光だ。

 その瞳には、(希望)が決定的に欠けている。

 

「ノノミちゃん、ごめん、私はもう……立ち上がれないや」

「……っ!」

 

 囁くように、震えた声で告げられたそれ。

 ノノミはホシノの声に驚く様な、悲しむ様な表情を浮かべる。

 くしゃりと歪んだ大切な後輩の顔に、ホシノの胸がずきりと痛んだ。

 

「私ね、もう、だめだぁ……先生が居なくなったって思ったら、何だか、力が抜けちゃってさ……」

 

 足に、手に、力が入らない。

 立ち上がるだけの気力も、体力もない。

 まるで内側にあった体を動かす為のエネルギーが全部、根こそぎ奪われてしまったかのような虚脱感。

 視線で盾と銃を見つめるホシノは空虚な、硝子玉の様な瞳で言葉を続ける。

 

これ(ユメ先輩の盾)でね、もう一回、もう一度だけ……頑張ってみようって思ったんだ」

 

 先輩から受け継いだ(守るもの)。その表面は擦り切れ、幾つもの傷が刻まれている。本物の盾(彼女が残したもの)は、遺品としてアビドスに保管されている。だからコレは、ホシノの守る意志、その表明に他ならない。

 あの頃手にしていた突撃銃(恐れを知らないもの)は、もう埃を被って久しい。大切だという事に気付かなかったから、自分の居場所だという自覚がなかったから、傷付けられ、喪い、初めてその尊さに気付いた。

 

 気付いた時には、遅かった。

 だから、今度こそ。

 今度こそはって、そう思ったのだ。

 

 一度手放しそうになった絆を必死に手繰り寄せて、これからのアビドスには、私達には、明るい未来が待っているんだって、そう信じて此処まで歩いて来た。

 ――けれど。

 

「駄目だった、やっぱり私なんかじゃ何も守れない……大切なものが全部、手のひらから零れ落ちてしまって」

「そんな事は――ッ!」

「――きっと、最初からそういう風に決まっていたんだよ」

 

 きっと此処は、そういう世界なのだ。

 自身を掴むノノミの手を、ホシノはそっと握り締めた。その手は暖かかった、けれど余りにも弱々しく、力なかった。

 へらりと、ホシノは微笑む。

 その目尻から一筋の涙が零れ落ち、ノノミの指先を濡らした。

 

「ごめんねぇ……弱い先輩で」

「ッ!」

 

 思わず、歯噛みする。

 目の前に居るのは、ノノミの知っているホシノではなかった。いや、正確に云えば知っている。けれどそれは、久しく見なかった遠い昔の彼女の姿。

 今のホシノは傷付き、呻き、這い蹲り、ボロボロの身体で立ち上がって、「もう一度だけ頑張ろう」と歩いて――その先でまた、大切なものを喪ってしまった子ども(生徒)だった。

 

 ――何を、云えば良い?

 

 ノノミの口元が開閉し、吐息が漏れ出す。言葉がまるで思いつかない。何と声を掛ければ良いか、分からない。

 

「ぁ――……っ、くぅ」

 

 口を開け、閉じる。言葉が上手く出て来なかった。舌が、音を紡がなかった。ただ何度も口を開いては吐息のみを漏らし、ノノミは苦悶の表情を浮かべる。震える手でホシノの首元を掴み、項垂れる。その喉元から、慟哭に似た唸りが漏れた。

 

「駄目だよ――ホシノ先輩」

 

 その手を掴む者が居た。

 力強く、けれど優しく、ノノミとホシノの腕を。

 その掌は、暖かかった。

 緩慢な動作で視線を向ければ、ノノミの横に立つ――シロコの姿があった。

 

「それは、絶対に駄目」

「……シロコちゃん?」

 

 ノノミが呆然と呟き、シロコは真っ直ぐ二人を見る。

 その瞳にはまだ――希望()が灯っている。

 

「大丈夫、先生はまだ、斃れてなんていない」

 

 声はハッキリとしていた。

 そんな確証はないというのに、彼女はそう断言する。困惑する二人を前に、シロコは強い視線を返した。その纏う雰囲気に、迷いはない。

 

「まだ、終わりじゃないから」

「それは、一体どういう――」

「……あの人は、絶対にまた立ち上がる」

 

 それを信じていると、シロコはそう口にした。

 ホシノを、ノノミを、セリカを、アヤネを、ワカモを見渡すシロコは、手を握り締め言葉を紡ぐ。不安や恐怖を呑み込んだ者が出来る、精悍な表情と共に。

 

「先生が死んだなんて、信じられない――先生ならきっと、何とかするから」

 

 アビドスの時だってそうだった。

 どんなに辛い時でも、どれだけ絶望的な時でも、先生は絶対に諦める事をしなかった。血を流しても、傷を負っても、先生は何度でも立ち上がる。その背中を、シロコは見続けて来た。

 

「ワカモは、実際に先生が死んだ事を確認したの?」

「……いいえ、遺体を目にした訳ではありません、ですが――」

 

 シロコの態度に、どこか動揺と共に答えるワカモ。

 遺体自体を確認した訳ではない。秘密裏にトリニティに潜入する事は出来ても、流石に救護騎士団本棟ともなれば難しい。更に云えば先生の負傷後、本棟周辺には大規模な警備体制が敷かれていた。

 先生の警護の際も、ワカモはトリニティ側の了承を得る事無く客室棟に身を寄せていたのだ。シャーレ所属の身分を使えば事は問題なく済むのだろうが、七囚人という肩書が先生に面倒を掛ける事を嫌ったワカモはそれらの手続きを一蹴し、ティーパーティー、及び総括本部側に露見する事無く事を済ませていた。

 しかしトリニティ全体の動きと、生徒達の言動からかなり正確な情報である事は確かだった。そうでなければハナコの、ミカの、そしてゲヘナの行動に説明がつかない。

 

「なら、やっぱり信じられない――この目で見るまでは、絶対に」

「………」

 

 しかし、シロコはそんなワカモの言葉を一蹴する。

 それは現実から目を逸らす為の逃避などでは断じてない。先生に対する、強い、途切れぬ信頼から来るものだ。

 

 ――生徒達が戦い続ける限り、先生()は絶対に斃れない。

 

 先生は嘗て、そう叫んだ。その意思を見せた。どれだけ血に塗れても、どれだけ痛みに顔を顰めても、その両の足で立ち続けた。

 ならば今、多くの生徒達が戦いに明け暮れている今、先生が斃れる筈など無い。

 そんな強い感情がシロコの精神を強固に支えていた。

 

「そっ――そうよ」

 

 シロコの声に応えたのは、セリカだ。

 彼女は這い蹲った状態から身を起こし、震える手を握り締めながら声を絞り出す。

 

「先生が、先生がそんな、簡単にやられる訳ないじゃない……!」

「セリカちゃん――」

「仮にっ、仮に……そうだとしても! 私はッ、シロコ先輩の云う通り、この目で確かめるまで絶対に信じないからッ!」

「………」

 

 睨みつけるように前を見据え、そう叫ぶセリカ。その肩は震え、声は涙に塗れている。けれど怒りの混じったそれは、自身を奮起させつつ立ち上がるだけの気力を彼女に齎していた。立ち上がり、気丈にも前を見据えるセリカを見たノノミが口を開く。

 

「――行きましょう、トリニティに」

 

 直ぐ前に立つノノミの声に、ホシノは思わず身を震わせた。

 掴まれた肩に、じんわりとした熱が伝わって来る。呆然と視線を返せば、真っ直ぐ、力強く、綺麗な瞳が自身(ホシノ)を射貫いた。

 

「真実を、確かめる為に」

「………」

 

 その、どこまでも澄んだ声に。

 怯えた様にホシノは身を竦ませた。

 

 ――知ることが、怖かった。

 

 ■

 

 寒い――雪が降りそうな日だった。

 

 砂漠に雪が降ると、幻想的なまだら模様となる。そんな季節でもないと云うのに、その日だけはやけに肌寒くて。早朝、確か丁度、夜が明けて少し歩いた位だっただろうか。

 彼女を見つけたのは。

 

 アビドス本校舎から夜通し歩き回って、広大な砂漠をあてもなく彷徨い続け。

 漸く見つけた――彼女の愛用品(防弾盾)

 それを見つけた時、(ホシノ)は、「やっぱり」って思ったのだ。

 砂に埋もれ、顔の半分以上が見えなくなっていて。それでも何かを求めるように伸ばされた指先。

 

「此処に、居たんですね」

 

 (ホシノ)は砂塵に塗れた髪、頬に付着した砂埃もそのままに、小さく呟く。

 その瞳に光は無く、その表情に力はなく、照りつける陽光の下に晒される大切な人だったモノ。膝を突き、彼女を見下ろしながらそっと肩を落とす。其処にはただ、虚しさと無力感、そして何より徒労感だけがあった。

 どれだけ足掻いても、どれだけ努力しても、結局は――。

 

「全く、探しましたよ――」

 

 手を伸ばし、触れる彼女の頬は冷たい。

 伸ばされた指先を握り締め、微動だにしない表情のまま、彼女の名を呟いた。

 

「……ユメ先輩」

 

 ■

 

「っ、ぅ――……」

 

 脳裏に過る記憶、辛く苦い、最初の喪失。

 それを思い返し、ホシノは思わず嘔吐(えず)く。肌が粟立ち、胃が裏返る心地だった。ノノミが思わず手を離せば、ホシノは壁に寄り掛ったまま力なくズルズルとその場に座り込む。両手で胸元を押さえつけ、喘ぐ様に荒い呼吸を繰り返すホシノ。

 青白い顔色が、差し込んだ陽光に照らされた。

 

「はっ、はぁッ、ハッ……!」

「ホシノ先輩……!」

「だい、丈夫――……」

 

 手を伸ばすノノミに、ホシノは告げる。

 

「私は、大丈夫……」

 

 それは、自身に向けた言葉だった。震える腕を壁につき、立ち上がろうとする。けれど怯懦が、恐ろしさが、これから降りかかるであろう困苦が――ホシノの膝を震わせる。

 そんな彼女の肩を、腕を掴み、支える手があった。

 暖かなそれに顔を上げ、ホシノはくしゃりと顔を歪める。

 

「私達が、一緒に居る」

「……えぇ、傍に居ます」

 

 ホシノの肩を、腕を掴み支える人影。

 気が付けばシロコが、ノノミが、セリカが、アヤネが――アビドスの全員が、ホシノの身体を支えていた。

 

「こ、こんな所で、ヘバってんじゃないわよッ……!」

「どんなに辛くても、私達は、一緒です……!」

 

 涙を流しながらも気丈に、歯を食い縛って。それでもって、心の中で叫びながら。

 彼女達は暖かな手を以て、ホシノを掴んで離さない。

 

 あの時はひとりで立ち上がるしかなかった、誰も支えてくれる人などいなかった。肌寒くて、辛くて、惨めで、寂しくて――けれど今は、そうじゃない。

 ノノミが、ホシノを見つめる。強い眼差しで以て、暖かな希望を込めて。

 

 大切なものが、喪われたのかもしれない。

 この世界は、苦しいだけなのかもしれない。

 でも――。

 

「――もうホシノ先輩は、ひとりぼっちじゃないんですから」

「………」

 

 ――まだアビドス(大切なもの)が残っている。

 

「……ぅん」

 

 小さく、頷いた。

 震える足にほんの少し、ほんの僅かな力が籠る。アビドスの皆が触れた箇所から、希望が、暖かな熱が、ホシノの砕けそうになった心を修繕する。少しずつ、丁寧に、けれど力強く。

 手を伸ばす。

 地面に落ちた大切なそれを、守る意思(防弾盾)を手に取って、彼女は立ち上がる。盾を地面に打ち付け、ホシノはそれを支えに立ち上がる。彼女達の手を借りて、自分の意志で。

 

 赤く腫れ上がった目尻を擦り、大きく息を吸い込んだ。そして背を正し、アビドスを、ワカモを見つめたホシノは目を見開く。その瞳に、その心に、希望が宿る。

 恐怖はある、不安もある、けれどまだ守りたいものがあるから。

 だからホシノは、微かな希望を込めて告げるのだ。

 

「行こう――トリニティに」

 

 その運命を、確かめる為に。

 

 ■

 

 トリニティ郊外――廃墟。

 剥がれ落ちた天井、砕け、飛び散り、フレームの曲がった窓枠。頭上から脱落した配線ケーブルを避けながら、彼女達はとある一室に向かう。周囲に人気はなく、スクワッドの皆が歩く音だけが木霊していた。

 隊の最後尾を歩きながら端末を確認していたヒヨリが、ふと先頭を歩くサオリに向けて声を上げる。

 

「あ、あの、たった今別働班から件の兵器、その起動を確認したとの報告が……」

「……アレか、映像は?」

「えっと、届いています」

「確認する」

 

 脚を止め、そう答えるサオリ。彼女の傍に駆け寄ったヒヨリは、端末に届いた映像を再生する。隣あったミサキやアツコも、どこか興味深そうに画面を覗き込む。

 

「こ、これが……例の――」

「戦術兵器、か」 

 

 画面に映る、巨大な影。

 それは、何と表現すれば良いのだろうか。

 真っ赤な布に包まれたやせ細った巨人――赤いフードに覆われた顔は確認する事が出来ず、そもそも空洞の様にぽっかりと暗闇が覗くばかり。そもそも肉体など存在するのだろうか? 不気味なほどに細く、長い四つの腕が二つの錫杖染みた杖を持ち、もう二本の腕は祈る様に目前で組まれている。

 その背後には格式張った垂れ幕と黄金色の円環装飾が施されており、傍目には敬虔な信徒の様にも見えた。しかし、そうではない事を彼女達は知っている。この存在が齎すのは破壊のみ。それを証明するかのように、かの怪物は両手を広げ、映像越しにでも分かる様な雄叫びを上げていた。

 ビリビリと振動する映像。それを見つめ、サオリは吐き捨てる。

 

「……ただの化物だな」

「………」

 

 サオリの言葉に、姫――アツコは手を素早く動かす。それを見ていたミサキは、彼女の手話の内容に思わず顔を顰めた。

 

「太古の教義を元に作られた……失敗作? あの二つ頭の人形、失敗したって事?」

「………」

「違うの?」

「失敗作だが、それでも戦術兵器足り得るという事だろう――使えるのであれば、何であれ構わない」

 

 姫の否定するような素振りに、サオリはそれとなくフォローを入れる。彼女自身、武器や兵器に拘り等存在しない。その在り方は自分達と同じだ、必要な時に必要な動作を行える。それが出来れば十二分、この際スペックが落ちようが期待通りの動きが出来るのならば何でも良かった。それこそミサイルだろうが、聖徒の交わりだろうが、何だろうが。

 

「そう、なら良いけれど……それと、そろそろ次に進む段階じゃない?」

「………」

 

 件の戦術兵器、その起動を確認したスクワッドは次の段階に入る。映像の再生を停止し、端末をポケットに捻じ込むヒヨリ。スクワッドは再び足を進め、ミサキはサオリに進言する。

 

「ゲヘナも、トリニティも、あの大人(先生)が死んだ事で結束し始めた、そろそろ次の目標に向かわないと対策が取られる」

「……どの道、もう手遅れだ」

 

 目を細め、淡々とした口調で答えるサオリ。トリニティとゲヘナが今更何をしようと、連中に勝ち目など無い。ETOを手中に収め、既にアリウス・スクワッド以外の部隊も各地に展開している。そして、連中の知らないアリウスの真の切り札(戦術兵器)――トリニティ地下深くに封印されていた、太古の教義、その神秘を用いて作られた怪物。これら三戦力を一息にぶつけ、圧し潰す。

 質でも、量でも、此方が勝る。

 

「――姫、待機中の部隊に合図を」

「………」

 

 サオリがそう口にすると、姫は静かに端末を手に取った。画面上にはトリニティ各地に待機している部隊の位置情報が表示されている。幾つかの操作を経て、発令待機状態へと移行する画面。後は指先一つで計画は始動する――それを確認したサオリは、スクワッド全員を見渡し、宣言した。

 

「これより、トリニティへの進撃を開始する」

 

 これまでの戦闘は前哨戦に過ぎない。

 トリニティ、及びゲヘナの特記戦力を消耗させ、最重要ターゲットであったシャーレの先生を抹殺する。そして別動隊として動いていた姫がETOの調印を済ませ、無尽蔵の戦力を確保する。

 ここまでは計画通り――致命的な失敗はない。

 

 そしてこれからは、彼女達にとって本命となるトリニティ総合学園への進撃。文字通り、トリニティそのものを地図上から消滅させる為の戦いだ。アリウスの、数百年に渡る憎悪の結実。

 それは今、この瞬間から現実となる。

 

「では、始めよう――これが最初の……」

 

 拳を握り締め、確固たる意志の下に言葉を紡ぐ。

 振り上げた拳、それを振り下ろし、開戦の狼煙を上げようとした瞬間――ぴたりと、サオリはその動きの一切を止めた。

 まるで時間が停止したように、彼女は吐息すら止めて微動だにしない。

 

「………?」

「リーダー?」

 

 スクワッドのメンバーが訝し気にサオリを見つめ、問いかける。声が周囲に反響した。

 しかし彼女は答える事無く、周囲を視線でなぞる様にゆっくりと顔を動かした。そして、小さな声で問いかける。

 

「……私達(アリウス)が此処を空けていたのは、どれくらいだ?」

「え? え、えっと……」

 

 此処、というのがこの拠点を指している事は直ぐに分かった。ヒヨリは古聖堂襲撃直前の事を思い返し、凡その時間を告げる。

 

「さ、三時間くらい――でしょうか」

「………」

 

 スクワッドはカタコンベから直接古聖堂近辺に足を運んだが、地上に展開していた部隊の一部はこの拠点を使用していた筈だ。その部隊が駐屯していた時間と、現在時刻を照らし合わせ――この拠点が無人であった時間は、凡そ三時間。

 そんな事を問いかけて、一体何を。ヒヨリが抱いた疑問に対し、サオリはひりつく様な空気を発しながら告げた。

 

「――アイツが居る」

「あいつ……?」

 

 ミサキがそう言葉を発した瞬間、直ぐ後ろの一室が爆発によって吹き飛んだ。

 内臓を揺さぶる衝撃、建物全体が揺れたような錯覚。拉げた扉が爆発によって宙を舞い壁に叩きつけられ、硝子片が飛び散る。甲高い金属音と爆音にスクワッド全員の意識が一瞬にして戦闘時のものに切り替わり、サオリは素早くアツコの肩を掴み床へと伏せさせる。ヒヨリとミサキもまた、同じように身を低くして周囲に警戒の視線を飛ばした。

 

「ひっ、ひぃいいッ!?」

「これ、即席爆発装置(IED)!?」

 

 爆発の規模は決して大きくはない、しかし小さいとも云い切れない。焦燥した表情で叫ぶミサキ、頭を抱えて蹲るヒヨリ。そんな彼女達を落ち着かせるために声を上げようとして、しかしコツンと硬質的な音。

 視線を下げれば、スクワッドの直ぐ傍に転がる――手榴弾(グレネード)が一つ。

 

「ッ……!」

「ぐ、グレネードッ!」

「は、早く逃げないと……!」

「――動くなッ!」

 

 明確な脅威に浮足立つメンバー、それを尻目にサオリは一喝する。彼女は素早く立ち上がると、転がったグレネードの元へと駆け込み勢い良く蹴り飛ばした。

 放物線を描き廊下の向こう側へと蹴り飛ばされたグレネード。それは地面に接地する直前に爆発し、それを切っ掛けとし連鎖的に爆発が巻き起こる。それは丁度、各部屋の内部から。順に吹き飛ぶ硝子、脆くなった内壁が粉塵と共に崩れ落ち、衝撃がスクワッドを襲う。まるでグレネードが投げ込まれ、慌てて逃げだした先を予測するような爆発だった。それを見たミサキは戦慄と共に呟く。

 

「っ……! 逃走経路に、ブービートラップ!」

「奇襲に浮足立ち、体勢を立て直す為にその場を離れる、そして通り道に予めトラップを仕掛けておけば一息に葬れる――あぁ、見知った手だ」

 

 事、室内戦闘に於いてトラップ程有効な手はない。特に数的不利や装備不足を補う手段として、それらは非常に効果的だ。サオリは口元のマスクを撫でつけ、呟く。

 

「相変わらず、この手の仕掛けは上手い、だが――……」

 

 周囲を覆う粉塵、それらを手で払い除けサオリは目前を睥睨する。未だ輪郭があやふやな視界の中で、ゆっくりと現れる人影がひとつ。

 

「忘れたかアズサ、それも全て、私が教えた事だろう」

「………」

 

 サオリの――スクワッドの前に立ち塞がったのは、いつぞやと同じ、ガスマスクを被りトリニティ制服を着用した生徒、アズサ。

 彼女は愛銃を抱えた状態で、静かにサオリと対峙する。そしてスクワッドのメンバーが全員健在である事を確かめると、音も無く踵を返し廊下を駆け出した。

 

「っ、逃がすか!」

 

 何の躊躇いも無く逃走を選んだアズサを前に、サオリは自身の愛銃を構え追撃を敢行。素早く安全装置を弾き、引き金を絞る。銃声が鳴り響き、幾つかの銃弾がアズサの背中目掛けて飛来する。しかし、被弾する直前で彼女は曲がり角へと差し掛かり、そのまま次の廊下へと飛び込む。弾丸は壁を叩き、僅かに削るのみ。小さく舌打ちを零したサオリはアズサの後を追って駆け出し、その背中は噴煙に隠れ直ぐに見えなくなった。

 

「リーダー、追いかけたら相手の思う壺――……って、行っちゃった」

「わ、私達も追いましょう!」

「はぁ……仕方ないか」

 

 爆発で床に倒れ込んでいたメンバーは、各々の装備、その無事を確認しながらサオリの後を追い始める。この周辺に展開している部隊は無く、直近の部隊に増援要請を飛ばしても三十分は掛かる。ミサキは念の為端末を操作し、一番近い部隊に救援要請を発信した。アズサ単独による襲撃という確証も無く、何ならトリニティの部隊が既に此処を嗅ぎつけた可能性もある。

 もしそうならば、この場所での戦闘がトリニティ侵攻に於ける第一戦という事になるだろう。

 

「これは――長期戦になりそうだね」

「………」

 

 その呟きは、直ぐ先から聞こえて来る銃声に掻き消される。

 アツコの握り締めた手が微かに震えている事に気付く者は、誰も居なかった。

 


 

 この展開は、最終編のシロコ・テラーと対にしたいなって思っていたんです。おじさんがシロコを救ったように、シロコがおじさんに手を差し伸べる展開を作ろうって。最初におじさんの危機に気付くのはノノミだけれど、そこに最後の一押しをくれるのは彼女(シロコ)なんです。

 

 ひとりぼっちになってしまったシロコは、その苦しみの中に埋もれてしまったけれど、アビドスが残っていれば必ず止めてくれる仲間が居る。それがどんな絶望でも、どんな困難でも、最後のひとりになってまで足掻こうとしたように、アビドスは仲間が居る限り決して折れたりしないと私は信じているのです。

 

 おじさんに関しては、多分大切な人を二度喪う事には耐えられないんじゃないかなって。バッドエンドではいの一番にアビドスから消えているし、アビドス編でも身売りしようとしていたし。多分、本質的に「喪う苦しみを味わうより、自分自身を先に喪ってしまいたい」という恐怖、或いは心に柔らかい部分を持っていると思うんです。一度喪っただけで、人格が変質してしまう位ですし。変質、という言葉が正しいのかは分かりませんけれど。

 

 因みにこれは、独りになって尚歩き続けるクロコに対するアンチテーゼでもあります。クロコに対する解答というか、向き合う話はこの章のラスト、そしてエデン条約後編第二章で行う予定ではありますが、アビドスの結束、その結末に差こそあっても、互いを思い遣る心に優劣は決してないと感じておりますわ!

 

 次回はアズサ対アリウス・スクワッドの場面ですの。

 それを乗り越えて、漸く先生復帰ですわ~!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。