ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

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誤字脱字報告ありがとうございますわ~ッ!
今回ちょっと短めで申し訳ねぇですの、でも私悪くありませんわ、ブルアカの生放送が悪いんですのよ!


リーダー(この手を握り続けた人)

 

「まさか、あのリーダーがね……それを受け入れる先生も先生だけれど、ちょっと予想外だったかな」

「ミサキ……」

 

 三人の前に現れたミサキは、気怠さを隠さず自身の髪を指先で払いそう告げた。頭上で点灯する照明が、皆の顔を照らす。ミサキの恰好はサオリと同じように所々血が滲み、戦闘の色が濃く残っていた。巻き付けられた包帯や薄汚れた外套、弾痕で解れた衣服が何とも云えない疲労感を滲ませている。

 セイントプレデターを地面に降ろし、それを立て掛けながら彼女は横目で問い掛けた。

 

「此処に来たって事は、姫の事を救出しに行くつもりなんでしょう? そうじゃないなら多分、もう『終わっていた』だろうし」

「……そうだ、私達で姫の救出に向かう」

「その為に、先生の力を借りたの?」

「あぁ」

「へぇ」

 

 声にはどこか、揶揄う様な色が滲んでいた。サオリの表情が僅かに険を帯び、ミサキを射貫く。彼女は黒いマスクで口元を隠したまま、肩を竦め云った。

 

「でも、先生は知っているの? 私達は先生を始末すれば、アリウス自治区に戻れるって事――そこに居るヒヨリも、リーダーも、同じ話を聞いた筈だよね?」

 

 その言葉に対し、サオリとヒヨリの両名は表情を変化させる。サオリは強張った表情を、ヒヨリは気まずそうな、申し訳なさそうな、そんな表情だった。

 

「わ、私が受けた提案は少し違いましたけれど……」

「確かに、そう云われたな、先生を始末すれば私達の裏切りを許すと」

「やっぱり……そんないつ背後から引き金を絞られるか分からない状況で、先生は私達を信用出来る訳? しかも、それが自分の瞳と腕を奪った上に、何発も銃弾を撃ち込んだ相手だっていうのに」

 

 その声には呆れが含まれていた様に思える。どこまでも生徒の為に奔走する先生を揶揄する様な、そんな感情だ。それに対し先生は怒る事も、動揺する事も無かった、ただ軽く首を振って穏やかな口調で答える。

 

「……サオリ達が私を始末するつもりなら、私はとっくに無事じゃないよ」

 

 実際、この状況で彼女達に銃口を向けられてしまえば――恐らく、かなりの確率で自身は最悪の結末を辿るだろう。残念ながら先生にスクワッドの追撃を躱すだけの身体能力も、戦力も無い、その危機を脱する秘策すらも。たとえ此処から逃走出来たとしても、五分生き延びられたのなら御の字だ。

 しかし、先生はそんな心配を微塵も抱いてはいなかった。

 

「それに裏切られるとか、騙されるとか、正直そんな事は私にとって大事じゃないんだ」

「なにそれ正気? 態々命懸けて助けて、その果てに騙されて、裏切られても良いとか」

「……私は困っている生徒が居るなら放ってはおけない、ただそれだけなんだよ」

 

 困った様に、その眉を下げながら先生は云った。そこには嘘を口にしている後ろめたさや、過剰に演出された表面をなぞるだけの色もなかった。ただ本当に、素朴な感情に従っている先生の姿だけがある。

 数秒、ミサキはそんな彼の姿を見つめる。その瞳に込められた感情は、揺らぎもしなければ動揺もしない、ミサキは先生をそういうものだと受け止めた。ただ少しだけその在り方を憐れむ様に視線を逸らすと、俯きながら言葉を紡ぐ。

 

「そっか、そこまでお人好しなんだ、それはちょっと想定外――でも、だからと云って私の考えは変わらないよ」

「ミサキ……!」

 

 彼女の言葉は暗に、姫の救出に向かう事を拒否している。或いは、諦観に徹していると云うべきか。非難する様にサオリが彼女の名を呼び、一歩を踏み出す。しかしミサキはそんなサオリの様子を見つめながら、努めて冷静に口を開いた。

 

「リーダー、姫を救うのは無理、装備も、人手も、時間も、何もかも足りない、それは分かっているでしょう?」

 

 あくまでミサキは冷静に、淡々とした様子で状況を語る。現在のスクワッドにはあらゆるものが足りていない。支援も、援護も望めない状況でアツコを救出に向かう、これは彼女からすればただ悪戯に、苦しみを増やすだけの行為に過ぎない。

 現状のスクワッドには勝算が見当たらない、それがミサキの導き出した結論だった。

 

「仮に今からアリウス自治区に上手く潜り込めたとして、どうするの? 姫が居るバシリカに辿り着くために三人で徹底抗戦する? アリウス分校の全生徒と? しかも、陽が昇る前に?」

 

 姫の元へと辿り着く事さえ困難だというのに、時間さえ彼女達の敵だった。

 

「それに、彼女は私達すら知らない奥の手を用意している筈、ずっと秘密を抱えて来た大人だもん、私達だけじゃ、いくら先生の助けがあったとしても不可能だよ」

「み、ミサキさん……」

 

 ヒヨリが思わず声を零す。スクワッドの中で一番冷静に物事を見れるのはミサキだ、少なくともヒヨリはそう思っていた。厭世的で、諦観に満ちていて、どんな物事であってもニュートラルに受け止める。だからこそ立場は別として状況をあるがままに告げる。難しい事は分かっていた、しかしいざ彼女が無理と断ずると、改めて状況の厳しさが伝わって来る。

 

「ねぇリーダー、仮に、アツコを救出出来たとして――そこに意味はあるの?」

「……どういう意味だ」

 

 不意に、ミサキはそんな事を口走った。ぴくりとサオリの眉が跳ね、鋭い視線で以てミサキを射貫く。しかし、そんな視線を向けられて尚彼女は言葉を続ける。そこには深く昏い、彼女なりの世界に対する観方があった。

 

「アツコを助けて、めでたしめでたし――そんな子ども染みた御伽噺じゃないんだから、もう私達はアリウス自治区に戻れない、トリニティとゲヘナも私達を探している、仮にアツコを助けられたとしても、帰る場所もないこの世界に取り残されて泥水を啜って生きるだけの……この無意味で苦しい人生が延々と続くだけ」

 

 そう、先の逃走生活でその事は痛い程に理解した。

 自分達に居場所はない、陽の当たる場所で生きる生徒が当たり前の様に持っているものを自分達は持ち得ていない。

 世界は無情にも続いて行く、ハッピーエンドのその先、誰かを救い、誰かを助け、希望に満ちた終わりの先に――絶望が待っているなんて話は珍しくもないだろう。

 アツコを助け、アリウス自治区から抜け出して、もう一度逃走生活に戻って、それでどうする? 苦しみ、逃げ惑い、痛みに耐える日々をもう一度送るのか。

 

 陽の当たる場所で青春を謳歌する子ども、日陰の中で搾取され苦しむだけの子ども。苦しみも、痛みも、不平等に分け与えられる。それは自分だけではない、ロイヤルブラッドと謳われた彼女ですら同じだ。自分達と同じように苦しみ、痛みに耐え、今日まで生きて来た。

 何故耐えて来たのか、何故生きて来たのか、それは未来に、この道を進んだ先に、ほんの僅かでも希望があるんじゃないかと。こんな地獄の様な場所よりマシな何かが、そんな居場所があるんじゃないかって、そんな風に語って聞かせた存在が居たからだ。

 いつしかその人は希望を語る事を止めたが、それでも心の何処かで、その胸の中で何を考えているのか何て分かり切っている。伊達に長年共に在った訳ではない。未来はない、希望は無い、将来は存在しない、そう教えられ続けた彼女の中にあった、ほんの僅かな想い。小さな砂粒よりも細やかで、硝子よりも砕け易く、簡単に消えてしまいそうなソレ。

 ミサキは決して口にする事は無いが、その願いに寄り添おうと思った。

 いつか、遠い遠い昔の事、貧民街でその日生きる事にすら精一杯だったあの日、幼い頃の彼女が口にした言葉をミサキは今でも忘れずにいる。

 

 ――夢は、大人にだって奪えはしない。

 

 でも、結局そんな事はなかった。

 どん底だと思っていた幼少期すらまだ地獄の入り口に過ぎず。

 その地獄こそが、自分達の唯一無二の居場所だった。

 世界は虚しく、苦しく、痛みで満ちている。

 生きる事に意味など無い。

 その存在に価値は無い。

 アリウスの教えは、正しかったのだ。

 

 ならば――もう、良いのではないか。

 この苦しみから解放されても、許されるのではないか。

 この苦しみに耐える事に果たして、意味はあるのか?

 自分達の望む居場所など、何処にもありはしないのに。

 そんな意図を込めてミサキは問いかける。

 サオリに、ずっと自分達の手を取って歩き続けた唯一の存在に。

 

「ねぇ、リーダー、苦痛ばかりだった姫の人生を引き延ばして……そこに、その苦しみに釣り合うだけの価値はあるの?」

 

 ――vanitas vanitatum, et omnia vanitas

 

「ただそれだけが私達の納得できる真実だというのに」

「………」

「リーダーはまだ、この虚しい世界の中で私達に苦しめって云うんだ」

 

 苦しむ事に意味などなく、痛みに底などく、未来に希望などなく、夢を語る事は許されず、幸福など与えられない。

 そんな世の中ならば、生きている事に意味はあるのか。

 その問い掛けに対し、サオリは返す術を持たない。その人生を、その苦しみを共に味わった自分には。そうではないと、上っ面の言葉を重ねる事は出来た。しかし彼女の奥底に眠る感情が、錠前サオリと云う苦痛の泥の中で足掻き続けた彼女の信念が安易な言葉を口にする事を嫌った。心の底から思いもしない言葉を彼女にぶつけて何になるのだと叫んでいた。

 ミサキの言葉は理解出来る、そう思う事も、感じてしまう事も、痛い程に。

 

 だが、それでも。

 サオリ()は――。

 

「それとも先生、大人である貴方なら、この答えを知っているのかな」

 

 ――この苦しみに塗れた世界の、真実を。

 

 ミサキの視線がふと、先生に向けられる。この場に存在する唯一の大人、自身の全てを投げ捨てて生徒に手を差し伸べようとするこの善人ならば、立場の異なる先生ならば異なる見解を示すのかと。

 その時先生が浮かべた表情は。

 どこか困った様な、難しそうな、そんな何とも表現し難いものであった。

 

「……答え、か」

「先生は以前云っていたよね、私達には無限の可能性があるんだって」

 

 思い返すのはエデン条約、その終わりに先生が叫んで見せた言葉。あの日、先生は全ての生徒に希望を語って聞かせた。生徒達(子ども達)には無限の可能性が広がっているんだと、腹の底から叫び訴えた。希望に満ちた言葉だ、耳障りの良い言葉だ、何とも陽を浴びて育った生徒の好きそうな言葉ではないかと、彼女は奥底で呟く。

 

「でも、現実にそんな事はあり得ない、仲間ひとり救えずに苦しんで死んでいくのが私達、結局それが私の知る真実――なら苦しみから逃れたいと思うのも、普通の事でしょう? 何もおかしな事じゃない、ただそれが早いか遅いかだけ、此処で終わってしまえば、これ以上苦しまずに済むのだから」

「……私は生徒達に自分の生を悔やんだり、責めて欲しくはないな」

 

 ミサキの言葉に、先生は緩く首を振って答えた。ミサキの立場は理解出来る、その感情も。彼女の境遇を考えれば当然とすら云える。自身がもっと早く、或いは上手くやれたのなら、そう感じたのは一度や二度ではない。ただ先生は、それでも彼女の言葉に共感を示す事は出来なかった。

 それがどんなに辛く、苦しい事でも。

 その人生が、どれ程昏く、絶望に満ちたものに見えても。

 

「生きる事を諦めて、苦しみから解き放たれるなんて――そんな悲しい事は云わないで欲しい」

「………」

「そんな風に思う必要なんて、絶対にないのだから」

 

 苦しみだけじゃない、楽しい事も、嬉しい事だって、この世界には沢山存在するのだ。

 この世に生まれ落ちた子ども達の未来はいつだって、何処までも広がっている。

 少なくとも先生は、そう信じている。

 その言葉を前に、ミサキは嘲笑を零した。それは言葉自体ではなく、自分自身に向けられている様に思えた。

 

「そうだね、そんな風に、世界は苦しみばかりじゃないって、馬鹿みたいに信じられたら……」

「今は思えないかもしれない、でも――子どもが絶望と悲しみの淵でその生を終わらせたいと願うのなら、そんな願いが、この世界に存在すると云うのなら」

 

 それは――その世界の責任を負う者(大人)が、抱えるべきものなのだ。

 

「その責任は、大人()が背負う、アリウスが、スクワッドの皆がそんな風に思うのならば――私の持つ全てを使って、君達(生徒達)の未来を切り開くと約束する」

 

 先生の持つあらゆる手を尽くし、その未来を切り開くと誓う。

 どんな困難があったとしても、決して諦めはしない、絶対に見捨てなどしない。

 先生はあらゆる生徒の味方だ。助けを求められた時、生徒達がその手を欲した時、彼は最大限の協力を約束する。だから先生はミサキを見つめる、その視線を決して逸らさずに、絶対的な意思の下に言葉を紡ぐ。

 

「もし、ミサキにほんの少しでも――僅かでも(未来)に進む気持ちが残っているのなら」

「………」

「私を、信じて欲しい」

 

 その言葉に、ミサキは無言を貫いた。

 マスクに覆われた唇を引き締め、彼女は目を伏せる。

 

 今更――先生の言葉を嘘だとは思わない。

 だが、全てを投げ捨てて信じようとも思わない。

 そう思うには余りにも、自分は擦れ(世界の冷たさを知り)過ぎた。

 

「ミサキ」

 

 不意に、自身の名を呼ぶ声が耳に届いた。

 伏せていた視線を上げれば、自分達のリーダーが此方を見つめている。いつも通り、凛とした視線で、けれどその身を案じる様に、力強い瞳だった。決して自分には出来ない、光を帯びた瞳だ。彼女の身体が揺れ一歩、前へと踏み出した。

 

「お前のその、苦痛だらけの人生は、死を迎えれば安息なのか?」

「……リーダー」

「私にはお前の云う答えも、真実も、確固たる何かがある訳じゃない、いつかお前が云った様に、私もお前達と同じ、アリウスで生まれ、育ち、ただ分からないなりに必死に足掻いていただけの存在に過ぎない」

 

 貧民街で育ち、何も持たない身でありながら仲間(家族)を守ろうと躍起になり、アリウスの尖兵となり果てて尚、その中で常に彼女達の先頭に立ち続けたサオリ。スクワッドにとって彼女は絶対的なリーダーで在り続けた、幼い頃の彼女達にはサオリは自分達の知らない『何か』を知っていると、そう信じるに足る何かを持っていたのだ。

 だが、その内面はミサキやヒヨリ、彼女達と何も変わりはしない。ただ彼女は彼女なりに、自分の手の届く範囲で――否、手の届かない範囲であっても足掻き続けただけだ。その姿が彼女達にとっては頼もしく、同時にどこか大人びて見えていたにすぎない。

 

 つい先日、彼女(サオリ)は誕生日を迎えた――十七歳の誕生日だった。

 

 ミサキとヒヨリは十六歳、アツコは十五歳。他の学園であれば三人は第二学年、アツコは第一学年に相当する。アズサも三人と同じ十六歳、けれど彼女達が学んだ事など、本当に戦う事ばかりで、普通の学生が勉強する事など何も知らない。

 自分達は――知らない(わからない)事ばかりだ。

 ただ世界が虚しいという事は、辛く、苦しいという事だけは、その身を通じて理解していた。決してそれは学びではない、自分達の身に染みた体験によって導き出された彼女達にとっての真実だ。

 

 大人は、自分達を酷使する。

 助けてくれる存在は、何処にも居ない。

 自分達の居場所は、日陰にしかない。

 

 けれど。

 そんな、冷たく、苦しく、痛みに満ちた世界だけれど。

 

「だが私は、私の我儘だと云われても、お前たちに生きていて欲しい」

 

 ――この世界が、どれだけ辛く苦しいものであっても、スクワッドの皆には生きていて欲しいから。

 

「だから、良く聞けミサキ、お前がそこから飛び込むと云うのなら、私も即座に追って飛び込む」

「………」

「絶対に死なせなどしない、服の中に重石を入れていても無駄だ、海岸まで連れて行くのに時間も然程掛からない、そこまで長くとも二十秒、お前が気を失った所で何度でも心肺蘇生を繰り返してやる、私がお前を生かす、是が非でもだ」

 

 声色は、本気だった。恐らく此処で自身が川に身投げしようとも、彼女は何の躊躇いも無く後に続くだろう、そう確信できるほどの気迫があった。

 更に一歩、サオリが前へと踏み込む。ミサキとの距離はほんの数歩まで迫っていた。サオリはその指先を伸ばし、ミサキへと突きつける。

 

「今まで何度やっても無駄だったというのに、今回は成功できると、お前はそう思えるのか? 私はお前の命を、絶対に諦めたりなどしないぞ――ミサキ」

「……まぁ、そうだよね、リーダーはいつもそうだった」

 

 呟き、ミサキは自身の喉元を摩った。薄汚れた包帯に包まれたその場所、似たような言葉をいつか交わしたような気がする。そうだ、サオリはいつもそうやって自分を死の淵から引っ張り上げた。何度でも何度でも、飽きずに。

 だからきっと今回も、そうなるのだろう。思い返し、ミサキは吐息を零した。

 それは諦めの吐息だった。

 無駄は、省くに限る。

 

「……此処で死ぬのも、アリウスの中で死ぬのも、結局一緒か」

 

 そう言葉を零し、ミサキはゆっくりと手摺を離れた。佇むサオリの前に数歩足を進め、手の届く距離へと立つ。彼女は口元のマスクを下にずらし、問いかけた。

 

「それで、姫を助けるの?」

「あぁ、そうだ、先生を含めた私達四人で」

「到底、勝ち目がなくても?」

「勝ち目なら、ある」

 

 強い口調だった。それをミサキは強がりだと受け取った。スクワッドにある唯一アリウスに勝る点など、先生の存在くらいしかないだろうに。

 だがそれを口にする事は無い、リーダーがそう云うのであれば、そうなのだろう。自分の役割は只、課された範囲の中で出来る事をするだけだ。肩を竦め、ミサキは頷く。

 

「……分かったよ、リーダーの命令なら従う」

 

 そう云って彼女は、仕方なさそうに苦笑を浮かべた。

 

「今回も、最後までお供するよ――リーダー」

「頼んだ」

 

 サオリがぶっきらぼうに手を差し出す。その傷に塗れた指先を見つめ、ミサキは無言で手を取った。握り締められる掌、力強いそれにミサキは目を閉じる。

 あぁ、本当に――サオリ(リーダー)は変わらないと。

 

「はぁ~っ……よ、良かった! な、何とかなって、本当に良かったです……!」

 

 ヒヨリが目尻に涙を浮かべ、これ見よがしに安堵の声を漏らす。それは先生も同じだった、張り詰めていた空気が抜ける様に、口から吐息が零れる。僅かに強張った頬を努めて柔らかくほぐし、先生はミサキへ深い感謝を告げた。

 

「ありがとう、ミサキ、思い留まってくれて」

「何それ……別に、先生が御礼を云う事じゃない」

「ミサキの事、ヒヨリが凄く心配していたんだ、勿論私もだけれど……」

「………」

「そ、その、やっぱり皆さんと一緒じゃないと、私ひとりじゃ何も出来ませんし、ミサキさんは頭が良いから、こんな状況も何とか出来るんじゃないかって思いまして……えへへ」

 

 口元を緩め、背を丸めながらそんな事を口走るヒヨリに対し、ミサキはそっぽを向きながら腕を組んだ。その表情に見えるのは呆れか、或いは単なる照れ隠しなのか。彼女は淡々と言葉を零す。

 

「……自治区に戻るなら急いだほうが良い、残された時間は約九十分、それまでに入り口に辿り着かないと通路が封鎖される」

「そうだな、日付変更まであと一時間半……今直ぐ向かうとしよう」

 

 ミサキが罅割れた腕時計を見つめ、サオリもその言葉に肯定を返す。アリウスの環境は劣悪であったが、作戦行動に時間の確認は必須。古いものだが、生徒には時刻を確認出来る手段が支給されていた。端末然り、腕時計然り。

 時間は限られている、行動は出来得る限り早い方が良い。

 

「説明は移動しながらする、今は付いて来てくれ先生」

「分かった」

 

 サオリがそう云って帽子を被り直し、先生は頷きを返す。

 これでスクワッドは揃った、この面々でアリウス自治区に乗り込む事になる。全員がこれからの激闘を予感し、各々の反応を見せる中――ふと、ミサキの視界が人影を捉えた。

 

「――あら?」

「……!」

 

 暗がりの向こう側から声が響く。それはどこか間の抜けた、場違いな声だった様に思う。咄嗟にサオリは愛銃を構え、ミサキがセイントプレデターを抱え直す。全員の視線が暗がりの中に吸い込まれ、僅かに強張った声色でミサキは告げた。

 

「リーダー、向こうに誰か居る」

「アリウスの追手か――?」

「ひぇっ!? も、もう嗅ぎつけられたんですか……?」

 

 こんな時間の廃墟区画に足を踏み入れる生徒など、そうはいない。かなりの確率でスクワッドの追撃命令を受けたアリウス生徒だろう、そう考えたスクワッドは強い警戒の色を見せる。

 

「先生、私達の後ろに」

「……分かった」

 

 サオリの言葉に頷き、先生はタブレットを抱えながら後方へと下がる。万が一を考えヒヨリが傍に付き、場合によっては即座に戦闘支援(リンク)を行えるよう先生の指先は画面に触れていた。

 点滅する照明に照らされ、影の中から顔を覗かせる生徒。コツコツと靴音が周囲に響き、色褪せた景色の中で彼女はその銀髪を靡かせ告げる。

 

「まさか、この様な場所でお会いするなんて」

 

 声は僅かに弾んでいた。一際強く地面を打つ音、停止した彼女の全身が光に照らされる。暗闇の中でうねる尻尾、その先端が微かに地面を掠め、肩に羽織った外套が風に揺らめいた。

 

 彼女――黒舘ハルナは愛銃アイディールを担ぎ、その表情を喜悦に染めながら先生を見つめていた。

 

「ごきげんよう――今宵も良い夜ですわね、先生?」

 


 

 申し訳ない、本当なら昨日投稿する筈の話だったのですわ。

 けれどコラボの情報によってキヴォトスという世界の謎が一気に深まってしまって、一日死んでおりました。

 

 異世界からやって来たキャラクターにヘイローがある……? 超電磁砲まったく全く知らないのですけれど、あの子達は普通の人間とは違う感じのキャラクターなのでしょうか? 強化人間とか、人造人間とか、機械生命体とか。もし何の変哲もない人間にヘイローが付与されるのであれば、じゃあ先生って何よとなる訳で、一日頭抱えて「ヘイローとは……人間とは、キヴォトスとは……?」となっておりましたの。

 

 或いはこのキヴォトスという世界が先生の世界ならば、『子ども』という明確に守護すべき対象を『ヘイロー』という権能か何かで守っているという考えも出来なくはありませんけれど。他所の世界から入って来た存在だろうが何だろうが、先生にとっては守るべき生徒、子どもである訳で、まぁ先生だったらそうするよねというのは納得出来る話です。

 子どもですよね? 実は大人でした~! ってオチはありませんわよね? 生放送で「〇〇中学」って云ってましたけれど、私聞き間違えてないですわよね?

 

 というか異世界から入り込めるという事は、キヴォトスの外の世界に他の『作品世界』が存在しているという可能性がある? そうなるとフランシスの文言から『先生』という存在がそもそも別の作品世界のキャラクターだとか、主人公役だったみたいな展開もあり得てしまう気がしますわ。

 

 あらすじが廃墟で倒れているのを見つけた……みたいな話でしたけれど、確かミレニアムの廃墟区画って「キヴォトスから忘れ去られたものが集積した時代の下水道云々」みたいな話があったような、無かった様な。多分ゲーム開発部のシナリオだった筈。

 この言葉をベースに考えると、「超電磁砲世界の遥か未来がキヴォトス」みたいな考え方も出来る気がしますし。元々プレナパテスの存在がある訳ですから、今更平行世界、過去、未来、云々という概念が出てきても驚きはしないのですが、完全別世界となると本当に話が変わって来るんですわよ。だってまったく毛色の違う世界な訳ですから、それが繋がるってホントとんでもねぇ事ですわよ。

 これがアリなら過去から生徒引っ張って来ても整合性が取れますし、(ただ、どうやって時代を超えるのかという手段は全くの不明)「忘れられた神々」ってつまりそういう事ですわよね? 廃墟に限ればどんな生徒(子ども)であってもポンポン呼び出せるって事……?

 

 というかマジでヘイロー周りの謎がコラボで出て来るとか想定もしてませんでしたわよ。もし彼女達が普通の生身の人間でヘイローを付与できるのであれば、何で先生にヘイローがないの? もしかしてヘイローの有無は「大人」か「子ども」かという部分で分けられるの? 総力戦のボスとか異形系でもヘイローは持っているけれど、それとは別? とか「キヴォトスの生徒はそういうものだ」、「キヴォトスの生徒は人間に限りなく近いが、神秘を秘めた何か」と仮置きしていた設定が一気に噴き出して私が死にかけるんですわ~! 

 

 取り敢えずシナリオ読まない事には確かな事は云えませんが、場合によっては先生の設定をまたコネコネする必要が出てきますし、廃墟から生徒を生やせる展開が公式ならばプロットが捻じ曲がる予感がひしひしと伝わって来て戦々恐々で大爆発ですわ。

 コラボでプロット破壊来るとは思わなかった、いや、ホントに。

 新章も実装されるし……私の目指した物語の終着点どこ……? ここ……?

 期待と不安が入り混じって死にそうですわ~~っ!

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