毎日投稿二日目ですの、読み飛ばしにご注意くださいませ。
ダイジェストが終わり次第、以前の書き方に戻りますわ!
【第五話】
全員揃ったゲーム開発部、アリスの入部を歓迎する意思を表明したユズは早速とばかりに新しいゲームをアリスに勧める。するとミドリ、モモイもまた自身のお勧めを取り出しアリスへと押し付ける。あらゆるジャンル、特色の異なるゲームを手渡された彼女は片っ端からゲームをプレイし、皆が寝静まった後もずっとゲームをプレイし続けた。
深夜、モニタの青白い光だけが周囲を照らす中、アリスのコントローラーを弾く音だけが周囲に響く。そんなゲーム開発部の扉がゆっくりと開き、顔を覗かせる人物がいた。
「――皆、もう寝ちゃったか」
深夜のゲーム開発部へと訪れたのは先生、彼は方々に手を回しアリスの学籍情報を取得するに至った。学生証を片手に部室へと足を踏み入れた先生は、ゲーム機を片手に寝転がるモモイ、ミドリ、ソファで丸まるユズにそっと毛布を掛けて回る。そして微動だにせずモニタを注視し、ゲームをプレイし続けるアリスの傍へと歩み寄った。
先生が隣に腰を落とした後も、一瞥もせずに画面を食い入るように見るアリスを眺め、先生はしばし沈黙を守る。画面の中では勇者アリスが魔物を倒し、魔王城へと入っていくところであった。先生はそんな冒険を見守りつつ、徐にアリスの頭を撫でつける。その意図を理解出来ないアリスはピクリと一瞬動きを止め、何かを問いかける様な視線を先生に向けた。けれど彼は何も云わず、ただ微笑むのみ。
暫く冒険を見守っていた先生は無言で立ち上がり、学生証と何かの書置きを残し、そのまま部室を後にするのだった。
「パンパカパーン、アリスが仲間として合流しました!」
翌朝、起床したゲーム開発部の面々はゲーム的な口調でありながらも、比較的スムーズなやり取りを行えるようになったアリスに歓喜の声を上げる。そして部室内にあった学生証と先生の書置きに気付き、正式にアリスはゲーム開発部の一員として所属する事になった。
しかし、彼女をミレニアムの生徒として扱うにはまだ足りないものがある。
「制服もオッケー、学生証も先生が用意してくれた! 学籍情報も完璧に偽装――もとい書き換えられた筈だから……」
「えぇっと、後必要なのは」
ミドリがそう呟けば、ユズがゆっくりと頷きながら答える。
「――武器、だよね?」
■
【第六話】
キヴォトスに於いて銃火器を携帯していない事は非常に不自然な事である。という事でアリスの武器を見繕う必要があると発言したモモイは、先生の書置きを手に取りながら、「先生がエンジニア部に話を付けてくれたみたい!」と喜色を浮かべる。
機械全般に精通している彼女達の場所になら使用していない銃器の類もある筈だと、モモイとミドリ、そしてアリスの三名は早速エンジニア部へと向かう。尚ユズは人見知りであるため、ひとりお留守番である。
「先生から話は聞いているよ、新しい仲間に良い武器をプレゼントしたいのだろう? 向こうにある試作品、それに作ったは良いが特に使い道が無かった銃器何かも置いてある、どれでも好きなものを持って行くと良い」
「本当に!? やった~! ありがとう先輩っ!」
エンジニア部に到着すると早速マイスターであるウタハが出迎え、快く彼女達に協力を申し出る。倉庫の片隅で並べられた銃器を前に悩むゲーム開発部。電子決済機能とBluetoothを搭載した拳銃。タバスコを連射可能なサブマシンガン、相手の服だけを溶かす光線を発射するライフルなど、多種多様かつ実用性に疑問が残る代物が盛りだくさん。
もし戦闘経験があまりないのなら、比較的扱いやすい銃器が良いのではないかとヒビキが拳銃、小口径のSMGなどを勧める。しかしアリスは「既に〇〇回世界を救い、〇〇回魔王を討伐しました、戦闘経験なら豊富です!」と豪語。その発言に困惑するヒビキであったが、何とかミドリがフォローし事なきを得る。
「――あれは、何ですか?」
そんな事をしていると、アリスの目に一つの武器が飛び込んで来る。それは倉庫の片隅で安置されていた巨大な火砲『宇宙戦艦搭載用レールガン』であった。
身の丈を超える様な巨大武器、ミレニアムに於いて最上位に近い予算を与えられたエンジニア部の下半期予算、その七割を費やして造られた兵器である――その正式名称は。
「これは、『光の剣・スーパーノヴァ』です!」
「ッ……!」
その名前を聞いた瞬間、アリスは目を輝かせ始める。「あれが欲しいです!」と叫ぶアリスに対し、しかしエンジニア部の面々は難色を示した。「何でも持って行って良いって云ったじゃん!」と反論するモモイに、コトリやヒビキ、ウタハはこのスーパーノヴァが個人携帯火器としては余りにも重く、大きく過ぎる旨を伝えた。
基本重量で百四十キロ以上、更に照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行えば、瞬間的な反動は二百キロを超える怪物火器。クレーンでも使わなければ持ち上がらず、渡せるのなら渡したいが――と思い悩むウタハを前に、アリスは再び目を輝かせ問いかける。
「……汝、その言葉に一点の曇りも無いと誓えるか?」
その独特な云い回しに困惑するウタハであったが、彼女の言葉に頷いて見せる。そしてアリスは無造作にスーパーノヴァへと近付くと、一息に銃身を持ち上げた。その怪力に呆然とするマイスター達を他所に、アリスは適当にボタンを操作しスーパーノヴァを天井目掛けて発射してしまう。光線は倉庫の天井に巨大な穴を空け、アリスは光の剣の威力に頬を紅潮させた。
「まさか、本当に砲撃まで行えるとは――」
「嘘、信じられない……」
「す、凄いパワーですね……!?」
驚愕するエンジニア部一同、しかし言葉を撤回する気はないとアリスにスーパーノヴァを託す意思を見せる。元より自分達にとっては手に余る代物だった、倉庫で埃を被っているよりは余程良い。
しかし、それはそれとして本当にその重量を扱い切る事が出来るのかとテスト――もとい、光の剣を扱う資格があるのかを試すと云い放ち、廃棄処分予定であったドローンを彼女達に嗾ける。
唐突なそれに驚きつつも対応するゲーム開発部、アリスは重量のあるスーパーノヴァを軽々と振り回し、砲撃の反動さえも完璧に吸収して見せた。
その結果に満足そうに頷いたウタハは、コトリにスーパーノヴァの取り扱いに関する説明を、ヒビキにはアリスが扱いやすいよう取っ手の補強やバンドの増設などを頼み、撃墜されたドローン達に目を向けた。
和気藹々と互いの健闘を称え合うゲーム開発部。彼女達の喜びに反し、ウタハの瞳は何処か冷徹でもあった。
「……最低でも一トン以上と推定される握力、あの砲撃時でさえブレない安定した体幹、強度や出力は勿論、外皮に傷一つ見当たらない綺麗な肉体――いや、
「つまり最初から厳しい環境での活動を想定し、ナノマシンによって自己修復する事を前提として作られている、とはいえ内部骨子の強度も尋常ではないだろうね、外皮系に自己修復機能があるのなら内部も同じ筈、あれだけ複雑な動作をする基幹システムなんて聞いた事がないが、さて……」
――それらを踏まえた上で、
ウタハはモモイとミドリ、そしてヒビキ、コトリに囲まれ嬉々としてスーパーノヴァを抱える少女を一瞥し、告げる。
「――戦闘用、か」
■
【第七話】
「よっし、これで漸くゲーム三昧出来るね! アリス、レイド行ける!?」
「攻略法は把握しています、レイド専用装備も獲得済み――【初心者歓迎/燃える森遠征/編成四人/ヒーラー@1、遠距離DPS@1】……あっ、H_is_
念願の武器も手にし、漸くミレニアムの生徒として必要なものを全て揃えたアリス。これで安心と胡坐を掻いたモモイは早速とばかりにアリスとゲームの世界に飛び込む。そんなモモイに対しミドリは未だ不安げで、午後にはユウカが資格審査の為に訪れる事を知る。「本当に大丈夫なの!? ゲーム開発部の存続が掛かっているんだよ!?」と必死なミドリに対し、モモイは対策は完璧だと楽観的に云い放った。
「ありえないわ……ゲーム開発部に新入部員が入ったなんて、あり得ない」
そんなこんなで午後、資格審査に訪れたユウカはゲーム開発部の部室へと足を踏み入れる。彼女は誇らしげに胸を張るモモイ、何処か冷汗の滲んでいるミドリを一瞥し、そしてゲーム開発部四人目メンバーとなるアリスへと視線を向ける。尚、ユズはユウカの接近を感知しロッカー内部へ退避していた。
ユウカは新入部員と称されるアリスに近付くと、腕を組みながら胡乱な目でアリスを爪先から頭の天辺まで観察した。
「あなたがアリスちゃんね? ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握していると思っていたけれど……私がこんなかわいい子の事を知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね」
「ぅぐ――! そ、そんな事より! アリスが入部すれば部活存続の条件はクリアでしょう? これでゲーム開発部は晴れて部活として認められて、今まで通り活動も――」
「……そうね、本来は部活の加入を申告すればそれだけで良かったのだけれど、でも最近は部活運営規則も少し変わって、もうちょっと厳しく確認する必要が出て来たのよ」
「え、えぇっ!? 何それ、そんなの聞いていないよ!」
「最近変更されたのだから仕方ないわ、という訳でアリスちゃんに簡単な取り調べ……あら、思ってもいない言葉がつい」
「絶対本音だよそれ!」
錯乱するモモイを他所に、咳払いを挟んだユウカは真剣な面持ちでアリスを見下ろす。
「今からアリスちゃん、あなたに簡単な質問をするわ」
「せ、選択肢によっては、バッドエンドになる事もありますか?」
「バッドエンド――まぁ、そういう事もあるかもね」
「っ……!」
その言葉に戦慄するアリス。一体どんな質問が来るのだと身構える彼女に対し、ユウカは徐に腰を曲げるとアリスの耳に囁くようにして云った。
「アリスちゃん、もしゲーム開発部に脅されて仕方なくこの場にいるのなら、左目で瞬きをして」
「初っ端から何その質問!? し、しないよそんな事っ!?」
あんまりな質問に憤慨するモモイ。その後もユウカの質問は続き、アリスもまた時折躓きながら回答を続ける。
しかし、質問が続けば続く程何とも云えない予想外な解答が飛び出し、遂には現実とゲームを混同しているとしか思えない様な発言が飛び出す。その事にモモイとミドリは顔を真っ青にし、「お、終わった……」とゲーム開発部の破滅を予感した。
ユウカはどこか満足気な表情で頷き、何事かを端末に入力する。
「……成程、短い間だったけれどアリスちゃん、貴女の事は良く分かったわ、ゲームが好きだって事、それに新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かを成し遂げるストーリーが好きなんだって事、十分に伝わった」
「えっ……」
「えぇ、そんな子がゲーム開発部に入部する事は、何もおかしな事じゃないわね」
質問、もとい尋問を終えたユウカはそう云って端末の画面を落とす。予想外の好感触にモモイは思わず驚きを隠せず、声を漏らした。
「規定人数を満たしているので、ゲーム開発部をあらためて正式な部活として認定……部としての存続を承認します」
「やっ……」
「やったぁ~ッ!」
ユウカの決定にモモイ、ミドリは両手を挙げて喜び、困惑するアリスへと抱き着く。何だか良く分からないが危機を乗り切ったと顔を緩ませる二人に――しかしユウカはここぞとばかりに水を被せるのだった。
「――今学期までは、ね」
「ヴェッ!?」
予想外の追撃に凍り付く二人。ぎこちなく自身に視線を向けて来るモモイとミドリ両名を見下ろしながら、ユウカは寒々しい声色と共に告げる。
「規則が変わったのよ、さっきも云ったでしょう? 少し厳しくなったって――今は部活の規定人数を満たすだけじゃなくて、同時に部活としての成果を証明しなくてはいけないの、最近変更された部分だから勿論猶予は設けるけれど……その期間も今月末まで、それまでに結果を出せなければゲーム開発部は四人だろうと、四百人だろうと、廃部よ!」
「そっ、そんな……! あ、あり得ない!」
「あり得るの! というか、この間全体部長会議でちゃんと説明した内容でしょう?」
「ぜ、全体部長会議……?」
ユウカの呆れを含んだ言葉に、モモイは覚えがないとばかりに口を開く。
「えぇ、まぁ前回の全体部長会議、あなた達の部長――ユズは参加していなかった様だけれど」
「うぇっ!? そ、そんな!?」
「つまり全部――あなた達、ゲーム開発部の責任よ」
「そんなのってアリ!? な、何て卑怯な――!」
「……鬼とかならまだ分かるけれど、規則通りに運ぶ事の何が卑怯なのよ」
溜息を零し、首を緩く振るユウカ。彼女は手元のタブレットを懐に仕舞い込むと、そのまま疑る様な視線で三人を見た。
「――正直アリスちゃんの身元も怪しいし、本当なら今日、今直ぐにでも退去要請をしようと思っていたのだけれど」
「ぅぐッ……!」
「誰かさんから何度も頭を下げられて、どうしても猶予を作って欲しいとせがまれてね、それに――彼女のゲームが好きっていう純粋な気持ちは、本物だと思ったから」
それだけ告げ、彼女は踵を返す。そしてゲーム開発部の扉を開くと、やや威圧感を滲ませた瞳で以て硬直するモモイを注視した。
「モモイ、あなた私に向かって云ったわよね? ミレニアム・プライスで吃驚するくらいの結果を出して見せるって」
「そ、それは、確かに……云ったけれど」
「彼女の熱意は本物だと感じた、けれどセミナーの会計として結果を残せない部活に予算は出せない――あなたのその気持ちに相応しい成果が出る事を期待しているわ」
冷徹に、しかし多分に期待を滲ませる声を最後に、ユウカはゲーム開発部を後にする。後ろ手で扉を閉め、足音を鳴らしながら廊下を歩く。
そして一つ目の角に差し掛かった所で、不意に彼女は足を止めた。
「――これで良かったんですか、先生?」
「うん、ありがとうユウカ」
曲がり角、壁に背を預けて待機していた大人にユウカは肩を竦めて見せる。
「別に先生に云われて仕方なく猶予を設けた訳じゃありません、あの子のゲームに対する想いは本物だと感じましたし……ただ」
言葉を止めたユウカの表情には、隠しきれない不安が覗いていた。
「セミナーの一員として聞いておきたいのですけれど、あのアリスって子は危険な存在――って訳じゃないですよね?」
「……大丈夫だよ、アリスはそんな子じゃないから」
ユウカの疑念は尤も。彼女にはミレニアムを守る責務がある、セミナーとして身元不明の生徒を受け入れる事に抵抗があるのだろう、その感情が先生には良く分かった。故に先生は自身の胸元を叩きながら告げる。
「何かあったら、私が責任を取るよ」
「――分かりました、先生がそこまで仰るのなら」
元より情に厚いユウカである、何だかんだ云いつつも心の中では既にアリスをミレニアムに受け入れていた。
「もしゲーム開発部が廃部する事になったとしても、アリスちゃんの身元を詮索するような真似はしません、あの子がミレニアムで過ごせる場所の手助け位は――」
「ゲーム開発部は、無くなったりしないよ」
ユウカの声を遮り、先生はそう断言する。顔を上げた彼女の視界に、自信に満ちた先生の笑顔が映った。
「あの子達ならきっと、素晴らしい作品を作ってくれる筈だから」