ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

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誤字脱字報告の輝きですわ~!
今回は約一万四千字ですの!


勇者(合理)の証明

 

「――その役目を果たしなさい、ネル」

「………」

 

 向けられた銃口、対峙するC&Cリーダー、ネル。ゲーム開発部の面々は向けられる銃口に身を竦ませながらも、アリスを庇う様に立ち塞がる。

 この場に居る誰もが、ネルに勝てない事を理解していた。当時彼女と対峙した状況、先生が居て、協力してくれる誰かが居て、全員が万全の状態で――それでも尚、アリスが相打ちに持ち込み逃走するしかなかった。

 だと云うのに今は身体的にも、精神的にも向こうが優位で、この場にはヴェリタスも、エンジニア部も、先生も居ない。誰も助けてはくれない。

 ゲーム開発部が彼女に挑んだとしても――その結果は火を見るよりも明らかだ。

 

「っ、ぅ……!」

「ネル、先輩……!」

「―――……」

 

 ネルの視界に入る四人の影、アリスの前に立つ三人の仲間。怯え、竦み、それでも尚友人の為に恐怖を押し殺して立ち続ける度胸と勇気。こんな状況でなければ、大したもんだと破顔して、彼女達を真正面から称賛していただろう。その心意気を、芯の通った強さを、彼女は好ましく思う。

 だからこそゲーム開発部へと銃口を向けながら、ネルは呟いた。

 

「――合理的判断、か」

 

 合理、即ち論理的に正当であり、道理にかなっている事。

 ならば道理とは何だ? 物事の正しい道筋、人として正しき行い。

 連れ去られそうになっている仲間を守ろうと立ちはだかる存在に、銃口を向ける事は正しい事か? 考えるまでも無い、ましてや連れ去られる本人が何も知らず、理解もせず、只怯えるだけの存在ならば――尚更。

 各々にそれぞれの主張があり、正義があり、優先すべき信念がある。それはリオ然り、ネル然り、ゲーム開発部然り。そしてネルという存在にとっての合理とは、矜持(プライド)であり、義理であり、人情である。

 

 ――合理(正しさ)とは、一つではない筈だ。

 

「おい、リオ」

「……今度は何かしら、ネ――ッ!?」

 

 中々引き金を絞らないネルに対し、僅かな不審を抱き始めたリオ。彼女は問い掛けに口を開き、次いで息を呑んだ。

 視界に、飛び上がったネルの姿が見えたからだ。

 大きく身を反らし、足を振り上げる姿。そこから導き出されるのは、今正にネルは自身に向かって蹴撃を放とうとしている事実。

 

「――ッ!」

 

 咄嗟に展開される電磁防壁、青白い球体がリオを包み込み、ユウカと扱うものと酷似したソレはネルの蹴撃を真正面から受け止める。凄まじい閃光と衝撃が走り、リオの身体はゲーム開発部の扉を背中で突き破り、廊下へと吹き飛んだ。けたたましい破砕音、弾けた留め具が軽い音を立てて床に転がる。

 

「うぇッ!?」

「ね、ネル先輩……?」

 

 唐突な展開に唖然とするゲーム開発部、彼女達を背にネルは無言で廊下へと足を踏み出す。扉に備え付けられていた曇り硝子が割れ、地面に散らばっている。パキリと、ネルの足元で破片を踏み潰す音がした。

 

「……ネル、一応聞いておくわ」

「……あぁ」

 

 電磁防壁の上から蹴り飛ばされ、拉げた扉と共に廊下へと転がったリオは上体を起こし、淡々と問いかける。その瞳は揺ぎ無く、ネルを見つめる視線は冷ややかでさえあった。

 

「――一体、何のつもりかしら?」

「その優秀な頭を捏ね繰り回して、ちったぁ考えてみたらどうだ――なぁ、リオ?」

 

 起き上がり、膝をつくリオを見下すネル、其処にはリオの瞳と同質の色が灯っていた。彼女の態度を理解したリオは、ゆっくりと立ち上がり膝に付着した埃を払う。その様子を眺めながら、SMGに繋がれた鎖を引き摺り彼女の前へと足を進めるネルは、指先で鼻先を弾く。

 

「今まで依頼内容を気に入った事なんざそう無かった、ヤレどこの武装組織を壊滅させて来いだ、不法占拠した不良共を掃除して来いだ……まぁ、その手のモンだったら、悪態吐きながら片付けてやったよ、暴れるのは嫌いじゃねぇしな」

「えぇ、そうね、任務に臨む態度は兎も角、貴女は常に結果を出していた」

「なら、分かるだろう?」

「………」

「今回の命令は一等悪趣味で付き合ってられねぇ、それだけの話だ」

「けれど必要な事よ」

「同じ学園の生徒を、それも何も分かってねぇ奴を誘拐する事が必要ってか? ……ざけんな、ンな依頼やってられっか」

「何度も同じ事を繰り返し口にするのは非効率的なのだけれど、云った筈よネル、そもそも【ソレ】は私達と異なる――」

「まず呼び方が違ぇ」

「……?」

 

 リオの言葉を遮り、ネルは顎先で今尚部室の中で身を竦ませるアリスを指し示し、告げた。

 

「チビをモノみてぇに呼ぶな、コイツにはコイツの名前がある、ソレ(機械)でもアレ(異物)でもねぇ――コイツは、アリス(ミレニアムの生徒)だ」

「……貴女も、随分な呼び方をしている様だけれど」

「あたしは良いんだよ、少なくともアリスをモノ扱いする気もねぇし、あたしなりにコイツ等を気に入っているんだ」

 

 そう云って破顔するネルは手の中でSMGを回転させる。繋がれた鎖が撓り、地面を軽く打った。ネルはアリスを「チビ」と呼ぶ、モモイもそうだし、ミドリもそうだ。ユズだけは「おでこ」と呼ぶが、それは分かり辛い彼女にとっての親愛である。そこに侮蔑の意図や貶める感情は微塵もない、それが分かっているからこそゲーム開発部の面々は時折恐れ戦きつつも、彼女の来訪を歓迎していた。

 戦闘と勝利を好む彼女にとって、ゲーム開発部は新たな趣味の――楽しみの場だった。自分の知らない世界、ゲームとやらは中々どうして悪くない、だからこそ彼女達の関係を、その居場所を、善いモノだと感じている。

 今この瞬間、ネルにとっての正しさ(道理)とは――その居場所を守る事だった。

 

「それにリオ、てめぇの案に絶対賛成しないだろう大人をひとり、あたしは知っている」

「………」

「もう面倒だし、そうだな……この際ハッキリ云ってやるよ」

 

 元より、言葉を捏ね繰り回して舌戦を繰り広げるのは得手ではない。そんな事より、ぶん殴った方が早いと考えてしまうから。故に先程までゲーム開発部へと向けていた愛銃――ツイン・ドラゴンの銃口を、今度はリオへと向けた。二人の視線が交差し、その奥に戦意が滾る。

 これが、端的なリオへの解答だった。

 

「――もう、てめぇに付き合う義理はねぇんだよ、リオ」

「ね、ネル先輩!」

「し、信じてたよっ! やっぱりネル先輩はネル先輩なんだッ!」

「……た、助かったぁ」

 

 ゲーム開発部から歓声と安堵の息が漏れる。前者はミドリとモモイで、後者はユズの口から漏れた言葉だった。彼女達の知る中で、最強(最凶)の味方が彼女だ。ネルさえ味方に回ってくれるのならば不安な事など何もない、少なくとも戦力と云う面で彼女に敵う存在など想像もつかなかった。

 

「そう、この土壇場で裏切るのね……ネル」

「裏切りだぁ? はっ! そんな大層なモンじゃねぇ、てめぇのやり方が気に入られねぇだけだ」

「……はぁ」

 

 額に手を当てたリオは、深い溜息を零す。其処には失望と僅かな寂しさが見え隠れしていた。それは自身の元からまた一人、協力者が離れた事に対する感情の発露。自身の胸の内を理解する者は、誰も居ないのだと突きつけられた気分だった。

 

「ネル、貴女はいつもそう、気分次第で容易く命令違反を犯すその姿、いつ爆発するかも分からない癇癪玉の様な側面が貴女の長所であり――一番厄介な点だった」

「……あぁ?」

「だから、この状況も全て想定していたわ」

 

 だが、生憎とネルの事は良く知悉している。そもそも現在のC&Cを組織したのはセミナーのトップである彼女であり、各構成員の詳細なデータは全て手中にある。だからこそネルの選択、行動、思考を細分化し確率を導き出す事は難しい事ではない。

 それでも彼女を用いたのは――或いは、篩にかける為だったのか、それとも淡い希望に縋りたかったのか。ヒマリに拒絶された事が、存外に響いているのかもしれないとリオは胸中で呟く。

 だがもう、全ては終わった事だ。

 自分はもう――止まる訳にはいかない。

 

「――C&C全員ではなく、貴女単独を呼び出しておいて正解だった」

 

 ぽつりと呟かれたリオの言葉。

 それを耳にしたネルの表情が大きく歪む。

 彼女の戦闘に於ける第六感が警鐘を鳴らしていた。それは予感だ、任務にて敵の罠に掛かった瞬間に近い様な、寒気。

 

「――……てめぇ、リオ」

「……万が一のサブプランだったけれど、用意した甲斐はあった様ね」

 

 立ち上がり、衣服を正した彼女は毅然とした態度でネルと対峙する。C&Cリーダー、ミレニアム最強と名高い彼女を前にしても、その意思は揺るがない。

 

「自身の手札を知らず計画は立てられない、分析と予測は怠っていないわ、それはネル――貴女に対しても」

「ホント、そういう所が……嫌な奴だったよ」

「……そう」

 

 ネルの吐き出した悪態、しかしそれすらも彼女は素っ気なく切り捨て、手元のタブレットを指先で叩く。青白く周囲を照らす画面、その中に表示される――ひとりの名前。

 画面に落ちていた視線が、ネルを射貫く。

 

「トキ、貴女の出番よ」

「――イエス・マム」

 

 声は、ネルの背後から聞こえた。

 

「ネル先輩ッ!」

「っ!?」

 

 モモイとミドリが叫び、ネルは背後の存在を感知する。耳元で鳴る風切り音、それは何かが振り下ろされる音。完全な回避は不可能と判断し素早く防御姿勢を取るネル。

 辛うじて自身の後頭部目掛けた一撃を、ネルは肩で受ける。ズン、と走り抜ける衝撃と鈍痛、上空から飛び上がり蹴撃を叩き込まれたのだと分かった。膝を落とし蹈鞴を踏んだネルは前方へと転がって距離を取り、飛びずさる影へと膝を突いたまま銃口を向ける。

 

「っ、てぇなぁッ!? 誰だテメェ――!?」

「完全なる奇襲であった筈ですが、直撃を逸らしましたか、流石です」

 

 軽々しく宙を舞い、着地した人影。彼女は広がったロングスカートを払い、静々と一礼して見せる。クラシカルなメイド服、手にした特徴的な銃器、その姿はとある組織を想起させる。廊下を照らす電灯が、彼女の姿を白日の下に晒した。

 

「――はじめまして先輩、C&C所属、コールサイン『ゼロフォー(04)』、御挨拶申し上げます」

「ゼロフォー……?」

「C&C所属って、で、でも、あんな人今まで見た事も……!」

 

 C&C所属――コールサイン・ゼロフォー。

 彼女の口から出た単語に驚愕の声が漏れる。C&Cの事は良く知っている、しかし彼女達が持つコールサインはゼロスリーまで、アカネの持つナンバーが一番後ろであると認識していた。しかし、そうではなかった、秘匿されていた五人目のC&C、その出現に対しネルは表情を強張らせる。

 身に着ける制服、立ち振る舞い、成程確かに――自分達と同じ匂いを感じた。ネルは愛銃を突きつける様に構えたまま鼻を鳴らす。

 

「先輩に、コールサインゼロフォーか……可笑しな話だ、あたしの知らねぇ番号じゃねぇか、いつの間に後輩が出来ていたんだ、あぁ?」

「C&Cは本来秘匿され、秘密裏に運用される組織、少々その名声は高まり過ぎましたが、私は『本来の用途』で運用されておりますので」

「はッ、そうかよ」

 

 仔細は問わない、仮に答えられた所でどうするつもりもない。ネルは先程攻撃された部分を指先で払う動作を見せながら、警戒を解かずにゆっくりと立ち上がる。

 

「どうあれ先輩を背後から奇襲するなんざ、舐めた真似してくれるじゃねぇか、後輩?」

「申し訳ありません、これも任務ですので」

「任務だろうが私闘だろうが、関係ねぇ――このあたしに喧嘩吹っ掛けたんだ、覚悟は出来てんだろうなぁ!?」

「ネル先輩っ!」

「わ、私達も……!」

 

 唐突に現れた新たな生徒、リオの持つ切り札。尋常ならざる気配を感じ取ったゲーム開発部はネルに加勢すべく愛銃を手に、慌てて廊下へと飛び出す。しかし、その様子を一瞥したネルは大きく息を吸い込み、叫んだ。

 

「手ぇ出すなッ!」

「っ――!?」

「こいつが誰だか知らねぇが、その辺の連中にあたしを止められるワケねぇだろう? てめぇらはそこでチビを守っとけッ!」

「ぅ……」

「わ、分かりました……!」

 

 その迫力と語気の強さに、モモイ、ミドリ、ユズはアリスの周りを固めながら廊下の片隅へと退避する。銃器を抱き締めながら酷く緊張した様子でネルを見守るゲーム開発部、リオは新たに現れた生徒――飛鳥馬トキの背後へと後退し、呟いた。

 

「貴女の『武装』を使用する事は避けたかった、けれどこうなった以上避けては通れない……準備は?」

「万全です、あらゆる武装は現在命令待機中、指示(オーダー)があれば直ぐにでも対応可能です」

「では、『武装』の限定使用を許可するわ、迅速に鎮圧なさい」

「――イエス・マム」

 

 リオが指示し、タブレットを操作した瞬間、彼女の衣服がぶわりと靡いた。同時に鳴り響く何らかの駆動音、彼女の身に着けた軽装型アームギア、レッグギアが稼働を開始する。それは終焉に対抗すべくリオが開発、用意した唯一無二の『武装』、その一端である。

 

「『モードⅡ』――移行準備、完了」

「あぁ? モードだか何だから知らねぇが、ゴチャゴチャ云ってねぇでさっさと――」

 

 ネルが佇むトキに向かって軽口を叩く。その引き金に指が掛かり、攻撃動作が垣間見えた。トキの青い瞳が絞られ、前傾姿勢を取る。

 

 瞬間――彼女の姿が目の前から掻き消える。

 

「ッ――!」

 

 目を離したつもりはなかった。しかし気付いた時、そう表現する他ない程瞬きの間に、分離(パージ)されたロングスカートとメイド服の袖回りが宙を舞い、蹴り砕かれた床の破片が飛び散る光景が視界に映っていた。

 ズン、と一拍遅れて響く破砕音、それがトキの超人的な加速によって生まれた破壊跡であると理解した瞬間、ネルは直感的に愛銃を振り回し、自身の周囲を鎖で薙ぎ払った。金属音と金切り音を鳴らして振り回されるそれは、ネルの頭上で衝突音を搔き鳴らす。

 

「コイツ――ッ!?」

 

 素早く顔を上げれば、ネルを蹴り飛ばそうとしていたのか――膝上まで覆い隠す白い足甲(レッグギア)を晒した、トキの姿があった。

 鎖による特異な防御により蹴撃を防がれたトキは、その表情に僅かな驚きを浮かばせる。

 

「これも、防ぎますか」

「随分と涼しそうな格好になったじゃねぇか!」

「戦闘に適した、効率的な換装です」

「それがテメェの戦闘スタイルって訳か!?」

 

 撓った鎖を引き戻し、素早く銃口をトキに合わせる。そのまま引き金を絞るが、銃弾が発射されるより早く、トキは天井を蹴って地面へと着地を敢行。一拍遅れて鳴り響く銃声、弾丸は電灯を割りながら幾つかの弾痕を残し、廊下の明かりが点滅する。

 速い――ネルは目の前のトキ、その実力を想定から数段階引き上げる。床へと着地したトキは姿勢を低くし、そのまま愛銃を抱えネルの懐へと肉薄する。

 自ら距離を詰めるトキを相手に、ネルは好戦的な笑みを滲ませ叫んだ。

 

「このあたしを相手にクロスレンジに持ち込むか、良い度胸だ……!」

「この兵装はあらゆる状況、距離に適応します、弱点はありません」

「云ってろッ!」

 

 接近するトキ、彼女に向けて銃口を突きつけ引き金を絞る。発射される弾丸、周囲を照らす閃光、しかし放たれたソレをトキは素早く旋回する事で回避する。彼女の身に着けた白いブーツが地面を蹴り、床を砕きながら急停止・加速を実現させる。そのまま壁に張り付いたトキは、まるで曲芸師染みた動きで壁を走り、弾丸は彼女の駆ける影を射貫くばかり。

 

「チッ、クソ……ちょこまかとっ!」

「―――」

「な、何、あの動き……!?」

「まるで、ゲームみたい……」

 

 トキの動きを遠くから眺めるモモイとミドリは、その重力を無視したような機動に驚嘆の声を上げた。状況が状況でなければ、思わず称賛を口にしたくなる様な動きだった。放たれる弾丸を壁や天井を蹴り、駆け上がり、加速と急停止を繰り返し躱し続ける。それは紙一重の神業、それこそC&Cのアスナの様な、驚異的な危機に対する嗅覚が無ければ成り立たない。

 

「……あれ、は」

 

 ユズは独り、トキの動きを凝視しながら呟く。彼女の動きはアスナとは異なる。彼女と実際に戦ったからこそ、ユズには分かった。アスナの様な直前に気付く、という感じではない。アスナの回避方法が本能的なものとすれば、トキのソレはもっと合理的で、理屈染みた動きだ。それは彼女の好む、格闘ゲームに於けるセオリーだとか、『読み』に近い。

 

 あの動き――まるで、先生の支援を受けているみたいな(何処に弾丸が来るか分かっているみたいな)

 

「あぁ、うざってぇ……ッ!」

「大人しく降伏する事を推奨します」

「舐めんなッ!」

 

 一向に弾丸が当たらないネルは、その挙動に翻弄される自分自身、そして余りにも淡々とした彼女の戦闘スタイルに怒りを見せる。トキは壁を蹴り、上下反転した視界の中で愛銃――シークレットタイムの照準を合わせ、引き金を絞った。響く銃声と閃光、レティクルに捉えたネルの中央へと着弾した弾丸は、ネルの顔面を確かに弾いた。

 弾丸が額を強かに叩き、潰れた弾頭が地面に落ちる。しかし、顔面への着弾を許しながらネルは微動だにしない。寧ろ、良くやってくれたと云わんばかりに獰猛な笑みを見せる。トキは音もなく床に着地しながら、呆れとも感嘆とも取れる声を漏らす。

 

「……頭部に直撃を受け退きもしない、頑丈ですね、先輩」

「生憎と、もっとスゲェ攻撃を浴びているモンでな、あたしを一時的にでも止めてぇなら、大砲(火砲)でも持って来い――ッ!」

「そうですね――この様な場でなければ、お見せする事も出来たのですが」

 

 どこまでも平坦な声色でネルの啖呵に答えて見せるトキ。微動だにしない表情のまま呟かれると、中々どうして冗談には聞こえない。彼女は必要とあらば、本当に大砲のひとつでも持って来そうな気配があった。

 

「しかし、当てられなければ攻撃に意味はありません、このまま投降せずとも、敗北は時間の問題です、抵抗は無意味であり、非効率的です」

「……確かにテメェは速ぇ、射撃精度も大したモンだ」

 

 縦横無尽に駆け巡るトキを捉えるのは難しい、こうして対峙すると良く分かる。常に動き回りながらも回避は的確で、更にどういう訳か弾丸も無駄弾が一つもない。ネルの動く先、急所を的確に撃ち抜いて来る。

 トキが銃を構え、発砲する。それをネルは飛びずさって躱した。地面に突き刺さる弾丸、回避し損ねれば鳩尾に着弾していただろうソレ。ネルは冷静に弾痕を一瞥し、一度、二度、大きく後方へと跳躍する。

 その行動を目にしたトキは、意外そうに眼を見開いた。C&Cリーダー、ネルの得意交戦距離はクロスレンジ、だと云うのに彼女は後退を選択したのだ。

 

「――自ら距離を?」

「あぁ、テメェの自慢はその足なんだろう? それなら……」

 

 呟き、ネルは愛銃の弾倉を取り外す。軽い音を立てて転がる空の弾倉、同時にスカジャンの内側より新たな弾倉を弾き、空中で愛銃を薙ぎ払い一瞬で装填を完了する。弾倉に装填された弾薬は三十発――二挺合わせて六十発。

 握り締めた愛銃の銃口をトキへと突きつけ、ネルは獰猛な笑みを浮かべる。チマチマした射撃戦は仕舞だ、此処からは――。

 

「一帯纏めて吹っ飛ばしてやるよ――ッ!」

「ッ!?」

 

 ネルが選んだのは弾幕による制圧、その場で広くスタンスを取り、部活棟の廊下を覆い尽くす程の射撃で以てトキを捉えるという、単純にして明解な策を敢行。

 全力で絞ったトリガー、同時に銃口が火を噴き乾いた銃声が周囲に轟く。

 

「――おらおらおらァッ!」

 

 強烈なマズルフラッシュが網膜を焼き、弾丸が廊下の壁や床、天井を削り、跳弾し、四方八方よりトキ目掛けて飛来する。トキはその場に屈むと、好戦的な笑みで以て銃口を振り回すネルを見据えた。

 思考が加速し、世界の速度が著しく低下する。

 最初から大雑把に狙いをつけ、後は回避先を潰す様に弾丸をばら撒く。神秘を孕んだ弾丸はコンクリートであろうと容易く粉砕し、リノリウムの床はネルの放った弾丸によって粉砕される。

 

「――演算」

 

 視界に弾丸が迫る、予測不可能な軌道を描く無数の脅威が。

 否、予測は出来る。

 その為の『武装』、その為の飛鳥馬トキ。

 彼女の視界の中に――飛来する弾丸、その予測線が表示された。

 屈んだ彼女のレッグギア、アームギアが一際高い駆動音を鳴らし、彼女の瞳が険しさを帯びる。目と鼻の先に迫る攻撃、この場に留まった場合の直撃弾数――十六発。

 

「加速ッ!」

 

 叫び、再びトキの姿が掻き消えた。

 鳴り響く跳弾音、銃声、閃光、その合間を縫う様に飛び交う影、フルオートで放たれた弾丸の雨は、ものの数秒足らずで全弾を撃ち切る。カチン、という弾倉払底を告げる音、銃口から立ち上る白煙と目前に広がる破壊跡。弾丸によって粉砕された電灯が暗闇を生み、破壊を免れた僅かな明かりのみが周囲を淡く照らす。

 その中心に――佇む人影があった。

 ネルは自身の口元が引き攣るのを自覚し、思わず声を漏らす。

 

「――マジかよ」

「……今のは少し、ひやりとしました」

 

 僅かに滲む汗をそのままに、トキは超然とした態度で告げる。その姿にはかすり傷一つなく、跳弾含む全ての弾丸を回避して見せたのだと分かった。あの弾丸の雨を、彼女は潜り抜けたのだ。

 ネルは素早く弾倉を切り離し、再装填を試みる。

 

「クソッ! どういう――ッ!」

「させません」

 

 だが、その隙を見逃すトキではない。弾丸を全て躱されたという動揺、心の隙、その硬直が一手の遅れを生む。自慢の速度で肉薄したトキに対し、ネルは即座に再装填は不可能と割り切る。突き出されたトキの銃口を蹴り上げ、手にした愛銃を振り下ろし即席の武器とする。

 しかし、突き出された銃は囮であった。トキは敢えて自身の銃器を突き出し蹴りを誘う事で、ネルの姿勢を不安定なものとした。振り下ろされるSMG、それを掻い潜りネルの腹部へとタックルを敢行するトキ。強烈な衝撃と振動、トキの肩がネルの鳩尾へと食い込み、その矮躯が浮き上がる。

 

「ぐぅッ――!?」

「私の、勝ちです……!」

 

 そのまま縺れ込む様に地面へと引き倒し、トキは一瞬でネルの腕を取り、自由を奪う。仕掛けられる関節技、締め付けられた肩関節、肘が悲鳴を上げ、骨が軋む。体格差もあり完全に制圧されたネルは銃器を振り回す事も出来ず、額に青筋を浮かべながら怒声を上げた。

 

「だぁッ、クソ!? 離しやがれッ! ぶっ壊されてぇのか!?」

「暴れないで下さい、腕があらぬ方向へと曲がってしまいます――皆様も下手に動かずに、無駄な抵抗はおすすめしません」

「そ、そんな……」

「ネル先輩が、負けた――?」

 

 本当に一瞬の出来事であった、肉薄から凡そ三秒程度の決着。その余りにも鮮やかな手並みと、自分達の知る中で最強の生徒であるネルが敗北した事実に、ゲーム開発部の面々は言葉を失う。

 攻撃の余波に巻き込まれる事を嫌い、廊下の角にて待機していたリオは、破壊跡の散見される廊下を一瞥しながらトキの元へと足を進め、無機質に問いかける。

 

「トキ、特殊武装の具合は」

「問題ありません、良好です」

「……図らずも、今回の戦闘で効果は実証された様ね」

「はい、これならば脱着状態でも大多数相手の鎮圧が可能かと」

「クッソ――っ!」

 

 地面に押し倒されたまま憎々し気にリオとトキを睥睨するネル。しかしリオはそんな彼女に目を向ける事無く、今度こそゲーム開発部へと視線を向ける。リオの赤い瞳に捉えられた彼女達が肩を弾ませ、一歩退いた。

 

「さぁ、これで遮るものはいなくなった、AMAS――アリスを回収しなさい」

「ッ!」

 

 AMAS、彼女がその名を告げると同時、廊下に殺到する複数の戦闘用ドローン。そのロボット群は廊下の前後より彼女達を追い詰め、唐突に現れたそれらに四名は思わず悲鳴を呑み込む。駆動音を鳴らし集合するロボットには銃火器が取り付けられており、その銃口はゲーム開発部へと向けられていた。

 彼女と対抗し得るだけのネルが敗れた今、この場にはもう助けてくれる存在など何処にも居ない。顔を蒼褪めさせ、怯懦に塗れながらも彼女達はアリスを囲んで歯を食い縛る。

 

「ま、待って……!」

「絶対に、アリスは――ッ!」

「下手に動かない方が良いわ、貴女達の戦力で包囲網を突破出来ない事は既に証明されている、無関係な子を傷付けたくはないの」

「ぅ――……」

 

 手にした銃器を構えながら叫ぶユズ、ミドリ、しかしリオは冷徹に、淡々と事実を口にする。部室棟は既に包囲された、そして目の前のAMASと呼ばれる機械群を突破するだけの戦力を彼女達は持たない。

 その演算結果は、既に導き出されているのだ。

 

「ッ、だから、アリスと私達は無関係なんかじゃないって云っているじゃん!」

 

 しかし、それでも尚諦められない者が居た。モモイは矢面に立ち、無数の銃口を突きつけられながらも気丈にリオへと反駁して見せる。

 

「アリスは私達の友達で、ゲーム開発部の大切な仲間で――ッ!」

「――いつまでそんな寝言を吐き続けるつもり!?」

「ッ……!」

 

 だが、それを呑み込む様なリオの怒声が周囲に響いた。それは彼女らしくない、本気の激昂だった。絞られた瞳が鋭さを増し、刃の様な冷たさを伴ってモモイを射貫く。其処には何か、想像もできない様な重圧を感じさせた。

 

「勘違いしないで頂戴、『ソレ』はそもそも生命体ですらない――貴女達が思う友人でも、ましてや勇者なんて存在でもない、もしそう感じるのであれば、それはエライザ効果に過ぎない」

「な、にを――……」

「『ソレ』はこの世界を終焉へと至らせる恐るべき兵器なのよ」

 

 リオは力強く断言する。

 アリスは何処までも自分達とは異なる存在なのだと、世界を滅ぼす魔王なのだと。或いはそれは、自分に云い聞かせているのではないかと思ってしまう程、何度も。

 しかし、モモイはそれを受け入れられない、受け入れる事など出来ない。リオが何度説得を口にしようと、彼女は首を横に振る。

 

「兵器、兵器って……! アリスは、そんな存在じゃない……!」

「なら貴女は『ソレ』(アリス)とキヴォトス全ての生徒を秤に掛けろと問われた時、どう答えるつもりなの?」

 

 リオは尚も云い募るモモイに詰め寄り、問いかける。近い未来、訪れるであろう災厄、それに見舞われた時彼女は何とする? どのような対策を打つ? 何の知識も、対策も、備えも、気構えさえ持たない彼女に、一体どんな行動が起こせる? こんな筈じゃなかったと苦悩するか、こんな事になるならと後悔を零すか。リオはモモイを見下ろしながら、その額を突き合わせんと睨み付ける。

 

「貴女の我儘一つで世界が滅びたとして、貴女はその時どうするつもり? 何万、何十万、何百万という命を前にして貴女は同じ言葉を繰り返すのかしら」

「なっ――!」

「事が起きてからでは手遅れなの、だからアリスのヘイローは私自身の手で破壊する、一人の存在とキヴォトス全土に生きる生命、何方を選ぶべきは明白――既にその準備は整っているわ」

「ち、違う……違う、違うよ! アリスちゃんは絶対に、絶対に兵器なんかじゃないッ!」

 

 ミドリは何も云わず、ただ沈痛な面持ちで黙り込むアリスを抱き締め、必死に叫ぶ。

 

「だってアリスちゃんは、光の剣を――勇者の証であるスーパーノヴァを持っているもん!」

「……光の剣?」

 

 廊下に木霊する声、聞き慣れぬ単語(ソレ)に、リオの眉が顰められる。

 そして彼女の視線がふと、アリスの背負う火器――スーパーノヴァ(光の剣)へと向けられた。

 

「――あぁ、エンジニア部が作った、あの玩具」

 

 呟きは小さく、同時に冷ややかであった。それは余りにも稚拙な弁護だと思ったからか。

 

「そう、貴女達がそう云うのであれば、それが心の拠り所であるのなら……良いわ」

 

 光の剣、スーパーノヴァを扱う者が勇者である。

 ゲーム開発部の主張するそのロジックに、リオは欠片も賛同出来ない。しかし、それが彼女達にとっての合理(道理)ならば――リオは真正面からソレを退ける。

 リオは手元のタブレットを二、三操作し、最後にアリスの背負う光の剣に視線を向ける。たったそれだけで、彼女の証明は終了した。

 徐々に低く、唸る様な音を鳴らすスーパーノヴァ。それは稼働する機構が停止する音。

 

「ぇ、ぁ……」

「す、スーパーノヴァの、電源が……」

「き、消えた……?」

 

 常に薄らと青白い光を放っていたアリスの光の剣、そのラインを彩っていた光が消失し、機能の一切が消失する。それを見届けたリオは動かなくなった光の剣(勇者の証)を見下ろし、一切の感情を排し云い放った。

 

「これで満足かしら? それなら、これで証明は終わりよ」

 

 光の剣はその効力を失った。それを扱える者が勇者であるのならば、今のアリスはその資格を失った事になる。

 ――彼女達(ゲーム開発部)のロジックは破綻する。

 アリスは自身の背負っていた光の剣を抱え直すと、何の反応も示さなくなった愛銃(勇者の証)を前に呆然と呟く。自身が初めて手にした武器、皆が用意してくれた武器、彼女にとって一等大事な宝物。

 勇者の持つ――光の剣。

 

「アリスの、光の、剣が――……」

「貴女達の云う光の剣……勇者の証は、もう何処にも存在しない」

「ゆうしゃの、あかし――……」

「アリス、貴女は勇者などではない」

 

 愕然とするモモイ、ミドリ、ユズを押し退け――遂にリオはアリスの前へと立つ。

 薄暗い廊下の中、赤い眼光がアリスを見下ろしていた。

 アリスは手にした光の剣を力一杯抱きしめ、呆然とした表情のまま、リオを見上げるしかない。

 震えるその身体が、唇が、瞳が、リオにあらゆる感情を訴えかける。

 しかし、リオは揺るがない。

 その正しさ(合理)を信じるが故に。

 

「――貴女は存在するだけで災厄を振り撒く(この世界から消えるべき)魔王(悪役)なのよ」

「――………」

 

 アリスの(ゲーム開発部の)心が――砕けようとしていた。

 

 もう、駄目なのではないか。

 もう、どうしようもないのではないか。

 そんな諦観と悲壮感が胸中に渦巻いてしまう。

 言葉でも、力でも、この場で彼女に勝るものは何もない。

 俯き、黙り込むアリスに向け、リオはゆっくりと手を伸ばす。彼女を連れ去り、そのヘイローを破壊する為に。

 止めなくちゃいけない、阻止しなければならない。

 ゲーム開発部の全員がそう思った。

 けれど、言葉が出ない、身体が動かない。

 恐怖に、身体が竦んでしまう。

 

「っ、ぅ――ッ!」

「………」

 

 伸ばされたリオの腕を掴む――小さな指先があった。

 

「お、お姉ちゃん……」

「モモイ……!」

 

 それは涙を流すモモイの手であった。伸ばされたリオの袖を掴み、身体全体で引き留める様に抱き込む矮躯。しゃくり上げ、ポロポロと涙を流すモモイは未だ傷も残る体でリオの腕を引き留める。

 リオはそんな彼女を見下ろしながら、吐息を零した。

 

「……まだ、理解出来ないのかしら」

「でき、ないよ……っ!」

「彼女はミレニアムに、キヴォトスに災厄を齎す、それを阻止しなければならない、そうしなければ夥しい犠牲が生まれる」

「っ、でも……!」

「貴女達の云う光の剣は既に存在しない、勇者の証は消え去った、彼女を勇者と証明する手段はない」

「それ、でも――ッ!」

「――……そう、残念だわ」

 

 涙と鼻水に塗れ、リオの腕にしがみ付くモモイに対し、リオは憐れみを帯びた視線を落とす。抱き着かれた腕とは反対の指先を動かし、タブレットを叩く。青白い画面が点灯し、周囲のAMASが駆動音を鳴らした。

 リオの腕を抱き込み、歯を食い縛るモモイは想う。

 リオ会長の云っている事は、良く理解出来ない。もしかしたらその言葉は正しいのかもしれない。アリスは自分達とは違う存在で、もしかしたら世界に危機が訪れるのかもしれない。光の剣は力を失い、勇者の証は失われた。

 

 けれど。

 それでも。

 

 アリスはゲーム開発部の一員で。

 私達の大事な仲間で。

 大切な友人で。

 

 ――アリスは、私達にとっての勇者だった。

 

「――AMAS、彼女を制圧しなさい」

「ッ、も、モモイ!」

「モモイ……!」

「お姉ちゃんッ!」

「チビ――ッ!?」

 

 周囲を取り囲むAMASが唸りを上げ、その銃口がモモイを捉える。今の彼女がこれだけの集中砲火を受ければ、一瞬で意識は失われるだろう。アリスが、ユズが、ミドリが、ネルが、その凄惨な光景を予感し叫ぶ。

 

「っ、ぅ――ッ!」

 

 モモイはリオの腕を掻き抱いたまま、飛来するであろう弾丸の雨に悲鳴を呑み込み、身を強張らせた。

 

「――光の剣だけが、勇者の証じゃない」

「ッ……!?」

 

 だが、その銃口が火を噴く事はない。

 声がした。

 暗闇の向こう側から、響く声。

 それを耳にした瞬間、リオは咄嗟に顔を上げ、暗闇へと視界を動かした。床を打つ足音、それは嫌に軽く、薄ぼんやりとした白い輪郭が段々と浮かび上がって来る。

 誰かが――何者かが、暗闇の中から歩いて来る。

 

「なッ……!?」

「――この声は」

 

 ネルが驚愕に息を呑み、トキは瞳を細く絞る。電灯の割れた暗闇の中から歩いて来る人影――それは生徒にしては大柄で、声は低く響く様だった。

 その存在は余りにも簡素な出で立ちのまま、生徒達の前に姿を現す。

 

「……それを証明するのは、いつだって当人の意志と行動だ」

 

 簡素な病衣に血と砂に塗れたシャーレの外套を羽織った姿、その左腕にあった義手は取り外され、靡く袖は何とも空虚に見える。ガーゼと包帯に塗れた姿で尚、彼――先生は一歩、また一歩と足を動かす。

 此処まで必死に駆けて来たのか、砂と切傷に塗れた素足、壁に手を突き、額に滲む汗は疲労によるものではない。だが流れるそれを一瞥もせず、先生は顔を上げた。

 暗闇の中でも、その瞳に灯る光だけは失われていなかった。

 いつも通りの、何て事の無い日常を思い返す様に――先生はゲーム開発部の皆に微笑んで見せる。

 

「――そういう物語だって、ある筈だよね」

「せ、先生――ッ!」

「先生!?」

「シャーレの、先生――?」

 

 モモイが、ミドリが、ユズが、アリスが――そしてリオが彼の名を呼ぶ、驚愕と共に。

 到底立っていられるような姿ではなかった、靴も履かずに、着の身着のまま駆け付けたと云わんばかりの恰好で。

 正に満身創痍だ、まだ動ける状況ではないとひと目で分かった。青白い顔色も、血の滲む包帯も、何もかもがそれを物語っている。

 けれど、だと云うのに。

 

 先生は、此処(この場所)に立っていた。

 


 

 今更ですが二百話超えておりましたわ。

 二百話ですって先生、やべぇですわね。

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