ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

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誤字脱字報告、大変感謝。


はじまりの協定

 

「――あ、先生、お帰りなさい」

 

 アビドス校舎、部室に戻って来た先生を前にアヤネが声を掛ける。ラーメン屋柴関から帰る途中、先生は不意に、「ごめん、ちょっと用事が出来たから、先に戻っていて欲しい」と告げ別行動を取っていた。それこそ、止める間もないと云う速度で。

 先生は後ろ手で扉を閉めながら、「うん、ただいま」と頷いて見せる。思い思いに寛いでいた生徒達は先生の恰好を眺め、特に何事もなかったようだと内心で胸を撫で下ろした。実は、もう少しばかり遅かったらドローンで先生を探そうかという話も出ていた。セリカ誘拐の件もあり、今のアビドスは少しばかり安全云々の面で気が立っていると云っても良い。先生はその雰囲気を身で感じながら、申し訳なさそうに頬を掻いた。

 

「遅かったけれど、何かお仕事?」

「んー、まぁそんな所かな、シャーレの方でも色々やる事があってね」

「そうでしたか、何はともあれ無事で――!?」

 

 安堵したように笑みを浮かべていたアヤネが不意に言葉を止め、椅子を蹴飛ばし立ち上がる。その音に部室の皆が驚き、アヤネに視線が集まった。彼女は眼鏡の縁に指を掛けながら、硬い声で告げる。

 

「警戒網に反応がありました! 二、三人ではありません!」

「警戒網? いつの間にそんなもの……」

「先生が補給品として支給してくれたんです!」

「備えあれば憂いなし、ってね」

 

 先生がそう云って親指を立てる。ホシノが呆れとも感心とも取れる瞳で先生を見れば、アヤネはテーブルの下からタブレット端末を取り出し、指を忙しなく動かす。警戒網は校舎を囲う様に配置されており、距離は校舎から凡そ五キロの範囲。そこに侵入した車両、人物をスキャンし、ドローンを派遣する。二、三人程度の小規模人数であれば『来客の可能性』もあるが、それ以上の規模ともなるとカタカタヘルメット団や不良集団の可能性がある。アヤネは眼鏡のディスプレイを派遣したドローンに繋ぎ、学区に侵入した人物の正体を探る。

 

「場所は校舎南五キロメートル地点、数は……十人以上の反応を確認!」

「まさか、ヘルメット団?」

「うへ、前哨基地は潰したし、もしかして本拠から態々出向いて来た感じー?」

「ち、違います! ヘルメット団ではありません!」

 

 眼鏡のディスプレイを凝視するアヤネは、そう云って首を横に振った。恰好も、装備も、アヤネの知っているヘルメット団のものとは異なる。そもそも、トレードマークともいえるフルフェイスマスクを被っていない。彼女達が被っているのは黄色の安全帽、それに抱えた銃はカタカタヘルメット団のソレよりも武骨で――アヤネはその風貌から、彼女達の正体を突き止めた。

 

「これは……傭兵? 恐らく、日雇いの傭兵です!」

「傭兵って、結構高い筈だけれど……何でアビドスに?」

「誰かが雇ったって事だよね? 一体誰が――」

 

 カタカタヘルメット団ではない勢力の襲撃に、アビドスの皆は困惑の表情を浮かべる。しかし、現に仲良くお話しましょうという雰囲気ではなかった。タブレット上に表示される傭兵の雰囲気は物々しい。そもそも、傭兵を引き連れて語る事などそう多くはない。

 

「――考えていても仕方ない、今は出動しよう」

 

 タブレットを取り出した先生がそう告げれば、皆は頷きガンラックの愛銃を手に取った。兎にも角にも、このまま呑気に待つ事など出来ない。そうなればやるべきことは一つ――迎撃だ。

 

「アヤネ、部室でサポート頼む、皆は装備を持って校門前に集合」

「えっ、せ、先生も出撃するんですか!?」

「少し思う所があってね、大丈夫、前線には出ないよ」

 

 そう云って心配するアヤネを宥める先生。隣に立つシロコが愛銃を掲げ、自信ありげに頷いた。

 

「ん、大丈夫、先生は私が守る」

「任せて下さい☆」

「まー、今更いなくなられても困るからねぇ」

「仕方ないから守ってあげる! 絶対私より前に出ないでよ!」

 

 全員がそう云って守護の意思を見せれば、アヤネも納得したのか、やや強張った表情で頷いた。そこには、先生が云うのならば間違いではないという、信頼とも妄信とも取れる感情が見え隠れしていた。

 

「わ、分かりました! 先生の指示に従います!」

「よし、なら――アビドス出撃!」

「おーっ!」

 

 先生の声に応え、生徒達が銃器を掲げる。

 此処に、アビドス高校防衛戦が再度勃発した。

 

 ■

 

『校門前大通りに傭兵集団を確認! 真っ直ぐ此方に向かって来ます、敷地内に入られる前に迎撃を!』

「了解……って、あれ? あの恰好、確か柴関で見た気が――」

 

 セリカが勇んで校門前に陣取れば、遠目に見えるのはどこか見覚えのあるシルエット――特にあの、先頭に立つ少女の恰好は憶えがある。あれは確か、ラーメン屋でアビドスの皆と意気投合したゲヘナの生徒ではなかっただろうか、と訝しむ。

 ある程度顔の見える距離になると、何とも云えない苦り切った表情を浮かべた少女――アルが展開したアビドスの生徒を見ていた。

 

「ぐ、ぐぐッ……」

『何か、凄い苦悶の表情ですが、一体……?』

 

 アヤネのドローンから困惑した声が響き、遂に互いの射程距離内でアビドスと便利屋が対峙する。隠れる事なく、堂々と姿を現した便利屋に、ラーメン屋で会ったゲヘナの生徒だと確信したセリカが怒り心頭と云った様子で食って掛かった。

 

「誰かと思えば、あんた達!? 何よ、そんな傭兵を引き連れて何の用!? ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、もしかして私達の学校を襲撃に来たの!? この恩知らず!」

「あははは、その件はありがと、でもそれはそれ、これはこれ、こっちも仕事でさ」

「残念だけれど、公私はハッキリ区別しないと、受けた仕事はきっちりこなす」

「……成程、その仕事っていうのが便利屋だったんだ」

 

 アルの左右に並んだムツキ、カヨコの言葉に、シロコはそっと銃を構えた。傭兵を引き連れて来た彼女達が何をしようとしているのかは一目瞭然。後衛として離れていたノノミが、頬を膨らませながらアルに苦言を呈す。

 

「もう! 学生なら他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう? それなのに便利屋だなんて!」

「ちょ、アルバイトじゃないわ! れっきとしたビジネスなの! 肩書だってあるんだから!」

 

 ノノミの言葉にアルは反論し、慌てて周りの便利屋を指差す。彼女としては、譲れない一線らしかった。

 

「私が社長、あっちのムツキが室長で、こっちのカヨコが課長、ハルカは一般社員よ!」

「はぁ……社長、ここでそういう風に云うと余計薄っぺらさが際立つ」

 

 自信満々に発言するアル社長に対し、カヨコが肩を落とす。そもそも、その肩書が役に立った事などカヨコの記憶に於いて一度もない。その肩書で上下関係があるかと云えば無いも同然だし、便利屋の関係性は至ってフラットだ。勿論給与も一律。友人関係でもあり仕事仲間である彼女達からすれば、所謂『ごっこ遊び』の範疇にしかない。恐らく、大真面目なのはアル社長だけである。

 自信満々に胸を張るアルに反し、シロコは静かに問いかける。

 

「誰の差し金? いや、答えるはずないか――なら力尽くで口を割らせる」

「ふふふ、それは勿論企業秘密よ?」

 

 笑みを浮かべながらアルが徐に右腕を軽く掲げれば、便利屋と傭兵たちが一斉に銃を構える。安全装置を弾く音が周囲に響き、空気が一気に張りつめた。

 

「総員、射撃準備――!」

「ッ……!」

「来る――!?」

 

 アビドスの皆が咄嗟に構え――同時に、アルの腕が振り下ろされた。

 

「発砲!」

「ッ――先生ッ!」

 

 近くに居たノノミが棒立ちになっていた先生に覆い被さり、一瞬、先生の世界は暗闇に覆われた。そしてすかさず――複数の銃声。

 しかし、それは本当に一瞬の事であり、各々が一発ずつ発砲した程度の音。それ以上銃声が響く事はなく、直ぐに辺りは静寂に包まれた。

 

「………?」

 

 先生を庇っていたノノミが恐る恐る目を開く。備えていた衝撃や痛みは皆無であり、その後に続く発砲音もない。周囲を見渡せば、アビドスの皆も困惑した表情で便利屋と傭兵たちを見ており、戦闘行為は本当に一瞬だった。良く見れば銃弾は門の壁に幾つかの弾痕を刻んだのみで、アビドスの生徒達には掠りもしていない。

 その成果を見たアルは、ふっとニヒルな笑みを浮かべ――それから背後を振り向き、何度も手を叩きながら叫んだ。

 

「はい撃った! 撃ったから終わりッ! これであなた達のお仕事も終了! 以上、解散!」

「あははは、アルちゃん雑~!」

「……はぁ」

 

 ムツキが楽しそうに大笑いし、隣のカヨコは拳銃を下げながら眉間を揉んでいる。ハルカは相変わらずアルの傍で縮こまっているばかりで、アビドスの生徒からすれば何が何だか分からなかった。アルの一声で周囲の傭兵たちは銃を下げ、終わった終わったとばかりに解散していく。先ほどまでの張り詰めた空気が嘘のように霧散し、まるで狐につままれた気分でアビドスは便利屋を見ていた。困惑したシロコが帰って行く傭兵たちの背中を見送りながら呟く。

 

「これは、一体……?」

「うへ、ちょっとおじさんにも分からないなぁ~」

「戦闘はしない、という事でしょうか?」

「でも、一発は撃っているわよ?」

『一応、気は抜かない様にしましょう、何をしてくるか分かりませんし……』

 

 傭兵を全員帰した便利屋が、ゆっくりとアビドスの方へと歩いて来る。皆が警戒した面持ちで銃のグリップを握るも、一歩前に出た先生が手で制する。それを一番前に立っていたホシノが驚いたような顔で見ていた。

 

「先生?」

「大丈夫だよ、戦闘は起きない、皆、銃を下ろして」

 

 そう云って二歩、三歩と前に出る先生。それを止めようとシロコが手を伸ばすも、それより早く先生とアルが対峙した。アルは先生を薄ら笑いで眺めたまま、淡々とした口調で告げる。

 

「……約束は果たしたわ、これで良いのよね、先生?」

「あぁ、傭兵を引き連れて来たと聞いた時はヒヤッとしたけれど、ちゃんと約束を守ってくれた様で嬉しいよ」

「私達にも面子というものがあるもの、一戦もせずに負けたとあっては良い笑いものよ、それに一応クライアントにも『戦った』という報告をしなくちゃいけないから――」

「校門に数発撃ち込んだ程度で一戦というのも疑問だけれどね」

「い、良いのよ! だって実際発砲したもの、規則上問題ないわ!」

「だ、大丈夫ですよアル様! い、いざという時は私が、そのお悩みを吹き飛ばして見せますから……!」

「やめてッ、物理的に吹き飛ばそうとしないでっ!?」

 

 唐突に始まった言葉の応酬に、アビドスの皆が目を丸くする。

 穏やかな様子で便利屋と言葉を交わす先生。その内容は、少なくとも先生と便利屋が何かしらの契約を結んだというもの。詳細は分からないが、『先生が自分達の知らない間に何かをした』という事だけはハッキリした。

 段々と現状に理解が深まって行く内に、先生の後頭部に視線が集中する。何か言いたげなアビドスの生徒達を振り向き、先生は後頭部を掻いた。

 

『えーっと……先生?』

「うん」

「色々と聞きたい事はあるけれど」

「――つまり、その人たちは敵ではないって事で良いのでしょうか?」

 

 アヤネ、シロコ、ノノミの順で口を開き、先生はその言葉に頷いて見せた。

 

「うん、便利屋の皆は敵じゃないよ、安心して」

「――シャーレの先生に感謝する事ね、アビドス」

 

 ふんと鼻を鳴らし、アルは腕を組んだまま薄らと笑う。傍から見れば何とも悪役らしい、妖しくも昏く意味深な笑みであったが――その様子を見ていたセリカは何とも言えない表情を浮かべ、ぼそりと呟いた。

 

「……なんか、柴関の御店の時と雰囲気違くない? 無理している様に見えるのだけれど」

「む、無理何てしてないから! これが素、これが本来の私なの!」

 

 セリカの的を射た言葉に、必死に虚勢を張るアル。地団駄を踏んで声高に主張するその姿からは、先程まで辛うじて感じられたカリスマの『カ』の字も存在しない。崩れた鍍金の仮面に、アビドスの生徒達は顔を見合わせる。それをムツキは後方から腹を抱えて見ていた。

 

「……まぁ、何でも良いけれどさ~」

 

 不意に、先生の腕に何かが絡まった。良く見ればそれは、小さなホシノの手であり――下から覗き込むようにして先生を見る彼女の瞳は、全く以て笑っていなかった。

 

「全部、説明してくれるんだよねぇ――先生?」

「……勿論」

 

 ぞくりと、背筋に冷たい感触が走る。

 今だけは目の前のホシノが、味方である気がしなかった。

 


 

 早く本編で先生の四肢をモギモギしたいよぉおおお!!

 その生徒を柔らかく撫でる綺麗なおててをぶちぶちさせてよぉおおお!!!

 と゛お゛し゛て゛い゛し゛わ゛る゛す゛る゛の゛!!!!

 

 今の平穏がずっと続くと良いね、先生。

 

 それはそうと、ユズは本当に可愛いね、対人恐怖症っぽくて狭い所が好きで、信頼出来る人以外顔を合わせるのも辛いという所がちょっとガチっぽくて好き。ソラちゃんとユズを一緒に並べて一緒におでこ撫でたい。きっと二人してあわあわしてくれるに違いない。

 

 ユズはゲーム開発部の中でも殆どロッカーで過ごしているそうですが、二人でロッカーに入った時に先生がユズの濃い匂いが中に充満している事に気付いて、一人でロッカーに入る為に争奪戦を仕掛けた説を私は押します。争奪戦に勝ったらきっと先生は無言で深呼吸した後に、「ユズの匂いがすごーい」と云ってユズを真っ赤な顔にさせるんだ。「せ、先生ッ、はやく、早く出てっ!」と扉を必死に引っ張るユズに対抗して一時間位粘りたい。その後ロッカーを取り戻したユズが一人で癒し空間を満喫していると、ふと微かに香る先生の匂いに気付いて、真っ赤になって俯いて欲しい。それ以降、ちょくちょく先生にロッカーを貸し出すようになったらベネ。ユズもきっとミドリに負けず劣らずの卑しい女に違いない。

 

 ハルカとユズとウイとミユをシャーレに集めて放置してみたい。何か起きるのだろうか? 多分何も起きないだろうなぁ。全員俯き気味にもじもじしながら、周囲を見渡して、不意に隣の人と目が合って、「あわわわ」と青い顔でまた俯くに違いない。それで先生がやってきたら露骨に安心するか、涙目で助けを求めるんだ。特にユズとミユは自分達の癒し空間をそれぞれ持ち込んで、「うわぁぁあ、ごみ箱(ロッカー)が動いてるぅ!?」とかやって欲しい。ムツキちゃん辺りが見たら多分腹がよじれる程笑ってくれる。

 

 コンビニの接客アルバイトもそうだけれど、遊園地での着ぐるみアルバイトで、何かで顔を覆っていれば多少対人恐怖症も和らぐという発見を得て、常日頃何か被ったりするようになったらユズも過ごし易そう。ワカモみたいな仮面か、ヘルメット団みたいなフルフェイスヘルメットか、或いはヒフミ推しのペロロ着ぐるみかは分からないけれど、それでまたひと騒動起こして欲しい。ゲーミング部は五千兆色に光るゲーミングお面、マイスター達エンジニアリング部は『日常から戦闘まで、いつでも使える完全防護どこでもヘルメット』、どこからやって来たのか補習部はペロロ様セット一式、そのどれを着用するかで争うんだ。尚、本人はロッカーの中で震えている模様。

 

 サガ2が売れて、ちょっと資金に余裕が出来た後にみんなでゲーム開発合宿とかやって欲しい。というかイベントであって欲しい。

 ゲーム部とみんなで何処かの自然の家とか借りて、其処に大量のゲーム機やらPCを持ち込んで、先生に「なんじゃこりゃああ!」と驚かれながら一週間のゲーム開発をスタートさせるんだ。初日はどんなゲームを作るかで意見が割れて、シューターゲーム作りたい派、音ゲーとかどうかな派、わ、私は格闘ゲームが……派、アリスはエロゲというのが作りたいです!派、で別れるんだ。

 尚、アリスはその後、先生にそんな知識何処から持ってきたのかと聞かれ、生徒には買えない伝説のゲームがあると聞き、ブラックマーケットで情報を漁った事が露見する。

 

 二日目は、取り敢えず意見が纏まらないので、それぞれがゲームのひな形か、或いは企画書を作って発表して、一番出来が良かったものを皆で作ると云う形になる。アリスのエロゲは健全ADVとなり、皆が一日掛けて企画書を書き上げ、夜に発表する事になるんだ。

 そこで選択肢が出て、最終的に先生が誰の作品を採用するか決める。皆がそれぞれ別々の作品に琴線が触れ、先生の一票で制作するゲームが決定するんだ。

 

 作るゲームが決まったら、いざそれを制作する為に頑張ろう! となる訳だが、三日目の朝、起床すると何やら騒がしい事に気付くんだ。するとそこには自然の家の前で屯する不良群たちが居て、「やいやい、此処はアタシ達、『ノビノビ森林浴団』の縄張りだぜぇ!? 誰に断って合宿何てやってんだ~!?」とか言い出す。「ちゃんと管理人に許可取ってるもん!」と叫ぶモモイに、結局戦闘に転がり込むゲーム開発部。

 勿論不良達は蹴散らされ、「お、憶えてろ~!」と逃げ出す。その後もゲーム開発の為の資料作りに森を歩いて撮影していれば遭遇したり、外でバーベキューをしようと思えば匂いにつられてやって来たり、何だかんだ何度も戦う事になる。

 で、不良達はゲーム開発部がなにやらゲームを作っているらしいという情報を得て、最終日にその作ったゲームを盗み出してやろうと画策する。けれど勿論それは先生に見抜かれていて、まんまと待ち伏せにあった不良達は掃討、拘束。「こ、こんなゲームなんぞに現を抜かす奴らに負けるなんて……!」とうなだれる不良達に、ユズが「げ、ゲームは、面白いんだよ!」と力説し、合宿で出来上がったゲームをプレイさせるんだ。その後きっと、不良達は、「お、おもしれぇええ!」と喜んでくれるでしょう。凄く健全な話、ヤバい、背中がかゆくなっちゃう。ここで先生爆殺してぇー……。ままええわ。

 

 ゲーム合宿が終わった後は個別ルートに入るんだ、最終日に作ったゲームの原案を考えたゲーム部の生徒と一夜を過ごす。ユズの場合は夜眠れなくて、自然の家のベランダの隅でじっと夜風に当たっているんだ。それに気付いた先生がユズの隣に座って、特に何を話す訳でもなく時間が過ぎる。その内、ユズがくしゃみをして、鼻を啜りながらそっと先生の腕に身を寄せる。そして不意に、「合宿、終わっちゃいましたね」というんだ。

 外に出るのが得意ではないユズが、こうやってみんなと外に出て騒ぐことを楽しかったと、そう思えた事が先生は嬉しくて、「また来よう」というんだ。ユズは笑みを浮かべて頷いて、「不良さん達に、私達の作ったゲームが面白いって云って貰えて、とても嬉しかった……」と呟き、それから彼女らしからぬ満面の笑みを浮かべて、「やっぱりゲーム作りは、楽しいですねっ!」って先生に笑いかけて欲しい。その笑顔はきっと、月明かりの下でも負けない位に輝いていて、彼女らしい本質が浮き彫りになった、美しい笑みなんだ。

 

 このイベントの後にキヴォトス動乱起こしてぇ~。

 先生にこれからキヴォトスを裏切る旨を聞いて、呆然として欲しい~。

 

 先生からきっと、キヴォトスを裏切ると云われた時、ユズは一瞬何を云われたのか分からなくなるんだ。きっとゲーム開発部の部室で、二人きりで、少なくない好意を抱いている先生と二人きりだから、ちょっと大胆な事をしちゃって――なんてことを考えていたユズは、先生の「キヴォトスを裏切る」の一言で、何も考えられなくなるんだ。

「え」とも「は」とも取れる、小さな吐息の様な言葉を漏らしながら、ただ先生を見上げ、視線を左右に散らすんだ。

 何かの冗談ですか、とユズが返せば、先生は無言で首を横に振る。それ位彼女にとって、先生が生徒と敵対するという未来はあり得ない事だったのだ。自分の足元がぐらぐらと崩れる様な気がして、ユズは暫く言葉を紡げないと思う。

 けれど、彼女は芯の部分で強い、本当に諦めきれないと思った時、ユズは誰よりも強固な決意を抱くと思うんだ。色んな事を考えて、あらゆる感情を飲み下して、これからの未来だとか希望だとか、そういうもの全てを放り投げて。

 ユズはきっと、先生の味方をしようと決める。

 

 そんなユズに、そっと先生はある物を差し出す。それは、嘗てユズが先生に渡した「ユズ・フリーパス券」――一度だけ、どんなお願いでも叶えて貰える信頼のチケット。

 それを差し出し、先生は云うんだ。

「生きて」って。

 多分ユズは、これ以上ない程に絶望の顔を見せてくれると思う。今、この瞬間、信頼の証であるそれを使うのかと。自分が何を願っているのか理解している上で、そんな言葉を口にするのかと。きっとユズは差し出されたチケットを奮えた指先で摘まもうして、何度も何度も失敗する。口を開閉させ、先生の腕を強く――強く握り締める。

 縋りつきながらユズは云うんだ。先生に私が必要な瞬間が来たら、何でも言ってくださいって、そう伝えたじゃないですか――必ず、恩返しするって、言ったじゃないですか……! と。

 私と一緒に来て欲しいと、共に戦って欲しいと。ただ、一言、その一言さえ貰えれば、自分は何の躊躇いもなく先生の傍に居られるのに、と。

 

 先生はそれを、ただ悲しそうな目で見下ろすんだ。その瞳に込められた強い決意は、どうあっても自分じゃ覆せない、強固で、高潔で、踏み込めない領域にあるのだと気付いて、ユズはそれ以上何も言えなくなって、ただ先生に縋りついたまま嗚咽を零して欲しい。そしてきっと先生は彼女が泣き止むまで傍に居てくれるんだ。

 その日はずっと、ユズは先生に引っ付いたままなんだろうな。ゲーム開発部の皆が帰って来た後もずっと先生の腕を離さずに、何も知らない彼女達はずるいだの私もだの何だかんだ言って、ユズと先生は最後の日常を享受するんだ。もうきっとその笑顔を浮かべる事は出来ないのだと、理解しながら、惜しみながら。

 

 先生がいざ事を起こして、ゲーム開発部が混乱しても、ユズは一人チケットを握り締めてロッカーの中で泣いているんだろうなぁ。後日見つかった先生の死体が、ユズのチケットが入っていた封筒を握り締めていたらエモエモのエモ。唇を強く噛み締めながら涙をぽろぽろ流すユズちゃんは可愛い。尚、ユズが先生の願いを無駄にして無理矢理にでもシャーレに加担した場合、文字通り『死ぬまで』戦い切ります。先生が戦死した後も、鬼の形相で暴れ続けると思う。覚悟を決めた女の子は強かで、諦めが悪く、狡猾なんだ。きっとユズが着の身着のままシャーレに「きちゃった」したら、先生も酷く絶望するんだろうなぁ。でもユズちゃんが傷つく所見たくない……生徒には笑っていて欲しい……。死ぬのは先生だけで十分なんだ……!

 

 普段大人しい子が土壇場や大切な人の負傷で豹変するのスコスコのすこ。でもユズちゃんのイメージ像は大切にしたいので、今回は先生の死体は見せずに穏やかな死を迎える事が出来ました。良かったねユズちゃん。

 死ぬより辛い地獄がこれから先待っていると分かっていても、それでも生きて欲しいと願う先生は鬼畜の鑑。一緒に死んでくれって云われた方が、生徒達はきっと楽なのにね。これからユズは虚飾の笑顔で満ちたゲーム開発部で、ずっとゲームを作り続けるんだ。それだけが先生との絆だから、それだけが自分の残されたものだから。その情熱に反し、あらゆるインスピレーションやスキルを磨いた彼女のゲームは多くの称賛を受ける事だろう。

 一番に遊んで欲しい想い人は、もうどこにも居ないのにね。

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