ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

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誤字脱字報告感謝ですわ!
今回で花のパヴァーヌ後編、完結ですの!


私達の大冒険(つづきから)

 

 エリドゥ攻略作戦から数日後。

 ミレニアム中央区画――ミレニアム第一病棟、特別面会室にて。

 

 その広くもなく、狭くもなく、しかし綺麗に清掃された一室にて顔を合わせる影があった。並ぶ人影は誰もがボロボロで、顔に湿布やらガーゼやらを貼り付け、痣やら切傷やらを体中に刻みつけている。

 一人は車椅子に腰掛け、何処か困惑顔を浮かべる、如何にも重傷といった出で立ちの先生。ゆったりとした患者衣にスリッパ姿、ぱっと見で分かる入院中と云った様子の格好はこの中で最も多く病院に担ぎ込まれている為か、貫禄すら感じさせる。

 彼の背後には介助役としてユウカが同伴しており、彼女の手は先生の車椅子、そのグリップが握られていた。

 もう一人はトキ、彼女もまた普段とは異なりメイド服を着用しておらず、先生と同じ患者衣、常は纏め上げていた髪を下ろし、腫れ上がった頬と塞がり掛けた瞼をそのままに佇んでいる。

 

 そして最後の一人は――リオだった。

 彼女の顔面もまた、先生やトキと負けず劣らずな塩梅で、痛々しい青痣がそこら中に散見された。無論、彼女も普段のスーツ染みた制服ではなく患者衣を身に纏っている。リオのプロポーションは衣服を変えても健在であり、服にゆとりがある分ややふっくらとしたシルエットに見えたが、ある意味それが新鮮でさえあった。

 各々傷に塗れた姿でテーブルを囲う三人、奇妙な沈黙が部屋の中に落ちる。

 

「えっと……」

 

 口火を切ったのは先生であった。

 彼は気まずそうに頬を掻こうとして、包帯に包まれた右手に気付きそっと膝に戻す。それからトキとリオの二人を一瞥すると、恐る恐るといった風に問うた。

 

「聞いて良いのか、凄く、その、迷うんだけれど……良いかな?」

「………」

「何かしら、先生」

 

 トキは何処かそわそわと落ち着かない様子で、反対にリオは何処までも超然とした様子で頷きを返す。

 

「リオ、その怪我――どうしたの?」

 

 先生はどこか困ったように、リオへと言葉を投げかけた。

 それは、先生からすれば至極真っ当な問いかけである。少なくとも彼が最後に目にした時、彼女はこんな痛々しい見た目ではなかった。

 まるで集団リンチにでもあったかのような傷の数々、唇は切れているし、顎やら頬やら瞼やら、青紫の痣がそこかしこに見られる。それはトキや先生も同じではあるが、彼女のそれは聊か『質』が異なる様に思えた。

 リオは一瞬視線を逸らすと、ガーゼに包まれた頬を撫でつけながら呟く。

 

「……私が云う事ではないのだけれど、先生の方が重傷でしょう」

「あぁ、いや、私の方はほら、こんな(ナリ)ではあるけれど、大事を取ってという側面が大きいから、車椅子も本調子に戻れば要らないし」

 

 そう云って先生は車椅子の手摺を軽く叩く。口調は努めて軽く、表情は明るかったが、リオは先生の云う言葉が半分方便である事を理解していた。無論、彼の云う通り大事を取ってという側面もあるだろうが――「ほら、足だって動くんだよ?」そう云って左足を弾ませて元気アピールを行う先生を眺め、リオは吐息を零す。

 

「……エリドゥから退去する際、辛うじて復帰したネルが発端だったわ」

 

 ややあって、リオは当時の事を思い返し、ゆっくりと口を開いた。

 先生が意識を失った状態で中央タワーへと帰還し、慌てふためく生徒達を嗜めエリドゥからの迅速な撤退を決めた頃。負傷した生徒達の簡単な手当を済ませ、エリドゥ内の航空機(ビークル)を使用してミレニアム本校舎へと帰還する計画を立てたリオとヒマリは、全員が搭乗可能な航空機を用意する為に動きだしていた。

 その時丁度、合流していたC&C、エンジニア部に連れられていたネルが意識を取り戻したのである。

 因みに起き抜けに放った第一声は、「……チビ(アリス)は、どうなった?」である。その後事の顛末を聞いたネルは暫し無言を貫き、それから起き上がると負傷した肉体など知らんとばかりに部屋を後にし、引き留める他の面々を跳ね退けて格納庫で航空機を見繕っていたリオに飛び掛かったのである。

 リオ曰く、突然横から押し倒されたと思ったらマウントポジションで滅多打ちにされたとの事。先生は知らぬ事はであるが、あの時アスナの口にしていた事は嘘でも何でもなかったという事である。

 

「後はミレニアムに帰還後、皆から一発ずつ、当然の行為よ、寧ろこの程度で済んだことに驚きだわ」

「リオ様……」

「……ふん」

 

 粛々と告げるリオに対し、トキは心配げな顔を、先生の背後に立つユウカは鼻を鳴らして応えた。この会話には極力介入しないという事であったが、どうやら彼女としては後悔も反省もしていないらしい。寧ろまだ足りないと云わんばかりの対応である――お説教だけでは済まないというあの時の言葉は、本気だったのだろう。

 

「本当はこのまま、会長の椅子を空けようと思っていたのだけれど」

 

 リオはそう呟きを漏らし、それから不意にトキの方へと視線を向けた。そうしなかった理由の一つにきっと、彼女の存在があったのだろう。膝上で手を重ねた彼女に、先生は重ねて問う。

 

「セミナーには戻れたんだね?」

「えぇ――代わりにミレニアムの生徒会長としての権限は、かなり制限される事になったわ、ある程度独自の裁量を持っていた部分もノアやユウカ、セミナー役員の承認が得られなければ、そもそも動かす事も出来ない様変更されたから」

 

 無論、私の代に限っての話だけれど――そう云ってリオは垂れた髪を払う。もし後を引き継ぐ生徒が現れたのなら、その時の役員によって権限の再定義が行われるのだろう。あくまで制限はリオが会長職に留まっている間だけ、という訳だ。

 しかし、そう語る彼女の表情に不満等は全く見られなかった。

 

「これも当然の措置ね」

「そっか……でも良かったよ、リオが残ってくれて」

「はい、私も同意見です」

「………」

 

 先生とトキの声に、リオは何処か居心地悪そうに顔を背けた。今、彼女が考えている事が先生には手に取る様に分かった。恐らく自身がこのまま会長職に留まる事に罪悪感と後ろめたさを覚えているのだろう。きっとネルや皆から殴りつけられず、負傷で入院していなければ、こうして再び会長の椅子に腰掛ける事も無かった筈だ。

 数秒視線を彷徨わせたリオは咳払いを挟むと、話題を変える。

 

「エリドゥについてだけれど、あの都市は閉鎖する事にしたわ、システムを取り戻したとは云え一度乗っ取られた以上どんな状態になっているか詳しく調査しなければならない、何らかの形で再利用するとしても時間が必要よ、バックドア何て仕掛けられていたら目も当てられないもの」

「うん、断片的ではあるけれど聞いたよ、その辺りは、確かヒマリも手伝ってくれているんだよね」

「えぇ……作業中、隣で常に小言を口にしているけれど」

 

 ヒマリに言及した途端、ピクリと彼女の瞼が震えたのが分かった。それがどういった感情によるものかは分からなかったが、少なくとも二人が微妙な空気の中でキーボードを叩く姿は何となく想像出来た。思わず苦笑を零す先生であったが、どんな形であれ言葉を交わす機会が生まれたのは前進であると云える。

 

「トキはC&Cに合流を?」

「はい、幸い快く受け入れて頂けました」

 

 トキの方も無事C&C側と和解し、改めてその一員となる事が叶ったらしい。今まではその性質上単独任務が殆どであり、C&Cとの共同任務も存在していなかったが、これからは彼女達と共に任務をこなす事が多くなるだろう。

 しかし、そんな先生の予想に反しトキは佇まいを正しながら云った。

 

「ただ、今後は特別な事情や任務が無い限り、先生の指示を優先して動きます」

「? でも、トキはリオ専属の――」

「私専属のエージェントという立場は、既に失われているわ」

 

 先生の上げた疑問の声に応えたのはリオだった。彼女はトキを横目にしながら、真剣な面持ちで告げる。

 

「トキの所属はC&C、そして優先護衛目標には先生を」

「……どうして、と聞いても良いかな?」

「それは――」

「私自身の希望です」

 

 リオが答えようとして、それを遮り小さく手を挙げたトキ。彼女は未だ腫れの引かない先生の顔を真っ直ぐ見つめながら、ゆっくりと噛み締める様に言葉を紡いだ。

 

「強いていうのならば、贖罪――でしょうか」

 

 贖罪、その言葉は確かな重々しさを伴っていた。

 その微かに伏せられた瞳からは、彼女がこの傷に罪悪感を抱いている事が察せられた。先生はトキの強張った表情を見つめながら、努めて柔らかな口調で語りかける。

 

「そんな風に思わなくても良いんだよ、私の怪我は時間と共に癒えるものだから」

「いえ、だとしても……です」

 

 膝の上で拳を握り締めるトキは、擦り切れた唇をまごつかせながら、けれどはっきりとした声色で云い放った。

 

「私は、先輩方や先生と、後ろめたい感情を抱いたまま過ごしたくはありません」

 

 それが彼女なりの罪との向き合い方なのだろう。両手を握り締めたまま俯く彼女は、ややあって顔を上げる。たとえそれがどの様な理由であろうとも、きっとその一線を彼女は譲らない。先生は暫し沈黙を守り、それからゆっくりと頷きを返す。

 

「――そっか、分かったよ」

 

 彼女がそれを望むのならば、先生は受け入れる他ない。

 

「はい、時間です! 面会終了、各々病室に戻って下さい!」

 

 先生の背後で端末を片手に時刻を眺めていたユウカは、その電子時計が規定時間を示した事を確認し声を上げた。先生が何事かを口走るよりも早く車椅子を引っ張り、そのままリオ達と距離を取る。二人は一瞬何かを云いたげな表情を浮かべたが、口にする事無く言葉を腹に押し込めた。

 

「ほら会長も早く、本当なら先生に会わせる事すら嫌なんですからね!」

「……そうね、当然の判断だわ」

 

 ユウカの辛辣な声に目を瞑りながら立ち上がるリオ、トキもまた彼女に続いて立ち上がり、全員が面会室を後にする。病棟の廊下は真っ白で、先生とリオ達の病室は別棟の離れた位置に配置されている。これがこれが意図的なものなのか、そうではないのか、先生には分からないが車椅子を押す彼女の様子を見上げれば、薄々ではあっても感じられると云うもの。

 先生に一礼し、去っていくトキとリオの両名。彼女達の背中を見送りながら、ひらひらと手を振る先生は髪を逆立たせるユウカをそっと見上げる。

 

「えっと、ユウカ? もしかしてなんだけれど、かなり怒っていたり……?」

「当たり前じゃないですか!?」

 

 その恐る恐る問いかけられた言葉に、ユウカは声を荒げて反応する。先生としては今回の面会について言及したつもりだったが、ユウカは今回の事件全般に関して言及していた。ぐわんと響く声に、ユウカは此処が病棟の廊下である事を思い出し、こほんと恥ずかしそうに咳払いを挟んだ後、少しだけ声を抑えながら言葉を続ける。

 

「いや、まぁ、確かにリオ会長なりに色々考えた結果ではあるのでしょうけれど、一言相談すらなかったんですよ? その上多額の予算を横領したり、アリスちゃんを誘拐したり、先生に暴力を振るったり……ちょっと色々やらかし過ぎです! 私じゃなくても怒りますよ、普通!」

「えっと、それは……」

「大体ですね、今回の一件で一時リコール運動が起きかけたんですから! 先生が動けない体のまま病室を抜け出して、彼方此方で土下座行脚なんてするから、もっと騒ぎは大きくなっちゃうし……!」

「あ、あはは……いや、私、トリニティでも似たような事をしていて――」

「笑い事じゃありませんし、尚悪いですッ! 反省して下さい、先生!」

「ご、ごめんよ、ユウカ」

 

 背後から感じられる威圧感、先生は頭上から降り注ぐ彼女の声に申し訳なさそうに首を縮こまらせる。しかし、行脚の甲斐あってリオが姿を晦ます事はなく、トキだって受け入れられた。その結果があるだけで、先生は今回の行動が間違いではなかったのだと断言出来るのだ。無論、方々に色々と迷惑を掛けてしまった件については大変申し訳なく思う、しかしあの時は一分一秒でも早く動かなければならなかったので、どうかご寛恕願いたいと先生は内心で零した。

 

「全く、先生はどうして、そこまで会長の事を――」

「……リオだけじゃないよ、ユウカ」

 

 思わず、と云った風に漏れたユウカの小言。それに対し、先生はハッキリとした口調で告げた。む、と口を噤んだユウカが視線を落とせば、背中越しに此方を見る先生の瞳が視界に映る。未だ腫れの引かない左目から覗く光は、真っ直ぐユウカを捉えていた。

 

「生徒達がやり直す機会(チャンス)は、何度だって私が作る――それが先生()の役目だからね」

 

 それはずっと先生が抱えて来た想いだ。例えそれがどれだけ大きな罪だったとしても、どれ程困難な事であったとしても。誰が相手でも、どんな生徒であったとしても――本人がそれを望むのならば、先生は何度だって協力する。

 屈託なく笑って、何でもない事の様にそう告げる先生にユウカは口を噤む。代わりに握り締めた車椅子を引いた彼女は、リオとトキを見送っていた先生の身体をぐるりと方向転換させ、彼に割り当てられた病室へと歩き始めた。

 カラカラと、微かに音を鳴らすキャスター。静謐な病棟の廊下では、僅かな音でも耳に届く。

 

「……だからって、余り無茶ばかりしないで下さい、心配になります」

 

 歩きながら、ユウカは呟いた。声には懇願する様な色があったように思う。その不安に塗れた瞳が、先生の包帯に包まれた四肢に向けられた。

 

「ましてや、その腕や足の事だって、何も分かっていないんですから」

「――そうだね」

 

 ユウカの言葉に頷き、先生は自身の右手をゆっくりと握り締める。指先まで包帯の巻き付けられた右手は、肌が僅かも露出していない。傍から見れば単なる負傷なのだろうが、こうして覆われているのは別の理由からだった。

 そしてそれは、右足も同じく――蝕む黒(正体不明の黒)は、今も尚先生の肉体を苛んでいる。

 

 先生はその意味(末路)を、生徒達に明かすつもりはない。

 少なくとも、今はまだ。

 

「……そう云えば、さっき病室で何を見ていたんですか?」

「ん、あれかい? あれはね、イオリって子の卒業アルバムだよ、小学生の頃の」

「――は?」

「後でユウカにも見せてあげるね、とっても可愛いんだ」

 

 空気を変える為であろう、ユウカが投げかけた質問に先生はパァっと表情を変え答える。病室で療養する間も、シャーレに運び込まれる仕事は全く減らない。その為、病床で隙を見ては業務に励んでいた先生だが――生徒に見つかると強制的に取り上げられるので、大体はシッテムの箱経由で決裁する――それでも時折どうしよもない疲労感に襲われる事がある。

 そういう時は、イオリの卒業アルバムの写真を眺めるのだ。これが実に効果的なのである、あどけない彼女の写真を眺めていると沸々と元気が湧いて来る。どんなに疲れていても、もう一仕事と呟けるだけの力が貰えるのだ。

 そんな事を晴れやかな笑顔で語る先生、勿論仕事の事は隠してだが。ユウカの表情は実に難解で、怒れば良いのか、呆れかえれば良いのか、悲しめば良いのか、喜べば良いのか、何とも云えぬ苦り切った表情を中心に、百面相を浮かべていた。

 

「ご主人様~、今日もご奉仕に来たよ~ッ!」

「アスナ先輩、病棟ではお静かに――」

「一応、ネル先輩のお見舞いも……うん?」

 

 そんなユウカを他所に、廊下の向こう側から響く声。見れば角を曲がり、顔を覗かせるC&Cの生徒達。いつも通りのメイド服に、その手には幾つかの見舞い品をぶら下げている。先生は彼女達の姿を認め、笑みを深くしながら口を開いた。

 

「――今日もまた、賑やかな一日になりそうだね」

 

 ■

 

 ミレニアムタワー上層、セミナー区画――執務室。

 ミレニアムの生徒会長に割り振られたその場所で、リオはひとり静かに佇んでいた。

 開けた一室に来客用のソファとテーブル、幾つもの書類が積まれた執務机に、複数のモニタ。執務机の後方は一面の硝子張りで、ミレニアムのキャンパスを一望する事が出来る。見慣れた殺風景な部屋にリオは暫しの間無言を貫き、何とも云えない感情を抱く。

 

 一足先に退院し、セミナーへと復帰したリオではあるが、改めてこの場所に立っていると否が応でも考えてしまった。

 また、此処に戻って来たのか――戻って来れたのか、と。

 あれ程の事を為してしまったというのに。彼女はこうしてこの場所に立っている事自体が間違いなのではないかと、そんな気がしてならなかった。

 

「――あらあら、どれ程厚顔無恥であれば、再びその椅子に座ろう等と考えつくのでしょうね?」

「……ヒマリ」

 

 そんな葛藤するリオの心中を見透かしたかのように、背後から声が響いた。

 振り返ればいつの間にか、部屋の扉を開け無遠慮に此方を覗き込む影が一つ。彼女は車椅子を操作し中へと入り込むと、そのまま此方を挑発的とも取れる視線で眺める。しかしリオはそんなヒマリの態度に反駁する事無く、淡々とした様子で答えた。

 

「必要があれば、他の生徒に直ぐにでも席を譲るつもりよ、その為の準備は既に終えているもの」

「……はぁ」

 

 リオとしては当然の行動である、自身の為したことを考えれば後任が既に決まっていたとしても驚かない。

 だが、それは彼女にとって望んだ解答ではなかったらしい。

 あからさまに溜息を吐いたヒマリは、呆れたような視線を此方に寄越す。だが当のリオは彼女の視線の意味を理解出来ず、ただ困惑を滲ませていた。

 

「全く、何故貴女がまだ此処に立っていられるのか、それも理解出来ませんか」

「――それは、どういう意味かしら?」

「言葉通りの意味ですよ、貴女は優秀ですが、こういう時の機微には疎い所があります、そればかりはどれだけ時間が過ぎても、或いはどのような経験を積んでも、据え置きなのでしょうね」

「……?」

 

 何とも云えない、ただ困ったように眉を下げるリオを眺め、ヒマリは思わず苦り切った表情を浮かべる。幾ら先生が方々に頭を下げて回ったとしても、本当に受け入れられないのならば彼女はセミナーから、或いはミレニアムから排斥される結果になっただろう。そうなっていない時点で、彼女は多くの生徒に受け入れられた、或いは許されたと云い換えても良い。

 しかし、当の本人はそれを実感、乃至理解していない。その事がどうにもヒマリは腹立たしく思えた。

 なにもヒマリは権力や肩書に固執しろと云っている訳ではない、リオは過ちを犯した上で、それでも尚託されたのだ。ならばそれに報いる責任が――義務が存在する筈だと考える。

 だが、彼女が実際にそれを口に出す事はない。

 何となく、癪だと思った。それにこの様子であれば自身がその様な事を云わずとも、自ら職務を全うするだろうという確信がある。

 良くも悪くも、彼女は堅物であるが故に。

 

「ふぅ、まぁ良いでしょう、この場所に立ったという事は怪我はもう完治したのですね? まだ暫く、一週間、いえ一ヶ月位病床に転がっていて欲しかったものですが」

「……貴女が此処に来たという事は、既に理解しているのでしょう、全力で殴打されたとは云え、あの程度であれば一週間もすれば完治するわ」

「――貴女がトキに命令して殴りつけた先生は、未だ病床の上ですけれどね」

「………」

 

 ヒマリの分かり易い嫌味に、リオは閉口した。だがヒマリからすれば嫌味の一つや二つ、云ってやらねば済まないという想いがある。朝起きて部屋を出て、特異現象捜査部の部室に入った瞬間、全身包帯とガーゼ塗れの先生に出迎えられ、そこから流れる様に土下座された経験などリオには存在しないだろう。らしくもなく素っ頓狂な声を上げ、車椅子から転げ落ちそうになった事は記憶に新しい。

 あんな、歩く事もままならない体に鞭打って、這い蹲りながら希われては何も云えなくなるのも必然。そして、先生がそれだけ必死になってリオの挽回を望んでいるという事実に、やはり無性に腹が立った。嫌みの一つや二つ、いや十や二十――百はぶつけてやらねば腹の虫がおさまらない。

 そんな感情を抱きつつ、ヒマリは鼻を鳴らしながら腕を組む。

 

「私の予想だと、てっきり姿を晦ますものだとばかり――貴女の事です、アリスや先生、ゲーム開発部の子達を傷付けた罪、その背中に圧し掛かる罪悪を自覚して、信頼する唯一の後輩すら手放し、また独善的に、自罰的に、自身の殻に籠るものだと思っていました」

「……そうね」

 

 リオはヒマリの言葉を否定する事無く、寧ろ肯定するような呟きを漏らしながら自身の頬を撫でつけた。その動作には傷を確認する様なものではなく、そこに込められた何か、輪郭をなぞる様な色があった様に思う。

 常らしからぬリオの態度に、ヒマリは訝し気な視線を向ける。

 

「ネルに殴り飛ばされなければ、そうなっていたかもしれないわ」

「なら、心変わりがあったと?」

「……えぇ」

 

 ふっと、彼女の表情がどこか影を帯びた。しかし、その瞳の奥にきらりとした光が灯っているのを、ヒマリは見逃さなかった。彼女は何かを理解したのだ、受け取ったと云っても良い。その指先が顎先をなぞり、ぽつりと唇が言葉を漏らす。

 

「他人の孤独や、罪悪感――それを良く、理解したわ」

 

 ■

 

『てめぇリオ、良いかッ!? 私がまず、一人目(最初)だッ!』

 

 ■

 

 ネルに殴り飛ばされ、圧し掛かられた際に放たれた言葉。それを思い返し、リオは静かに目を伏せた。

 

 調月リオという人物は、これまで他者を理解しようと努める事が無かった。

 それはあらゆる物事を単独で完結させられる能力の高さ故とも云えるし、生来の気質とも云える。だが、それでは駄目なのだと感じ取れる、その一端を、欠片を、今回の一件で掴むことが出来た。

 

 ――許されない罪を犯した時、人はその罪とどう向き合えば良い?

 

 少なくとも今回の件、リオは到底許される様な事ではないと理解している。仮に自身が彼女達の立場だったとすれば、良かれと思って大勢を傷付け、許可なくミレニアムの予算をつぎ込み、その果てに終焉を呼び込んでしまうなど目も当てられない結果である。そんな者をどうして許容出来ると云うのか? 排斥されて当たり前だ、それどころか失われたかもしれない多くの命を想えば、排斥以上の声が上がっても可笑しくはないだろう。もしそうなっていれば、自身は甘んじてその罰を受け入れるつもりだった。

 だが、実際問題自身はこうして再びセミナーの会長として復帰している。

 それは余りにも非合理的な結末だ、それがまた彼女の良心を苛み、自罰的な思考に陥らせていた。

 だからこそ、向き合わなければならないと思ったのだ。

 彼女(ネル)一人目(最初)と叫んだ様に、自身には向き合わなければならない罪が、責任が、人々が居る。

 

 ヒマリはリオが他者の機微に疎いと口にしていたが、本人は薄らと気付いている。信頼されているなどと、欠片も、これっぽっちも想ってはいないが。それでも、許されたからには報いる必要があると。

 リオは、そう思う。

 

「だから、私は逃げてはいけないと……向き合わないといけないと、あの時、そう思ったの」

「………」

「許された、何て私からは、決して口には出せないけれど――もしそう思って、私が此処に立つ事を彼女達に望まれたのなら」

 

 ぐっと、リオの顔が上がり双眸がヒマリを射貫く。

 そこには嘗ての彼女には存在しなかった、確かな強さがあった。それは物理的なものではない、心の奥にきらりと光る、意思の強さ。

 

「――私はもう二度と、間違えないわ」

「……そうですか」

 

 ヒマリは正しく、彼女の言葉を理解した。

 彼女の云う間違えないという言葉は、物事を正しく判断し、最善を選び続けるという意味では決してない。

 リオはまさしく一歩、小さくとも大きな一歩を踏み出したのだ。

 今回の一件で、この過ちを通じて。

 それを理解したからこそ、ヒマリは断言する。

 

「――私は貴女を許しませんよ、リオ」

 

 ハッ、と。

 リオは顔を上げ、ヒマリを見た。

 壁一面の硝子から差し込む陽光、青の中に伸びた影がヒマリを覆う。その表情は暗がりの中でもはっきりと視認出来、薄紫の瞳が自身を見上げていた。

 

「ゲーム開発部の子達も、セミナーも、ヴェリタスも、エンジニア部も、C&Cでさえ、貴女を許すでしょう、勿論先生も……皆優しい方ばかりですから」

 

 そう、あれ程の大事になったとしても、多くの生徒は最終的に彼女を許すだろう。

 あのエリドゥにて隔離されていた頃も思ったが、リオの思考などヒマリからすれば分かり易いものだ。

 他者が許したとしても、自分自身が許せるかどうかは別の問題、そして何より良くも悪くも責任感を持ちこうと考えたら一直線のリオの事である――考え、考え、考え続け、白旗を上げる事も出来ずに意地を張るに違いない。

 

 罪悪と向き合うという事は、答えのない問題を延々解き続ける様なものだ。

 

 そんな事を、合理的だ云々だと五月蠅い彼女に突き付けたらどうなるか? 明確に存在しない答えを見つける事も出来ず、焦燥し、それを為せない自分に失望し、自責の念に駆られ姿を晦ませるに違いない。ヒマリは当初、その様に予想していた。

 ただひとり、同じ罪悪を抱える後輩すらも置いて。

 

 ――だが、彼女はこの場(ミレニアム)に残る事を選んだ。

 

 その事にヒマリは……本当は口になどしたくはないが。

 こんな感情をこの女に抱くなど、未来永劫あり得ないと断じていたが。

 ヒマリは、そう――感心したのだ。

 

 あのリオが、独善的で協調性が皆無で、センスが壊滅的で他者を慮る心すら持たない、正に下水道の(ドブ)の様な女が、まさか自身の欠点を自覚し背を向け目を瞑る事ではなく、自ら対峙する事を選んだ現実に。

 それは以前の彼女からすれば考えられない様な事だっただろう。ましてや本人が「許される事ではない」と考えているのならば尚更、「贖罪」などという行為は彼女にとって、許されないのならば一切無駄であると切り捨ててしまっても仕方ない、寧ろ彼女の云う合理的判断ですらあると云うのに。彼女は、調月リオは確かに変わろうとしている――そう在ろうと、努力している。

 そう、だからこそ。

 そんな彼女を多くの生徒が許すのならば。

 

「けれど、全員がそう在ってしまっては、貴女を許してしまえば、犯した罪は何処に行くのでしょうか? 一歩間違えば最悪の結果を招いていた今回の一件、アリスの存在が失われていたかもしれない、先生の生命が掻き消えたかもしれない――キヴォトスそのものが、消滅したかもしれない」

 

 そうだとも、ヒマリは想う。

 他者を許す事は重要だ、それは互いの関係性や物事の前進に大きく寄与する。

 許す者は必要だ――それは軈て希望となるだろう。

 だが同時に許さぬ者も必要だ――それは戒めとなるから。

 膝の上で掌を重ね、彼女は告げる。

 

「咎める者は必要でしょう、抱えた罪悪を、その重さを示す存在は」

 

 故にヒマリは後者を選んだ。

 彼女に近しい大多数が彼女の罪悪を許すのであれば、対極に位置する自身は彼女の罪悪を咎めよう。

 その言葉に、リオは驚いた様に目を見開いた。

 

「ヒマリ、それは――」

「これは同情ではありませんよ、リオ」

 

 何か言葉を口にしようとしたリオに、ヒマリは掌を突きつけた。其処には拒絶があった、だが普段の取り付く島もないような強固な拒絶ではない。苦々しい表情を浮かべたヒマリが、リオを見る。嫌々ながら、けれどそこには確かに他者を思い遣る色を秘めた、そんな拒絶があった。

 

「貴女があの子(トキ)を置いて消えたのならば、もう少し違う道を選択したかもしれません、けれど貴女は踏みとどまった」

「………」

「暫くの間は、私もまた、貴女を許さぬ罪を背負います」

「――!」

 

 それは――。

 リオは一瞬、自身の心臓が大きく跳ねるのを自覚した。

 だって他ならぬ、あのヒマリがこの様な言葉を口にするなど、夢にも思わなかったから。

 数秒、二人の間に沈黙が流れる。ヒマリは何処か気まずそうに、リオは信じられないという心地で。

 ややあって、リオが口を開く。

 

「ありがとう……いえ、ごめんなさい、ヒマリ」

「……あらあら、そんな素直な言葉を口にするなんて、貴女らしくないですねリオ」

 

 彼女らしい軽口は、どんな状況でも健在だった。けれど、その耳元が微かに赤らんでいる事にリオは気付き、ふっと口元を緩める。らしくないのはヒマリ、貴女もでしょう――そんな言葉を呑み込みながら。

 

「ですが、私よりも先にそう口にするべき相手が居るのではありませんか? どうせ先生に対しては、病棟でうんざりする程繰り返したのでしょうし」

「……そうね、その通りよ」

 

 先生には何度も謝罪を口にした、彼女の云う通りだ。

 C&Cにもそうだ、トキを改めて所属させる以上不和を残す訳にはいかない。幸いネルには顔面を滅多殴りにされた一件も含め、「てめぇとの喧嘩はアレで仕舞だ」と吐き捨てられている。セミナー、エンジニア部、トレーニング部、ヴェリタスなどに関しても既に一通り話は済んでいる。そうでなければこの場所に立っている事も無かっただろう。

 そう、後は――。

 

「――明日にも、あの子(アリス)あの子の仲間達(ゲーム開発部)に、謝罪に向かうわ」

「賢明な判断ですね」

 

 リオの言葉に、ヒマリは溜息交じりに肯定を返した。

 ゲーム開発部、今回の一件で中心となった部活動であり、彼女が一番後ろめたい感情を抱いている場所。

 兎にも角にも、彼女達に謝らなければ本当の意味でリオがこの場所に受け入れられる事はない、それを理解しているからこそ彼女はゲーム開発部に赴く意思を前より固めていた。

 

「――あぁ、そうです」

「……?」

「まさか手ぶらで向かう筈もないでしょうし、一つだけ助言(アドバイス)を」

「アドバイス?」

 

 貴女(ヒマリ)が、私に?

 思わずそんな言葉を口にしそうになって、リオは慌てて呑み込む。今しがたヒマリの善意を見たというのに、どうにも長年の関係性が尾を引き摺っているらしい。仕方ない事とは云え、何とも云えぬ座りの悪さを感じリオは口元をまごつかせる。

 ヒマリは車椅子のコンソールを操作すると幾つかのウィンドウを開き、同時にリオの持つ端末から電子音が響いた。どうやら、メッセージか何を自分に送信したらしい。リオが訝し気な表情を浮かべれば、どこか挑発的な笑みを浮かべたヒマリが、楽しそうな声色を隠す事なく云った。

 

「――何でもあの子達が好きそうなもの、今日発売の新作ゲームがあるそうですよ、リオ?」

 

 ■

 

「―――」

 

 翌日――部室棟、ゲーム開発部前。

 

 古びた廊下、人通りの滅多にない部室棟の隅、その場所にゲーム開発部の部室は存在する。ごく少人数かつ、殆ど実績を持たない部活動の立地としては真っ当なものなのだろう。そんな彼女にとっては二度目の来訪となる場所に、リオは無言で佇んでいた。

 

 手には見慣れたタブレット、そしてもう片方には茶色の紙袋がぶら下がっている。その中にはヒマリが云った様に彼女達が喜びそうな新作ゲーム――何となく不安になり、価格の高い新作を数本纏めて購入した――が詰まっていた。

 リオはぶら提げた紙袋を持ち上げ、どこか苦々しい表情のまま呟く。

 

「……本当にこんなもので謝罪になるのかしら」

 

 そう呟いた彼女の視界に映る、パッケージングされた数本のゲーム。彼女が普段扱うような金額からすれば、このゲーム程度は本当に微々たる出費だった。

 これが彼のエンジニア部ならば非常に高価な材料や機材等を希望するだろうし、ヒマリであれば都市とは云わないまでも「ビル一棟……いえ、貴女の手が入っても嫌ですし、土地を丸々一つ用意して下さい」と何の悪びれもなく口にするだろう。C&Cならばセーフハウスか、或いは銃火器のカスタム代か――兎角、ミレニアムの生徒が欲しがる物というのは大抵、それなりに高額な代物なのだ。

 だがらこそ、この手にぶら提げたゲームが相対的に安価に感じられて不安になる。価格がそのまま誠意に直結する訳ではないと分かってはいるが、果たしてこんなもので本当に彼女達が喜ぶのだろうかと、そんな感情がずっとぐるぐると胸の中で渦巻いていた。

 

「――ですがリオ様、ゲーム開発部と云うからにはやはりこの手のものが一番かと」

「……トキ」

 

 そんな彼女の肩に手が添えられ、背後から抑揚のない声が掛かる。声の主はトキ、普段通りのメイド服にキッチリとした佇まい。見慣れた自身の従者が、直ぐ傍に佇んでいた。

 何を隠そう彼女もゲーム開発部に正式な謝罪を行う為、リオと共に部室を訪れていた。自分一人であれば苦悩し、踏ん切りも付かなかっただろうが、トキがそう云うのであれば多少気持ちも楽になる。リオは紙袋を胸元に抱え小さく頷きを零す。

 

「えぇ、そうね」

 

 そう、今更な話だ。実際に購入してこの場に立っている以上、もう選択は済んでいる。ならば後は実行するしかない。

 そう考え、リオは部室の扉をノックしようとして――扉の向こうから、楽しそうな声がわっと上がった。

 

『わぁっ、また負けたぁ~!』

『ユズの十連勝です! 流石です!』

『流石だねユズちゃん、お姉ちゃん結構セコい戦法使っているのに……』

『こ、このキャラ、この前練習したばっかりだったから、偶然だよ』

『と云うかセコいとか云わないでミドリ! 使えるものは何でも使う、これも立派な戦法なんだから!』

『はいっ、次はアリス! アリスが対戦したいです!』

 

 聞こえてくるのは誰かの歓声、恐らくモモイだろうか。次いで微かに聞こえて来る、アリス、ミドリ、ユズの声。何か対戦ゲームで遊んでいるのか、ドタドタと駆ける音、笑い声、少しの怒り声と、じゃれる様な大声。

 非常に暖かな気配が扉越しにも感じられる、正に此処は彼女達のホームなのだろう。

 

「………」

 

 その声を耳にする度、リオの掌にじっとりとした汗が滲んで来た。

 

 ――こんな穏やかで暖かな空間に、自分が?

 

 リオはノックする為に伸ばした手をそのままに、思わず体を硬直させる。自身がこんな空間に足を踏み入れる事、その後を想像してしまったのだ。自身の顔を見たアリスが、彼女達がどんな反応をするか、それを脳裏に思い浮かべたリオは眉間に皺を寄せ、苦し気な表情を浮かべたまま唇を固く結ぶ。

 湧き上がるのは純粋な恐怖、そうされる事が当たり前であると理解しておきながら、浮かび上がる罪悪感を前に彼女の持ったなけなしの勇気が萎んでいく。

 そしてゆっくりと、伸ばした手を下ろし、制服を皺になるのも構わず握り締める。俯いた彼女の表情には深い、深い後悔の色が灯っていた。

 

「――トキ、やっぱり、日を改めて」

「リオ様」

 

 だが、踵を返そうとする彼女の腕を掴む者が居た。

 トキだ、彼女はこの場を去ろうと俯くリオを引き留めると、ゆっくりと首を横に振ってみせる。

 

「……トキ、何を」

「私も一緒です」

 

 怯えを孕んだリオの瞳、真っ直ぐそれを見て彼女は告げる。そこには恐怖に勝る意思があった。リオの萎んだ勇気を奮い起こす様な、真摯な色だ。ぎゅっと、トキの指先がリオの掌を暖かく包む。

 

「大丈夫」

「………」

「アカネ先輩から教えて頂きました」

 

 トキの脳裏に過るのはアカネの、先輩の口にした言葉。

 アビ・エシュフから自身を引き起こした彼女は、確かこう云った。

 

「主人が道を違えそうになったのならば、それを正すのもメイドの嗜み、と」

「………」

「リオ様は私が支えます――だから、大丈夫です」

 

 大丈夫、とトキは重ねて呟いた。

 彼女自身も不安に思っている筈だというのに、気丈に、何の躊躇いも見せず、彼女は自身を支えると断言する。暫しの間、二人は視線を交わす、微かな震えを起こしていたリオの掌が少しずつ、落ち着きを取り戻すのが分かった。

 

「そう……そうね」

 

 トキの力強い言葉に、リオはぎこちなく頷きを返す。その顔色は未だ優れなかったが、それでも持ち直す事が出来た。

 ありがとう、トキ。

 口の中で小さく呟く。本当に自身には勿体ない程、出来た従者だと思った。こんな自分に最後まで付き従ってくれた彼女には、感謝してもし切れない。

 リオは改めてゲーム開発部の扉と向き合い、大きく息を吸い込む。背筋を正しながら気を引き締めると、少しだけ勇気が蘇った気がした。

 

「そんな強張った表情では、怖がらせてしまいます」

 

 立ち向かう事を決めても、その身体の強張りばかりはどうしようもない。ぎこちないリオの表情に気付いたトキは、努めて柔らかな調子で告げる。

 

「笑顔です、リオ様――ぴーす、ぴーす」

「……トキ、貴女そんな事を云う性格だったかしら」

「……こちらは、ヒマリ部長に教えて頂きました」

 

 両手を顔の横に揃えながらピースをするトキを見て、思わずといった風にリオは困惑の表情を見せる。彼女自身も似合わない事をしたという自覚はあるのか、ほんのりと頬を染めながら恥ずかしそうに俯いた。恐らく緊張を解す意図があったのだろうが、余りにもギャップがあり過ぎる。

 

「――あれ、誰か居るんですか?」

「ッ!」

 

 そんなやり取りをしていたからか、どうやら扉の前に誰か立っているのだと悟られたらしい。リオが何かアクションを起こすよりも早く、扉はゆっくりと開かれ中からアリスが顔を覗かせる。

 まんまるとした瞳、自身よりも小柄な影が此方を見上げる。その瞳の中に、強張った表情を浮かべる自身の姿をリオは見た。

 

「あ、アリス……」

「―――」

 

 リオは彼女を前にして、何を口にするべきか逡巡した。否、口にするべき事は分かり切っていたのだ、事前にシミュレーションも済ませていたし、何も難しい事はない筈だ。

 だと云うのにリオの口はハッキリと言葉を紡ぐことなく、小さな震えと共に視線が左右に流れてしまう。いざこうして彼女と対峙すると、事前に準備していたあらゆる言葉が頭からするりと抜け落ちていくのが分かった。

 舌が回らない、思考が真っ白になる。

 

「その、アリス、今日は……」

「リオ会長です!」

「えっ!?」

「はッ!?」

「ふぁっ!?」

 

 そんなリオを前にして、アリスは驚愕を滲ませながら思わず叫ぶ。その声を聞いたゲーム開発部の面々は、握っていたコントローラーを投げ捨て慌ててアリスへと飛びついた。「もごっ」と声を漏らし、モモイ、ミドリ、ユズに引き摺られて行くアリス。三人の腕の中に包まれた彼女は目を白黒させ、アリスを抱えた仲間達はリオを睨み付ける様にして叫ぶ。

 

「ほ、本当にリオ会長……!?」

「な、何しに来たのさ!? まさか、またアリスを誘拐しに来たんじゃ――!?」

「あ、アリスちゃんは、渡しません……!」

「ち、違うわ、誤解しないで頂戴、今日は……」

 

 彼女達の強い警戒の視線に対し、リオは否定を口にする。そうしながらふと、自身の握り締めた紙袋を思い出す。咄嗟にそれを差し出したリオは、俯いたまま申し訳なさそうに口を開いた。

 

「――今日は、謝罪に来たのよ」

 

 か細く、力ない言葉。

 それを聞き届けたゲーム開発部は一瞬面食らった様に言葉を呑み、互いの顔を見合わせる。先頭に立っていたモモイはリオの差し出した紙袋を恐る恐る手に取り、目を瞬かせた。

 

「これは……」

「謝罪の品、と云うには少々特殊過ぎる気がするけれど、こういうものが好きだと聞いたから……なるべく良いものを見繕った、つもりよ」

 

 つもり、で更に声が小さくなる。

 彼女からすれば安価な品物だ、ゲームを云々出来る程の知識を持たない彼女は自身が手に入れたそれがどれ程の価値を持つかなど分からない。紙袋を開け、中を覗き込むゲーム開発部。そしてパッケージを取り出すと、途端に目を輝かせ叫んだ。

 

「あーッ! これは先日発売したばかりの『ロケット・モンスター限定版』……!?」

「しかも、アートブック入りの『エルゴン・リング』に、『モータル・ギア・ソリッド』、『スチュⅥ』まで!? 初回特典封入の奴じゃん!」

「これ全部パッケージ版で……?」

「ど、何処も売り切れ続出で、中々手に入らないのに……!」

 

 アリス、モモイ、ミドリ、ユズの順に掲げられたゲームパッケージを恍惚とした瞳で眺める。どれもこれも、最近発売されたばかりの新作で品薄が続いている代物だ。加えて初回特典封入、限定版となれば更に希少度が上がる。万年金欠に悩まされるゲーム開発部としては正に喉から手が出る程欲していたゲーム達。

 予想以上の食いつきで驚いたのは、寧ろリオの方だった。パッケージを両手で握り締め、掲げながら笑みを浮かべるゲーム開発部の姿に思わず胸を撫でおろす。今この瞬間だけは、心の底からヒマリに感謝の念を抱いた。

 

「因みに私も同伴しております」

「あっ、C&Cの……!」

「えっと、トキさん、だよね……?」

 

 頃合いを見てリオの背後から体を傾かせ、顔を覗かせるトキ。彼女を見たモモイとユズが反応する。リオと並んだトキは改めて佇まいを正し、真っ直ぐゲーム開発部の四名と対峙した。

 

「その、許されるとは思っていないわ、ただ……せめて一言だけでも、謝罪しなければと思って」

「――この度は、大変申し訳ございませんでした」

 

 トキが深く頭を下げ、謝罪を口にする。リオも同じように深く頭を下げると、続けて口走った。

 

「っ、本当にごめんなさい、けれどトキに責はないわ、彼女はただ私の命令に従ったに過ぎない、貴女達の心と体、それを傷付けた咎を受けるべきは私――」

「――リオ会長が仲間になりました!」

 

 深い後悔を滲ませながら言葉を続けるリオ、それに被せる様にしてアリスの朗らかな声が部屋に響き渡った。

 深く頭を下げたリオの腕に絡み付く小さな掌、びくりと身を震わせた彼女の視界にアリスの姿が映る。其処には何の含みもない、満面の笑みを浮かべた彼女の顔があった。

 

「モモイ、強大なボスが仲間になる展開というのは、本当にある事なんですね!」

「え、えぇ? アリス?」

「えっと、まぁ、RPGだと良くある事だけれど……」

「これは、そういう事……なのかな?」

 

 アリスの言葉に困惑を滲ませるゲーム開発部。つい先日銃口を向け合い、戦い合った仲だと云うのに彼女の声や態度は、全くそれを感じさせない。それはリオでさえ戸惑い、言葉を詰まらせてしまう程に。

 

「あ、アリス……」

「アリスの冒険に心強い仲間が増える事は歓迎です! リオ会長、一緒にゲームをしましょうッ!」

 

 ぐいぐいと、リオを引っ張って部室の中へと引き込むアリス。そんな彼女の姿を見て、モモイやミドリ、ユズは暫し呆然とした様子を見せ――ややあって、仕方ないとばかりに苦笑を零した。

 モモイやミドリがトキを引っ張って中に招き、困惑する二人を先生やユウカが良く利用しているソファに座らせる。アリスは古いテレビに繋いだゲーム機、そこから伸びるコントローラーをリオに握らせた。彼女は掌に収まったそれを見下ろしながら、思わずと云った風に言葉を漏らす。

 

「……その、こういうものは、触った事がないのだけれど」

「誰だって最初は見習いからです! ですが毎日少しずつ経験値を稼いでいけば、いつか立派なゲーマーになる事が出来ます!」

 

 ふん、と鼻を鳴らしたアリスは胸を張ってそう告げる。学年も肩書も向こうが上だが、事ゲームという土俵に於いては自身が上だと云う自負がアリスにはあった。

 

「今日がリオ会長の、新たな一歩を踏み出した記念日ですね!」

 

 リオのコントローラーを握る手を包みながら、彼女はそう告げる。

 その、何処までも屈託のない笑みに。

 包み込む様な暖かさに(光属性に)

 リオは眩しそうに瞳を細め、それから薄らと笑みを浮かべた。

 浮かべる事が出来た。

 

「――えぇ、そうね」

 

 AL-1Sは――。

 いいや、天童アリスは、『私達の可愛い後輩』と。

 あの時、そう云ったヒマリは確かに正しかったのだと。

 今、リオは漸くそう納得する事が出来たのだ。

 

「アリス、貴女のおすすめのゲームはあるのかしら?」

「っ! アリスのおすすめですか!?」

「えぇ、出来る事なら、それを最初に触ってみたいわ」

 

 少しだけ色を取り戻したリオの言葉に、アリスは目を見開きながら興奮したように飛び上がる。慌てて踵を返した彼女は近場のゲームラックへと駆け寄ると、その中から迷う素振りも見せず一つのパッケージを取り出し、リオの前へと小走りで戻って来た。

 彼女の瞳は爛々と輝き、眩い光を秘めている。それだけその手にしたゲームを愛しているのだと、そう伝わって来るような。

 

「アリスのおすすめ(一番)は、勿論――」

 

 その握り締めた、ボロボロのパッケージをリオに突き出し。

 彼女は何処までも嬉しそうに、楽しそうに、満面の笑みを浮かべながら告げるのだ。

 

 ■

 

 テイルズ・サガ・クロニクル。

 それは彼女達にとって、はじまりの物語。

 けれど、それだけではない。

 まだまだ、皆と。

 大勢の仲間達と一緒に、これから先も紡いでいく(テイルズ・サガ・クロニクル2を超えて行く)

 そう約束し、今も尚紡がれ続ける。

 

 ――長い長い、私達(ゲーム開発部)物語(冒険)だ。

 

 

 

 花のパヴァーヌ編・後編 完。

 


 

【今後の方針と私信】

 

 この終わり方はパヴァーヌ後編をやろうと思い立った時から決めておりました。AL-1Sがテイルズサガクロニクルで脳破壊され、本当の意味でアリスになったように。リオもまたこのテイルズサガクロニクルによって情緒を破壊され、本当の意味で仲間になってくれる事でしょう。クソゲーが紡ぐ絆の物語、とても美しいですわね……。は? テイルズ・サガ・クロニクルは神ゲーですが? エアプ勢は黙って頂けます? 私もエアプなので黙りますね。

 

 本当は、最後の決戦で先生の右足を吹き飛ばすつもりでしたの。

 けれどそれをやった後のプロットと会話を何度構成しても、リオ会長が大変な事になりましたわ。この結末に至らせる為、何とかミレニアムに残せないかと試行錯誤しましたが、本編中でさえ超失踪したリオ会長が先生をボコした上で、最終的に片足捥げちゃった……した後にミレニアムに残れるメンタルある? って考えたらどう考えても無理でした。

 元々ミカをティーパーティー在籍のままにした時の様に、或いはスクワッドを四人のままにした時の様に、最初からリオにはミレニアムに残って貰う予定でしたの。

 愛と勇気とロマンの話であるこのパヴァーヌに於いて、後味の悪い最後というのはどうにも看過できませんでした。どうせなら少し本編と異なる未来を垣間見たい、先生が嗚咽と涙と血に塗れて這い蹲っても、その苦痛の裏で生徒達には無垢に笑っていて欲しいという純真な願いが私にはありました。

 少なくとも今はまだ、生徒達の純愛を先生にぶつける訳にはいかないのです。いわば今はアビドス編と同じ――エデン条約後編で先生を血だまりに沈め、その愛を一身に受け取った時の様に、『最終編』という私にとっての『エデン条約』(和平)を成就する為に、ただ黙々と積み重ねる時なのです。

 

 という訳で先生のあんよが千切れ飛び消し炭になるのはお預けですわ! 先生が足を失って無様に這い蹲って足掻く姿を期待していた465億人の読者の方々ごめんなさいね! 

 けれど、どうか私も苦渋の決断だった事を知って頂きたい。どうにかこうにか先生の足を消し飛ばせないか、書いては却下、書いては却下……ここ一ヶ月少し投稿が遅れ気味だったのはプロット構築が最後までユラユラだったからですの。

 投稿ギリギリまで先生の手足を何とか捥げないかと足掻き、先生の足を捥ぐだけで九万字に至るあらゆる分岐(プロット)を検討し、どうにかリオを引き留められないかと言葉を捏ね繰り回し、その果てに涙を呑んでこの結末が最も美しいと判断したわたくしをお許し下さい。

 

 数多の困難を乗り越え、互いの無事を喜び、再開の抱擁を交わしながら静かに流す愛。

 大切な人が斃れ伏し、どうしようもない激情と悲壮に駆られながら、ボロボロと零す愛。

 愛に貴賎はありません、みな等しく美しく貴いものなのです。

 

 代わりと云ってはなんですが、コレの代償は最終編でユズと先生が支払いますわ。

 彼女達がアリスの冒険の続きに現れなかったのは、まだ二人の冒険(戦い)が終わっていないからですの。冒険というものは、アリス(勇者)だけが行うものではありません、その仲間達にだって相応の物語が存在するものです。

 何せ七基も存在するのですから、ちょっとくらい余地を残しておかなければ、枠が余ってしまうかもしれませんからね。先生には是非、最終編であらゆる苦痛と辛酸と罪悪に塗れて頂きたい! 因みに現在確定している枠はアル、コユキ、ハナコ、ユズの四名です。

 愛というものは、謂わば雪の様に音もなく、いつの間にかゆっくりと募るようなものが好ましいのです。振り返って、その愛を自覚する瞬間こそが最も美しく、故に取り返しのつかない事であれば尚よろしいのです。

 

 とか思っていたら最新ストーリーが更新され、「ひょえー」ってなりましたわ。

 愛が深い事は大変よろしいのですが、此処までやります? 取り返しつくんですのコレ? 先生心肺停止とかなさらない? と云うか新事実が沢山あり過ぎて「ぬ」と「ね」の違いが分からない様な顔で眺めておりましたわ。

 

 当然の様に用意していたプロットは爆散致しました。

 

 ですがこれは「善い爆散」、前向きな「プロット爆散」で御座います。

 何を隠そう今回のシナリオで最終編に於いて活用で来そうなものがざっくざっく掘り出されたのですから、これはもう盛り込むしかないと相成った訳ですの。

 特に反転関連とか、色彩に触れないと反転しないのかしら~とか思っておりましたがそんな事なかったですわ! 反転条件についてはまだまだ考察の余地もありますし、次話でまた新しく判明するかもしれませんが、一先ず非常に魅力的な情報である事は確かですの。

 まぁ、本編更新でプロット吹き飛ばされる事なんて既に何度も経験しておりますし、いつか後書きで綴ったようにプロットなんて粘土細工ですことよ。爆破されたらもう一回こねくり回せば何とかなりますの! ただもうどうしようもない部分はソレはソレとして活かすしかありません。現在のプロットで変更出来ない部分と、新ストーリーによって変更しなければならない部分を、こう、良い感じに、なんか悪くない感じに、高度な柔軟性を保ちつつ、臨機応変に……ですわ! きっと未来の私ならばよくやってくれるでしょう、多分。頑張れ私。

 

 さて、一先ずこれでパヴァーヌは完結致しました。また一、二ヶ月のお休みを頂いた後、次章に入って行きたいと思います。因みに此処まででWordの文字数は二百九十三万字になります、もう直ぐ三百万字の大台ですね、ウケる。ウケないが? あと一ヶ月でこの小説書き続けて二年になるんですが? と云うか最終編が一年前って本当ですの? エデン条約前編書いている時に最終編来て、「プレナパテスせんぜぇ~ッ!」ってなって最終編書くと決意して一年経ちますの? これ私が最終編書いている時にまた新章来て、「せんぜぇ~ッ!」ってなってまた伸びたりします? いや、流石にそれはないですわよ。そうなったら私の身体が先に爆散します。おぉ、何と貧弱な。

 

 順番で云えば次はSRT――カルバノグの兎編となるのですが、正直非常に迷っておりますわ。と云うのもつい一、二時間前に放送された生放送で水着サオリ、クロコ、ホシノ(臨戦)の実装が発表され、明日には新ストーリーが実装されるとの事。

 はぇーですわよ、まだ一週間そこらですわよね? マジで云っています?

 この新ストーリーの展開如何によっては、もしかしたらカルバノグの兎編をスキップし、最終編にそのまま突っ込む可能性もあるのです。

 元より曲がりくねって何度も爆散したプロットではありますが、最終編の「さ」の字も無かったアビドス編で「銀狼」という、最早後から出て来たクロコとは似ても似つかない彼女の存在により、「私の最終編はボドボドダァ!」状態なのです。というかそのおかげでアビドス回りは殆ど独自のルートに入らざるを得ません事よ。

 

 もしカルバノグの兎編をスキップした場合、次章で「ブルーアーカイブを、もう一度。」は完結しますわ。

 

 何せ最終編ですから。勿論、この本編時空の話はという前置きはありますが。

 完結、嗚呼完結、なんて素敵な響きでしょうか。まぁどうせ最終編もエデン条約ばりに長編なので、書き切るのに半年は掛かるのでしょうけれど。血反吐撒き散らしそう(小並感)

 

 ただ昔、「SRTが出て来るカルバノグの兎編が楽しみです」と仰っていた読者の方がいらっしゃったのを憶えていて、もしかしてカルバノグを楽しみにしている読者って結構居るのかしら~? と葛藤しておりますわ。

 と云う訳で物凄く久し振りにアンケートを取ります。この機能使ったの一年振りくらいでしょうか? お手数でなければ適当に好きな方をポチって頂ければ助かりますわ! 

 ただ、あくまで目安である事を予めお伝えしておきますの。明日のストーリー展開によっては、そのまま最終編に突入する可能性もあるとご承知下さいませ!

 

 さて、書く事は全部書きましたわ! 多分!

 また細々とした事とか、漫画とか、更新再開とかはTwitter(新:X)で報告致しますの! 一ヶ月に一回か二回しか呟かないアカウントでごめんなさいね! 返信も碌に出来なくてマジで申し訳ねぇですわ! 

 でも月に必ず一度は確認して、「ありがてぇですわ~」って思っているので、お気に入り、感想、評価、ここ好き、よろしくお願いしますわ~! 

 

 それではまた次章で! それまで暫しおさらばですわ~!

 わっぴ~!

 

次章の希望

  • カルバノグの兎編
  • 最終編
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