「さっきの爆発は何だ、一体何が起こっている?」
「分からない、ヘリが一機、公園に突っ込んだって話だが……」
「結局撃墜したのだろう? 公園の中にはプレジデントの本隊だって居るんだ、心配ないさ」
曇天の隙間から微かに煌めく星々を見上げながら、オートマタ達は薄らと明かりを放つ公園内部に視線を向け、呟いた。つい先程突入して来たヘリに向けられた砲火、火を噴きながら内部へと墜落していったそれに対し不安を覚える者も居たが、大抵は楽観的な感想を抱く。
包囲網を維持し、銃火器を抱えながら所在なさそうに佇む彼らは、火災によるものか薄らと緋色の光を放つ公園上部を一瞥しながら言葉を交わす。周囲に並び同胞達も同様の意見を持っている様で、その纏う気配は呑気なものだ。
「公園での戦闘自体は終了したって話じゃないか、もう直ぐ例の先生とやらも捕まるさ、そうすればこの任務も一段落ついて、後は帰還するだけ――ってな」
「……まぁ、それもそうか、中に居る連中もたった三名だって話だし、今更ヘリ一機、増援が来た所で意味も無い」
「墜落した上、特務まで出張って来たんだ、俺達の出番何て無いさ」
つい一時間前まで活発に轟いていた銃声も、今では殆ど聞こえない。周囲は随分と静かだった、車両のアイドリング音ばかりは仕方ないが、耳を済ませれば虫の鳴き声だって聞こえて来るかもしれない。
仮に撃墜した機体の搭乗員が生き残っていたとしても、だから何だという話である。圧倒的な数で勝る自分達が、プレジデントが敗北する筈がないという自信が、沸き上がる不安を上から圧し潰していた。
「ん?」
ふと、空を見上げていたオートマタの一人が、遠くに見えるビル群の上空に光る何かを見つけた。星々の煌めきとは少し違う、航空障害灯でもない、赤でも白でもないそれは微かな煌めきと共に瞬いている。
フェイスモニタを揺らしながら視界を拡大するオートマタは微かに前傾姿勢を取り、指先で表面を小突く。
「何だ、アレ……」
「どうした、何か見えるのか?」
「あ、あぁ、何か向こう側に光る何かが――」
「光る何かって、どうせ視覚のノイズだろう? また何か飛んで来たら先にレーダーに引っ掛かる筈だ、先程のヘリの一件で警戒班も気が立っている、早々見落としなんてしないさ」
「いや、でも確かに……」
青く光る何か、拡大すると噴射光にも見えるが――確かな事は云えない。
しかし此方に向かって来ているのか、光は徐々に大きくなり、月明かりと噴射光によって大まかな輪郭が見えて来た。明らかに航空機の類ではない、僅かに浮足立ったオートマタは周囲に向けて声を張り上げる。
「お、おい、やっぱりアレ、こっちに向かって来るぞ……!?」
「は? だから、レーダー担当から警告なんて何も――」
「素体のメンテナンスをサボったんじゃないか? 定期メンテナンスは受けろって云われていただろう、上にバレたらドヤされ――」
呟き、顔を上げる隣り合うオートマタ。そして確かに、青白い光が尾を引いて此方に突貫して来る光景を目視した。
「……えっ」
それは周囲に薄らとした電磁防壁を纏い、まるで減速する気配を見せず、ビル群の隙間へと入り込む。
余りの速度に通過した瞬間周囲の硝子が全損し、街路樹は大きく撓り、路駐した車両は揺れる。悲鳴を上げる暇も、余裕も無かった。巨大な影は凄まじい速度でオートマタ達の直ぐ横、駐車していた装甲車の横合いに着撃したのだ。
凄まじい爆音と衝撃。
抗い切れないそれにオートマタ達が一斉に吹き飛び、地面に転がる。着地台代わりとなった装甲車は中程から千切れる様にして圧し折れ、アスファルト舗装の地面を擦る様に火花を散らし、スライドしていた。
オートマタ達は銃火器を抱えたまま這い蹲り、周囲に降り注ぐ硝子片と金属片からフレームを保護する。立ち込める砂塵にフェイスモニタを汚し、呆然とした心地で顔を上げれば、生半な銃撃ではビクともしない装甲車両が、まるで飴細工のように変形している姿が見えた。
「い、一体、何が……?」
一体なんだ、何が起きた、砲撃でも撃ち込まれたのか? そんな混乱するオートマタ達の視界情報に、巨大な腕が装甲車の内部から拉げた外装を掻き分け、現れる。
ギッ、ギッ、とまるで悲鳴を上げる様に拉げた装甲車両が金切り音を上げ、その破損部位が広がっていく。光の差し込まない暗がりから青白いライトが点滅し、腕部に装着された巨大な銃身が顔を覗かせた。
「――アビ・エシュフ、現着」
ズン、と。
すっかり拉げ、原型を留めない装甲車を踏み潰し、出現する二メートル前後のロボット――否、
奇妙な駆動音を鳴らし、各部から蒸気を噴き出すアビ・エシュフ、それを装着したトキはバイザー越しに油断なく周囲を見渡していた。視界に映る複数の装甲車、地面に這い蹲ったまま此方を呆然と見上げるオートマタ達。
機動性を重視した特徴的な外装を身に着けたそれを前にして、彼等は刻印されたマークに気付き電子音声を荒げる。
「きょ、強化外骨格だと……!?」
「ゴリアテタイプじゃない、このロゴは、ミレニアムの――ッ!」
「武装コンテナの飛行ルート確定、誘導ビーコン発信、着陸に合わせ周囲の脅威排除を優先、戦闘モード起動」
告げると同時、アビ・エシュフの外装が変形を始める。飛行形態から地上での戦闘形態に。前面に展開し、トキの首から下を覆っていた外装が左右に分かれ、肩部にせり上がり順次固定される。上腕部にロックされていたトライポッドは音を立ててせり出し、腕部横にスライドされた。
「くそッ、応戦しろ!」
「本隊に伝達、早く――ッ!」
慌てて銃火器を構え、発砲するオートマタ達であったが、幾ら射撃を加えようともマズルフラッシュに照らされる外装には傷一つ付かない――薄らと展開された電磁防壁があらゆる攻撃を逸らし、被撃を許さないのだ。
此方を照らす閃光に小さく息を吐き出しながら、トキはアビ・エシュフの両腕を突き出し、銃身を回転させる。
「C&C、コールサイン・ゼロフォー」
そのトリガーを緩く握り締めながら、彼女は告げた。
「――殲滅を開始します」
■
『ネル』
「あぁ?」
五月蠅いエンジン音が常に鳴り響く機内で、耳元に装着したインカムから声が聞こえた。一人乗りの座席、狭苦しいその場所で比較的小柄なネルは悠々と足を組んだまま、愛銃の鎖を指先で弾く。不機嫌そうに眉を顰める彼女は、目前のモニタに投影される暗い空と、煌めくD.U.の街並みを一瞥しながら声を上げた。
『D.U.外郭地区、子ウサギ公園より強い反応を検知したわ、独特な波形よ、先生の使用しているタブレットから時折放たれるものと酷似している』
「子ウサギ公園……あぁ、地区の外れにあるデカイ公園か、そんな場所もあったな」
足を運んだ事も無ければ、意識した事もないのですっかり失念していた。確か寂れた自然公園か何かだった筈だ、近くに小さな市場もあった様な気もするが、元々外郭地区は中央と比べれて人も少なく、確かな記憶ではない。
「それで、公園に敵の反応は?」
『偵察衛星からの情報によれば包囲状態にあるそうよ、オートマタと装甲車がぐるりと公園全体を囲んでいるみたい、オートマタの形状と装備、ロゴからカイザーコーポレーションの部隊である事は確認済み』
「敵も集まっているなら、殆ど確定だ、しかしカイザーコーポレーションか――良い噂は聞いていなかったが、遂に一線を越えやがったな」
『……えぇ、そうね』
「んで、このまま機体で直接乗り込むのか?」
『いえ、公園周辺にCIWS、SAMらしき兵装を搭載した車両が複数確認されているわ、当然レーダーもあるでしょう、アビ・エシュフならまだしも、この機体のステルス性は完璧じゃない、多少の被弾なら電磁防壁と複合装甲で受けられるけれど、空で集中砲火を受けるのは危険よ、念の為目標地点より少し手前に着陸するわ』
そんなリオの言葉と共に、ネルの正面にあるモニタにマップ情報が表示され、子ウサギ公園の位置と現在位置をポイント、そこからの凡その距離を強調する。降下ポイントは子ウサギ公園より僅かに離れた公道、元々の目的地がシャーレ本棟であった事を考えれば誤差程度ではあるが、多少地上を走る事になるだろう。
尤も、ネルにとっては大した距離ではない。十分そこら走れば辿り着ける距離だった。マップを指先で拡大しながら、ネルは小さく鼻を鳴らす。
『それと、アバンギャルド君
「ん? あー……」
不意に掛けられた言葉に、ネルは分かり易く言葉を濁した。
現在彼女が搭乗している個人輸送航空機――通称アバンギャルド君シングル・フライト・タイプは、リオが独自に開発したアバンギャルド君を基に、C&Cのコールサイン持ちを作戦地域に素早く輸送する為に創られた小型航空機である。
ある程度危険な作戦地域にも強引に突入可能な装甲、通常のレーダー等で感知され難いステルス性、突入後は航行に不要なパーツを自動でパージし、エージェントの作戦行動を支援する作戦支援形態への変形など、まだ開発途中の機体ではあるものの、今回の一件を鑑みて急遽用意された機体である。
因みにシングルと付いている事から分かる通り、複数人が搭乗可能な機体も存在する。尤も今回は先生の居場所が不明な為、シャーレ本棟を中心として幾つかの地点にそれぞれ個別で着陸する作戦を取っていた為、採用される事はなかったが。
ネルはシートの上で小さく身動ぎしながら、視線をそっと横合いに逸らす。このアバンギャルド君SFT、確かに並みの航空機より速いわ、装甲も電磁防壁含め見た目よりも頑丈で、作戦支援も可能な無人戦闘機の側面も併せ持っていると、文句らしい文句は出ない。
しかし一点、ただ一点だけ不満があった。
「……その、なんだ、機体性能に文句はねぇがよ」
『もしかして、内装かしら? 一応、作戦使用に耐え得るものを選別した筈だけれど……狭いのは個人用機体だから、我慢して頂戴』
「いや、そういう訳でもなくて――」
シートもディスプレイも問題ない、寧ろネルとしてはその辺りに拘りを持っている訳でもないので、使えてきちんと機能すれば何だって良かった。何かを云い淀む事も、まごつく事も嫌いな彼女であったが――これを開発し、デザインした当の本人は心の底から、『コレ』が良いと思っている事が問題であった。
流石に、その善意に満ち溢れた感性を問題として糾弾する事は、如何なものかと思ったのだ。この堅物の事だ、言葉にした結果また変な方向に思考が飛んでも困るというもの。平時ならば兎も角、作戦中にする事でもない。
ネルは小さく溜息を呑み込むと、シートに背を預けながら首を振った。
「……別に不満はねぇ、少なくとも
『そう、なら良いわ――そろそろ着陸よ、衝撃に備えて』
「おう」
そんな言葉が耳に入ると同時、グンッ! と強烈な振動と衝撃がネルの身体を襲う。シートに体が押し付けられ、機体が逆噴射により大幅減速しているのだと分かった。
数秒後、接地したのか大きく機体が上下に揺れ、金属が拉げる様な音が連続して響く。顔を上げモニタを注視すれば、公道に乗り捨てられていた車両を無理矢理跳ね退けながら減速を続けている光景が目に映る。普通なら機体が圧し折れるか、拉げて爆散しそうなものだが、前面に集中展開された電磁防壁が車両を跳ね退け、宛ら暴走列車の如く突進を続けていた。
「っく、随分と無茶苦茶な着陸だな、リオ! 操縦AIがぶっ壊れた訳じゃねぇよな!?」
『悪いけれど今回は速度重視なの、一々障害物を取り除いたり着陸地点を吟味する余裕はないわ、それに万が一機体が大破しても貴女なら大丈夫でしょう?』
「ハッ、自前で脱出しろってか?」
『万が一不時着しても、外装が削れる程度よ、それにこの機体の外装は着陸してしまえばパージする一種の外殻の様なもの、幾ら破損しても構わないもの』
彼女の言葉通り、機体の主翼等は着陸と同時に切り離され、現在機体は細長いポッドの様な形になっている。それがまるで砲弾の如く地面に着陸し、障害物を薙ぎ倒しながら急停止しているのだ。
暫くの間、あまりにも荒い着陸に顔を顰めていたネルだが、微かにノイズの走ったモニタに映る光景が動かなくなった事、振動が感じられなくなった事で、漸く機体が停止したのだと理解する。
溜息を零し、僅かに悪くなった気分を切り替える様に体を固定していたベルトを弾くと、愛銃を担ぎながら開閉スイッチに手を伸ばす。
『ネル、まずは周辺の安全を確保して頂戴、此方も直ぐに支援形態へと移行するわ』
「要するに敵が来たら全員ぶっ飛ばせば良いんだろ、任せとけ――っと!」
いい加減、狭い空間に詰められて時間を過ごすのには飽き飽きしていた。やはり何時間もジッとしているのは性に合わない、勿論任務であれば仕方ない事なのだが、出来る事とやりたい事は別だ。
不意に背後を見ると、まるで一本線を引くように伸びた擦過跡が機体の背後に続いていた。押し退けられ、横転した車両群は街頭に照らされ寂しく鎮座している。突入用の機体とは云え、少々やり過ぎな気もするが――ネルは軽く頬を掻き、前を向く。
「……へぇ? もう嗅ぎ付けたのか」
キャノピー代わりの外装部分を押し上げ、縁に足を掛けたネルは遠目に駆けて来るオートマタ達を視認した。夜の街灯に照らされた彼らは、凄まじい速度で此方に急行している。着陸時の轟音と破壊音に釣られたのか、或いは予めレーダーで感知していたのかは分からない。
この駆け付ける速さ、D.U.内部にも部隊を展開していたのか、随分と用意周到な事だ。
数は装甲車両四台、
ジャラリと繋がれた鎖が音を立て、ネルは挑発的な表情をそのままに爪先で地面を叩いた。
「はっ、肩慣らしには丁度良い数じゃねぇか、こっちも鬱憤が溜まっているんだ、一つ派手に暴れて……」
「此方十一班、件の飛行物体を発見しました、ですが――」
「な、何だこのクソダサい航空機モドキは……?」
しかし、オートマタ達の視線は着地したネルではなく、今しがた着陸したばかりの航空機――アバンギャルド君SFTに向けられていた。
主翼を失い、細長い物体と成り果てたソレは一見すれば特殊なポッドか何かの様にも見えるが、唯一他と異なる部分が存在する。
それはポッド上部に存在する、アバンギャルド君の顔面である。
通常のアバンギャルド君にも搭載されている頭部が、この航空機にも搭載されていた。
どう考えても航空機に搭載する代物ではないだろうとか、あんな平べったくて空気抵抗とかどうなっているんだとか、ステルス性で難儀しているのは
それはネルが今のまで決して口にしなかった、このアバンギャルド君SFTに対する唯一の不満そのものでもあった。
それらの言葉に対し、つい先程までやる気満々と笑みを浮かべていたネルの表情が、徐々に苦り切ったものへと変わっていく。いつも愛用しているスカジャンが、今だけは何故か虚しく風に靡いている気がした。
『………』
「……おい、リオ」
集結するオートマタの大部分が、「うわ何だアレ」だとか、「アンテナか、何かか?」とか、「だとしても何であんなクソださいデザインに?」等と好き放題宣う。
その間航空機に搭載されたアバンギャルド君の顔面は、周囲を索敵しているのか、呑気にクルクルと回転していた。
それら全てをカメラ越しに見ていたリオ、彼女に対しネルは声を掛ける。何処か気まずそうな気配の滲むそれに、リオは断固とした口調で告げた。
『――オーダー、アバンギャルド君SFT、作戦支援形態へ移行』
瞬間、先程まで全く動きを見せていなかった航空機、その外装が一斉にパージされる。機体下部より小型の履帯が四つせり出し、側面より折り畳まれたマルチアームが起動、機体先端の外装と尾翼を切り離し、ずんぐりと膨らんだ後部よりアームが重機関銃を取り出した。
機体後方は切り離し可能なコンテナとなっており、弾薬や兵装が搭載されている。武装完了次第切り離し、身軽となったアバンギャルド君SFTは、通常のアバンギャルド君より僅かに小型化された姿で戦闘準備を終えた。
「な、なんだ、航空機が突然、変形を……?」
「武装したぞ、こいつッ!?」
「き、キモイ、腕が四本もあるじゃないか!」
『――全兵装、フルバースト』
最早、慈悲は無い。
そんな思いと共に宣言された攻撃指示。命令を受け取ったアバンギャルド君は、『ア~バン、ギャルドッ!』と何とも気の抜ける声と共に、四本の腕にそれぞれ搭載した重機関銃を構え、一斉に引き金を絞った。
「うぉオオッ!?」
唸る様な重低音、そしてアスファルトを粉砕し飛来する弾丸の雨。
装甲車すらも貫通し、次々と放たれたそれは百名を超えるオートマタ達を一斉に襲う。咄嗟に反撃を行う者も散見されたが、その殆どは展開された電磁防壁により明後日の方向へと逸らされ、地面やビルの外壁に突き刺さった。碌な反撃を許さぬまま、アバンギャルド君用に調整された銃口は弾丸を吐き続け、重機関銃の口径はオートマタの装甲を容易く穿ち、粉砕する。
アバンギャルド君によるフルバースト射撃は凡そ十五秒に渡って続けられ、夜を明るく照らすマズルフラッシュと轟音が鳴り止むと同時、目前に広がるのは横転し、穴だらけになった装甲車両と、地面に転がる無数のオートマタ達。
百名近いオートマタを、驚異的な命中精度と火力で僅か十五秒で撃破したのだ。凄まじい戦果である。地面に転がる空薬莢、熱で蒸気を上げるそれを爪先で蹴飛ばしながら、しかしネルは辟易とした様子で口を開いた。
「……おい、リオ」
『………』
「流石に過剰火力だろ、コレ」
どうすんだよ、こんな初っ端から弾薬使いまくって。
言葉には、そんな意図が込められていた。当然ではあるがアバンギャルド君SFT、航空機の性として弾薬の類は限りなく切り詰められており、性能は高いが継続戦闘能力には難がある。その為極力弾薬などは節約し、エージェントとの連携に重きを置いた設計が為されていた。
だというのに、たった今全兵装使用自由、フルバースト等という切り札を早々に切ってしまったのである。
今の十数秒程度で持ち込んだ弾薬は殆ど使い切っただろう。予備の弾倉もあるにはあるが、ほんの一瞬で弾薬の半分以上を消し飛ばすなど何を考えているのか。何とも云えない、どこか責める様なネルの視線がアバンギャルド君を射貫いていた。
すると俯いたアバンギャルド君の頭部から、リオの声が響く。
『アバンギャルド君は、ダサくないわ』
「……いや、けどよ」
『ダサくないの』
「………」
『ダサくない』
周囲に響く彼女の声は微かに震えていた、ネルは唇を固く結び、視線を逸らしながら拳を握り締めているリオを幻視した。
『先生はこれを、芸術と呼称してくれたのだから、私は間違っていないわ……作品に対する好悪はあくまで主観的なものに終始する、私の
「わぁった、わかったよ……!」
『――……そう、分かってくれたのなら、それで良いの』
どれだけダサいという評価を受けたくないのか。彼女の口調は常と異なりあまりにも饒舌であった。以前から自身の製作する自律兵器、ドローン等のデザインを嗜んでいた彼女ではあるが、本人が手慰み程度に捉えていたそれを、先生が芸術だとか何だとか口にしたせいで、変な方向に吹っ切れてしまった気配がある。
兎角、この話題はここまでだ。軽く頭を掻きながら舌打ちを零すネルは、やってしまったモノは仕方ないと思考を切り替える。少なくとも一瞬でこれだけのオートマタを無力化出来る火力と演算能力、そして防御性能は確かなのである。自身の戦力と合わせれば、大抵の状況ならば打破出来るだろう。
「それでリオ、他の連中は?」
『……順次着陸、現在各ポイントで戦闘を開始したわ、最終的な合流地点は子ウサギ公園、直ぐに移動を開始して頂戴、端末にルートを表示させるから』
「了解」
端末から投影されるホログラムモニタが、ネルの視界にルートを描く。拡大されたマップにはC&Cの他のエージェント情報も記載されている。シャーレを囲う様に着地した四つのアイコン、そこから飛び出す様に『04』と描かれたマークが子ウサギ公園中央目掛けて移動を開始していた。
「一番近いのは……トキか」
自分達よりも僅かに早く出撃していた彼女が、どうやら一番に公園へと到着したらしい。しかし他の面々もそう遠くはない、急げば十分前後で合流は可能だろう。
『後二十分もすればユウカ達と一緒に発進したエンジニア部の無人航空機群が到着する筈、私のAMASを含めた陸上無人機は四十分後に到着予定よ、可能なら経路の確保を、ただし最優先すべきは先生の安全、その事を忘れないで――事前に伝えた通り彼の安全を確保する上で必要ならば、あらゆる損害は無視して構わない』
「おう、任せろ」
リオの声色に冷徹な色が混じる。数千機のドローンやAMASを使い潰そうとも、今回の一件に関しては一切の御咎めは無い。セミナーの会計担当のユウカですら、先生救出作戦に設けた予算限度額はなし、必要なら個人資産を費やしても構わないと豪語した程である。
D.U.内部で大規模な戦闘が発生した場合でも、損害を気にする必要は無い。実に分かり易く、やり易いとネルはぶら提げた愛銃を揺らし、鎖を鳴らす。
破壊跡の残る公道を歩き出し、点滅を繰り返す拉げた街灯に照らされた彼女は、足元に長い影を伸ばしながら告げた。
「C&C、コールサイン・ダブルオー――出るぞ」
嘗て敵対していた強敵が味方になって敵を薙ぎ倒す展開大好き侍。
次回はトリニティ突入部隊とゲヘナのお話ですわ~ッ!
トリニティ側の先発は正義実現委員会のツルギ、パテル分派首長のミカ、救護騎士団団長兼ヨハネ分派首長のミネ、シスターフッド代表のサクラコ、以上の四名を中心とした混成部隊ですの~!
ミネが壊し、ツルギが壊し、ミカが壊し、サクラコは嗤う、完璧な布陣だぁ……。
ゲヘナ側は万魔殿と風紀委員会が主力となり、後は美食研究会とか温泉開発部が独断でD.U.に入り込んでおりますの。便利屋はアビドス側に加勢していますわ!
三大校VSカイザーコーポレーション、ファイッ!
因みに時間を掛け過ぎると百鬼夜行とレッドウィンターも参戦しますわ。山海経は時期的に学園規模での参入は難しいと思うので、参戦予定はございませんの。まぁ部活単位での参戦は全然ありそうではありますが……。
カルバノグの兎編もあと少しで終わりですわね! 何だかんだ、結構長くなってしまった印象がありますが、最終編はもっと長くなるでしょうし誤差ですわ誤差!