暗いオフィス、遮光カーテンが敷き詰められた部屋の中には、二人の人物が向き合っている。デスクに腰掛け、指先を組みながら真っ直ぐ相手を見据える――黒い人型。
黒服と呼ばれた彼は、対峙するアビドス校のホシノを愉快そうに見つめている。その見定める様な視線に吐き気を覚えながら、ホシノは吐き捨てるようにして口を開いた。
「それで、黒服の人……今度は何の用なのさ」
「ふふ、まぁそう焦らずに――珈琲でも如何ですか?」
「……此処で頷くと思う? もしかして、ふざけているの?」
「いいえ、滅相もない」
肩を竦めながら、手元にあった珈琲カップの縁を指先でなぞる。彼はどこか飄々としていながら、余裕があった。張りつめた空気を纏うホシノとは真逆の、温い風を纏っている。どこまでも不気味で、悍ましい人物――それがホシノにとっての、目の前の存在だ。
「色々と状況が変わりましてね、再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案を……と思いまして」
「提案? それはもう――」
「まぁまぁ、話はどうぞ最後まで」
否定を口にしようとするホシノを窘め、黒服はゆっくりとした口調で語って聞かせた。
「状況が変わったというのは文字通り、私達の前提条件が崩された――と云いますか、思いがけずに素晴らしい
「………?」
「ホシノさん、あなたが身に秘める神秘はこのキヴォトスでも類を見ない程力強い、しかし……あなたと同等、いえ、場合によってはそれ以上の神秘を秘める方が協力を申し出てくれたのですよ」
「……なら、もう用済みでしょう、呼び出す必要なんてなかった」
「いえいえ、違うのですよ、そうではありません」
僅かに身を傾けた黒服が、緩く首を振って見せる。その動作が一々癪に障り、ホシノは舌打ちを零した。それすらも、目の前の存在は微笑ましそうに受け入れる。
「その方は確かに、あなたを凌駕する神秘を内包しておりますが聊か――気難しく、私達に協力する上で一つ条件を設けました」
「それが、私になんの関係があるの」
「連邦捜査部シャーレ」
「ッ――!」
思わず、ホシノは目の前にあるデスクに手を叩きつけた。黒服の傍にあったカップが跳ね、床の上に転がる。しかし黒服は微動だにせず、その不気味な顔面は揺らがない。
「その先生を、【彼女】は御所望なのですよ」
「……お前っ!」
「――とは云え、ホシノさん、あなた自身に興味がなくなった訳ではないのです、比較対象は多ければ多いほど良い、その手段もね……故に、そうですね、お気に入りの映画のセリフがありまして、今回はそれを引用してみましょう」
「……お前達みたいな連中でも、映画は見るんだねッ!」
「勿論、私達とて生きておりますから」
睨みつける様に対峙するホシノから身を離し、背凭れへと身を預ける。そのまま優雅に足を組んだ彼は、静かな口調で告げた。
その顔面は――喜悦に歪んでいる。
「――あなたに、決して拒めないであろう提案をひとつ、興味深い提案だと思いますので、どうかご清聴下さい」
「この――下衆が」
■
「いっただきまーす!」
「ひ、ひとりにつき一杯……こんな贅沢しても良いのですか?」
「アビドスさんとこのお友達だろう? 替え玉が欲しけりゃ云いな、サービスって奴さ」
「べ、別に友達って訳じゃ……もごもご」
ラーメン屋柴関、その入り口付近の六人席に座った便利屋68の面々。彼女達は久方ぶりに一人一杯のラーメンに喜びながら、少し遅めの朝食に舌鼓を打っていた。カヨコは自分達以外に誰もいない店内を見渡しながら、ラーメンを啜る。
「んぐ、こんなに美味しいのにお客さんが居ないなんて、何か変な感じ」
「場所が悪いんじゃない? 廃校寸前の学校の近くだし、自治区もボロボロじゃん、バスも電車もないんじゃ、通うのも大変だろうし」
「……まぁ、ひと少ない方が私らは嬉しいし、美味しいから良いけれど――」
不意にドアのベルが鳴った。便利屋が入り口に目を向ければ、其処には見知った人影が一つ。ラーメン屋には似合わない純白の制服を着込んだ先生が、大将に向けて手を挙げていた。
「大将、やっているかな?」
「おや、先生、見ての通りだよ、好きな席にどうぞ」
「あっ、先生じゃーん♡」
「……シャーレの」
ムツキが最初に声を上げ、それからカヨコが静かに目を細める。先生も便利屋の皆に気付き、薄らと笑みを浮かべながら彼女達のテーブルへと歩み寄った。
「便利屋の皆か、やっぱり此処に居たんだね」
「ん、やっぱり?」
「君達、外食が主だろう? この辺で安くて美味しい店と云うと、此処が一番だから」
「……まぁ、それもそっか」
商店の少ないアビドスだと、そもそもの選択肢が限られてくる。コンビニなどで買うのも選択肢であったが、そのコンビニすら少ないのだから仕方ない。ムツキは一度箸を置くと、立ち上がって先生の腕を引いた。
「ほら先生、私達と一緒に食べよ~! ねっ、アルちゃん? 良いよね!」
「え、えぇ? いや、まぁ、別に良いけれど……」
「先生は良いの?」
「寧ろお邪魔してしまわないか心配だよ」
「じゃ、邪魔だなんて、そんな……」
先生の言葉にハルカが首を横に振る。何だかんだ云って、便利屋とシャーレの関係は良好である。ムツキが先生の背中に回り込んで彼の背中を押す。
「じゃあハイ! 先生は私の隣ねっ! あ、もしかしてアルちゃんの方が良い?」
「ん~、強いて言うならムツキとカヨコに挟まれたいかなぁ」
「――は?」
「くふふっ、先生ってば素直~♡ 仕方ないなぁ、はい、せんせっ!」
先生のトンデモ発言にカヨコが間の抜けた表情を晒し、ムツキは面白そうに笑い声を漏らした。そのまま自分とカヨコの座っていた椅子、その中央に先生の体を押し込む。近距離で顔を見合わせたカヨコと先生が、お互いに視線を交差させた。
「やぁ、お邪魔するよ、カヨコ」
「……何か、先生前とイメージ違くない?」
「うん? 私はずっと変わらないよ、私は私さ」
そう云って肩を竦める先生は、確かに外見は以前と変わりない。しかし内面が、もっとこう、油断ならない策士というか、何というか。そんなカヨコのイメージに反し、今目の前に居る先生は飄々としていて軽薄、どうにも以前の先生と重ならない。
しかし、所詮数度顔を合わせた程度の関係。自分が良く知らないだけかと思いなおし、そっと前髪を払って呟いた。
「私みたいな女の隣に座りたいなんて、変な趣味しているね、先生」
「可愛い子の隣に座りたくない男は居ないよ」
「かわっ――は、はぁ?」
唐突な殺し言葉に、カヨコの白い肌がカッと赤く染まった。
「ばっ……私不愛想だし、良く怖いって云われるんだけれど? 誰かと間違っていない?」
「いいや、カヨコは可愛いさ、ぶっちぎりで可愛い、可愛さ大会優勝、その顔で微笑まれたら誰だってコロっといく、ずっと微笑んでいてカヨコ、素敵だよ」
「ッ……!」
ばん、と箸を掴んだままテーブルを叩いたカヨコが勢い良く立ち上がり、対面に座るハルカの元へとズンズン歩く。
「ハルカ、席代わって!」
「えっ、あ、は、はい……!」
真っ赤な顔のまま叫んだカヨコに、ハルカは何度も頷いてそっと席を立った。そのままぶすっとした表情のまま席に座るカヨコ、そんな彼女を見た先生は変わらず笑みを零す。
「対面だとカヨコの顔が良く見えて、これも悪くないね」
「―――………」
「うっわ、先生無敵じゃん」
「ムツキも可愛いよ?」
「え~、何かついでみたいでヤダ~」
そう云いながら楽しそうに先生の肩をぺしぺしと叩くムツキ。尚、机の下ではカヨコから脛を凄まじい勢いで蹴られている。地味に痛いのでやめて欲しい。赤面涙目で睨まれるのは悪くないので、続けて、どうぞ。
「す、すみません、こんな私が隣で、ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「――うん?」
ふと、カヨコの代わりに席に座ったハルカが何度も頭を下げながら、先生と距離を詰めない様に椅子のギリギリまで寄って身を縮こまらせているのに気付いた。先生はそんなハルカを見て、徐に両頬を手で挟み、身を寄せる。
「ふぎゅ!? せ、せんしぇ?」
「そんな事を云うのはこの口か~?」
「うぎ、せ、せんしぇ、ほ、ほおが、ほおがのびまふ!」
「うりうりうり~!」
「せ、先生!? ちょちょ、ちょっと!?」
ハルカの両頬を捏ねたり、伸ばしたり、やりたい放題をする先生に対しアルが思わず声を上げる。隣でムツキはケラケラと笑い、カヨコは変わらず顔を赤くしながら先生の足を蹴っていた。
「――先生さん、生徒さんと遊ぶのも良いが、そろそろ注文してくれねぇと、手持ち無沙汰になっちまう」
「っと、あぁ、すみません大将、では味噌にチャーシュー、餃子セットでひとつお願いします」
「あいよぉ」
カウンターで頬杖を突きながら先生と生徒のやり取りを見ていた大将は、どこか呆れたような様子で注文を促す。先生の注文はいつも通りの品、何度か此処には通っているので慣れたものだ。鼻歌を歌いながら調理を開始する大将を眺めながら、先生はそっとハルカの頬から手を離す。
「ふぅ、満足した、ハルカの頬はもちもちだね、大好きだよ」
「ふぇッ!? きょきょ、恐縮です……! だ、大好きですか? だ、だいすき……ほ、頬だけでも……えへっ」
ハルカは俯きながら先生に捏ねられた頬を押さえ、口をVの字にして照れている。先生はそんなハルカを猫可愛がりしながら、そっと呟いた。
「うん、だから店に設置してある爆薬は全部リセットしておいてね」
「えッ……あ、は、はい、ごご、ごめんなさい!」
「解除してくれるなら良いさ、私は怒らないよ」
「えっ、ハルカ、もしかしてこの店にまで……」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、な、何かあったら吹き飛ばそうと思って、わ、私なんの役にも立てないので、万が一の事だけは考えておこうと――」
先程の喜色満面から一転、顔を青くしてネガティブモードに入ったハルカに先生がそっと寄り添う。優しく彼女の頭を撫でつけ、幼子に言い聞かせる様な口調でそっと告げた。
「大丈夫、実際に事は起こっていないんだ、気にしないでハルカ、それと役に立たないなんて云っちゃ駄目だ、ハルカを必要としてくれている人はちゃんと居るから」
「ぅ……は、はい……ごめん、なさい」
「……先生、もしかして此処には私達をナンパしに来たのかしら?」
アルが若干不審そうな顔でそう口にすれば、先生は目を何度か瞬かせた後、へらっと笑って首を振った。
「うん? いいや違うよ、私もご飯を食べに来たのさ、今のは生徒達との細やかな交流」
「細やか……ねぇ」
「生徒と教師の距離感としては、少し近すぎると思うのだけれど?」
「私は今世、性癖に正直に生きると決めたんだ」
「えぇ……」
「なにそれウケる」
「で、でも正直な事は良い事だと、お、思います……」
ハルカのフォローに先生は再び彼女の頬を捏ね繰り回し、「あぶばばぶぶ」と声にならない悲鳴を上げるハルカに、懐から飴玉を取り出して握らせた。
「ハルカは良い子だね、ご褒美に飴ちゃんをあげよう、二個あげよう」
「あ、ありがとうございます……?」
「いやまぁ別に、先生の交流の仕方に文句を云うつもりはないけれど……一応この子たちは私の社員なんだから、引き抜きとかは勘弁してよ?」
「大丈夫、アルと皆の仲を引き裂いたりはしないよ、絶対にね」
「……そっ、なら良いわ!」
先生の答えに満足したのか、アルはそれ以上先生の態度に言及する事はなかった。
「あ、もし引き抜くなら、便利屋丸ごと引き取るから宜しく」
「……それって、依頼じゃダメなの?」
「便利屋とシャーレ、外向きの評価はどちらが良いと思う? シャーレ所属なら毎月ちゃんとお給料が出るし、福利厚生も充実、シャーレ本棟には宿舎もあるし、シャワー室も完備しているから出勤ゼロ秒、棟内にはコンビニ、食堂、体育館、ゲームセンターに図書館、庭園やトレーニングルームまであるよ? 多分シャーレ所属ってだけで、融資も楽勝、あ、宿舎の利用料金はシャーレが負担するから無料だよ」
「うぐッ……!」
先生の言葉に思わず息を呑むアル。いざこうして聞かされると好待遇――いや、それどころの話ではない。公園生活すら体験した便利屋にとって、三食付きに安定した給与、更には宿舎完備で必要なものが全部揃っている環境は天国にすら思えた。以前のアルであれば、もしくはその待遇の良さに折れて頷いていたかもしれない。
しかし――しかしである。
今の便利屋には覆面水着団から贈られた資金があった。アルは胸を張り、鼻を鳴らしながら先生の提案を一蹴する。
「で、でも私達は誰の指示も受けない、孤高のアウトローを目指しているのっ! 首輪を付けられるなんてごめんだわッ! 提案は凄く……凄く魅力的だけれど、それはそれ、これはこれよ!」
「……まぁ、数日前だったら頷いていたかもね」
カヨコがラーメンを啜りながら呟いたが、それがアルの耳に届く事はなかった。
「それは残念、まぁシャーレとして依頼を出す事はあると思うから、その時は宜しくね」
「えぇ、勿論! その時は任せて頂戴!」
「くふふっ、アルちゃんやる気満々じゃん」
「――へい先生、お待ちどう、注文の品だよ」
気付けば、大将がテーブルの傍に立っていた。先生の前に注文の品が配膳され、何とも食欲を煽る出来立てのラーメンの匂いが鼻腔を擽る。
「あぁ、ありがとうございます、大将」
「ごゆっくり」
大将が軽く手を挙げて調理場に戻り、先生は箸を手に取って、手を合わせる。
「さて、それじゃあ私も頂こうかな」
「あっ、先生チャーシューあるじゃん、もーらいっ!」
「あ、ちょ、こらムツキ! 先生に失礼でしょう!?」
「良いよ良いよ、何なら、アルも食べる?」
「えっ、別に私は――」
「先生、私には餃子ひとつ頂戴」
「か、カヨコ!?」
普段こういうノリには不参加のカヨコが、先生の注文した餃子を一つ摘まんで持っていく。そんな彼女の姿にアルは唖然としながら、彼女は餃子と自身のラーメンに視線を通わせていた。
「良いよ、何ならもう一皿頼もうか? 他に何か食べたいものがあったら注文してね、此処は私が持つから」
「えーっ、先生良いの~?」
「そ、そんな、わ、悪いですよ……」
「気にしない気にしない」
そう云って隣のムツキとハルカの頭を撫でる先生。ムツキは気持ちよさそうに、ハルカは恐縮した様子で俯いている。そんな彼女達の顔を先生は慈しむ表情で見下ろし、告げた。
「私は生徒にご飯を奢るのが好きなのさ」
これまでも、これからも。
多分、こればかりは治らない。
「さて、それじゃあ私もお腹が空いたし、頂き――」
そして、次の瞬間――便利屋68のテーブルは粉々に吹き飛んだ。
上空より飛来した、迫撃砲によって。
■
「着弾確認、効力射!」
「よし、歩兵第二小隊まで突入、包囲開始」
同じ風紀委員の言葉に頷き、イオリはライフルを肩に担いだまま指示を出す。前方には迫撃砲を撃ち込まれ、店の前側が崩れ去った――ラーメン屋柴関の姿があった。
迫撃砲はピンポイントに便利屋の居る席を撃ち抜き、その精度もあって倒壊には至っていない。引き連れた中隊規模の委員、凡そ二百人が列を成して行動を開始し、イオリはその後ろ姿を眺める。
「……イオリ、流石にやり過ぎでは?」
「ん?」
そんな彼女の背後から、チナツがどこか不安げな表情で問いかけた。同じ風紀委員に所属する彼女は、以前救急医学部に在籍していた経緯もあり、衛生兵としての役割も兼任している。後方から店を取り囲む委員たちを見つめ、チナツは苦言を呈す。
「他所の自治区で、営業中の店に迫撃砲を叩き込むなど、幾ら何でも――」
「だって此処の自治区……なんだっけ、アビドス?」
気怠そうに眼を細めながら、イオリは周囲を見渡した。そこには活気のない街並み、人の消えた建物が並んでいる。廃墟――とまではいかないものの、ゴーストタウン化が進んでいるのは確かであった。これだけ騒いで、周囲に悲鳴を上げる住人一人いないのだから。
「もう廃校寸前って話だし、そもそも自治区として成り立っているかも怪しい、こんな廃墟だらけの街で今更建物が一つ崩れたから何だっていうんだ、それに建物一つで便利屋を纏めて葬れるなら安いものだろうに、この程度じゃパンデモニウムの連中は何も云わない、寧ろ便利屋を取り締まった功績でプラスだ」
「いえ、ですが、民間人の反応もありましたよ? もっと別のやり方でも……」
「どうせこの店の店主のだろう? 大丈夫、着弾地点はちゃんと調整したし、便利屋の連中は店の手前の席だった、ドンピシャで落ちたし店も半壊程度――まぁそれでも怒り狂って出て来た時は、邪魔な連中は悉く殲滅する、公務の執行を妨害する奴は全員敵だ」
そう云ってライフルを担ぎ直すイオリ。彼女の態度に、今何を云っても聞き入られる事は無いのだと悟ったチナツは溜息を零す。目の前の友人は、普段は常識人の筈なのだが命令に対する苛烈さというか、実直さというか――達成する為ならば多少手段を問わない性質がある。ヒナ委員長が居れば止めただろうなと考えつつ、チナツは手元のタブレットに目を落とした。
「はぁ……云っても聞きそうにありませんね、兎に角――ん?」
タブレットから電子音、チナツが通知に目を通せばドローンによる動体反応の報せであった。イオリも通知音に気付き、チナツのタブレットを覗き込む。
「情報部からです、ドローンに動体反応アリとの事、これは……」
「便利屋の連中、まだ動けるのか、なら包囲した小隊で射撃を――」
「――待って下さいッ!」
イオリが射撃指示を下すより早く、焦燥を含んだチナツの声に振り上げた腕が硬直した。見れば、チナツはどこか鬼気迫る様子でタブレットを凝視している。
「この反応、民間人? 生徒ではありません、便利屋と同じ席に、民間人の反応が――」
「はぁ?」
チナツの言葉に、イオリは思わず面食らう。同じ席に民間人――つまり、反応が重なっていたという事か? 迫撃砲はピンポイントに便利屋を狙っていた、相席していたとなると直撃は免れない。
「まさか相席していたのか? 運のない奴だ、あの砲撃に巻き込まれたら数時間は動けなくなるぞ」
「いえ、違います、そんなんじゃないんですよ……! この反応、嘘でしょう……!? 事前観測じゃ反応なんて――もしかして持っているあのタブレット? それともミレニアムが? 個人に限定したジャミング……でもこんな、あり得ない……!」
チナツの顔色は酷い、焦燥感が益々強くなっているのか顔色は青を通り越して白になっている。タブレットに釘付けになっている視線は僅かに血走り、イオリはそんな彼女の様子に思わずたじろいだ。
「お、おい、チナツ? 一体――」
「や、やっぱり、この生体反応、嘘だ……!」
タブレットを両手で掴みながら、チナツは砂塵に覆われた柴関を見て、叫んだ。
「――便利屋と同席していたのは、シャーレの先生ですッ!」
爆破を阻止して便利屋と楽しくイチャコラご飯タイム出来ると思った先生? そんなん絶対に許さんぞ、何が何でも爆殺してやる。手足が千切れ飛んだ状態で這いずって便利屋の前で劇的に死んでくれ。
嘘だよ先生、生きて♡ 絶対に死んじゃ駄目だ、あなたは生徒にとって欠けちゃいけないピースなんだ。だからこんな所でくたばってはいけない。意地汚く生き抜いて、エデン条約の後に信頼・愛情MAXの生徒達の前で死んでくれ!
うぅ、天使と悪魔が喧嘩する……二人共仲良くして……。
ぶっちゃけ最後まで悩んだんだよ先生、私だって先生を傷つけたい訳じゃないんだ。ただ、何か最近ずっと平和な本編続いていたし、ホシノとノノミの膝枕で楽しそうだったから、代わりに先生の四肢の一本くらい捥いだって……バレへんか! って気持ちになっちゃって。折角先生に怪我させられそうなストーリーラインだし、ここらで一丁良いところ見せてやるかって気持ちで頑張ってね先生。
ところで皆さん、美食研究会のアカリって生徒……ご存知ですよね?
爆発属性でコスト4、範囲EX持ち、ノーマルスキルでは最大火力73%アップに、サブスキルで更に65%も火力アップする、君もしかして前世ゴジラとかだった? という感じの爆発力を持つ☆2キャラクターで御座います。
私も序盤、大変お世話になりました。まぁ性能はぶっちゃけどうでも良いのですが、皆さん彼女の台詞とかちゃんと聞いたことありますか? 例えば絆アップの時の台詞。
「あっははははッ! 先生と一緒に居る時のこの緊張感、嫌いじゃないです!」
「どうしようかな~、先生と一緒に居ると、すこぅし危険な気持ちになりますね~……」
この、何というか、アブノーマルな感じッ! 彼女自身が健啖家で、食べ放題を出禁になる位の大食いだと考えると色々妄想がはかどりますねぇ! 先生食べちゃっても私は一向に構わん! カニバッ的な意味でも、ハナコッ的な意味でも!
更に彼女、潔癖症なんですよ! 大食いで、潔癖症! 良く見ると確かに彼女、普段は手袋しているんですよね。更に下着も新品のものを持ち歩くと云う徹底ぶり――それでも食事の時は手袋を外しているところを見ると、食に対する真摯な姿勢やこだわりが見え隠れしていますよね。後ですね、彼女のカフェに居る時の台詞に。
「うーん、どう考えても……先生の周りには女の子が多すぎます」
独占欲かな? 独占欲だよね? 私はそう解釈するぞアカリィ! 先生を食い倒れツアーに誘って一日独占してくれぇ! 潔癖症なのに先生に対してはそういう気持ちがわかなくて、照れながら「あーん」した箸を自分で使って、「間接キスですね、せんせ?」って流し目して欲しい! 可愛いぞアカリィ!
後ね、私の一押しがアカリの敗北台詞何ですよ。これは実際に聞いて見ると、何かすっごいドスが利いていて好きなんです。
「次回は、ほんの少しだけ、グロテスクにやりましょう」
「ふぅ……ちょっと、頭にきますね――」
腹の底から憎々しい感じの台詞素晴らしい。これ絶対あれだよ! 先生が負傷した時とかに云うセリフだよ! 前者は負傷した先生を抱えながら、撤退する間際に敵に対して吐き捨てる台詞で、後者は先生に対して罵倒か何かされた時の反応だよ! きっとそうだそうに違いない。
この「姉御!」って呼びたくなる様な、普段の丁寧な態度とのギャップ――これは先生を殺す為に生まれた女やでぇ……。多分アカリと先生が結ばれたら、ずぶずぶの甘々になるんやろうなぁ! なんかセリフからして、既に先生に対して『カニバ』か『ハナコ』を我慢している描写がありますし、一回箍が外れたらそのまま行く所まで行く感じある。先生のお手製の料理を毎日食べて行く内に、段々と外食なんかが味気なく感じて、一日三食先生の手作り料理を食べないと満足できない体になって欲しい。先生も忙しいし、普通の人と同じ食事量しか作れていないから、「それじゃ足りなくないかな?」ってアカリに聞くんだけれど、「代わりに愛情が一杯入っていますから」って云ってアカリは大事に食事を口に運ぶんだ。うーん、これは純愛。
ホシノの時もそうだけれどさ、ホシノって魚好きじゃん? その魚に先生を食べさせるじゃん? その様子をホシノに見せてあげるじゃん? 先生を食べた魚を刺身にしてホシノに「一杯おたべ♡」したら、これってアカンのか?
でもアカリって何好きなんだろう……結構何でも食べるっぽいし、熊にでも先生食べさせて熊鍋すれば良いのか? でもそれってなんか違くない? 先生が自分から進んで熊とか魚に食べられに行って、「たんとおたべ♡」するなら良いのだけれど、そうじゃないのなら先生食べさせられる生徒可哀そう……。
アカリが先生を物理的に食べるとすれば、ハナコッ! する時に噛み癖か何かついちゃって、隙があれば先生の頸筋とか指先とか、腕周りに噛み付く様になって、最初の内は甘噛みの域を出なかったのに、不意に強く嚙み過ぎて出血して、その血の味が思った以上に美味しくて――みたいなのがとても好き。先生の体が歯型だらけになって、それをユウカ辺りに見られたら修羅バトルになりそう。なって♡ ちがうんだ私は生徒達が傷つく姿が見たいんじゃない、ただ先生を取り合って独占欲剥き出しで争う様が見たいんだ。人間の屑かよ先生ちゃんと反省しな?
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