今回14,000字ですわ。
戦闘時間は、ほんの五分に満たない程であった。立ち上る硝煙、地面に散らばる空薬莢、刻まれた弾痕。ほんの数分前にあった筈の体育館は様変わりし、今は火薬の匂いが鼻を突く。
最後に立っていたアリウス――その生徒が倒れ伏す。
鉄板を貼り付けたボール入れに身を隠していたヒフミは、愛銃を抱えながらそっと顔を覗かせ、呟いた。
「か、勝った……?」
「――うん、全員戦闘不能」
最後の一発を撃ち込んだアズサは、油断なく倒れ伏した生徒に銃口を向けながら頷いて見せた。体育館入り口付近に倒れ伏す、二十名のアリウス生徒。反し、補習授業部の損害はゼロ。その結果に、皆は喜色を滲ませる。
「わ、私達、生き残ったの……?」
「えぇ、私達の勝利です♡」
「あうぅ……先生の指揮があって、本当に助かりました」
銃口を降ろし、安堵の息を吐き出すヒフミは、そう呟く。コハルもずり落ちそうになっていた帽子を慌てて被り直し、挙動不審気味に倒れ伏したアリウスの生徒を眺めていた。安堵よりも、未だ不安が勝っている様子。
ハナコは荒れた体育館の様子をつぶさに観察しながら、真剣な面持ちで告げた。
「では次のフェイズです、正義実現委員会が到着するまで、それまで時間を稼げば――」
「あ、ハスミ先輩には連絡しておいた! 直ぐ返事が来る筈!」
「はい、ありがとうございます――ティーパーティーの命令下にある正義実現委員会が動けるとしたら、それはティーパーティーの身辺に問題が生じた時だけ……今頃ハスミさん達は、ナギサさんに何かがあったと気付いた筈です」
そう云って、ハナコは体育館の天窓から空を見上げる。コハルからの緊急救助要請、そしてこれだけの騒ぎだ、正義実現委員会が気付かない筈がない。予めナギサを襲撃し、アリウスから身を隠すと同時、正義実現委員会に異常事態を悟らせる。
これが、今回ハナコの思い描いた計画である。
「ナギサさんの失踪、及びコハルちゃんからの連絡――少なくとも、状況確認には動き出す筈ですから、そう時間は掛からずに……」
故に、後は此処で籠城し持久戦に持ち込めば良い。正義実現委員会が動き出すまで、或いはトリニティ全体が異常を察するまで。
ハナコがそう告げ、皆を見渡した瞬間――体育館横合いの壁が、唐突に吹き飛んだ。
「っ!?」
「先生ッ――!」
爆炎と粉塵が皆の頬を擦り抜け、傍に立っていたヒフミが咄嗟に先生を庇い蹲る。コハルやアズサも爆発によって体育館の床に転がり、唐突なソレに浮足立っていた。
爆発によって体育館の壁に大穴が空き、砂塵と噴煙が漂う。そして、それらを切り裂くようにして、アリウス生徒達が体育館内部へと雪崩れ込んで来た。
「っ、これは、増援部隊……!?」
「え、えっ!? あ、アズサ、壁、壁を抜かれたよッ!?」
「馬鹿な、工作部隊まで出ているのか……? 元々の作戦は――」
アズサがそう呟きを漏らすより早く、アリウス生徒は補習授業の前に立ちはだかる。先程の二十人など目ではない、何人も、何人も、何人も……それこそ、数え切れない程の生徒が体育館に侵入していた。それを前にして、補習授業部の表情は強張る。
「っ、これは、数が多い、大隊規模だ、多分、アリウスの半数近くが……!」
「こ、こんなに沢山の方が、平然とトリニティの敷地内に……!?」
「ありえません、これだけの爆発、銃声が響いているのに、正義実現委員会は一体何をして――」
「――いや」
タブレットを抱えたまま、先生は呟く。
視線はアリウスの生徒達を捉えている様に見えた。
けれど、その意識はその奥――夜に潜む彼女を観ている。
「最初から、正義実現委員会は動かない……いや、動けない」
「……先生?」
先生のその言葉に、ハナコは目を見開く。その問いかけに応える事なく、彼は背筋を正し――奥に向かって声を響かせた。
「――そういう筋書きだよね、ミカ?」
朦々と立ち上る砂塵。
それを掻き分け、現れる人影が一つ。
彼女は白い制服を靡かせ、いつも通り、どこか浮ついた空気を纏いながら口を開いた。
「――あ~あ、やっぱり……気付いていたんだね、先生?」
告げ、補習授業部の前に姿を現した生徒。
彼女の名前は――聖園ミカ。
ティーパーティー、パテル分派首長。
破壊された壁から差し込む月明かりに照らされた彼女は、神秘的で、優雅で、正に絵画の如く。けれど、その纏う雰囲気だけは場にそぐわぬ代物だった。
「やっ、久しぶり先生! また逢えて嬉しいなぁ……って云っても、二週間位? あはは、久し振りって程でもないかな? でも、ずっと逢いたいな~って思っていたからさ!」
「……ミカ」
朗らかに笑いながら、そう宣う彼女。先生の視線が、ゆらゆらと揺れる彼女の指に向けられる。
――その左手に、銀の指輪はなかった。
「えっとね~、先生の云う通り、正義実現委員会は動かないよ、私が改めて待機命令を出しておいたから、今日は学園が静かだったでしょう? 正義実現委員会以外にも、邪魔になりそうなものは事前に全部片づけておいたんだぁ」
「ミカさん……!」
ハナコの表情が、ぐっと歪む。
彼女の考えていた黒幕の可能性が高い人物、それが彼女だった。
ナギサのセーフハウスをアリウスが把握していた事、そしてティーパーティーとその選別護衛のみが開錠可能な扉を開けられるマスターキーの入手先。白洲アズサを受け入れた、彼女の動機。疑うべき点は多々あった。
そしてその予想が現実となった今、そこに、的中した喜びはない。
「ティーパーティーの届く限り全てのところに、色んな理由をつけて……ね? だから幾ら待っても無駄だよ? 正義実現委員会が此処に辿り着く事はないし、他の生徒が気付く事はない、此処には正真正銘――
「そ、そんな……!」
「て、ティーパーティーの……!?」
「ふふっ、そう、黒幕登場☆ってところかな?」
両手を広げ、月光を浴びながらミカは嘲笑う。
「私が本当の、トリニティの裏切者だよ」
■
「――という訳で、ナギちゃんを何処に隠したか教えてくれるかな? 私も、時間が無くってさ~」
周囲をアリウスに囲まれた状態で、補習授業部は固唾を呑んだ。
何処までも飄々と、いつも通りに振る舞うミカ。その表情は余裕に満ち溢れている。それもその筈だろう、彼女の背中に立ち並ぶアリウスの生徒は正に百人か、二百人か、それ以上の数で、補習授業部はたったの四人。更に補習授業部側は正義実現委員会による増援が望めず、圧倒的戦力差が目の前には横たわっているのだから。
補習授業部の前まで足を進めた彼女は、退屈そうに踵を鳴らして言葉を紡ぐ。
「まぁ、此処に居る全員消し飛ばしてからゆっくり探しても良いんだけれど、それは面倒でしょ? 無駄は省くに限るよねぇ、だからさっさと吐いてくれると嬉しいなぁって――」
「……ミカ」
ミカの言葉を遮り、補習授業部を背中に、先生が一歩前に出る。背後のアリウスがぴくりと反応し、その銃を構えかけたが、ミカが一瞥すると素早く銃口を逸らした。そのままミカは先生に視線を向け、笑顔を貼り付ける。
「なぁに、先生?」
「どうして、こんな事を?」
「ん~? 聞きたい? まぁ、先生に聞かれちゃったら仕方ないなぁ」
絶えず笑顔を振りまき、ミカは頷いた。どこか楽しそうに――或いは、そうする事しか出来ないと云いたげに。
「理由はね、そんな難しい事じゃないんだよ? とっても簡単でシンプルなんだ、私はね、ゲヘナが――大っ嫌いだからよ!」
「げ、ゲヘナ……?」
体育館中に響き渡る声で、ミカはそう叫ぶ。ヒフミが目を瞬き、思わず呟いた。
「うん、そう、私は本当に、心から、心の底からゲヘナが嫌いなの」
「……だから、エデン条約を阻止しようと? そのために、ナギサさんを――」
「ん? あー……えっと、誰だっけ? ごめんね、私あんまり顔を覚えるのは得意じゃなくってさぁ」
ハナコがそう口を挟めば、ミカは頭上に疑問符を浮かべながら首を傾げる。その瞳には、どこか見下した、嘲りの感情が透けて見えた。
「ん……あぁ、思い出した、浦和ハナコじゃん! 礼拝堂の授業に水着で参加して追い出された、あの……あははっ、懐かしいねぇ?」
「………」
「先生以外の質問に答えるのは癪だけれど、まぁその通りだよ、だってナギちゃんがエデン条約だなんて変な事しようとするからさぁ……ゲヘナと同盟? 和平? あんな角が生えた奴らと平和条約だなんて、冗談にもほどがあると思わない? ――考えるだけでゾッとしちゃうよ」
そう云って肩を竦めるミカは、口元を吊り上げたまま自身の思想を語り聞かせる。
「――絶対裏切られるに決まっているじゃんね? 背中を見せたら、直ぐに刺されるよ、きっと……まぁ、そんな事、私がさせないけれど」
ゲヘナの生徒は、狡猾で、悪者で、信頼など出来ないから。
薄らと口元を歪め、目を細めるミカはそう宣う。
相手を見下した目だ。
嘲る瞳だ。
心底そうである筈と――確信している瞳だった。
けれど何故だろう、ハナコはその瞳に僅かな欺瞞を感じ取った。
まるで、そう在るべきだと、そうであって欲しいと、自分に云い聞かせている様な。
「ナギちゃんもほんと、優しいって云うか、甘すぎるっていうか、創作の中の明るい学園物語じゃないんだしさぁ~、そんな都合の良い話、現実には存在しないって……私たちはこういう、もっとドロドロした世界の住人だって事、そろそろ分かってくれても良い頃なのにね? そう思わない?」
絵本の中にある、夢の国の様に。
或いは最後にハッピーエンドが約束されている、優しい物語の様に。
そう在れたら良かった、そんな世界ならば良かった。
けれどそれは所詮、夢で、理想で、想像に過ぎない。
自分達が生きている世界は、違う。
裏切り、裏切られ、騙し、騙され、そういうもっと悪意に満ちた、どうしようもない、理不尽で、不条理で、闇深い場所で生きている。
だから、裏切られる前に裏切る。
だから、騙される前に騙す。
自分達が傷付けられる前に。
大切なものを、喪う前に。
――喪った者に、殉じる為に。
「――で、そういう訳だから! ナギちゃんの事、返してくれる? 大丈夫、痛い事はしないよ、まぁ、残りの学園生活は全部檻の中かもしれないけれど!」
「……ミカ、君は」
先生は彼女の名を呼ぶ。変わらず笑い続けるミカの視線が、先生を射貫く。
「私を、騙したのかい?」
「……うん、あの時はごめんね先生、あそこで語った内容は殆どが嘘、エデン条約は本当に平和条約だよ、そもそも素直で優しくておバカなナギちゃんに、エデン条約を武力同盟として活用するなんて事、出来っこないからね――でも、あの時話した事、全部が全部、嘘って訳じゃないんだよ?」
そう云って手を広げた彼女は、背後のアリウスを見せつける様にして回る。一歩一歩、足音を体育館に響かせながら彼女は続けた。
「――私がアリウスと和解したかったっていうのは、本当の事」
「……和解?」
「うん、だってさ、彼女達は同じゲヘナを憎む仲間だもん、アリウスだって元々トリニティの一員だったんだから、先生には前も云ったと思うけれど、この子達のゲヘナに対する憎しみは凄いよ? 私達に勝るとも劣らない……寧ろ、この子達こそ純度の高い憎しみを持っていると云えるかもしれない」
「だから、手を差し伸べた」
「そう! 志を共にして、ゲヘナと平和条約を結ぼうとする悪党たちをやっつけない? って具合にね!」
「………」
「ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサに正義実現委員会がいるなら、次期ティーパーティーのホスト、聖園ミカにはアリウスが付く――これは、そういう取引なんだよ、先生」
彼女が言葉を紡げば紡ぐほど、己の思想を語れば語る程、先生の雰囲気が、気配が、どんどん昏く、淀んでいく。
握り締めた拳が軋む。
掴んだシッテムの箱、その液晶が薄く、何度も点灯した。
見かねたアズサが一歩踏み出し、ミカに問い掛けた。
「待ってくれ、ならアリウスは、最初からクーデターの道具だったのか……!?」
「うん? んー……確かにそうかな? これはクーデターなのかも、最終的にナギちゃんを失脚させて、私がティーパーティーのホストになるんだから」
アズサの問い掛けに、ミカは少し考えて、頷く。元の予定とは随分違ってしまったが、結果だけを見ればそうなるのかもしれない。ナギサは失脚し、自身がティーパーティーのホストに就任する。そしてアリウスを併合し、エデン条約を破棄するのだから――これはクーデターと云っても差し支えない。
「あぁ、あなたの事は分かるよ……ありがとう、白洲アズサ、私はあなたの事を良く知らないけれど、私にとって大事な存在であることは変わらない、今までも、これからも」
「……何?」
「――だってあなたには、ナギちゃんを襲った犯人になって貰わないといけないからね!」
そう云って、口の前に指先を立てるミカ。
その口元が、三日月を描く。
「スケープゴートって云った方が良いかなぁ? 罪を被る生贄としての存在がいてこそ、皆がぐっすり安心して眠れるの、世の中ってそう云うものじゃない? だからあなたには、とっても感謝しているよ」
「ッ――!」
最初から、そのつもりで――!
アズサの視線が怒りに塗れ、銃を握る手に力が籠る。今にも飛び出しそうなアズサ、その肩を掴んだのは先生だった。怒りに我を忘れそうになったアズサは、しかし先生の瞳を見上げ、そっと口を噤み、退く。
「ミカはティーパーティーのホストになる為に、この計画を立てた――それで、合っている?」
「……うん、そうだよ先生、あぁでも、先生には誤解して欲しくないかな? 別に私は権力が欲しい訳じゃないの、私はゲヘナをキヴォトスから消し去りたい――本当に、ただそれだけだから」
そう云って目を伏せたミカは、これからの事に想いを馳せる。別に、ホストにならずともゲヘナを殲滅出来るのであれば、その地位に固執するつもりなどない。ただ、単純にそのポストで在る事が便利であるだけで、事が終われば投げ捨ててしまっても何の未練もなかった。
彼女の至上命題は、ゲヘナの殲滅。ゲヘナという存在をこのキヴォトスから消し去る事。考える事は苦手だが、今だけはその思考を未来に向けて回した。
「トリニティの穏健派を追いやって、その空席をアリウスで埋める、多分ナギちゃんの所のフィリウス分派が一番反対しそうかなぁ? なら、今度からはパテル、サンクトゥス、アリウスの三大分派にしてー……そうしたら新しい連合が出来て、必要なら新しい公議会も……うん、結構良いかもね? そして新しい武力集団を得て再編された、私率いる新トリニティが、ゲヘナに全面戦争を仕掛ける――うん、そう、これが私の計画!」
アリウスとパテルを率いてトリニティを手中に収め、ゲヘナに宣戦布告する。電撃的に行われるそれは、大いにゲヘナを揺らす事になるだろう。何せ、今から平和条約を結ぼうとしていた相手が一方的に攻撃を仕掛けてくるのだから。
どちらが勝つにせよ、キヴォトスは未曾有の混乱に陥るに違いない。
そして、それが分からない程、ミカは愚かではない。
分かっていて尚、彼女はその道を選ぼうとしていた。
多くの生徒を不幸にする――その道を。
「どうかな、この計画? とっても素敵でしょう、先生!?」
「―――」
満面の笑みでそう告げるミカ。何の痛痒も、罪悪も感じていない様に振る舞う彼女。
それを見て、先生は思い切り歯を食い縛った。顔が歪み、その雰囲気が深く、昏く、重々しいものに切り替わる。
――けれどそれは、決して彼女に向けられたものではない。
彼女が捉われている鎖が見えた、それに手を掛けていたのは自分だった。手を掛けていたのに、終ぞ、引き千切る事は叶わなかった。
ただ一言、その手を伸ばしてくれたのなら。
――いや、それは怠慢なのかもしれない。
例え生徒が望まずとも、ひとり悲しみ、嘆き、項垂れる生徒の手を、無理矢理にでも取って寄り添う。それが、自身の為すべき事ではなかったのか。それが選ぶべき選択肢ではなかったのか? そんな思いが、胸に渦巻く。そう思わなかった事はない。思い続けた。最後まで先生は迷い続けた。正しきに従う事は出来ずとも、己の心に従う事は容易だった。
けれど結局、彼女が助けを求める事はなく、己がその手を取る事はなく。
それが全てだ、それが結果だ。
それを今――先生は目の前に突きつけられていた。
憎悪と怒りに塗れた瞳を見て、ミカは思わず驚愕の表情を浮かべる。
それは余りにも先生に似合わない感情と瞳だったから。
だから、どこか気まずそうに、或いは申し訳なさそうに頬を掻いて告げる。
「わっ、そんな顔も出来るんだ、先生……あはは、うん、先生が凄く怒っている事は良く分かるよ、ごめんね、説明も急いじゃったし、雑だったよね? 私に怒った? 失望、されちゃったかな? でもね先生、これは――」
「違う――」
「えっ?」
歯を食い縛ったまま、先生は俯いていた顔を上げる。
込み上げるものがある、溢れ出る感情がある。それらを必死に、飲み下そうと、腹に落とそうと足掻き――それでも尚滲み出る余熱が、先生の肌を焼く。
その表情を、
「私が怒っているのは……自分自身に対してだ」
ミカを助ける事が出来なかった自分。
寄り添う事が出来なかった自分。
届いた筈の道を取りこぼした、己自身に激怒している。
先生の握り締めた拳が軋み、その爪が肌に食い込んだ。
「ミカが此処まで追いつめられるまで何も出来なかった、何の助けにもなれなかった、苦しんでいるミカに寄り添う事が出来なかった、そんな私自身が――どうしようもなく、憎くて憎くて、仕方ないんだ」
「な、なにそれ……あ、あはは! もしかして先生、私がこんな事しているの、自分のせいだって思っているの?」
「――そうだ」
ミカの、どこか困惑交じりの声に先生はハッキリと頷いた。
だって、ミカがその重荷を背負っている事を知っていたのだ。
知った上で、自身が選んだ。
或いは、踏み込む事を躊躇った。
もしかしたら、彼女は思い直すかもしれない。
もしかしたら、思い留まるかもしれない。
もしかしたら、違う結果になるかもしれない。
淡い期待、信頼、願望と云い換えても良い。生徒が手を伸ばさない事を選択しても、それでも異なる選択を掴む可能性を捨てたくはなかった。
あの時、ミカが先生に助けを求めれば、その手を伸ばせば――先生はそれこそ、死に物狂いで彼女を守るために動いただろう。自身の全てを使って、あらゆる権利、人脈、肩書、立場を使って奔走しただろう。
或いは、ミカが自身を信頼してくれたのなら、そのまま「アリウスに組した振りを続ける」という選択肢も存在した。あの時、この世界に存在する常と異なるマダム、彼女を騙しおおせるかどうかは賭けとなるが、それでもそういう選択肢も存在したのだ。
けれどそこには、『信頼』が無ければ成り立たない。
ミカが先生という存在を信じてくれなければ、始まらない話だ。
だからこれは――自身の過ちなのだ。
生徒に信じて貰えなかった、己にこそ罪はある。
その責任は、己が背負うべきなのだ。
彼は、そう信じて疑わない。
「ち……」
ミカは、思わず口を開いた。必死に胸に生じた感情を秘め、声を上げる。
引き攣った口元は笑みを浮かべようとして、けれど失敗した。
浮かぶ感情は何だろうか? 戸惑い? 歓喜? 罪悪感? それら全てが胸の中で混ざり合って、ミカの瞳が濁り往く。星の様に輝く瞳が、昏く、渦を巻いた。
自身の責任であると、そう口にして憚らない先生を前に、ミカは言葉を詰まらせながら、必死に訴えようとした。先生に、その震える指先を伸ばす。
「ち、違うよ、先生……それは、だ、だって、先生は、私に――」
告げ、想う。
だって、助けようと、してくれたじゃない。
手を差し伸べてくれたじゃない。
あんなに真剣な顔で、必死に、懸命に。
あの日――プールサイドで先生と言葉を交わした日の事を、今でも鮮明に憶えている。
胸元を押さえつけるミカは、無意識の内に頸元で光るチェーンを握った。
あの日、先生は手を伸ばしてくれた。自身の態度に違和感があったのか、或いはもっと別の確固たる情報を掴んでいたのか。どちらにせよ、先生はミカという生徒に向けて救いの手を差し伸べていたのだ。最後まで、懸命に、その言葉通りに。それは確かだ、それだけは事実だ。
力になってくれると、寄り添ってくれると、そう態度で、その暖かさで、眼差しで――先生は証明していた。
その手を振り払ったのは――
記憶がなくとも、自覚がなくとも、ミカの足はあの場所を去り、最後まで自身の罪悪を貫き通し、その費やされた命に殉じる事を選んだ。
だからこれは、先生の責任などではない。
徹頭徹尾――ミカという、一人の愚かな生徒の責任だ。
だから、先生は悪くないよ。
悪いのは、私。
それを口にしようとして、ミカは寸で言葉を呑み込んだ。そういう人だと分かっていた、優しい人だと理解していた。最後まで自分を想ってくれた、そんな人――だからこそ、自分がこんな言葉を掛ける事さえ躊躇ってしまった。
もう戻る事なんて、出来ないのに。そんな事を口走って何になるの? その言葉は、先生を苦しめるだけじゃないか。
だから、そんな言葉を口にする意味なんてない。
――戻るにはもう、遅すぎるの。
ミカは俯き、唇を噛み締める。想い、ミカは自嘲した。それは自身に向けられたものだった。
だから彼女は笑う――嗤うのだ。
それが、自分に許された唯一の感情だから。必死に、歪に、張り付けて。ミカは、その嗤みを晒す。
その心の内で、大粒の涙を流しながら。
「ううん、あはは、なんでも……そう、何でもないよ、これ以上はちょっと、喋るのはやめよっか――だって、何だか、これ以上先生と言葉を交わしたら、私が辛くなるだけだもん」
「ミカ……!」
「……先生への説明は、後で私がゆっくり、ちゃんとしてあげるから――だから今は、他の邪魔な連中を片付けちゃおう?」
そう云って補習授業部に愛銃――
「っ、先生、下がって……!」
「ミカさん……!」
「う、ぅ……っ!」
補習授業部の皆が先生を庇う様に立ち塞がり、対峙するアズサの表情が強張る。ミカから滲み出る闘志、放たれる圧力から彼女の力量を看破したのだ。
「見ただけで分かる――彼女はかなり、強い」
「……ふふっ、そうだよ? 先生には云ってあるけれど、私、結構強いんだから」
そう云って歪に笑うミカ、銃の安全装置を弾き、片腕で愛銃を構える彼女は命令する。
「じゃあ補習授業部をやっつけちゃって、あ、先生は傷付けちゃ駄目だからね? もし傷付けたら――例え故意じゃなかったとしても、痛い思いをして貰うから」
「……了解」
周囲のアリウス生徒が返答し、その引き金に指を掛けた。
事、此処に至って戦闘は避けられない。
補習授業部は僅かに退き、叫ぶ。
「せ、先生……!」
「大丈夫――ハナコッ!」
「はいっ!」
先生の声に応じ、ハナコがポケットに入れていた携帯端末を素早く指先で操作した。途端、体育館全体に低く唸る様な駆動音が響く。
「起動確認!」
「やってくれ!」
「はいッ……!」
「? 一体、何を――」
ミカが疑問の声を上げるよりも早く、補習授業部とアリウス、その頭上から大量の噴射音が鳴り響いた。皆が頭上を見上げれば、白い煙が大量に迫りくる姿が。
唐突なそれに大半の生徒は身を強張らせ、反射的に姿勢を低くする。噴射元は体育館の天井、その鉄骨に設置された専用噴射装置。等間隔で設置されたそれは、夜の闇に紛れながら満遍なく体育館を白煙で覆い尽くす。
「くっ、これは――」
「ガスか!? 警戒をッ!」
「馬鹿が、こっちはマスクを着用しているんだぞ!?」
「――いや、違うよ、これは……」
体育館内が白に覆われ、ミカは目を細める。ほんの一メートル先も視認困難となる濃度、ミカは軽く鼻を鳴らし、その実態を把握する。刺激臭はなく、かと云って無臭の毒ガスという感じでもない。遅効性のものであれば可能性としてはあり得るが、ガスマスクを着用したアリウス相手に用いる装備としては不適切に思えた。
「……単なる目晦ましのつもり、先生?」
ミカは呟き、周囲を見渡す。
すると、白い煙の中で、薄らと人影が浮かび上がった。背は低めで、腰を曲げている様子もない。ミカはそれが補習授業部のメンバーであると確信し、指差した。それに気付いたアリウス生徒は、その人影に向かって素早く銃口を向ける。
「単なる目晦まし程度でッ……!」
告げ、射撃を敢行。飛来した弾丸は人影に着弾し――火花を散らした。
人体に当たった音とは異なる、硬質的なそれが響く。
「なっ、これは――射撃訓練用の的か……!?」
その音に、アリウスの生徒達はそれが補習授業部の生徒ではない事に気付いた。
煙の中で起立したのは、劣化したブルーシートを突き破って出現した射撃訓練用の的。見れば彼方此方で駆動音が鳴り響き、無数の訓練用的が次々と出現する。
白煙の中で、ぼんやりと輪郭が見えるソレは、実際の人間と区別が難しい。
「……へぇ、床にブルーシートを敷いていたのは、これが狙いだったんだぁ」
呟き、ミカは自身の頬を撫でる。大勢のアリウスを相手にして、それでも尚取り乱さなかったのはこれが理由か。数的不利を背負っている以上、対策は済ませていると。確かに、これでは数の利を生かす事は難しくなる。
「慌てるなッ! 一先ず集合し連携を――うぐッ!?」
散開し、同士討ちになる事は避けなければならない。そう考え、叫んだアリウス生徒が唐突に斃れた。銃声は一発、しかし何処から飛来したのかは分からない。咄嗟に身を屈め周囲を警戒するも、白煙の中では敵の姿が視認出来なかった。
「あ、当たった……!?」
「ナイスショット、コハル」
白煙に紛れ、呆然と呟くコハル。隣に立つアズサは、その背中を叩き称賛を口にした。
「此方は先生のサポートがあります、スモークが焚かれようと相手の位置は全て把握出来ますからね……!」
告げ、ハナコも果敢に射撃を加える。先生の護衛に当たるヒフミを除き、補習授業部は散開し訓練用的に紛れながら射撃を敢行していた。アリウスの生徒達は煙に視界を阻害されているが、補習授業部はそうではない。先生のサポートがある限り、どれ程視界が悪かろうとハッキリと敵の位置を把握出来ている。そして、味方の位置も強調表示される為、同士討ちの危険性はない。
アリウスの生徒達は、煙の中から無差別に放たれる弾丸に浮足立ち、反撃の目途が立たない。右から、左から、先程放たれた弾丸の位置に射撃を加えようとも、既にその場所に補習授業部の姿はなく。
代わりに、それらしく見える訓練用的が起立するのみ。
「視界を奪い、遮蔽を増やし、数に勝る相手を翻弄する――同士討ちは、どこだって怖いからね……!」
告げ、先生はタブレットを叩く。瞬間、アリウスの傍で訓練的が飛び出した。咄嗟に射撃を敢行するアリウス、しかし甲高い着弾音にそれが囮だと気付く。そしてそうこうしている内に近場の味方が補習授業部の弾丸に斃れ、小さく、細かに、少しずつ――部隊は寸断されていく。
「……皆、此処からが踏ん張りどころだ!」
「うん!」
「えぇ!」
「はい!」
「も、勿論!」
先生の声に頷き、補習授業部の皆は目前の大敵に挑む。
その勝利を、未来を信じて。
「此処から先は、私達の独壇場だ……!」
アリウス自治区――屋内訓練場。
屋内と云われてはいるが、その実態は崩れかけた教会を利用した半屋外と云っても過言ではない。蔦が生え、苔に覆われ、とても整備されているとは云い難い銃を片手に、今日も今日とて訓練に興じる。
それが唯一の生きる術だと、お前たちの持てる手段だと、ずっとそう教えられてきた。
そんな中で響く銃声。
訓練場に於いて、それは珍しくもなんともない音であった。
その銃口が――生徒に向けられていないのであれば。
「っ、やめろッ!」
「……退け、第八分隊長」
サオリは、咄嗟に飛び込み、叫んだ。
目の前に立つのはアリウス自治区幹部、サオリ達を管理する大人の代わりに立っている上級生。彼女はガスマスクを被り、白いコートに身を包みながら小さなサオリを見下ろす。未だ中学の年齢にも届いていないサオリにとって、百七十に迫るその身長は大層巨大に見えた。けれど懸命に両手を広げ、叫ぶ。
背後には倒れ伏し、砂利に塗れた白髪の生徒。
齢は――自分より、少しだけ年下に見える。
「それ以上やれば、ヘイローが壊れるぞ!?」
「ふん……」
サオリの言葉に、幹部は鼻を鳴らして銃口を下げる。しかし、其処に納得の色も、許しも存在していないのは確かであった。倒れ伏した白髪の生徒に、姫が駆け寄る。不気味な白面で顔を覆ったまま、荒い息を繰り返す生徒を抱き起し、その背中を摩る。
「………」
「ど、どうか……どうか、もうやめて下さい……うっ、うぅっ……!」
壁際で蹲り、頭を抱えて泣き言を零すヒヨリ。壁に背を預け、地面を能面の様な表情で見つめるミサキ。蔓延する空気は昏く、淀んでいた。
全員、ボロボロだった。
衣服は泥と砂利に塗れ、髪は土に塗れている。体のあちこちに包帯が巻き付けられ、痛々しい痣や傷が所々に見られた。剥き出しの足に貼り付けられガーゼ、そして足首に付けられた枷が、陽に照らされ鈍く光る。
けれど、この場所に於いては――これが普通なのだ。
「こいつは我々に反抗した、当然のことだろう? もう一度云う、退け、第八分隊長、退かなければ、お前たちも同じ目に遭う事になる」
「っ……!」
そう云って突きつけた拳銃を、もう一度サオリの奥――倒れ伏した白髪の生徒に向ける。サオリは、その冷酷な瞳をガスマスク越しに直視した。
此方を生徒とは思っていない、機械的で、能面の様で、正に無機質な視線。
彼女の良く知る――大人の目だ。
「ゴホッ、こほっ……笑わせ、ないで……誰が――」
白髪の生徒、短く、ざっくばらんに切られたそれを払い、そう口にする。鼻から流れる血をそのままに、彼女は憎々し気に幹部を睨みつけていた。その態度を見た彼女は、どこか感心した様に頷き、引き金に指を掛ける。
「ほぅ、まだそんな軽口を叩けるか、身体は頑丈な様だ……それなら」
「待てッ! 待ってくれ!」
「何だ? お前も反抗するつもりか、第八――」
「――私がッ!」
幹部の声を遮り、サオリは叫んだ。
腹の底から、全力で。
「私が……指導する!」
「何?」
その言葉に幹部は目を細める。サオリは俯いていた顔を上げ、歯を食い縛った。
「……また無駄な事を」
ミサキがぽつりと、そう呟いた。声は彼女に届かない。それがどれ程意味のある事なのか、そう疑問に思ってしまう。自分達とて、此処で生き残る事で精一杯なのに。また彼女は――サオリは、苦労を背負い込もうとする。
「ヒヨリも、ミサキも私が指導した生徒だ、姫も同じくな……! 皆、優秀な成績を残しているだろう!? あいつも私に預けてくれたら、一人前の兵士に育て上げてみせる!」
「……ふむ」
「だから任せてくれ、私が……私が責任を持って、コイツを指導するから」
サオリの言葉に、幹部はマスク越しに顎先を撫でる。どこか思案する素振り、或いは単に勘定をしているのか。どちらにせよ、どちらにメリットがあるか計りかねている様子だった。数秒、沈黙が流れる。サオリは背中に嫌な汗を滲ませながら、ぐっと怯懦を噛み殺し、彼女を見上げる。
しばし思考を巡らせた幹部は、不安に揺れるサオリの瞳を見下ろし、頷いた。
「――良いだろう」
「っ!」
「此方としても優秀な駒が増えるのならば云う事はない、良く云い聞かせておけ……我々に逆らわず、従順になるようにな」
「……あぁ」
それだけ告げ、幹部の生徒は拳銃をホルスターに戻し、去って行った。今日の訓練は此処まで――という事なのだろう。サオリはそんな彼女の背中を見送ると、踵を返して白髪の生徒の傍へ駆け寄る。
「姫、私が代わる……すまないが、私の部屋から薬を取って来てくれ」
「………」
姫は無言で頷き、そっと宿舎へと駆けて行く。宿舎と云っても、崩れ落ちた過去の学校、その教室に簡素な布を敷いただけの部屋だ。半ば崩れ落ちたそこは、宿舎と呼べる程に上等なものではない。サオリはその部屋、自身の寝床の下に、万が一の際に備え薬品を隠していた。生傷の絶えないこの生活の中で、治療を受けられる事は稀だ。最低限、死ななければ良いという方針の下で運営されている故に、当然だった。
此処の生徒達は全員、使い捨ての消耗品なのだから。
「ヒヨリ、もう大丈夫だ……あいつは行ったよ」
「うぅ――……さ、サオリ、ねぇざん……」
「……いい加減、泣き止みなよ、もう連中は居ないんだし」
「ずびっ……ほ、本当ですか……?」
サオリとミサキの言葉に、ヒヨリは鼻水と涙を垂らしながら恐る恐る顔を上げる。ミサキはどこか面倒そうにしながら、ポケットから薄汚れた布を取り出し、ヒヨリの涙を拭ってやった。
「ぐ……」
「まだ動くな、何発も撃たれたんだ、安静にしていろ」
自力で起き上がろうとする生徒を抑え、サオリは彼女の頬に付着した砂塵を払う。腹部と、顔面、恐らく頬に弾丸が着弾したのだろう。青痣になり、痛々しく晴れ上がった頬を、サオリは悲し気な表情で見つめた。
「何で、逆らったりなどしたんだ、こうなる事は分かり切っていただろう?」
「………」
「抗う事は、無意味だ、この場所に於いて連中は絶対的な力を有している、逆らえば酷い目に遭う……だから、逆らわない方が良い」
「……私は」
サオリの言葉に、彼女は歯を食い縛り、痛みに涙を流しながらも口を開いた。
その、サオリよりも小さな手が、薄汚れた地面を強かに叩く。
「私はっ……! 例え、無意味、でも……抗う事を、やめたくない……っ!」
「それは……何故だ?」
「だって、抗う事をやめたら……ッ!」
生徒が、俯いていた顔を上げる。
白い髪に、強い意思を秘めた、澄んだ瞳。
それが、真っ直ぐ正面から、サオリを射貫いた。
「――心まで、連中に屈してしまいそうな気がするから……!」
「―――」
それを聞いた時、サオリはどんな感情を抱いたのだろうか。自分自身、良く分からなかった。驚きだったのだろうか、或いは尊敬か、羨望か、それとも――憐れみか。
サオリは開きかけた口を閉じ、数秒、言葉に迷う。
けれど結局、掛けるべき言葉は見つからず。
「……そうか」
お前は、こんな場所でもまだ、希望を失っていないんだな。
そんな声を噛み殺し、サオリは彼女の瞳から目を逸らした。
「だが、一々上に噛み付いていたら顰蹙を買う、その在り方は改めた方が良い」
「っ、でも……」
「心まで屈しろとは云わない、表面上だけで良い、それが此処での生き残り方だ――代わりに、戦い方を教えてやる」
「……戦い方?」
「あぁ」
どこかキョトンとした表情の彼女に笑いかけ、サオリは足元の銃を拾い上げる。薄汚れ、整備も万全とは云い難いそれ。しかし、この場所に於いては唯一無二の力の象徴である。
「どんな道を歩むにせよ、力があるに越したことはない、力を付ければ此処での立場も良くなる、そうすれば自然と意見も通る……先程の私の様にな」
「………」
「私が、お前を鍛えてやる」
そう云って、サオリは手を差し伸べる。
まだ何も知らない、無垢なる白へと。
「私は第八分隊長、錠前サオリだ……お前は?」
「……アズサ」
呟き、彼女――アズサはサオリの手を取った。
泥と砂利に塗れ、傷だらけで、それでも確かに――力強い手を。
「――白洲、アズサ」
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アリウス幼少期あとがき第二段。
あと一話か、二話位あるんですわよ。
原作だと三百~四百字くらいでサラッと終わっていましたが、やっぱり丁寧に彼女達がどれだけ追い詰められていたのかを書いた方が、アリウスの皆が可愛く見えるかなって……。
これも全部、ベアおばって奴が悪いんだ……。かわいそう……。ご飯一杯食べてほしい……。