ブルーアーカイブを、もう一度。   作:トクサン

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誤字脱字報告ありがとうございますわ~!
ノリノリで書いていたら15,000字になっちゃった……文字数の関係で次の更新は3日後になるかもしれませんわ~。


ずっと待っていたよ、先生

 

「ぐぁッ……!?」

 

 白煙を裂き、飛来する弾丸。次々と倒れるアリウスの同胞達。ミカは銃を担いだまま棒立ちし、周囲の惨状を見つめ続ける。戦闘開始から凡そ五分から十分程度か、未だ戦線は補習授業部の支配下にあり、アリウス側は有効な手立てを見つけられずにいる。

 幸いなのは補習授業部側の弾薬には限りがある事か、滅多矢鱈に撃たれていれば、被害はもっと拡大していただろう。無論、たった四人が持ち込む弾薬量としては随分と多いが――或いは、これを見越して体育館に弾薬を予め隠していたか。これ程の用意を備えていた先生の事だ、それ位はやってくれそうなものだが、果たして。

 ミカは一つ鼻を鳴らし、白煙の向こう側に飛び出した人影、それに狙いを付け発砲。弾丸は吸い込まれるように影へと着弾――しかし、弾丸は硬質的な音を立て、それが訓練用の的だと理解する。先程から何度も繰り返されたソレに、思わず苦笑を浮かべた。

 

「……成程ねー、そっか、そっかぁ、そりゃ皆シャーレ、シャーレって云う訳だよ、厄介だね、大人って――それで、何人やられたの?」

 

 ミカがそう問いかけると、彼女の傍で待機していた一人のアリウス生徒が淡々と答えた。

 

「……既に、百名近く」

「うわ、すっご、先生抜いてたった四人なのに?」

 

 その報告に、ミカは思わず驚愕の声を上げる。銃声や怒号、悲鳴が飛び交う中、次々と引き摺られ、体育館の外に運び出されていくアリウスの生徒達。大分やられたとは思っていたが、既に百名を超える負傷者が出ているのか。

 この体育館に突入させた人員は確か、三百名程だった筈だと考える。ナギサの確保に向かわせた部隊、対象をロストした後に捜索に向かわせた部隊、そして此処を包囲させた部隊を含め、この作戦に参加したアリウスの生徒は六百名にも上る。アズサが云った様に、小さなアリウス分校に於いては、その全校生徒の半数に迫る数だ。

 

「生徒の力……じゃないよねぇ、あのアズサって子以外は普通の生徒だし、あ、いや、浦和ハナコは違うか、でも戦闘が得意って話は聞いた事ないし、うーん?」

 

 そう云って、ミカは補習授業部の面々を思い返す。アズサが強い事は理解出来る、曲がりなりにもアリウス所属、その中でも一等戦術的価値を持つスクワッド出身、その実力は折り紙付きだ。

 そして残りの三名、ハナコ、ヒフミ、コハル――ハナコは確かに実力が未知数ではあるが、戦闘力的な面で話題に上った事は一度もない。ヒフミはナギサのお気に入りで、実はブラックマーケットで悪事を働く強盗団の一味だとか何だとか云われていたが、正直そんな気配は微塵もなかった。そしてコハル、彼女は正義実現委員会のメンバーではあるが、正直肩書だけだ。彼女の所属する正義実現委員会、そのトップと比較すれば正に月と鼈、一般生徒と何ら変わりない。

 どう考えても負ける要素が無かった。この補習授業部という戦力を考える上で、脅威となるのはアズサ一択。他の生徒はアリウスの生徒を雑に突撃させても処理できてしまう程度の力しか持っていない。

 なのに――戦況は押され気味。

 はっきり云って、理解出来ない。

 

「――ま、やっぱり先生が凄いって事だよね? 流石先生だなぁ、うん!」

 

 そう云ってミカは、小難しい事を考えるのをやめた。

 一般生徒相手に押され気味なのは何とも情けない話だが、きっと先生が考えた戦略が余程優秀だったのだろう。或いは、彼女達の云うサポート、という奴の力かもしれない。どちらにせよ、この戦いでキーマンとなっているのは彼だ。

 けれど、彼女の余裕は崩れない。何処までも飄々とした態度でミカは戦況を見据える。

 

「まぁでも、ちょっと時間は掛かりそうだけれど、問題はないよね……数の差は、圧倒的なんだからさ」

 

 ■ 

 

「先生、そろそろスモークの残量が……!」

「っ、分かった――!」

 

 端末を覗いていたヒフミがふと声を上げ、先生は即座にタブレットを叩き散開していた皆に指示を出す。経過時間は凡そ十分と少し、本来であればこの倍の時間はスモークで稼ぐつもりであったが、壁に空いた大穴から白煙が外へと漏れ、消費が想定よりも随分早い。

 散らばり、前線で戦っていたアズサ、コハル、ハナコの視界に、『スモーク払底』の警告が表示される。

 

「っ! 撤退信号……スモークの残量か、ちッ!」

 

 舌打ちを零し、アズサは素早く後退する。天井から鳴り響いていた噴射音が鳴りを潜め、スモークが徐々に晴れていった。視界が開け、アリウス側も補習授業部を視認、銃弾が皆目掛けて飛来する。それを物陰に身を隠してやり過ごしつつ、先生の元へと退避する補習授業部。アリウスは倒れ伏した生徒達の回収を開始する。

 白煙で遮られていた為気付けなかったが、かなりの数のアリウス生徒が体育館の彼方此方で倒れ伏していた。

 

「わーお、こんなにやられちゃったんだ、凄いなぁ……あ、ほらほら、回収急いで~」

「負傷者回収、急げ、支援射撃を絶やすな!」

 

 アリウスの生徒達が倒れ伏した面々の元に急ぎ、体育館外へと引き摺って行く。その最中、後衛による援護射撃を加えられる。射撃訓練用的の裏に隠れながら、アズサは応射するも、火力――純粋に向けられる銃口の数が違い過ぎる。

 それでも尚、辛うじて敵を牽制できているのは、先生のアシストがある為だ。踏み込もうとしたり、回り込もうとしたアリウス生徒がいた場合、即座に視界でマークされる。後方に陣取ったコハルが頭を出した生徒を狙撃し、中衛のヒフミとハナコが制圧射撃を担当、アズサは前衛で敵の攻撃を集めつつ、攻撃と牽制、防御を忙しなくこなしている。

 

「うーん、セイアちゃんもナギちゃんも居なくなるんだし、これで漸く始められるって云うのになぁ、変に邪魔しないで欲しいよ、ホント」

「ッ……!」

 

 ミカは白煙が晴れて尚、しぶとく抵抗する補習授業部を前に、そんな言葉を漏らす。中衛で銃撃戦を繰り広げていたハナコは、激しい銃声の中からその言葉を拾い、思わず遮蔽の裏から叫んだ。

 

「ミカさん、一つ聞かせて下さい! セイアちゃんを襲撃したのも、あなたの指示だったのですか!?」

「うん? セイアちゃん? あぁ……あはは、そうだよ? あれも私の指示、だってセイアちゃんってば、いっつもへんな事ばっかり云って、楽園だの何だの、難しい事ばっかり並べ立てて、私の事を馬鹿にしていたからさぁ」

 

 ハナコの言葉に、ミカは薄ら笑いを浮かべながら答える。しかし、ふっと、その表情に陰が落ちた。

 

「――でも、ヘイローを破壊しろとは云っていないよ、私は、人殺しなんか指示していない」

「っ……!?」

「ただ卒業するまで檻の中に閉じ込めて、ちょっとだけ窮屈な思いをさせてやろうって、そう思っただけなんだよ? でも……何でか、あぁなっちゃった」

 

 殺すつもり何てなかった、その言葉を聞いたハナコは驚愕の色を見せる。顔を上げ、引き攣った笑みを浮かべたミカは、その視線をアズサに向けた。

 

「それ以上は当事者に聞いた方が早いんじゃないかなぁ? ねぇ――白洲アズサ」

「ッ……!」

 

 その声に、アズサは肩を揺らした。誰から見ても分かる程の、動揺。遮蔽に身を隠しながらも、その気配は隠せない。

 

「何だか一部誤解があるみたいだし、私の代わりに説明してくれない?」

「………」

「セイアちゃんがさぁ、あんな事になっちゃったのが、ここまで事が大きくなった原因なんだよ? あの時からもう、色々な事がどうしようもなくなって、戻れなくなって……私はただ、ほんの少しだけセイアちゃんに困って貰おうって、その程度の気持ちだったのに――ねぇ、なんであんな事になっちゃったの? なんで、セイアちゃんはいなくなっちゃったの?」

「そ、れは……」

「答えてよ、白洲アズサ」

 

 アズサは言葉に詰まる。銃を握り締める、その指先が震える。後方の遮蔽に身を隠したヒフミが、思わず問いかける。

 

「あ、アズサちゃん、一体、何のお話ですか……?」

「違う、私は――」

 

 アズサは何かを口にしようとした。それが弁明なのか、或いは別なものなのかは分からない。ただ、彼女の舌が言葉を紡ぐよりも早く、どこからか大きな爆音が鳴り響いた。それは体育館の中ではない、外側から鳴り響いたもの。

 思わずアリウス全員の意識が、爆発のあった方角へと引っ張られる。

 

「何、爆発……?」

『こ、此方チームⅧ! 包囲部隊が攻撃を受け――ッ!?』

「なっ――!?」

 

 アリウスの隊長が持っていたインカムに悲鳴交じりの報告が入り、その言葉に隊長は絶句、ミカは訝し気に顔を歪める。

 

「……包囲部隊に攻撃? 何で? ティーパーティーの戒厳令に背く人たちなんて、もう――」

 

 呟き、思考を回す。正義実現委員会は頭を抑えて動けない。救護騎士団はそもそもトップが不在で指揮系統が存在しない。有象無象の部活が暴走した? けれど、その程度の攻撃でやられるアリウスではない。なら、可能性があるのは――。

 

「それは少々、甘い考えですよ、ミカさん」

 

 体育館の入り口から、唐突に、無数の弾丸が飛来した。一斉に瞬くマズルフラッシュ、響く銃声、展開していたアリウスの生徒達が横合いに薙ぎ払われ、悲鳴を上げながら次々と倒れる。自身の傍を掠めた弾丸に目を見開きながら、ミカは銃声が聞こえた方角へと振り向いた。

 

「……歌住、サクラコ」

「えぇ、夜分遅くに、随分と騒がしいではありませんか、ミカさん?」

 

 告げ、彼女は担いだ愛銃をミカに向ける。

 凛とした姿勢、泰然とした態度、黒と白の制服に身を包んだ幾人もの生徒達。その十字架に酷似したヘイローを輝かせながら、彼女達はアリウスの前に立ちはだかる。

 トリニティ総合学園、大聖堂に本部を置く一大派閥――シスターフッド。

 彼女達の登場に、ミカの視線が鋭く絞られる。

 

「や、やった……!」

「増援……! 間に合ったんですねっ!」

 

 コハルとヒフミが歓声を上げ、その表情を喜色に染めた。

 

「シスターフッド……なら、まさか」

 

 告げ、ミカは補習授業部に目を向ける。視線の先に居るのは、この状況を作り上げたであろう人物。

 

「浦和、ハナコ……ッ!」

「ふふっ、残念ですが、私だけではありません」

 

 ミカに睨みつけられたハナコは、薄らと笑みを浮かべながら首を横に振り、視線を横に投げた。

 

「私よりも先に接触していたのは、先生です」

「っ……!」

 

 ミカの目が驚愕に見開かれる。ならば、先生はこの状況すらも読んでいたという事なのか。そんな思いを込めて、ミカは先生を見た。ちくりと、胸が痛んだ。それがどうしようもない、必要な事であると分かっていも。

 

「今日も平和と安寧が、皆さんと共にありますように」

「すみません、お邪魔します……!」

「シスターフッド、これまでの慣習に反する事ではありますが……ティーパーティーの内紛に、介入させて頂きます」

 

 歌住サクラコ、若葉ヒナタ、伊落マリー、シスターフッドを率いる三名が自身の愛銃を構え、告げる。その宣言と同時に、百名余りの銃口がミカとアリウスを捉えた。シスターフッド、トリニティ総合学園の中でも一大派閥とされる彼女達は、独自の指揮系統と情報網を持ち、トリニティ内部でも決して小さくない影響力を持つ。その戦力は、正義実現委員会にだって劣りはしない。

 しかし、彼女達は基本的に政治不干渉を貫いて来た。先代も、その先々代も、故に『そう在るもの』だと皆には周知されている。その彼女達が、動いた。それは正に、ミカにとっては想像だにしなかった事で。

 

「ティーパーティー、聖園ミカさん、他のティーパーティーへの傷害教唆及び傷害未遂で、あなたの身柄を拘束します」

「……あはっ、流石にシスターフッドと戦うのは初めてだなぁ、今までずっと知らん振りを決め込んでいたのに、今更動く何て、ホント、想定外だよ」

 

 ミカは苦笑を浮かべ、呟く。本当に、こんな展開は考えてもいなかった。シスターフッドの影響力、その戦力を知らなかった訳ではない。ただ事を起こす上で、優先順位は決して高くなかった。仮にティーパーティーが被害を被る事になっても、彼女達は動かないという確信があったのだ。

 だって、彼女達は――セイアが死亡した時さえ不干渉を貫いたのだから。

 だから今回も動かないものだと高を括っていた。

 それが、覆された。

 

「なるほどね、流石先生……これが切り札って事かな?」

「いや――まだだよ」

 

 ミカの言葉に、先生は首を横に振る。

 これ以上に増援が――? そんなミカの訝し気な表情に応えるように、アリウスの足元に何かが投げ込まれた。それは暗闇の中ではハッキリせず、辛うじて手の中に収まるサイズの、円柱に似た何かだという事しか分からなかった。

 足元に転がったそれを見て、ミカは目を瞬かせる。

 

「……? なに、こ――」

 

 瞬間――強烈な閃光と爆音が周囲を照らす。暗闇の中で、夜目に慣れていたアリウス全員が、思わず目を閉じ、顔を顰めた。強烈な光と音はアリウスとミカから平衡感覚を奪い、思わず膝を突く。

 そして透かさず銃声が鳴り響く。くぐもった、乾いた音が何度も響き、直ぐ近くから何人もの悲鳴が聞こえた気がした。数十秒程堪え、ミカが恐る恐る目を開ければ、彼女の傍に居た数人のアリウス生徒が昏倒していた。それは、先程の閃光弾によるものではない、見ればマスク越しに一発ずつ、弾丸を喰らっている。

 ミカが視線を上げれば、補習授業部の傍に駆け寄る数十人の生徒。

 

「――守月スズミ、先生の要請により参上致しました」

「っ、トリニティ自警団……」

 

 特徴的な略式校章と盾、そして一般生徒とは異なる灰色の制服。彼女達は先生を守る様に展開し、アリウスにその銃口を向ける。数は決して多くない、しかし常日頃荒事に対処している彼女達は練度が高く、また時折正義実現委員会とすら衝突するその信念は固く、曲がらない。権力にも屈せず、ただ自身の信じる正義を貫く、それが彼女達、トリニティ自警団。

 正義実現委員会が統率された確固たる正義(広義の正義)を掲げるのであれば、彼女達は生徒に寄り添い、不条理を跳ね退ける柔らかき正義(形なき正義)を目指す。

 正義実現委員会()ではなく、ティーパーティー()でもなく――ただ個の為に在る、自警団(灰色)

 

「お久しぶりですね、先生、お怪我が無い様で何よりです」

「うん、久しぶり……ごめんね、突然」

「いえ、他ならぬ先生の頼みですから、それに――」

 

 告げ、スズミはミカを真っ直ぐ見据える。その手に愛銃、セーフティーを握り締めて。その白い髪と、横に伸びた小さな翼が風に靡いた。

 

「これも自警団任務の延長線上です、数は多くありませんが、自警団の方々が招集に応じて下さいました――このような形で集まる事になるのは、大変残念ですが」

「あはっ、何、まさかあなた達まで出て来るなんて、本当にビックリだよ……パトロールだけしていれば良いのに、こんな事にまで首を突っ込むんだね、自警団っていうのは」

「……トリニティの安寧を脅かす、それを見過ごす訳にはいきません」

 

 スズミとミカは言葉を交わし、互いに睨み合う。そこに絡む感情は、本人同士にしか伝わらない。

 

「私達も、トリニティの一員ですから」

「……へぇ」

 

 その言葉に、ミカは口元から笑みを消した。

 

「これで戦力差はイーブンだ、ミカ」

「……うん、本当に、流石だよ先生、片付けないといけない相手が、一気に増えちゃったなぁ」

 

 呟き、彼女は体育館全体を見渡す。アリウスの生徒は削りに削られ、残りは二百に届かない程。百五十名よりは多いだろうが、それでも戦力は半減していると云って良い。策に嵌ったとは云え、補習授業部のみで此処まで削ったのだから驚異的だ。

 そしてシスターフッドから百名、トリニティ自警団から三十名余り、これに補習授業部を加えれば殆ど戦力に差は無い。此処から仮にアリウスに増援が来たとしても、十分に持久戦を行えるだけの人員が揃っていた。

 作戦時間はごく限られている。夜明けまで持ち堪えれば――アリウスは撤退せざるを得ない。

 それを理解しているのだろう、ミカの顔に張り付いていた笑顔、それはもう何処にも見えない。ハナコはそんな彼女を見据え、告げる。

 

「漸く、顔色が変わりましたね、ミカさん」

「そうかな? ……まぁ、どうせホストになったら大聖堂も、その周りの五月蠅い連中も掃除しようと思っていた所だし、うん、一気にやれるチャンスだと思う事にしようかな」

 

 告げ、ミカは自身の愛銃を構える。その顔に、笑みの代わりに虚勢を貼り付けて。互いの銃口が向き合い、体育館内部の空気が張り詰めた。

 

「――よし! それじゃあ、やれる所までやってみよっか!」

「……あくまで、戦うつもりですか? この状況、どれ程の勝算があるのか、分からないあなたではない筈です」

「うん、そうかもね……でもさ」

 

 ミカが一歩、前に足を踏み出す。

 その瞳に、確かな狂気を湛えて。

 

「だからと云って諦められる筈なんてないんだよ、『もう嫌だ』って云いながら投げ出す段階は、疾うの昔に過ぎちゃっているの――私は、行く所まで行くしかないんだから」

 

 深淵を思わせる瞳、纏わりつく気配。彼女のそれは、追い詰められていく程に濃く、周囲を包んでいく。まるで皆を引き摺り落とすように、それは深く、悍ましく、ほの昏い――絶望の色。

 

「シスターフッドも、トリニティ自警団も、補習授業部も、全部薙ぎ倒して、私がティーパーティーのホストになる、そしてゲヘナを殲滅して、綺麗になったキヴォトスで新しいトリニティを作るんだ」

「そんな事を、一体誰が望むと云うのですか……!?」

「私と、アリウスだよ、首長の私が発言すればパテル分派は味方になってくれるかもね? けれど、そんな事は重要じゃない、誰が望むかなんて大切じゃないんだよ、浦和ハナコ――大丈夫、ゲヘナが居なくなれば、きっと全部上手くいくから……きっと、そうなる筈だから」

 

 そう云って、彼女は嗤う。

 最早、その道しか残されていないと云わんばかりに。

 彼女はただ、真っ直ぐ道を往く。

 深く、一歩ずつ――けれど、着実に。

 

 その行く手を、遮る影があった。

 

「――そんな事は、させないよ」

「……先生」

 

 ミカの前に、先生が立ち塞がった。

 自警団、補習授業部、シスターフッド、彼女達の間を縫って、前に立つ。銃口を突きつけられながら、けれど微塵も怯まずに、欠片も躊躇わずに。確りと、その二本の足で。

 背後からヒフミが声を上げようとした、けれどその肩をハナコが掴む。咄嗟に声を呑んだヒフミは、隣に立つハナコを見た。その瞳は不安と焦燥に塗れていた、けれど唇を噛んで、彼女はその不安を呑み込んでいた。

 信頼しているのだ――先生を。

 

「ミカ、こんな事はもう、やめよう……本当はそんな未来、望んでいない筈だ」

「あはは、先生がそんな事を云うんだ……? 私を信じているって云った癖に、こんな大層な増援まで用意して……いや、先生なら、うん、云ってくれるかな? それに最初に裏切ったのは私だもん、私が云えた事じゃないよね」

「ミカ」

「――でも、先生とはもう、あんまり話したくないんだけれどなぁ……だって、先生の声を聞けば聞く程、胸が苦しくなるんだもん」

 

 にへら、と彼女は泣きそうな顔で笑った。その顔を見る度に、先生は胸を締め付けられる。息が詰まる。先生もまた、同じように顔を歪めながら、ミカと対峙する。

 

「……先生はさ、まだ私が戻れるって、本当にそう思うの?」

「……あぁ、思っている」

「優しいなぁ、ホントに……でも、先生がそうでも、周りはどうかな?」

「――私が何とかする」

 

 ミカの言葉に、先生は断言する。

 拳を握り締め、どこまでも真っ直ぐ、不動の想いでミカを見つめる。その意思は確かな熱意と芯を感じさせ、ミカの突きつけた銃口が僅かに揺れた。

 

「……ナギちゃんは、きっと、私を許してくれないよ」

「そんな事は絶対にない、彼女は聡明で、強い子だ」

「なら、騙された正義実現委員会は? そこに居るシスターフッドは? トリニティ自警団は? 公会議は? パテル以外の派閥は?」

「説得して、交渉する、必要なら土下座行脚でも何でもする、ミカが今まで通りに学園生活を送れるように、全力を尽くす」

「……何で、そこまで私を気に掛けてくれるの?」

「――忘れたのかい、ミカ?」

「ぁ――……」

 

 先生の瞳に宿る、強い意志。いつかプールサイドで掛けられた言葉が、脳裏に過る。

 この期に及んで、先生は、まだ――。

 ミカの唇が歪む。油断すれば嗚咽が漏れそうになる。それを、浅く息を吸い込んで堪えた。代わりに、嘲笑とも云えない、乾いた笑いを零す。ミカの視界が、滲んで歪んだ。

 

「あ、あはは、やめときなよ、先生……そんな事をする価値なんて、私には――」

「私の生徒は」

 

 先生が、一歩踏み出す。

 アリウスの生徒達がグリップを握り締め、引き金に指を掛ける。応じるようにシスターフッドが、補習授業部が、トリニティ自警団が、引き金に触れる。

 それでも尚、先生は微塵も揺らがない。

 

「全員、無限の未来と、無限の可能性と、無限の価値を持った、大切な存在なんだ、何者にも成れるし、何だって叶えられる……皆が皆、確かな光を持った唯一無二の存在――そこに例外は、ひとりとして存在しない」

 

 このキヴォトスに根付く生徒達、未だ小さき名もなき光。

 その光はまだ小さく、心許ないものだろう。けれどいつか、その光は世界を覆い、遍く全てを照らす大きなものに至ると、先生はそう信じている。

 だから、「自分なんて」と卑下する必要などない。

 例え過ちを犯したとしても、抱えきれない罪悪を被ったとしても、その事に屈してしまっても、自分の立つ場所の昏さに絶望してしまっても――先生は絶対に、見捨てなどしない。

 その手を取って、大丈夫だと微笑んで見せるのだ。それがどれだけ難しい事でも、困難な事でも、夢物語であっても――。

 

「補習授業部だって、ティーパーティーだって、自警団だって、シスターフッドだって、トリニティもゲヘナも、アリウスも――ミカだって」

 

 告げ、先生は強く拳を握り締める。

 

「皆、私にとって唯一無二の、大切な生徒なんだよ」

「………」

 

 ミカの目が、見開かれる。

 その視線が、先生の首元に在る赤色を捉えた。

 銃口が揺れる、大きく、何度も。

 小さく音を立てて揺れていたそれは、軈て力なく地面に向けられ――ミカは自身の頬を伝うそれを自覚する。

 

「あは……ははっ、あはははッ!」

 

 笑った、彼女は大口を開けて笑った。それは歓喜の声だった、同時に悲壮の声だった。彼女にとって、如何ともしがたい現実を前にして、最早どうしようもないと、諦観と後悔を込めた最後の哄笑だった。

 項垂れ、愛銃を垂らし、彼女は呟く。

 

「はぁー、もう~――……」

 

 ぽつり、ぽつりと。

 足元に、涙が零れ落ちた。

 

「――ほんと、やだなぁ」

 

 声は小さく、誰にも届きはしない。ただ、渦を巻き、暗闇に沈んだ()を床に向け、彼女は独白する。

 

「何で、こうなっちゃったんだろう、何で私が、『こっち側』なんだろう……? 私だって、本当は皆と一緒に……こんな、こんな事を、私は望んでなんて――」

 

 ただの、些細な悪戯が発端だった。そんな悪戯から、彼女達と和解出来る未来を見た。今は分かり合えなくても、もっと未来に、もっと先で、いつか、気が遠くなる程先でも良いから――一緒に、笑い合える日が来るかもしれない、そんな風に、思って。

 

「――でも、駄目だよ、駄目なんだよ先生、今更、戻るなんてさぁ……」

 

 けれど、そうはならなかった。

 その未来は遥か遠く、理想の彼方に溶けて消えた。

 彼女(セイア)は消え、ナギサと自分だけが残った。私の悪戯で、ほんの些細な出来心で。ほんの少し牢に閉じ込めて、アリウスと和解するという案を呑ませて、それで「ごめんね~☆」って、いつも通り謝って。

 勿論彼女は怒り狂って、それでまた小難しい説教をされて、トリニティに新しい仲間(アリウス)が増えて、多分、最初は色々大変だろうけれども、共通の敵(ゲヘナ)の悪口でも云って仲良くなって……。

 そんな、夢物語。

 (ミカ)が望んだのは、そんな、ほんの小さな奇跡。

 

 そんな、小さな奇跡の代償がコレならば。

 

「積み重ねたら、積み重ねた分だけ、その拳を降ろすには勇気が要るの……私には、そんなものはないんだから、さっきも云ったよね? 私は――行くところまで、行くしかないの」

「なら――私が必ず、止めて見せる」

 

 俯いたまま、ミカは告げる。

 対峙する先生は、一歩も引かずに応えた。

 緩慢な動作で持ちあがる銃口、その矛先は先生に。

 涙の滲んだ瞳が、先生を見る。

 どこまでも希望に満ち溢れ、強い決意を抱いた、先生の目を。

 

「ふふっ、良いなぁ、先生のその目――」

 

 どこか眩しそうに、嬉しそうに。

 ミカはそう口にする。

 

「本当に真っ直ぐで、綺麗で、私なんかを見るには勿体ない位……でもね先生、私は止められないよ、先生と会うのが、私は――遅すぎたんだよ」

 

 そうだ、その通りだ。

 もう少し、あと一年。

 いや、半年で良い。

 早く、出会えていれば。

 今とは違う未来も存在したのかもしれない。

 自身がアリウスと交渉する前に、あんな甘い夢を見る前に出会えていれば。きっと誰も不幸になる事は無く、完全無欠のハッピーエンドを迎えられた筈だから。

 そんな、『もしも』を噛み締めミカは告げる。

 その声に、先生とは別種の決意を宿して。

 

「――アリウス、役割を果たして」

「……了解」

 

 静かに頷き、アリウスがミカに並ぶ。

 共に戦う、尖兵として。

 

 ■

 

 【私は、私の役割を果たすから……だから、先生――】

 

 ■

 

「ッ……!」

 

 先生の鼓動が一つ、大きく高鳴った。

 それは彼女の向ける瞳が、嘗てのそれと重なったから。アリウスと並ぶミカ、その光景に強烈なフラッシュバックが起こる。それを噛み殺し、先生はタブレットを抱きしめ、叫ぶ。

 

「これが最後だ……皆ッ!」

 

 先生の声に、補習授業部が、シスターフッドが、トリニティ自警団が応えた。室内にずらりと並んだ生徒達、その大勢が互いに銃口を向け合う光景。それを見る度、先生の心の奥――いつか見た光景が過り、心臓が軋む。

 これの何十倍、何百倍、何千、何万という生徒達が互いに銃口を向け合い、ヘイローを壊さんと殺し合う未来。そんな世界を回避する為に、そんな道を選ばない為に。

 先生()は、この(苦難)を望んだ。

 

「皆の力を、私に貸してくれ――ッ!」

 

 先生の叫びと共に、主要な生徒にリンクを繋ぐ。タブレットが光り輝き、先生の傍に展開していた生徒達、そのヘイローが光り輝いた。自身の行える、限界の瀬戸際まで、先生は力を振り絞る。それを見たミカが口元を歪ませ、叫ぶ。

 下手糞な笑い方だった。

 歪な笑い方だった。

 必死に貼り付け、今にも崩れそうな哄笑だった。

 ミカは泣きながら、先生に向けて駆け出す。

 

「あは、あははッ! 手加減はしないからっ! 行くよ、先生っ!?」

「此処で止めるッ、何が何でもっ――!」

 

 リンクの反動で、先生の鼻から僅かに血が噴き出した。視界が充血し、脳に鈍痛が響く。大多数の生徒に向けた干渉は、当然の様に先生へと莫大な負荷を掛ける。しかし、それでも尚先生は止まらない。噴き出した血を乱雑に拭い、ミカを、ミカだけを見据える。

 彼女が道を誤ったのならば、何度だってその手を取り、止めて見せよう。

 何故なら、(先生)は――。

 

「私はッ、ミカ()の先生だからね……ッ!」

 


 

「っ、痛い……」

 

 古びた、半ば廃墟染みた教室の中で、肌を叩く音が木霊した。それは、サオリがミサキの頬を張り飛ばした音だった。肩で息をし、怒りで表情を一色に染めたサオリ。ミサキは僅かに赤らんだ頬を手で押さえながら、淡々とした様子で呟く。

 

「ミサキ……二度と、二度とそんな事はするなッ! 絶対にだ……ッ!」

「………」

 

 サオリの怒声に、ミサキは微塵も動じない。

 彼女のその左手首には、真新しい包帯が巻き付けられていた。そして包帯には、僅かに血が滲んでいる。彼女が、自分自身で切った証明であった。

 

「……どうして?」

「何?」

「どうして、駄目なの」

 

 ミサキは問いかける。その表情に、確かな諦観を滲ませながら。

 

「何で、こんな意味のない苦痛の中で生き続けなくちゃいけないの? 何で、こんな苦しまなくちゃいけないの?」

「ミサキ……?」

「寒くて、空腹で、辛くて……毎日殴られて、怒鳴られて、傷だらけになって、ただ苦痛が繰り返される日々なのに――何で、頑張らなくちゃいけないの」

 

 そう云って、自身の腕を掴みながら彼女は問いかける。

 

「どうして姉さんは、この無意味な苦痛を私達に強要するの? それに、一体何の意味があるの?」

「それ、は……」

 

 どうして――?

 その問いかけを前に、サオリは思わず言葉に詰まる。

 どうして、こんな辛い思いをしなくちゃいけないのか。どうして、諦めては(死んでは)いけないのか? この苦痛に意味はあるのか? この耐え難い苦難の先に、夢の様な希望が満ち溢れているのか?

 ――そんな保証、どこにもないのに。

 

「それは……――」

 

 きっと、自分達に希望ある未来なんて待っていない。

 明日も、明後日も、明々後日も、その次も、そのまた次も、一ヶ月後も、一年後も――自分達はこうやって虐げられる、搾取し続けられる。自由は無く、意思は無く、歯車の様に、使い捨ての駒の様に。

 無意味に、何の、意味もなく。

 なのに、どうして生きるのか?

 

 ――私達(スクワッド)の生まれた理由は、何だ?

 

「……ほら、答えられないじゃん」

「ミサキ、私は――」

「何でも知っている様に振る舞って、姉さんだって、私達と同じ癖に」

「っ……!」

 

 ミサキの声には、失望の色が宿っていた。皆を引っ張り、何でもない様に振る舞って、いつも気丈に見えたサオリ。そんな彼女も、所詮は子どもで、自分達と同じで――この籠に捕らわれたまま、逃れる術を持っていない。ただ流されるままに、必死に生きようとしているだけで、そこに意味を見出す事は無く、逃れる意思を持つ訳でもなく。

 ただ、死んでいないだけだ。

 

「全部無意味なら、いつ死んだって、きっと同じ……私達に生きる意味なんて、抗う意味なんてないんだよ」

「み、ミサキ! 待て……!」

 

 ふらりと覚束ない足取りで、ミサキはサオリの横を通り過ぎる。咄嗟に声を上げ、彼女に手を伸ばし――けれど、その指がミサキの手を掴むことは無く。するりと、煙の様にすり抜けてしまう。

 何の為に苦痛に耐える? 何の為に抗う? 分からない、サオリには分からない――けれど。

 それでも。

 

「待て! わ、私は――……」

 

 ――スクワッド(大切な仲間)に、生きていて欲しいから。

 

 ■

 

「……ぅ――……」

 

 ふと、目が覚めた。

 サオリが目を覚ましたのは、酷い鈍痛と空腹の為だった。口の中がカラカラに乾き、罅割れた唇が痛む。布一枚存在しない床の上に転がって、肩を震わせるサオリ。冷たい床は容赦なくサオリの体から体温を奪い、手足の感覚は疾うにない。サオリは体を丸めて、まるで胎児のように自身の腕を抱き、蹲っている。そのまま薄らと視線で部屋をなぞれば、鉄格子に蓋をされた無機質な牢の隅が見えた。

 

 ――あぁ、そうだ、私は……。

 

 もう、こんな事を考えるのも何度目か。確か自分は、現状に折れかかったミサキや、泣き喚くヒヨリを励ます為に、ある事無い事を口走ったのだ。

 自分達の明るい将来を語り、遠い昔、スラムで拾って読んだ雑誌の記事を語り、このアリウスの外には遊園地だとか、水族館だとか、お洒落なカフェだとか、映画館なんかもあって、そこには楽しい事、楽しいものが沢山あるからと。

 いつか、皆でそこに行こうと。美味しいものだって、楽しいものだって、沢山ある。私達は知らない事ばかりだ、だから私達には想像もつかないような、素晴らしいものが世界にはある筈だと。

 それを探しに行こうと。

 だから――この苦痛は、その為の対価なのだと。

 そう熱弁した、らしくなく舌を回した。今のこの苦しみを忘れさせる為に、必死だった。そうしなければ、二人が、ミサキが、どこかに消えてしまいそうだったから。

 

 ――それを、幹部に聞かれた。

 

 アリウスで希望を語る事は許されない。すべては無意味で、無駄だ。そう何度も聞かされて育った、だから、自身のその行動は大人の言葉に反する行為だった。

 

 即日、懲罰房行きだった。

 散々罵倒され、殴られ、蹴られ、撃たれ、ボロボロになった所を牢に放り込まれた。最初の二日間は、痛みで碌に動けなかった。

 

 地下に作られたこの場所は、とても寒い。制服の上着を剥ぎ取られ、インナーのみで牢に投げ入れられて、もう何日目か。一週間は経っただろうか? 日にちの感覚は曖昧だ、何せこうして横たわり、何をする事も出来ないのだから、段々と時間の感覚は狂ってくる。

 食事は一日に一度、パンが半分と、一杯の水。生き残る為に、水にパンを浸して、ゆっくりと咀嚼して食べた。水を吸ったパンは、少しだけ膨らんだように感じて、満腹感がある。勿論、それが錯覚である事は知っている。けれど、そんな事でもしなければ本当に空腹で気が狂いそうだった。無意識の内に唇の皮を食い破り、血が流れる。それを舌で舐めとり、サオリは深く、息を吐いた。

 

 暫くして、ぽろりと、涙が零れた。

 蹲ったまま、サオリは音もなく涙を流す。

 

 ――限界だった。

 

「許して、下さい……」

 

 小さく、呟く。

 声に力はない。数日もの間、碌な食事を与えられず、怪我の治療をされず、この誰も居ない、小さな牢に隔離されたサオリは、誰に対してでもない、ただ漠然と自分を支配する存在に声を上げる。

 

「申し訳、ございません……二度と、このような事は……」

 

 続け、何度もか細い息を繰り返す。吐き出した息が白く濁る。震える唇を必死に動かして、彼女は懇願する。

 

「二度と、大人の言葉を、破りません……反抗、しません……将来に、希望を抱かない様、努めます――……」

 

 ただ粛々と、大人の言葉に従い、歯車の様に、駒の様に、意思なく動けばそれで良い。考える事は必要ない、未来を語る必要もない――その権利が、自分達には与えられていない。だから、サオリは涙を流しながら、蹲り、呟き続ける。この場所に捕らわれた自身を、自覚する。

 

「二度と、幸福を望みません……祈りません、だから……」

 

 もう、外の世界に行きたいなんて思いません。

 もう、未来に希望があるなんて語りません。

 もう、自分達に幸福があるなどと驕りません。

 もう、大人に逆らおうなんて考えません。

 だから――。

 

「だから、どうか……」

 

 サオリは、蹲ったまま手を伸ばす。

 牢の外に、薄らと見える光に向けて。

 それが自身の心を売り渡す行為だと知りながら、けれど、どうしようもない苦しみから逃れる為に。震える指先を、必死に。

 その、朱に向けて。

 

「慈悲を――」

 

 ■

 

 漸くここまで来たね、先生。

 次回、スクワッド襲来。

 

 此処までは凡そストリーラインに沿って来ましたが、この先は独自路線で突っ走らせて頂きましてよ? スクワッドの後書きも終わったので、こういった運命を辿って来たスクワッドと、それでも全員を救いたい先生の血塗れ姿を見せつけましょうね。後編まではなぁなぁで済ませると思いました事? んな事させねぇですわ、先生は苦しめてナンボなのです。後云っておきますが、アビドス編のラストみたいな清々しい、愛と友情と勇気に満ち溢れた締め括りを求めている方が居たら、ごめんあそばせ。申し訳ないですけれど、これはエデン条約編・前編ですの。つまりは序章、全ての救いは、後編にしか存在しないのですわ。まぁ次話を読めば嫌でも実感すると思いますけれど……でもこのエデン条約編を始める第一話で宣言しているし、その辺りは皆さんご存知の筈なのでままえやろの精神で突っ走りますわ~!

 

 そして遂に文字数百万字突破ですわ~! 大台突破ですわ~! めでてぇですわ~ッ! 何がめでてぇんですの少しもめでたくないですが? この小説書き始めた頃は十万字程度で終わる予定だったんですが? 十倍なんですが? 定期更新初めて半年経ちますけれど自分がこんな几帳面に更新出来るなんて初めて知りましたわ~。まぁでもアビドス終わってから一ヶ月休んだし、実質五ヶ月か……エデン条約やるって決めた時から予想していた事ではありますが、此処まで来ると感慨深いものがありますわねぇ~。

 因みにWordの文字数は現在百十万七千字ですわ~。Word編集時間は147,154分ですわ~! 大体2,453時間ですわ~! 狂人かよ。自分でやっておきながらドン引きですわ。他人がやっていたら「ヴぉ~、すげぇ~……」で済みますが、自分がやったとなると、「何があなたをそこまで突き動かすんですの?」って真顔で聞いてみたくなりますわ~。わたくしはただ、先生の手足を捥ぎたいだけなんですのよ~。

 先生の手足を捥ぐために、この半年休日のほぼ全部小説に注いでいるんですの。ゲームは一日一時間とか守れたの人生で初めてでしたわよ。しかも半年も! 偉くない? 偉いですねぇ! それ程でもあるかなぁ~ッ! 照れちゃうなぁ~!

 

 感想、お気に入り登録、評価、いつも励みになっておりますわ~! 感想はあんまり返信出来なくて申し訳ございません事よ! でも二日に一回更新だとマジで返す暇がねぇんですの! ごめんあそばせッ! 返せそうな時は「〇話の感想だけでも……!」って感じで返しておりますので、どうぞよしなに!

 という訳で最後まで気張って行きますわよッ! 先生の手足を捥いで血塗れにした後、生徒の泣き顔を見て胸をポカポカさせたい号、発進ッ!

 


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