IS―インフィニット・ストラトス―IXA   作:理十日

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第十八話 君の笑顔が好き

 

 

 すっかりと夜も更けて、先ほどまで壁越しからうっすらと聴こえていた女生徒達の喧騒は消灯時間が迫るに連れて静かになっていった。そんな私たちも、時間が迫るにつれていくつか小さな欠伸をしていた。―――私の場合はけしてリラックスをしているのではなく身体的に、精神的にともに疲れているからであった。それを隣で見つめられると尚緊張しちゃって―――ふぁぁぁあ~~。

 こんなことになったのはものの数刻前のことだった。

 昨日と同じく、屋上に私が赴くと彼女に出会ってしまう。まるで私がここに来ることを知っていたかのように彼女は現われた。

 それで、夜風が厳しくなったことで彼女は私に部屋に来ないかと誘ってきた。断る理由もないので着いて行ってしまった。―――要はクラウンに言いくるめられた私―明日乃は丸々二日ほど自室に戻っていないということになる。―――ということは彼女の部屋でまたお世話になるということを表していた。あまり迷惑をこちらとしては掛けたくないのだが……。―――最初は少ししたらお暇しようとした、でも出来なかった。

 泊まるとなると寝巻きはおろか下着まで持ち合わせていない。さすがに他人に自分のを貸すのは年この頃の女子には出来まいと、胸の内で潜ませていたが、その手を返すがごとく結局部屋の主、クラウンが喜んで両方を貸してくれた。―――彼女の趨勢にまた一歩近づいているのが眼に見えた。

 寝巻きはというとYシャツ(しかもぶかぶかの)が一枚手渡されただけだった。――いちゃもんをつけられるほど私の現在の身分が低いのは分かっている。だから彼女にありがとうと称して、とりあえず制服を脱ぐことにした。

 けれどそれと引き換えに無言の刻が生まれてしまった。生地のすれる音と主に鼻息の荒い音が目立った。

 私が着替え終わるまでそれは続き、さらにクラウンの無言の凝視付きときて、内心の緊張は更に強化され、時折聞こえてくる声はすべて無視をした。

「あのぉ……クラウン、さ…恥ずかしい、んだよね……そんなに見つめられると……さ!」

 私は恥ずかしい旨を伝えた。けれどそれが逆効果となってしまい、彼女は更に興奮し鼻血を出してしまった。真っ赤な鮮血が辺りに迸りベッド(未使用の方)を大きく汚してしまう。広がる血はみるみると湖を型取っていき、止まるころにはシーツが、いや多分マットまで駄目にしてしまった可能性が高い。

「どうする?………クラウン?先生呼ぶか?」

「いえ、しょふとうじかんがせまふてまふので……これは明日どうにかしまふぉ」

 鼻を拭きながら、話しているのも相まって、もふもふと所ところ発音が変になっていた。私は思わず苦笑してしまって、クラウンがぷくっと頬膨らませた。

「明日か……。シミ抜きしなくて大丈夫かな?」

「大丈夫です!―――できれば今すぐにでもやりたいところなのですが、やはり時間が……」

「仕方ない…か?よし!―――って、こういう場合誰に相談すればいいんだ?」

「事務に行けばどうにかなるかと思いますわ……!」

 二人して弱気だが、今ここで中途半端に手を出して諦めるのもなにか虫がよくないので、とりあえず寝ることにした。消灯時間に針が届きそうだったからだ。

 とりあえずクラウンをベッドの方へ促す。ベッドは一つしかない。狭いが我慢して眠るしかない。あんな血生臭いベッドで眠るのだけはごめんだから。

 彼女を壁際に寄せて、通路側に私が寝る事で解決した。

 電気を消して、布団に潜るとすぐに睡魔が訪れたが、それをクラウンが搔き消すように話しかけてきた。それは少し甘えているような声音だった。

「あすの……。腕借りていいですか?」

「腕?どうしてさ?」

 実は、彼女が照れ恥ずかしいことなのですが…と耳元で話したことで腕を求められている旨が分かった。それに彼女の表情は暗闇の中でなぜか読み取ることができた。―――気がした。

「ああ、その気持ちわかるな」

「お恥ずかしながら……」

「ほら、つかんでいいぞ?」

 少し脇との感覚を空けて、腕を差し出した。

 すると、すぐに気持ちに応えるかのように自身の腕を絡めてきて、それから腕に温もりが宿った。特に胸が左腕に絡まれた時、少しどきりとしたが暗闇の中ということもアリ多分誤魔化せたかと思う。

 ある程度経つと、さすがに押し付けている胸が、腕を本格的にロックしてきた。でも、彼女の為ということもあって結局黙って、眼を閉じて眠る選択をする得ざるを得なかった。けれど、疲れている分案外早くと睡眠の波に乗ることができ、最後になにか聴こえたような聴こえなかったようなあやむやな感じで眠りに着いてしまった。

 

 

 あらかじめセットさせていた電波時計のアラームに目が醒めた。

 寝ぼけつつもアラームを止めた。身を起こし、少し身体を動かして窓際へ。

 カーテンに手を掛け、思いっきりに陽光を浴びるかのようにカーテンを引いた。ここで、朝だと寝ぼけた頭が確認する。伸びをして欠伸をした。

 その時、血生臭いにおいを思いっきり吸って、昨日のことが脳裏に浮かぶ。

 クラウンが鼻血を吹き、その際にベッドを大半以上真っ赤に染めてしまったのだ。どこからそんな血が……と、私は苦笑しつつ、その張本人に値する白銀の少女の眠るベッドに向かう。

 一度、優しく名前を呼ぶと、ゆっくりとだが白銀の少女は眼を開く。

 元々が西洋人形のような容姿をしているためか、この一瞬の出来事が幻想的で、まるで生を受けた人形が眼を醒ますワンシーンを眼前で体験しているかのような一瞬だった。つい感嘆を漏らしていた。

 彼女は寝ぼけ眼を擦りつつ、何も発さない私に小首を傾げ、見守っていた。

 その射るような翡翠の玉を宿した双眸は立っている私を上目使いで覗かしていた。

「ああ…、おはよう。クラウン?」

「は、…い。おはよ、う……ございます……!明日乃」

「昨日はよく眠れたか?」

「はい…。明日乃の腕がとてもよくて、……本当に」

 ワンテンポリズムが遅れた私の様子に何の疑問を持たずに、クラウンは眼を擦り返答して見せた。

 言動と抑揚からするに、よく眠れたのだろうということがわかった。本人がよかったというのなら良かったのだろう。

「さて、そろそろ起きようぜ?」

「ふぁ~~~。わかってます、わ……!」

 彼女事態にエンジンが掛かるのは時間が有するようだ。朝が弱いか……。

 ベッドの上で伸びをする。

 こう、互いにYシャツを着ているとなると、あまり恥ずかしくはないものだった。けれど、それに合う身体というのも同時に付いてくるのも忘れていた。――なんとなくある一部分の差でインパクトが変わってしまうようだ。

「なんか、同じ服着ているのにクラウンの方がエロく見えるわ・・・」

「そうですか?」

 一見パッと見てもそこまでの大差はないはずだ。引きしまった余分な肉が付いていないウエスト。手が行き届いている綺麗な脚。そしてここで大差が出てしまった胸。―――手の届く範囲は怠らずにケアをしているがさすがに胸に関することは―――効果がない。まだ希望はあるはずなのだが、今後に期待したい!としか―――。

 伸びをした際にシャツのボタンが飛ぶのではないか?と疑ってしまうほどのバストに、女子ながらつばを飲んでしまった。それに、彼女は全体的に少女より女性よりのスタイルに傾いているのが分かった。―――豊富な胸囲に、程良く筋肉がついた脚部、そして艶めかしい腰つきが、全てが私の敗北に喫していることを痛感させる。唯一勝っているのは背丈くらいか――――。

「―――明日乃?」

「あっ、いや、その……」

 クラウンはベッドから立ち上がり、いつの間にか身を寄せてこちらの顔色をうかがっていた。少し頬に赤味が増して、やけに身体を密着させてくるのに対して私は意識してしまう。

 彼女の肩に手を置き、一度遠ざけ、頭が取れるのではないかと思うくらい振り、とっさに思い浮かんだことを口にした。

「さ、さぁ…きがえようか……?時間もそんなにないしな!」

「どうして、私の背中を押しますの?!……あ、明日乃?」

 言下とともにくるんとクラウンを回転させ、浴室の方に押す形になってしまった。それにもちろん反応を見せるクラウンはどこか焦躁としていて、どこか残念そうな声音を出していた。

 パタンとドアの開閉音を背中で受け、その場にずるずると背を預けたまんま床に腰を下ろす。もちろん彼女の着替えに値するものは渡した。準備にぬかりはない。それもとっさの判断だったが。

(昨日みたいに、見られたまま着替えるのはどこか疲れる。別に一緒に着替えるのが嫌というのではなくて、圧殺されそうで、怖かった)

 そうこう落ち着いている暇はない。そろそろ彼女が準備を済ませて、出てきそうだから、私も早く準備を済ませることにした。これでもし準備をしていなければ、何のために私は頑張ったのだろうと反省会を開くところだろう。そうなるわけにもいかない!

 

 

「どうして、先ほどは別々に準備をなさったのですか?」

 さっそく、人が触れてきてほしくないところを触ってきた。

「クラウンの方が早く済みそうだったから、少し強引に……」

「―――そうですか……」

 納得したのかクラウンはこれ以上、この話に触れてこなかった。そして私もホッとしてゆっくりとこのことを忘れていく。

 さておき、今日は少し早めに部屋を出てきた。理由は一つ。ベッドの件だ。朝早くに頼んでおけば夕方くらいには最低でも仕上がっていると踏んだ私はそれをクラウンに道中で伝える。本人の反応はナイスアイディアと言わんばかりの笑みだった。―――そして彼女の笑みで今日が始めるわけで―――。

 それから積もる話もほどほどに私たちは二人の時間を有意義に楽しんでいた。―――が、クラウンの表情が暗澹としていたことに私は優しく接してみた。

「どうした?……元気ないな?」

 そのことを口にしたのは食堂の席に着いてからだった。私と彼女は対面し合い適当に食しつつ聞いてみるのだ。けれど、どこか声に張りが無く別人を彷彿させるのだった。

「ははは…。実はベッドの件で」

「ふぅ…。心配し過ぎだって、……まぁ何考えているかはわかんないけど、さ。あまり深く考えないでほしい。今は、ちょっとわかんないな…?」

「そうですわね……?」

 少しの間、噤んでしまった。互いに箸は適当に動いていたが、どこか味気が無く。釈然としない気持ちがその場に残っていた。ご飯茶椀を見つめ、意を介した言葉が私の口から自然と彼女に伝えようと紡ごうとしていた。

「あのさ…。なんで私がベッドの件について首を突っ込んでいるのか分かるか?」

「お人好しだからですか?」

 今度は茶碗じゃなく彼女を見つめていた。

「多分ね。―――よく言われる。でもベッドの件はクラウン一人に任せるわけにはいかないんだよね。だって、さ。―――私もあの部屋の同居人だしさ!」

「―――えっ!?それって……」

「ああ、よろしくな?こんな私でよければ!」

「私と一緒に、居てくれますの?」

「ああ、お前、一人っきりだと危なっかしい。って、私の野生の感がそう言っている」

「ほんとうに……?本当に?!―――本当にいいんですか!?」

「ああ!何度も言わせんなっての!?」

 悪戯成分の入った私の笑みがあり、決めポーズのかような指で銃を作りバンっと射抜いて見せる。

「これは昨日寝るときにそう決めた。これは宣誓だ!」

 私の思いが伝わったのかクラウンは握っていた箸を落としてしまう。お茶碗は何とかキャッチ。

 それが地面に転がり落ちた時、食堂が静まり返り、視線が私たちに集まった。―――クラウンが泣いたのだ。

 彼女の大きな瞳には大粒の泪が溜まって、今にも頬を濡らしそうだった。

 私が手を差し出そうとする前に自身の手で塞ぎこんでしまった。これでは表情を見てとることができない。そしてこの俯き具合が他の生徒にも煽ってしまい、ところどころでコソコソと話をする姿が見受けられた。

「立てるか?ここじゃ話が出来そうにない。場所を変えようぜ?」

 無言にも縦に頷き、彼女の腕を私が取り上げ、連れていく。行先は―――やっぱ、あそこか。

 食堂を出るまで終始視線の嵐は絶えることを知らなかった。それでも、前を見据え手をとり彼女を引っ張ったのには変わりはない。

 なるべく人通りが少ないところを選び、なんとか目的地まであとわずかとなった。最後に目的地まで伸びる階段を登ればフィニッシュとなるわけだ。

「明日乃……手を離して下さいな……?もうあるけ、ますから?」

「ああ、そうか」

 ゆっくりと彼女の腕を離し、様子を伺う。もしかしたら、転んでしまうのではないだろうかと心配してしまうのだ。だが、その心配も不要だったらしく、彼女はいつも通りに振舞って見せた。

「どうして、あの時、涙が出たのでしょう?」

「じゃあ逆に聞くけどさ、感情的にはどうだったんだよ?」

「―――嬉しかった。とても―――」

「じゃあ、涙流しても良いんじゃないか?」

「どうしてですの?」

 白銀の少女は不思議そうに聞いてきた。

「そりゃあ、涙は嬉しい時も悲しい時も流せるから。その、まずは驚かせて悪かった」

「こちらこそ、明日乃にまた御迷惑を―――」

「そんなのいいって!」

 ぽんぽんと彼女の頭の上で手を弾ませる。

 くすぐったそうに俯く。

「これからは、泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑うでいいんじゃないか?」

「ふふ。明日乃らしいですわね」

「だろ!?」

 ひとまず、彼女が笑った。私は彼女の笑顔が好きだ。そのほかはまだ分からない。だけど、これから触れていけばいい。

 ここを選んだのは本当によかった。――――屋上。ここは彼女との思い出の場所であり、始まりの場所でもある。

 普段から解放されていて、誰でも使用することが可能だ。だからよく利用させてもらっている。けれど、今朝みたいな明るい時間に利用するものは多分私たちくらいしかいない。せいぜい利用されるのは昼頃だろし、あえてそこに注目してクラウンを連れてきたわけだ。

 蒼穹の蒼が悩み事を忘れさせ、雲の白が風に乗って流されるように悩みも消え、いつの間にか笑いに変えてしまう。

 それにもう一つここを選んだ理由がある。―――騒いでもいいように、つまり彼女が泣いた時のことも考慮するとここは色々と都合がいい。

「あの……明日乃」

「どうした?」

「胸借りていいですか?」

「胸?」

 胸を貸せといきなり言われると、違う方を想像してしまった。彼女の言葉足らずで一瞬思考が止まるが、良く考えるとそういうことだったのかと納得した。

「分かった。思いっきり泣け!泣いて泣いて!強くなれ!」

 ガバッと、天に腕を預けると彼女が真正面から強く飛びついてくる。

 それからすぐに彼女は泣いた。

 私は気兼ねたように彼女を抱き止めた。彼女の温もりが体中に染みわたってくるのが分かる。

 大きく泣き、それに優しき頭を撫で落ち着かせる。

 こうしてクラウンが貯めた鬱積のほんの一部は私の中で解消された。こうただ泣き続けられるとなると相当な数がまだ残っていることが見受けられる。なら、少しでも私は彼女を助けられたら――――という感情に気付くのはまだ少し先のことだ。

「無茶し過ぎなんだよ…!」

 日は浅いけれど、彼女のひとりの孤独さが少しわかる。――無理をして、強がった演技を見せて、でもそれが誰にもわからなくて。悔しくて―――。

 でも、そんな時私と出会った。月という処とともに。

 ―――クラウンはどこか行き過ぎているところがあるけれど、それも彼女で。私は彼女の笑顔が好きなんだ。

 時にたくましく、時に負けず嫌いで、時に――――あれ?なんで出会った日が浅いのにクラウンのことをここまで、知ってるんだ?

 

 

「―――明日乃?」

「――おお、泣きやんだか?」

「はい。すっかりと。もう大丈夫ですわ!」

「そりゃあ、心強いな」

 安堵している自分がいて、疑問をどこかに抱え込んでいる二種類の私がいた。

「クラウン。さっきの件だけどさ、あれは本物だからな?」

「分かってますわ!」

「では、放課後に行くこに――――」

 

 

 キ―ンコーンカ―ンコーン

 

 

 彼女の声は途中で途切れ、私は茫然としていた。

 予鈴だと思われるが、生憎と時計を持ち合わせていない。なので、クラウンに聞くと、どうやら予鈴らしい。ということはHRがすでに終わって授業に入ろうとしている。―――たしか一限目は織斑先生の授業が入っていたはず。走れば間に合うが、彼女はどうすれば?と、ふと、過る。

「一様聞くけどさ、クラウンってなにか言い訳できるたち?」

「いいえ、私はそのままのことを……」

「それだけはちょっと……!」

 白銀の少女は小首を傾げているものの、言いたいことはどうして?だろう。言わなくてもわかる。

 狼狽しつつも、それなりに旨を伝えると表情上は納得している模様ではあるものの内面はどうだろうか?

 どこまでも追及してくるその翡翠の玉は私を非常に困らせた。小時間話合っても彼女の正論が飛んでくるばかりで、私の気持ちはクラウンに傾き始めていた。というより、もう倒れていた。

 話し合いの結果、互いに正直に話すで輪は修復された。

 足取りが重いが教室へ向かうことにした。

 彼女を見送り、いざ教室の前に立つと緊張して腹が痛くなってきたのだ。ここで、変に言いわけをすると相手が相手なので、彼女の約束通りに正直に話すこととなった。

 

 

 授業には途中参加で、昼休みに織斑先生に及ばれすると、レポートを書くか、グラウンドを走るかの二択が迫られた。逡巡はしたもののやはり走って解消することを選び、放課後に至る。

 グラウンドに到着するや否やさっそく部活動の風景が映る。

 走っているのは陸上部や歓声が聴こえるのはもっと奥の方からだった。ユニフォームを着ているのはソフトボール部だろうか……etc。

 とりあえず、ISの関連さえなければ、どこにでもある私立の女子高と大差ない。

 今まで、何かと変わったことに巻きこまれてきたけれど、こう改めて見返してみると、何が変わったのかと思い返してしまう。とりわけ最近気付いたのが勇気があることだった。それと、良心的くらいだろうか。―――それでもこうして自分と向き合うことが出来るようになったのが一番の成果ではないだろうか。

「なに、かっこつけちゃってるんだか・・・」

 自分に苦笑をし、グラウンドに踏み込む前にストレッチを重要にやっていく。

 そんな時だった。声がした。すごく近く。しかも聞き覚えのある声で―――

「明日乃!」

「おお!!クラウンじゃないか?どうした?」

「私も走ろうかと思いまして……ちょうど明日乃もいる事ですし」

「そうかい」

 私の傍に着くなり、白銀の少女はストレッチを私と同じようにし始める。

 私と同じ学校指定のジャージを身に纏い、いつも流している髪を一つの房にまとめていた。

「クラウンは、纏めていても、流していても似合うね」

「ふぇぇ!?」

 ストレッチをやめ、身体をくねらせる。本人なりに照れているのだろう。

 思わぬ一言が彼女を困らせてしまったようだ。

「―――ふふふふ、ふいうちはだめですよ!」

「悪い。つい変化に感想を言ってしまった。これ、本音な」

「―――うれしいですけど……明日乃のはそこらの人が言うより突発性があって、免疫がつきませんわ―――」

 白銀の少女は悶え、力なく崩れ落ちた。

 

 

 

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