IS―インフィニット・ストラトス―IXA   作:理十日

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第二十話 さあ、お取りなさい

 

 

「よし。今日のメニューはこんなもんで、終わりにするかな?」

 他の人の耳に聞こえるか聞こえない程度の声量をトレーニングルームで一人ごちる。

 セシリア戦まで残りわずかとなり、焦躁する気持ちもあるが、躍起になって身体を壊してからではクラウンに顔向けができない。では限りのある時間で何が出来るか。それはクラウンが渡してくれたメニューと短い時間で掴んだ感覚を忘れないことだった。要は落ち着いていれば普通に戦えるということだ。

 そのメニューを小一時間ほど掛けて消化させたのだった。基礎からの体力作り。ISを動かすのにだって体力は必要だ。小さなことでもコツコツとこなしていけば力がつく。それを知っているから、今こうしてトレーニングで汗を流しているのだ。一朝一夕で力が手に入るは入るが、やはりそれはやり続ける事に意味がある。

 トレーニングルームの脇に設けられた休憩室でトレーニングの際に出た、汗の玉をタオルで拭い、先ほど買った自販機のスポーツドリンクを口に運ぶ。

 渇いた体にスポーツドリンクが染みわたる。思わず、息を漏らす。

 それからある程度身体を冷やしたところで女子更衣室に向かうことにした。

 ある程度歩くと喉が渇く。その都度その都度、スポーツドリンクを歩きながら飲んでしまう。幸いに人影は私以外に存在せず、のびのびとした廊下だったが、少し気味が悪い気がした。

 曲がり角を曲がろうとし、ほんの一瞬周囲を一瞥した。

 先ほどから誰かに見られているような気がしたため、反射的にみやる。少し注意深く。

 何ともないのなら、そのまま通り過ぎるはずだった。―――が、私は見てしまった。―――白い何かを。

 

 

 最初は軽い感じで見たのだ。

(誰かがいる……?)

 周囲を見るなり、眼が止まったのは角の近くに設けられた空いた教室だった。

 ここの角はT字に分かれる道で、右手の方は私が歩いてきた道。つまり先がある。左手はエレベーターがあり、見ての通り行き止まりだ。まあ、エレベーターに乗ってしまえば話が変わるが一般生徒には残念ながら解放されていない。それと違って、この教室は開放されてはいるが、普段から使われるような教室ではない。それ故教室で使用されない机や椅子が所狭しとこの場所に敷き詰められている。以前間違えてこの教室に入った時に確認した。

 その視線らしきものは教室から発されているのではないかと思う。とりあえず、何らかの疑問を持った私はその教室に赴き、ドアをくぐり、教室の中に身を乗り出そうとしたのだが、私の過去の記憶はやはり正しかった。

 改めてドアを開けると、所狭しに机、椅子が並べられていてとても人が身体の自由を利かすことの出来ない状態を物語っていて、綺麗に積まれた机と椅子は一つの芸術を作り上げていた。そんな場所に留まることは多分出来ない。だって、隙間がほとんどないのだ。よほど身体が細いのか、それとも人じゃあないのか……。考えただけで背筋がゾクッとした。無闇に考えるのはやめよう。特に後者の件については。

 そんな場所から私を見ていたとすると、まず無理だろう。

 根拠といったものはないが、直感で分かることは、相手方が明らかに不利だってこと。壁と机の距離はほんの十センチ未満なのだから動けばそれなりに反動があってもいいはず。それが無いということはやはり――――。

(いやいや―――それはないだろう?!)

 ブルンブルンと頭が取れるのではないかと思うくらい頭を横に振って悪い思考を遮った。

 でも、先ほどからここが秘密基地か何かに見えてきた。やはり、幼少時代に外で遊びまわっていたせいだろうか。―――思わず苦笑を浮かべる。

 私は笑顔を引っ込め、真一文字に口を結び、背後を見やった。

「――――!」

 私の微動作に気がついたそれはさっきの白い何かだろう。視線が似たような感じがした。

 多分その白というのは髪の毛の白のことだろう。後ろ髪でそう解釈させてもらった。

 つまり、逃げた。

 それに吊られるようにして私も廊下を走った。

 ぺたぺたとコンクリートに吸いつく足音。上履きのゴムとは違う吸いつく音がした。言うのであれば、素足に近い音だった。

そんなことよりも廊下を駆ける速度のほうが私としてはよっぽど驚いていた。常人とは思えぬほどの脚力に私は―――。

「は、はえーな?!」

 とリアクションをしてしまう。次第に距離を伸ばされて足音は小さくなり、完全に音が途絶えてしまった。

 既に日が傾き始めている。暗くなる前に見つけたいところだ。

 でも、どこにいるのだろうか―――。ふと、自分らしくもない神頼みというやつしてみた。

 少なからず私はその子に期待の念を押している。分からないが、出来る事ならその子に聞きたいことがある。―――どうして私から逃げるのかを―――。

 もしかしたら、座敷わらしかもしれない。実際に見たものは幸福が訪れ、家も裕福になる。こういう言い伝えもある。まあ、悪戯をするっていう面はまさに今の状態を絵に描いたようだし。

 そんな微塵の可能性もない迷信に惑わされるのも悪くない。と、口の端を吊りあがらせると不思議と気持ちが落ち着き、身体に清涼感が訪れる。

「こっちだ!」

 これまでにないくらい落ち着いているのが自分でもよくわかる。

 聴覚を緊張させ、眼を閉じ集中する。すると、ひそかだが足音が聞こえる。それも下の方から。深く、深く底からその音は聞こえるのだ。

 眼を見開き、眼前には階段がある。そこから、下へ、下へ降下してゆく。

 階段を降り切ると、急に暗闇が支配する。

 私は臆することなく、歩くことにした。見えないはずなのに、足が前へ前へと誘われるように進んでいく。眼は慣れ、うっすらとだが周囲が分かる。その中にも微かにだが、あの子の気配を感じ取っていた。どこかに潜んでいるとみていいらしい。

 この暗さは人工的で、光が無い。だとすると、ここは倉庫ではないだろうか?この学園には色々と設備が設けられているのだから今日たまたま使われてないってこともありえる。本当にたまたま迷い込んでしまっただけで。

 ―――ゴン!!―――

 一瞬の油断だった。

 顔面を酷く打った。特に額部分に堅い何かがぶつかった。その際に当たった方からも鈍い金属のような音がした。

(―――壁?)

 片手を額に添え、もう片方の手でその金属らしいものに触れた。

 ドアや壁ではない、また違う感覚。ひんやりとしていて、手に吸いつく感触。そしてなにより、このさわり心地は―――。

「ISっ!?」

 紛れもないそれであった。はじめに甲高い金属音が耳をつんざき、直接触っていることで本体から流れ込んでくる情報量に眉を中心に集め、低温やけどをしているみたいに芯から痺れが流れ込んでくる。

 顔は歪むことを止め、次第に顔が和らいでくる。それに倣うように産毛も逆立つことを止めた。

 それは手を離したからだ。まだ手が痺れの余韻が残っている。

 今分かったことは眼前にあるのがISであるのに間違いはない。唯それだけだ。そして、もう一つ分かったことがある。そのISに触れたことでわかったことだ。

 ――――あの子の気配が、触ったISから感じられたということ―――。

 思わず退く。じゃあ、座敷わらしじゃなくて……。

「一体何なんだ?!」

 でもこれはある意味千載一遇ではないだろうか?

 こうしてわざわざ私の前に現れて、何らかのアピールをするということはどこか裏があるような気がする。

 そうして、吸い込まれるように私の手は再びISに触れるのだ。何かを確かめるかのように―――。

 ――――ピタ。

 今度は何も起こらない。――――ということは私の僻見とみていいだろう。考えすぎだったのか?

 鎌首を垂れる。あにはからんや良い線をたどっていたはずなのにやはり駄目だったか。思わず吐露を吐いてしまう。

 では、なぜここに私を呼んだのか。遺憾しがたい気持ちでいっぱいだった。

(じゃあ、ここまで来たのってなんなんだよっ!!)

 激昂する気持がどうやらそれに伝わったらしく、黙っていたISが急に夥しいほどの光をその場に散らした。

 眼前に広がる光が私を包み込むような形となり、思考を遮った。

 

 

「……!―――ここは、教室?」

 何かに引っ張られるように身を起こすと、机や椅子が綺麗に整頓されていて、外の景色から差し込む茜色の夕差しが教室を真っ赤に染め上げていた。私の口がポロっと口走ると案の定そこは教室であった。でもどこの教室なのだろうと混乱する間もなく私はまたしても何かに気がつく。そう、黒板。黒板の右側に日付と日直が書いてあって、藤崎と吉音とそう綴られていた。

 そして私が突っ伏して寝ていた席も紛れもなく私が使用しているものであった。なぜ、突っ伏して寝ていたのがわかったかというと、腕が痛かったからだ。

 それと、どうやら私一人がこの教室に居るわけではないそうだ。

「もしかして、さっきから私を見ていたのって君かな?」

 完全に振り向くのではなく、尻目で確認する程度だ。

 その子は窓側の後ろに机に腰を下ろしていた。足を組み、手をついてどこか楽しそうな雰囲気を醸し出しながらこちらを見つめていた。

 数拍置いて、返事が返って来た。

「どうして、背中を向けているの?僕、君のお顔がよく見たいんだけれど―――?」

「それは悪かったね。じゃあ、私も君の近くに行っていいかな?」

「いいよ」

 短い返事を相槌ち、私は席を立ちあがり、その子の元に足を運ばす。

 その子も腰かけていた机から離れ、私たちは互いの顔が拝見できる距離まで迫っていた。

「君、背がデカイネ?」

「そういう君こそ、私の友人にそっくりだよ」

「それはどんな人?」

「私より、強くて、たくましい女の子だよ」

 その子の髪は白く、ついクラウンを彷彿させてしまう。でも、似たよってても明らかな違いだっていくつかもある。

 一つは髪の長さだ。肩をくすぐる位の長さで先ほど後ろ髪を拝見した時に確認済みだ。

 二つ目は容姿そのものだ。外観的にはクラウンを小さめにした感じで、小学三年生か四年生くらいの大きさしかない。まるで幼少期の彼女を見ているみたいだが、残念ながら私の思い込みに違いない。

 私はクラウンについての大まかな旨を話した。

「へえ。その子は面白い子だね。ちょっと羨ましいよ」

「もしかして君、友達いないの?」

 なんとも失礼な発言だ。我ながら口にした後に後悔をしているよ。

 でもその子は微笑を浮かべ、こう言った。

「あはは。そうだね、君の言うとおり僕には親しい友と呼べるものがいないんだ。まず、ここから僕は出る事が出来ない」

「どういうことだよ?」

 今度はその子が自分に対しての旨を私に話した。

 それは惨いものなのかもしれない。彼女は自身のことをコアといった。

 コアつまりは中心核と呼ばれるものだ。それは多分ISのコアのことを指しているのだろうか?

 それはまだよくは分からないが、彼女はこうも言っていた。―――私が見えるのは稀にいると。だとするとやはりこれは降って湧いた好奇と思ってもよさそうだ。

「だったら、私とダチにならないか?」

「ダチ?それなに?」

「ふっ。ダチっていうのはな友達って意味だよ。私は照れ臭いからダチって言ってんだけどさ」

「そっか。ダチか……」

 私はあの子を見ていると、どうしてもクラウンの影を感じてしまう。特に笑顔は彼女と同じ笑い方をしてみせる。それが影と重なってクラウンという虚像を一瞬魅せる。

「ダチったら、まず名前を呼び合うことだな。私は明日乃。君は?」

「僕は――――久遠」

「くおん?―――変わった名前だな?」

「それは明日乃もじゃないかな?」

「それもそうだな!」

 ぷっと、吹き出し笑いをして見せるとつられて久遠も声をあげて大笑いした。何が面白いのか分からないがとにかく笑いが出るのだ。笑いに理由なんかあるか。面白いと思ったら笑う。それに笑うっていうのは色々と守ってくれる。病気とか病気とか。

「こんなに笑うの初めて」

「なら、良かった。これで、私たちはダチだ。ほい」

 私は友達の証として握手を要求した。要求というかとにかく握手をしてくれると嬉しいのだけれど。

「あの……これは?」

「友達の証だ。なっ?ほら」

「うん」

 私に促されると、久遠は私の右手に自身の手を絡めてくる。肌がさらさらしていて、私より手が小さい。力加減を間違えたらぽきっと逝ってしまいそうな華奢な体つきだった。

 思いっきり握手をした後、ゆっくりと久遠の手が名残惜しそうに離れていく。

「そろそろ、お別れの時間ってやつか?」

「―――!……どうしてそれを!」

「そりゃあ、久遠の顔が沈んでたからだよ。見ればわかる。―――そっか、やっぱりここはお前さんの世界で合ってたみたいだな」

「いつから?分かってたの?」

 久遠の歯切れが悪くなってきた。まるで、知られることが怖いみたいだ。

「確かに知られると困ることもあるな。それはわかる。でもさ私たちはダチだ。今日が最初で最後とは言わせねえ。この感じだと、もう何回か顔を合わせそうなんだよな……」

「そうだといいね」

「こういうときは笑うの?!」

 そういうなり私は久遠のほっぺを思いっきり引っ張り顔を引きつらせる。もちもちの肌が心地よい。

「やめちぇくだふぁい」

「お前が笑うまで止めない」

「わ、わかりまふぅた」

 ほっぺから指をはがすと久遠は精一杯の笑顔を浮かべたのだった。

「やりゃあ、出来んじゃないか」

 うっすらと久遠が見定める事が出来なくなってきた。時間が迫って来ているみたいだ視界がぼやけているのは私の方かあちらの方か。でも、言葉は通じるだろう。

なら、最後のに――――。

 

 

「またな!久遠」

 

 

 この言葉はしっかり久遠に届いているのだろうか。それを知るのは神のみの話だった。

 

 

「まぶしっ!?」

 開口一番に放ったのがその言葉だった。

 本当にまぶしいのだ。

 腕で光を遮り、ようやく目が慣れてきたところで腕をどかす。

 瞬刻、もしかしてと鑑みたが、私の感は百八度間違っていた。

 なぜなら、私のよく知る人が眼前にいたのだから。

「く、クラウン?!」

「明日乃?!―――良かった」

 私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。それを見た白銀の彼女はクスクスと笑う。

「クラウン。どうして君がここに?」

「それはこちらのセリフですわ」

「私は、その妖精を見て……だね……」

「妖精?」

「ああ、そう。妖精。クラウンをそのまま小さくした感じの女の子でさ!」

 彼女に思い当たる節があるのだろうか一瞬険しい表情を刻む。だが、すぐにいつもの表情に戻ったのは言うまでもない。

 でも、この後の彼女の発言には私は少々驚かせられる。

「もしかして、久遠を拝見したのですか?」

「ん?―――いま、久遠って……?」

「はい。確かに言いましたわ。でも、本当にあなたは久遠を―――」

「ダチになった。ちゃんと、会話をして、握手もした。けして、久遠は悪い奴じゃない」

「―――分かりましたわ。少々お待ち下さい」

 私は少し剣幕になっていた。悪い方に考えを捉えてしまい声を荒げてしまった。あのクラウンの顔は何を意味するのか私は知りたい。悪い方に話が傾いてほしくない。

 彼女が携帯端末を操作し、耳元に当てたということは電話をするのだろう。相手は多分上だ。

 もしかしたら、このIS。なにか特別の力があるのではないだろうか?

 蒼く輝く装甲のIS。

 この機体とは一波乱がありそうだ。私は口角をあげ、口元を緩ます。

「お待たせしましたわ。明日乃」

「で、私に下るのは何だ?」

 クラウンだろうが――――。

 でも、そのクラウンの表情が辛辣なものではなく、どこか祝福している表情だった。私もファイティングポーズを解き、クラウンに正面から向き合う。

「どこか、嬉しそうだね?」

「はい。たったいま、喜ばしい報告がありましたの」

「それは私宛でいいのかな?」

「はい」

「じゃあ、話してくれ」

 ここにいるのは私たち二人と蒼く輝くISしかない。

 案の定ここは私が読んでいた通り倉庫で間違えは無かった。照明が全てを照らし、ようやく判断が出来るようになった。広領的に教室四つ分。隅に必要な機材が収納できる棚がいくつか見受けられる。

 ポツンと中心部にこれだけ置かれているとなると少々変な気分にもなる。それに辿り着いた私も我ながらすごいと思う。

 沈黙がいつの間にか私たちのいる空間を支配していた。

 どこか言いにくそうなことなのだろうか。もじもじと少々落ち着きが無い。

 頬を朱に染め、頭を垂れ、上目使いでこちらをチラチラと覗かしてくる。

「もしもし、クラウンさん?」

「あっ、はい」

「もしかして言いにくいことか?」

「はい。明日乃がこれを聞いて、承諾してくれるかどうか気なってしまって―――」

「で、なかなか言い出せなかったと?」

 こくんと首を縦に頷かせるクラウン。

 私は彼女の肩を掴み母親が子を諭すような口調で彼女に聞いてみた。

「もしかして、久遠のこと?」

「はい。―――明日乃はなんでもお見通しですね」

「忘れろって?」

「いえ、その。できれば、久遠のパイロットになってほしいのです」

「いいのか?―――どっから見てもお前の専用機みたいだが」

「はい。父から頂きました。でも、明日乃は久遠を直に拝見されている。私には見る事も出来なかった。多分それは気持ちの差だと思います。久遠は第四世代のISです。力を求めるものにはこの力が必要だと私は思っております。ですのでこれは―――」

 私はクラウンを無意識に抱きしめていた。そして頭を撫でていた。

「ありがとう。でもこれだけは忘れないで、私は力がほしいのではないんだ。これを出来るだけ巧く使えるかそれを知りたい」

「わかりましたわ。あなたの信念を私にもどうか見せてください」

「口下手だから、クラウンにちゃんと伝わったかどうかわからないけど、うん。やるだけやってみるから、見てて」

 クラウンが、パイロットスーツの入った小包を私に寄越してきた。ヴィクター社製のものだった。半袖の紺のインナーに、膝までの紺色のスパッツが小包に入っていた。ヴィクタ―社のパイロットスーツの特性は軽量感、解放感などをコンセプトに作られている。まるで付けているのが分からないなどといったキャッチコピーなどもあったが、これが面白いことに爆発的ヒットを記録した。値段もリーズナブルで誰でも手に入れる事が可能だった。いまでは数多くの商品が出回っている。なかでも今回私が手にしたのはカタログで見たことのない商品だった。脇に蒼色のラインが施されている。キャッチーなデザインで私は少し嬉しくなった。

 着替え終わると、蒼い装甲―――久遠。の背にコードのようなものを接続していた。

 その配線を辿ると宙にディスプレイを六枚展開したクラウンが心待ちにしていた。

「よお……おまたせ」

「素敵ですわ!明日乃♪」

「そりゃあ、どうも」

 心なしの返事を返し、久遠の前で立ち止まり、一度撫でる。

 そしてクラウンの指示でフェッティングとパーソナイズが施された。

「一通りのことは分かった。ってか、久遠の武器って、花の名前っぽいのが多いけど…」

「父が絶賛中二病なもので――――」

 眼を逸らされた。それに困っている娘ってか。大変だな。同情しか出来ないけれど。

「とりあえず、ありがとう。これなら、セシリアに……」

「あなたは大きな剣を掴もうとしている。―――さあ、お取りなさい」

「なにか、言ったか?」

「いいえ、独り言ですわ」

 ふーん。了解。

 

 

 

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