理「せーの……」
理・明「「あけましておめでとうございます!!」」
理「年明けちゃったね?年末は仕事がぎりぎりまであったから、疲れて、早く寝ちゃったなぁ……結局年越しそば食べれてないしね……」
明「別に、ここでプライベートの話をしなくてもいいんじゃない?私なんて、まだ六月の始めだよ?だんだん気温が高くなってるんだから……」
理「ごめんね、書くの遅くて……」
明「いや、別に……そういう意味じゃなくて……」
理「なんか、明日乃と話してると、友達のいない奴が必至こいてるよって、思われそうだな……」
明「ほんと、マイナスな考えしかできないんだな……新年早々、縁起が悪いな。ほら、今日くらいは明るくしなさい!!」
理「ほらさ、こういうところでしか話すタイミングがないからさ、つい。実際にさ、友達はいなし、携帯は壊れるし、去年はいろいろあったな……」
明「そうやって、語れるくらいの出来事がちゃんとあったんだから、いいじゃん。そういう刺激もある方が、生きがいってものがあるじゃん。いいじゃん、生きてんだから」
理「明日乃。よし、暗い話はここまでにしよう。フリを頼むぞ!」
明「季節は六月。湿っぽい季節がやってきた。そんな中で、二つの物語が幕を開ける。少女は手にした力を正しい方向に導けるのだろうか?善と悪が交わりし時、少女が見つめる先にはいったい何が!?――――こんな感じ?」
理「オッケイ!!また後ほど」
明日乃・一深紫阿の二人は地下ガレージより紫阿の機体〝サラシナ〟の調整を行う最中、セシリア・せしりあの二人は心を通わせた頃。
それより少し前、……日が傾くか傾かない頃合い、ざっくり言えば放課後になったばかりの時間だ。
生徒たちが各々の行動に走る中、もう一つの物語が幕を開ける。
「久々に、ここに来れましたわ……。明日乃は元気にやっているでしょうか?あぁ、早く会いたいですわ……!!」
放課後の廊下に、響き渡る声音の持ち主はクラウン・ヴィクタ―だ。
普段は、学園に身を置いているのだが、ここのところ父―――ジェイルの会社であるヴィクタ―社に新作開発も兼ねて、学園を休みがちになりつつも隙を見つければ、こうして訪れていた。
今日は父に最近の研究成果について報告も兼ね、赴いていた。
現在はその報告も済み、緊張感のない理事長室を出たところだ。
理事長室を出て、第一声に発したのが、これであった。
慣れたもので、特設エレベーターで降下した後、明日乃のいた教室までとぼとぼと歩き、いない教室を覗き、一人感傷に浸る。
実のところ、明日乃に会ってしまえば話は早い。それでは戻るときに脚がふんずまってしまう。それを起こさせないための、せめてもの私への褒美になるだろう。
それでも、声をかけたいという気持ちも出てきて…、結局―――。
「これでは、歴としたストーカーではありませんか……?」
自問自答。自らに質問をしたところでまず返ってこなかった。
クラウンは教室のドアにしがみつき、隙間から中を伺う。幸い、周囲には人がいず、教室には明日乃と他の生徒が一人いて、机で何かに取りかかっていた。なので私の存在には気付かないわけで、絶好の目の保養タイムが訪れる。周囲に配慮しながら、明日乃を目でばっちりロックオン。一ミリも狂いはありませんわ!!
―――しかしその時背後に、いえ、視線を感じましたわ。
私は反射条件に倣い、背後を見やる。最初は一瞥程度のつもりではあったのだが、そうはいかないようで……。
教室の位置からして、その場から目に入って来たのは壁。
壁……曲がり角の位置から人の指が挑発のポーズ。ここでいうところの、くいくいっと指でこちらを煽るような仕草をして見せたので、仕方なくクラウンは相手の挑発に乗ってみることにした。
曲がり角を抜けると、―――誰もいない。
周囲を見渡しても……、誰一人いない。
何より外からの夕日が窓ガラスを抜け、廊下に描かれる暖色と寒色の絶妙なコントラストに目が引かれ、一瞬目的を忘れそうになる。
頭を被り、集中する。
すると背後に気配が!!―――また手がこちらを挑発。
「道化が……!」
小さく舌打ちをし、冷静を欠いたクラインは走り出し―――。
幾度の挑発の末に、場面は屋上に移る。
戸を勢いよく潜り抜けると、眼を眇める。
この光景に、クラウンはデジャヴュを感じた。
「良い夕日だよね……!!?感動しちゃうなぁ~~!」
「貴女だったのですわね?―――あの時の、一般生徒は?」
「あの日の夕日。君が実にしんみりそうにしてるから、こっちまで悲しくなっちゃったよ?」
夕日をバックにしているせいでその少女の全てを捉えることは出来ず、声音だけが頼りであった。
あの夕日とは、クラウンが本名 不知火真紅 であった時に一人黄昏ていた。
彼女の口からそのようなことが出るのは、現場にいたとされ、クラウンが思い当たるのは一人の一般生徒が上がって来た時のみである。
あの日の出来事は、酷く緊張感に苛まれ、あまり記憶に残っていない。達成感と安堵感から泣いてしまったが、それをすべて見られていたことになる。
だからなんなのかというレベルで、私からしたらあまりにどうでもいい気分になる。
「そんなにあいつがいいのかい?」
「ええ。貴女には分からないでしょう?」
「そうだね。君みたいなストーカーがついちゃうくらいねぇ?」
「それは私に対する侮辱ですか?!それとも明日乃に対する侮辱ですか!!?」
「両者だね!見ていて、実に生温い!子供のままごとか!ッてレベルだよ?本当にさ!!」
「貴様!!」
沸点に達したクラウンには既に怒りに任せた思考しか残っておらず、全てを力で解決することしか考えることが出来ない状態に至っていた。
先に手を出したのはクラウン。リリスは守りの体勢に入り攻撃を相殺する。
「おぉ!やる気?ぴゅ~♪いいねぇ。でもなッ!どうなっても……しらねぇぞ!!?」
挑発的な口調に切り替わった少女は、言動とともに行動も様変わり。
荒々しくそして、優美で力強い一面を披露した。
屋上という特別なステージで、二人は所狭しに縦横に舞っていた。
アクション映画さながらの動きで、共に一進一退の鬩ぎ合いを展開していた。
可もなく不可もなく、二人は背に夕日を宿し、無言の、空を切る音のみでその場を支配していた。
放課後の屋上に誰も脚を運ばないので、二人のやり取りはエンドレスだ。
勝敗は一体何で決めるのか……?対価はどちらかの命か?などと少し洒落てみるが、答えは二人の中にあるのではないか?と、明確にはできないものがその場の雰囲気で感じ取れる。
「貴女は、何者なの……?」
「わたし?私はね……、ペンドラコの血を引く者だ!そして力はペンドラコ流だ!!覚えておけ!!」
自分でも恐い顔をしていることに心当たりがあるが、それ以上の剣幕にクラウンは一線を引いた。
「ペンドラコ?―――」
聞き覚えのない名前だ。
なので、クラウンは眉根を中心に寄せた。
それを見かねたペンドラコと名乗る少女は――。
「無理もない。ここ最近で大きくなった存在で、家族ともども成功を収めたのだからな」
「成功?」
「父は、独自の企業の成功。母も同様だ。兄はキレ者で、学者の道を歩んでいる。では、この流派は?と思っただろう。これは代々に受け継がれる格闘術の一つだ。兄が世界大会を制覇したこともあるが、兄は注目を置かれる存在であった。そして結果が出たことで、人気は爆発。そして我々の株の上昇にすべてがひっくり返った。一夜にしてビッグドリームを掴んだってところね。ざっくり言えば」
「随分と他人行儀みたいな話し方ですわね?」
組み手を崩し、身形を整えるペンドラコ。クラウンは突っ立っていた。
ビンゴと言わんばかりの表情の変化。
「そう、だ…。一夜のビッグドリームは家族を変えてしまったのかもしれない。価値観の変化が最ものところだ。金というのは恐ろしいな…」
「ええ。その通りですわ。お金は人を変えてしまう恐ろしいモノですわ。人はどこかで一線を引かないと猛者になってしまう。………それが今、重要なことかしら?」
「たしかに、君にとってどうでもいいことだ。だが、貴様を見ているとイライラする。なぜだかな……。でも、安心したよ。お前の力に偽りが無くてさ!!」
試合再開。
彼女の語りは本当なのかは知らない。それでも、彼女の口から出たのだから、少しは信じなくてはいけないのだろうか。
共にファイティングポーズを決めて、佇む。無言の静寂が再び始まり、緊張の糸が張り詰める。
「私の前に立ちはだかる生涯はすべて取り除きますわ……」
「いいねぇ。その勢いを、―――と思ったのだが、今日は止めとくわ。明日。決闘をキミに申し込むぜ!!」
決闘。その響きは嫌いではない。むしろ好ましいいい響きだ。血が騒ぐ。
「ええ。いいですわ。その決闘を受け取りますわ!」
クラウンの返事はYES。
それに対してあちらのリアクションは“だよね”であった。
「じゃぁ、今日はこれで」
「―――えっ!?―――ちょっ―――」
ペンドラコは一人後方に歩いて行く。クラウンの反応余所に、手すりに背が当たると同時に、片手を重心にとるその姿が道化師にしかクラウンには映らなかったが、またそれが妙技で、滑らかで、そして感嘆を漏らす一瞬で……でも、反対側は生と死で表すのであれば、死を指すゾーン。彼女はゆっくり死のゾーンに身を投じるのであった。
クラウンは血相を変え、その手すりに向かい、すぐさま下を確認した。逆に見ているクラウンの方が心配になる様子で、慌ただしく動き回っていた。しかし、数分すると一つの結果に行きつく。
「死体どころか、何もありませんとは……やはり、道化師としか言えませんわ……」
何とも心臓に悪い、後味の悪い最後だ。結果からして彼女は死んでいない。生きている。
改めて、自分の未熟さの痛感。
私が、私に、無傷なのは彼女の手加減があってのモノ。
そして、すぐに相手の挑発に乗り、好き放題やられてこと。
クラウンは自身の手を強く握りしめ、怒りを覚える瞳を、夕日にぶつけた。
強く、強く、強く、強く………、強く夕日を睨み続けた。
六月の風には湿気がある風が吹いている中に、少し寒さも混じっている。
クラウン・ヴィクタ―は肌でそれを感じていた。
風に当たれるのは、外に出るしかない。もしかしたら室内でも感じられるかもしれないが、概ねそれぐらいだろう。
夕日を睨みつけていた小一時間前の彼女はもういない。
早いもので、空は夕日色から漆黒色に染まろうとしていた。丁度、彼女が見ているのがまだ、空に赤みがかった部分ではあった。
しかし、クラウンはジッと空を、手元を見つめるや否や、動こうとはしなかった。
心なしか手に力が入って、終いには手すりを壊してしまうのではないかと思うくらいに力が入っていたが、ハッと気づいたクラウンは、力なく手を離した。
ほんのり朱色に染まった手を力なく見やると、先の光景をフラッシュバックされる。
劣るほどでもなかったが、越す程でもなかった。可もなく不可もなく、ただ流れるだけの時間を過ごしたようだった。
しかし、彼女には先があるように思えた。……多分、だが。
それでも、垣間見させるほどの余裕を具現させるのであれば、それは余裕の表れなのかもしれない。私はそれに達せざる事も出来ずしまいでいたことに腹が立っていた。
未熟。その言葉が、今最も似合う言葉なのかもしれない。いや、そうしておきたい気分だ。
悲観している自分が、少し嘆かましい所だ。
眉根を深く刻み、目を閉じ、力を抜く。
この状況で、唯一の最善策は、やはり―――。
丁度、小一時間前に申し込まれたあの言葉―――決闘。私は
私は覚醒し、懐から携帯端末を取り出し、耳に当てる。
コール音が、相手を呼び出す。かけた先は―――。
「私、真紅だ。頼みがある……」
受話器から聞こえたのは、陽気な声。その聞き覚えのある安堵を覚える声に、私の緊張は解け、いつもの調子で話そうとした。
姉、カトレアこと星羅は数拍の間を挟み、開口二番に言ったのが…。
「おっかない声してるけど、喧嘩した?」
図星。…いいや、喧嘩ではない。次いで……。
「それで、IS持ち出そうとしているんじゃないの?ほんっと、負けず嫌いだよね?」
「う……」
「でも、そこまで本気にさせる相手なんでしょう?だったら、しょうがないわね……」
「ありが―――」
クラウンの勢いを相殺する。
「その代わり、ちゃんと勝つこと。いいわね?」
「――とぅ……。うん。約束する!!」
「よろしい。んで、貸し出し用の機体なんだけど、全部組みかえてるんだわぁ……、あ、システムね。でね、残ってるのが無いから、どうする?」
「え、私のは?」
「全部組変えてるんだっての。しょーがない。試作機で行くかい?」
「だめ、あれは、だめなんだ……明日乃と共鳴してしまうから……」
「別に、近くにいなければ、いいんじゃないの?」
「あの学園内じゃあ、狭い。ここからそこまでなら範囲があるから、なんとかだけど、最近の明日乃の成長ぶりには驚かされている。最近ではアビリティの取得にまで成功しているんだ。迂闊に近付けたら、明日乃が危ない」
「うーん、分かった。ならどうしたいの?」
「いまからそっちに向かうから、パーツ揃えてといて、私が組み立てるから」
なんか受話器から聞こえたが、あまりに小さいから聞こえなかったが、なんか星羅は文句言っていた気がする。
「じゃ、姉さん」
「はい。ほんじゃぁ……(ぶつぶつ)」
電話を切り、早々に階段を降り、校門をくぐり抜けた。
もちろん、外出届を出して。
徒歩十分弱で、ヴィクタ―社のガレージに脚速に着いた。重い扉を開けばそこには姉、星羅がいて、全ての準備は整えられているという証拠と姉の仁王立ちが印象深い。
姉から視点を離す。周囲を見やれば、どれも灰系色のオンパレードで、目がくらみそうになった。
「すごいね……、どれも使っていいの?」
「ええ、お好きなように。私は、上にあがってるわ」
「姉さん。どれも灰色だけど、これ全部塗装する前のやつ?」
「ええ、そうよ。生まれた時は皆、そういうものなのよ」
星羅は、一度も立ち止まらず、ガレージの階段をコツコツ鳴らしながら、上がっていき、手をひらひら振りながら、そこからいなくなってしまった。
「何かあったら、連絡する!!」
無反応。それと同時に、静寂と虚しさが込み上げてくるが、そこは気合いを入れて吹き飛ばす。
「よしっ!創るぞ!!」
一人静寂の中で、己に鼓舞する少女、クラウン。
彼女の言葉に、リアクションをすることは誰も出来ないわけだが、こういう時明日乃ならリアクションしてくれるのに、などと一人妄想に入りそうになる思考を、被り、現実に引き戻す。
深く深呼吸。自身の世界を思い描き、一気に覚醒し作業に取り掛かる。
「ふぅ……。これで完成かな?」
愛用の作業服を汚し、額に浮かぶ玉を拭い、息を吐くように発した言葉。
作業時間は二時間。体感時間は朝方を指しているかのような高揚感。悪く言えば徹夜明けの朝……なのかもしれない。
だるんとした身体を、伸びで引き延ばす。
そして今一度、地べたに座り、子供のような目線から出来上がったそれを見やる。
灰系色の細いながらも芯の通った腕。
吊り上がったデザインの肩パーツに、同様の角ばった脚パーツ。
天高く伸びるクリア素材の採用が決定したばかりの推進機翼は触っただけで指が切れてしまいそうなほど鋭く、それでいて脆そうで、迂闊に触れない、そんなイメージ。
四枚二対の翼だが、それは先端をピットとして使用も可能。驚くのはそれがピット以外でも役割を持っていること。
付属のランスにドッキングさせることで、質力が四十五割増しの結果を出している。
それは砲撃扱いとなり、発射するにあたって、今までの世代ではそれに耐えきれないとされている一撃。つまりは必殺の一撃かつ諸刃の剣だ。
当たれば、シールドエネルギーほど貫通し、パイロットにまで多大な被害を被る。結果からしてどちらにも損しか与えない。
なので、試験段階で足踏みを喰らっている中で、クラウンが今回引き上げたのだ。未だに研究に進展が無い。データが無いのであれば、私がデータをくれてやろうと、企てた。
実際、これでもしないと彼女にはかなわないと後ろ向きな考えではあるが、探究精神からそれを使ってみようと足を踏み入れた。
今まで耐えきれなかったのは、機体のせいじゃない。放ったときに相殺するそれが無いから撃った方にも被害が出たのだ。
ヘリの原理を用いて、思考錯誤してみようと思う。
だが、もしあった時はどうしたらいいのか、正直分からないし、恐い。もしかしたら殺してしまうのではないかと、悪い方を考えてしまう。
そうすると、手が震える。
でも、後戻りはできない。クラウンは一人、逡巡した。
迷っている間にも、期日が来てしまった。
迷いのなかにも恐怖があった。
――――放課後。
足取り重いクラウン。
脚はちゃんとアリーナに向かっていた。
観客席からアリーナを見やると、一人中心で佇む、小柄な少女がいた。
金髪の少女。あれが、ペンドラコ。
クラウンは着替え、恐る恐る、アリーナの中心に向かう。
「遅かったな?ヴィクタ―のお嬢さんよォ?」
「貴女が、ペンドラコ?さん」
「いかにも、私がペンドラコが娘のリリスだ。よく怖気ずここまで来たな。それは褒めてやろう」
「ペンドラコさん。想像していたのとはまた違いましたわ。もっと、こう高身長なイメージが……」
「テメェ!喧嘩売ってんのか!?」
やはり、身長はタブーなんだね。私は内心小さく苦笑。
「いえ、……ごめんなさい」
「ふん!残念だよ…。過大評価をした私が間違っていたようだ。その眼は、戸惑いがある。自身の力に確信を持てず、私を見た瞬間に更に増幅したようだな。ならば、去れ!!」
「去れって、言われて、去ったら負け犬と言うのでしょう?」
「ああ、その通りだ!口答えをするってことは、逃げないんだ?」
ここで、クラウンは昨日のことを脳裏で思い出す。
喧嘩口調はそのままで、でも容姿からして、過去になにか嫌なことでもあったのかもしれない……。そんな私ごとだが、簡潔に私個人の見解では……。
「ひねくれた……のですね」
「んぁ?!!テメェ、世の中にはなァ…、言っていいことと言っちゃいけないことがあるんだ……!!」
どうやらタブーを再び引いてしまったようです……。
喧嘩上等の文字が似合うお嬢様は、我慢の限界を迎えたようで、IS〝レムフォント〟を起動させた。
「あらら……」
クラウンは〝レムフォント〟を前に、ある程度の知識を呼び覚ました。
四世代型の格闘専用機。サポート武装は存在するが、カテゴリーに分けると大体そうなる。
主に、黒剣。文字通り、黒い剣だ。
西洋の剣を型取ったそれはなんでも断つことができる。しかし、彼女の握っている黒剣は、予想だと初期あるいは全三形態の中でも、一または初期に匹敵するのではないだろうか。見極めるポイントは黒の濃さ。形態チェンジを行うと、色が少し明るくなる。
大袈裟に言えば、金色の剣。
一度輝かせたのなら、全てをリセットに誘う終焉の一撃を屠るだろう。……などと、言われてはいる、がしかし実際に見たものはいない。だから、こんなロマンあふれるような事を口にできるのだ。
ともあれ、彼女がそれを最初の段階で踏みとどまっているのだから、クラウンはすこし安堵する。
しかし、日進月歩の要領で、人はまた先へ歩むこともある。そう、今がその時。
「ふっ、甘んじられているみたいだ……、すこし、驚かせよう……!」
クラウンは驚愕。
刹那、金色の閃光がクラウンのいた場所に穿たれる!!
「!!―――あ、ぶなかった……」
虫の知らせ。野生の感。それらのあらゆるものが度重なって、クラウンは緊急回避を成功させる。
土ぼこりが舞う。
クラウンが前いた場所にクレーターが、穿たれていた。
クラウンは固唾をのみ、額の球を拭う。
「やるじゃねえの?てっきり、温室育ちのお嬢様かと思ったぜえ?まぁ、なにしろ昨日のが偽物じゃねって、ことがわかった。どうする?ヴィクタ―のお嬢さんよォ?」
「挑まれた決闘。私は、逃げも隠れもしません。そこに私を奮い立たせてくれる者がいるのでしたら、それは私の立派な壁ですわ……。躊躇いも、なにもありません。これが私の全力全開。受け取ってくれますわね?!」
クラウンもISを纏い、対峙する。
穂先がクリア素材のランスを二本構え、気張る。
「はい~~!そこまでだ。二人とも」
「ぁ?」
おそらく二人は、頭の上に?を幾個も浮かべていることだろう。
アリーナ入口に、人影が二つ。次第に近付いて来てそのシルエットが判明する。
割って来たのは、入谷。その後ろにセシリア。
入谷はセシリアを置き、単身でしかもポッケに手を入れながら歩んでいる。仲裁にでも入るのだろうか?……否、この女教員は怖気た様子はない。むしろぐいぐい入ってくる。脚を止めたのは丁度真中、そして開口。
「喧嘩は好きにしていい。だがしかし、君たちを含め二人。私たちを入れると四人になる。ということは?」
「ツーマンセルでバトろうってか?いいじゃねえか!!?」
好奇を剥き出しにするリリス。クラウンはすこし、ほんの少し安堵する。
「チーム分けは、君たち二人と私たち二人だ。反論は受け付けない。では、始めるぞ?!配置に着け」
セシリアはブルー・ティアーズを呼び出す。
入谷は指を鳴らすと、アリーナ奥から灰色の塊がすっ飛んで来る。宙で一回転をかまし、搭乗した。
二人の準備はあっという間である。圧巻のスピードにクラウン、リリスは頬けた。
「さぁ、おっぱじめようぜ?先生よォ!!」
「……、やれやれ、これだから盛んな子供は苦手なんだ。準備はいいな?セシリア」
「はい。いつでも、行ける。今なら少し明日乃に近付けます」
「近付くな、それは変な勘違いを生む。お前はお前でいろ」
「なに、ちゃっかり先公面してんだよ!?」
リリスはすっかり逆上せ上っている。セシリアを思うように扱っていることに腹が立っているのだろうか。その胸の内を知っているのは、本人のみである。
怒れる瞳を以て、激昂、怒号を混じり、黒剣を立て、灰色の塊―――入谷―――に突っ込んだ。
入谷の使用するISは〝紅茶〟
「こうちゃ?―――」
「ふっ、少しは落ち着いたか?コイツは“こうさ”と呼ぶ。実に会長らしいネーミングセンスだろ?」
「ふん!そんなのはどうでもいい!!そいつが私を満足させてくれるのであればな!!」
ノ―モーションの入谷。
ノ―ガード戦法なのか?それともやる気が無いのか?―――この際どうでもいい!!
やる気が無いのであれば、大人しく私の剣の錆となれ!!
黒剣が入谷を裂く事のできる圏内に入る中、以前彼女は動こうとしない。
この時、リリスにはスローモーションに映っていた。刃がゆっくりと入谷の首根っこを断つことは絶対のこと。いやそれしかあり得ない。だってもう、回避のしようが無い、のだから。
「!!?」
「君はこう思ったはず。このリーチからどうやって、回避するのかと。一歩違えば、私に大ダメージを与えることが出来る。その反面君は私の心配もしてくれていたはず。つい、怒りに任せ、行動してしまった、と。しかし、君の質疑応答に私は応えなければならならない義務がある。だが、私の今の現状をした君がその答えを本当に必要としているのか、私には、回りくどいことを何度もループさせるが、きちんと説明をしないと……」
「動け、ない……!!」
動揺を隠しきれない。動揺を隠しきれなかったリリス。
なぜなら、黒剣を宙空で受け止められたまま、身動きが取れない。それでいて、入谷の表情は余裕、というか変化が見受け取れない。
ブーストをかましても意味をなさなかった。
「何をカリカリしている?私をぎゃふんと言わせたいのだろう?ならば言ってやる。ぎゃふん」
「テェメェエエエエエエエエッ!!!!!!」
身動きのできないのは剣を捉えているからだ。ならば、それを手放し、肉弾戦に持ち込む。
「まぁ、そうなるよね、あながち間違いではないけれど、だ…」
入谷によるスリーステップの奇跡劇が幕を開ける。
――――ワンステップ目。
リリスの黒剣を放り、その反動で、左足を浮かせ、後方にもってきて、同時に、左腕も引く。この時、右足軸の構えに、弓を射った構えも成立した。ならばあとは放つだけだ。的は勝手に突っ込んで来るお嬢様と言ったところだ。なにより、自動的に突っ込んで来てくれるのはありがたいのだが、ちと力量が心配な所だ。危うく……なんて、考えが結果を呼ぶケースもある。入谷は全身全霊の力で、屠る。
結果は、リリスにダメージを追わせることになるのだが、致命打までは行かなかったようだ。それでも、怪訝そうな表情に入谷は内心ニヤけた。
――――ツーステップ目。
入谷にとって強がるリリスの表情には俄然やる気がもたらす結果を生んだ。クロスガードのリリスは、腕の隙間からこちらを睨む。余裕はあるようだ。
入谷は、力を抜き腕をだらんと垂らしてから、すぐに腕を持ち上げる。ファイティングポーズを作り、リリスに挑発。もちろん乗ってくる。これも計算の内、ここでステップ終了。
――――スリーステップ目。
光の速さで向かってくるリリスに、入谷はゆっくりと迎え撃つ。
やはり、小柄なこともあるリリスはISを纏うこともあって、強力な力を出し切っていた。
こちら側が少し、守りの体勢となり、歯を食いしばる形となる。しかしこれも作戦。相手の全てを受け止め、それでもって、全てを倍返しで返す。
足払いからの上段回し蹴り。果敢にリリスは、回避運動をとる。が、急な機転に反応が追い付かず……。
身を縮ませながら、背面タックル。隙のできたリリスの懐に入るのも容易い。直撃後に退き、追撃のチャンスも自ずと訪れる。しかし、追撃をしない、いや、しようか悩んでいた所だ。
悩むより先に、攻撃を仕掛けてきたのはリリスの方だ。思いのほかダメージはないようで、入谷は小さく笑う。ざっくり言えば微笑んだ。この光景が実に奇妙であるかは本人すらよくわかっていない。
最後に、リリスを宙で側転させたことで、この三つの演目は閉幕となる。だが、地味であるからこそ、おもしろいのかもしれない。
ただ、側転をさせたのではない。この場所から五十~六十メートルはあろうバックグラウンドまで、回転を利用し、吹っ飛ばしたのだ。
結果として、派手な演目になったので、良しとしよう。彼女も別条なし、どこも破壊していない。彼女は壁に到達するまで、自力で解決したようだ。
「入谷……やり過ぎです」
思いのほか、声をかけてきたのはセシリアであった。
その表情は、強張っている。それに、ほんの少しの殺意を感じられる。ああ、記憶が戻ったからか……。友を守りたいからか……。
「まぁだ、まだぁ、まだ終わってねぇ……」
本当に感心するよ。
でも、次で……。君を使う気はなかった。でも、使わないといけないみたいだ。スメラギ。
中腰。居合の構え。
入谷は確実に、何かを出す構えをしていた。
「入谷!!」
「ちょっと待ったァあああ!!」
天井から、声がした。
しかも馴染みのある、声。
セシリアは無意識に空を見やった。希望の眼差しを込めて。
そう、そこには彼女がいた。
今もっともそこにいてほしかった人物がそこにいた。
セシリアは無意識に手を伸ばした。その希望に手を伸ばして掴まんとするかのように、強く、望む。そして渇いた口がその名前を叫ぶように、求めるように、喉の奥からそれを口にする。
「明日乃!!」
「今ここに、光纏いて、蒼嵐が全てを無に帰す。―――誰かの泪を観たくはないし、力をそんな風に使わせはしない!誰が何と言おうと私の力が絶対だ。行くぞ!!天華奏蘭!!」
アリーナ中に明日乃の想いが支配する。
力を振るわんとするものから、武器を奪い。
恐怖するものに安らぎを与え。
怒れるものに、幸福感を。
そうした、明日乃の思念が全てを包み込む。
エメラルドの風が、全てを優しく包んだ、そんな時であった。
明「セシリアが二人いたとはびっくりだ」
理「明日乃は鈍いからね」
明「そんなことないよ!!ばっちりだし、人の心読みまくりで、逆に疲れちゃうくらいだもんね!!?」
理「じゃあ、いま何考えてるかわかるか?」
明「おぅ、任せてとけ!!………」
理「わかった?」
明「え、っと……、紅茶が飲みたい」
理「それ、今の君でしょ?」
明「ぎくっ!?なぜ、それを」
理「俺だからね?書いてるの?」
明「どうせ、セクハラまがいのことを考えてるのだろう?」
理「うん。いやぁ、もう夏じゃん?そっちはさ、どういうのがいいかなって……」
明「どうせなら、かわいいのが・・・・」
理「いっそ、際どいのが……、はあ、こんなことしか考えられないのがかなしい。そろそろ〆よう」
明「そうだ。それでいい!!」
理「新年早々、マイナス思考の理十日と……」
明「藤崎明日乃がお送りしました!ではでは」