ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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マリーちゃんはおそらくきっと、何かを赦すという立場で行動することは少ないんじゃないかな。


単話
愛をください(シスターフッド マリー)


 

抱きしめてほしいと感じてしまった。

 

メンタルケアの観点から、打算をもってタッチングを行うことはよくあった。

悩んでいる人の手を握り、そっと一緒に祈ること。転んでしまった子の傷を処置し、おまじないをかけること。

目の前の人が少しでも、安心できるように。そういった打算が不純であると考えたことはなかった。

 

友達や、お姉さま方に、打算をもってタッチングを行うことはよくあった。

テストが返却され答案を確認し、喜びを分かち合うためにハイタッチをした。トリニティでは珍しく元気な冗談をした子に、笑いながら、ツッコミというモーションをとった。

どうやらとても壊れそうな見た目をしているらしい私に、ヒナタお姉さまが触れていいのか悩むようなそぶりをした気がしたとき、そっと体を寄せた。

目の前の人が少しでも楽しくなってくれたら私も楽しくて、そういった打算を不純だと考えたことはなかった。

 

でも

 

隣で祈っている彼女を。つぶらな目で祈っている彼女を。ヴェールから覗く明るい髪が。ヴェールを押し上げ小さく揺れる耳が。私よりも一回り小さい手が。ゆるく編まれた髪の先が。小さなお花の飾りが。黒い布地の下にあるマリーちゃんが。

 

そんなことを考えてしまう私は、不純なのではないか。

 

私は清廉潔白ではない。有性生物の生まれ方だって知っているし、シスターフッドの外のお友達なんか、恋も真っ盛りなお年頃。そんな「愛」を不純だなんて思わない。でも。

 

うっすらとこの身を包む冷たさを。一人でいるときに感じる寒さを。夜の静寂を。寂しさを。マリーちゃんなら埋めてくれるんじゃないかって。

なんでもないようにお話しながらそっと寄れば。ちょっと手を握るくらいなら。真剣に訳を話してお願いしたら。そういう関係を積み上げていけば。マリーちゃんなら赦してくれるんじゃないかなって。

 

そう思ってしまう私はきっとよくなくて。

 

いま、二人っきりの今。

少し離れた礼拝堂。他に人はいない。もう日が沈むころ。人の声はしなくて。誰かが来れば音でわかる。入口からすぐには視線が通らない。今なら。なんて

 

そう思ってしまう私はもっとよくなくて。

それをわかっていてもなお。

 

少しくらいは私の願いも。そんなことは私が一番考えてはいけないことで。

あさましく。マリーちゃんに。マリーちゃんから。彼女の意思で。抱きしめてほしい。なんて。

 

そんなに都合のいいことが起こるはずがないこともよくわかっていた。

 

 

座っている椅子を鳴らさないようにそっと腰を浮かせる。おおよそ一人分空いた距離を詰める。

気づかれずにできたのはここまでだった。

なんでもない笑顔か、悲しそうな表情か、どちらを浮かべるべきか迷ったけれどもうまく表情を動かせなかった。

 

彼女の目がそっと開く。

祈りを邪魔してしまったことにどうしようもない罪悪感が生まれた。

彼女に触れようとして、どうしていいかわからなくて、いつもみたいに祈るために組まれた手にそっと手をかぶせる。

 

彼女が私を伺う。

そろそろ私がおかしいことに気づく。

何か、勝手にしてしまうなら、きっと今で

でも、

マリーちゃんが悲しむのはなんだか嫌で。

 

「少しだけでいいんです。抱きしめてくれませんか。」

 

 たすけて

なんて言えず。好きだなんて言えるはずもなく。でも、言わないのは不誠実なのかもしれない。

 

優しい彼女は、そっと胸元に私を抱えようとしてくれる。

気遣うように腕が回され、悩みを一緒に抱えてくれようとしてくれる。

そっとぬくもりに包まれた。それでもなお、埋まらない何かの感情があった。

 

もしかしたら、これが、愛なのかもしれない。

 

ゆっくりと5秒数えた。

そっと腕から抜け出した。

 

マリーちゃんを見つめられず、頭を垂れた。

 

「ごめんなさい」

 

初めて胸がきゅっと詰まった。

 

「マリーちゃんを、好きになってしまったみたいです」

 

 

 





マリーちゃんとガチ恋したいようなしたくないような。うごご。
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