ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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ヒフナギに挟まれ
ある日(ティーパーティーa)


 

 

 

 

 

 

 

ある日。

 

そう、季節も落ち着き秋になって、ちょうど晴れた日のことだった。

 

後日にはミレニアム主催の晄輪大祭が控えている。トリニティも当日参加するだけではないため、ティーパーティーとしてちょこちょこ作業があったりびっしり作業があったりする日々の中、お休みを見繕った日。

私は近くのショッピングモールに来ていた。

 

今日はモモフレンズのグッズの販売、販促のための着ぐるみによる奇妙な寸劇、そして規定額以上のグッズ購入でペロロ様達と写真撮影ができる。

 

一人で行くのがどうも億劫だったためSNSで近場の人を誘ってみたところ、同年代の女の子と一緒に行くことになった。もともと同じペロロ様ファンとしてSNS上では少しだけ交流があったのだが、今回初めて顔を合わせることになり、それが同じトリニティの生徒だと知り少し微妙な縁を感じる。

 

 

というのが今回の口実だった。

午後2時からイベントが開始されるので、それより少し早い時間を集合時間と指定して、それっぽい待ち合わせ場所でSNSをいじるふりをしながら彼女を待つ。

 

少し待つと、阿慈谷さんが小走りで駆けてくるのが見えた。

 

待ち合わせ相手が彼女であることを確信している私は、少し様子をうかがう風を装った後、声をかける。

 

「こんにちは。…ヒフミさんですか?」

「はい、えっと」

「   です」

 

SNS上でも公開している私の名前を告げると、彼女の笑顔がよりほっこりとしたものになる。

ああ、本当に、可愛らしい人だ。

 

「すみません、集合時間ギリギリになっちゃって」

「いいえ、大丈夫ですよ。イベントまではまだ余裕がありますし…」

 

私はカバンの中から白いレースのハンカチを取り出し、彼女の汗ばむ肌にとんとんと、そっと押し当てる。

 

「ヒフミさんに会えるのも楽しみにしていましたもの。ヒフミさんに大事がなくてよかったです」

 

彼女に向って笑顔を形作ってみせると、薄いほほにもっと赤色が乗った。

本当に、可愛らしい人だ。

 

 

 

 

さて、時刻は午後2時になり、イベントの時間になった。私は目当てだったペロロ様柄のティーカップを3客、厳重に包んでもらう。最近話題のミレニアム製の緩衝材ならさほどの心配はいらないだろう。彼女は持ってきたカバンいっぱいにペロロ様のグッズを詰め込むほどに買っていた。

 

しばらくすると、モモフレンズたちの寸劇が始まる。が、私にはよくわからなかった。ふんわりとした彼等はちょこちょこと動き、ストーリーはあるが、あってないようなもの。

 

ちらりと彼女に視線を流すと、なるほど、純粋な子供のように目を輝かせている。

なら、こういうものでいいのかもしれない。

 

 

 

1会計1枚きりの撮影引換券をもって彼らの着ぐるみの前に並ぶ。複数名での撮影も可能だったとのことで、彼女の券でペロロ様を2人で抱きしめるように1枚、私の券でペロロ様とペロロはかせに挟まれるように、密着した私たちを1枚。

 

渡していた携帯端末を確認し、SNSのメッセージから彼女と写真を共有する。また、彼女のデータが増えた。

 

彼女に許可を得てSNS上にも写真をアップロードするためスマホをいじっていると、気分が高まったのかぎゅっと抱きしめられる。ああ。天性の世渡り上手だ。しかも自覚が無いなんて。

 

すり寄る彼女にインカメをむけ、ぱちりとシャッターをおろす。

また彼女のデータが一枚増えた。頬が緩む。

髪先がそこを擽った。

 

 

 

その後、彼女とプリクラを取りにゲームセンターへ。カーテンに囲まれた空間で彼女にそっと体を寄せる。手慰みでペロロ様のイラストを描いて見せるととても喜んでいたことを今でも覚えている。彼女は樹脂製の小さな写真を大事にお財布にしまい込んだ。

 

ペロロはかせが作った銃ですべてをはかいするシューティングゲーム、『モモフレンズ大冒険DX』なんかをプレイし、コラボ楽曲が入ったリズムゲームをプレイし、へそくりからひねり出したお金でクレーンゲームなんかをプレイし、2つとれたペロロ様の1つを彼女に差し上げる。

 

別れ際には学校でまた会おうなんて話もして、彼女と笑顔でわかれりゅことに成功した。

 

 

 

 

 

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私は茶会の席に座らされていた。本来ならここはナギサ様の席である。

そのナギサ様は私の右後ろに立ち、私の前のティーカップに紅茶を注ぐ。

 

「さあ、お飲みください」

 

目の前に相手がいない茶会はこれが初めてだ。お茶を前に一刻飲み込み。

 

ティーパーティーである私たちがお茶を汚すはずはない。なのでこの目の前のお茶はただの紅茶……ナギサ様がいれたとってもおいしいお茶であるはずだった。

 

カップを持ち上げ、恐る恐る口をつける。味なんてわからない。

 

「昨日は、お楽しみだったようですね。せっかくの休みですもの。」

 

ナギサ様は机の上にSNSアプリを開いたスマホを置く。彼女がどんなアカウントでSNSをしているかなんて考える暇はない。

 

そこには私の、昨日の投稿が映されている。阿慈谷さんとペロロ様を囲った写真と……プリクラで二人でハートマークを作った写真。ペロロ様とはかせに挟まれて密着する写真。彼女に背後から抱きしめられ、顔を寄せた写真。

 

ナギサ様の偏愛、寵愛の対象の、阿慈谷さんとである。

 

一度ティーカップをソーサーに置くと、ナギサ様の手が肩に触れる。体温が上がるのがわかった。

 

「ご友人と、楽しかったですか?」

「……ナギサ様、失礼ですが、何か勘違いをしておられるのでは?」

 

カバンから、包んでもらったティーカップを取り出す。

3客用意したのは、ホストである彼女たちのためという名目上。

 

「私は、ナギサ様へのプレゼントを買いに行っただけ。私達なら、カップの贈り物など珍しくはないでしょう?そこにただ同行者がいただけで」

 

それは全くの詭弁。カップは普段の使用には耐えうるものの、質は上等なものではない。そのようなものを贈るとあっては、ティーパーティーとしては、致命的な失態。だが、

 

「せっかく3客用意したんです。ペロロ様が好きな誰かを、今度誘って来ましょうか?」

 

早くその手を離してほしいと必死に祈る。心臓が破裂してしまいそうだ。

視界がゆがむ感覚がする。ともすれば私自身が傾いてしまっているのかもと。

胸がきしむ。

 

「……そうですか」

 

祈りが通じたのか、ナギサ様の手がゆっくり離れる。

ナギサ様は一度席を離れると、手の中にロールケーキの乗った皿を携えて戻ってくる。小さなフォークと一緒に私の前にそれを置くと、

 

「それは、とてもよかったです。」

 

優しく、私の頭頂部に数回手を当てる。

 

小さなフォークを拾い上げ、ひとかけらぶん、ロールケーキを口に運ぶ。

小さく息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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少し前にあった些細なすれ違いから、ナギサ様と阿慈谷さんの関係値はどうやらよくわからないところでとどまっているよう。

 

あはは……と彼女が笑うたびにナギサ様の肩が小さく震える。

ちょっとの癖と少しの自信の無さと僅かな気まずさで生み出される笑いなので、私が空気を整えながら、少しづつかばいながらお話すればあまり出ないのだけれど。

 

そんなあなたも愛らしいと思ってしまう。私はあなたが大好きだから。

そんなところも見たいと思ってしまう。

 

私がティーカップに口をつけたタイミングで、ふと会話が途切れる。

 

私は、あなたといられるだけでもうれしいのだけれど。

あなたはきっとそうじゃないから。

 

紅茶をひと口含む。

舞い上がってしまって、味なんてわからない。

 

「そういえば、このティーカップを買った後のことなんですけど、」

 

先ほどまでの会話を適度に継ぐように口を開くと、あなたは少し表情を変える。

なんで変わったのか、考えたくもないけれど。

 

「ヒフミさんと、ゲームセンターに行ったんですよね。その時に、クレーンゲームでキーホルダをとって……思った以上に気に入ってしまって。ヒフミさんにも差し上げたんですけど、ナギサ様も一つどうです?」

 

ナギサ様からすると、もしかすると彼女からも、同じものを持たせるための口実だと思われるかもしれない。でもそれだと全くの嘘。

 

本当は、あなたとおなじキーホルダーを、少しの間だけでもいいから着けてみたくって。

 

後日もう一つ入手したキーホルダーをあなたに手渡す。

 

その時に、あなたの手に触れた。

 

心臓が破裂してしまいそう。

 

きゅんと胸がきしむ。

 

あなたとヒフミさんが、どこに着けようかなんて話している間に、あなたのお手製のロールケーキをひとかけら口へ運ぶ。

 

甘美だ。

 

 

 

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