ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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がんばってナギサ様が実装される前に文章家しろ。きっと本編でもっといいのが出る。


庇護欲(ミカが出てくる話)

 

 

 

少し前、ナギサ様が私の羽を梳いてくれなくなった時期があった。エデン条約の締

結のために忙しく、そしてナギサ様自身も追い詰められていた時期。

たかが手をつなぐためにそんなに大層な理由が必要なのか。

そうしてまで手をつなぎたくないのか。

触れたくないなら、まだそれでもいい。その手で相手を殴る必要なんてないだろうに。

 

ナギサ様達の尽力と騎士団とシスターフッドの協力と、外部の「先生」なる人物のおかげで騒動こそ無事に収まったものの、最近またナギサ様に当時のような陰りが見える。

 

「先生」に協力を仰ぐことも考えた。けど私は先生の連絡先を知らないし、シャーレには接触はできるだろうけど彼には少し頼りづらい。キヴォトスの存続にかかわるような大事ならともかく、トリニティの内政の、そして一個人を救うためだけに行動を起こすには先日のエデン条約の騒ぎが残した問題は深刻すぎた。

 

 

ナギサ様がふと行方をくらましたことがあった。

それは同僚のセイア様が死んだという知らせに次ぎ、エデン条約を阻止するための何かの勢力の動きの欠片と自分が殺害される恐怖。死にたくないと思いながらも、

 

『たとえ私が死んだとしても、ミカさんだけは無事でいてもらわないといけないんです』

 

その未来の自分の死を見つめ続ける日々がどれほど恐ろしかったことか。

 

誰にも行方を知らせずどこかのセーフハウスに閉じこもり、食事に毒が混入されることや寝首をかかれる恐怖に震えながら、ただ明日にはまた執務だとかミカさんを救うための準備に戻れる気力が回復することを祈りながら一秒一秒を数え時が過ぎるのを待ち、私のナギサ様の行方を捜すようなそぶりでも誰かが自分を探していると気づいてしまうような。

 

ナギサ様がこっそりと教えてくれたその建物の位置に行くべきか、ナギサ様の敵も連れて行ってしまわないか、それでも一人に耐えきれず一般の回線を使い私に連絡してきたこと、何度も天秤にかけたがその時間すらも惜しいほど悩んで。

 

途中のコンビニで買ったカロリーブロックを私が半分かじってからナギサ様の口へ運び、水も同様にそうした。私がいるから少しでもベッドで眠ってくれればよかったのに、いつものように椅子に腰かけ私を膝にかかえ、櫛の代わりにハンドガンを握ったまま眠ってしまうような。

 

今日はそれほど深刻な事態ではないのだけれど。

昨日羽を梳いてくれた時、ミカさんへの心配を少し語ってくれた。

 

少しでもナギサ様の助けになればいいと、ハナコを誘って買い物に出かけた。ペロロ様のぬいぐるみがいいか、それともミカさんと一緒に食べれるようなお菓子とかがいいのか。ハナコには少し手間をかけさせてしまったので少し多めに買いあさり、多くなった荷物を抱えながら、少しでも早くナギサ様に元気になってもらいたくて学校へ赴き、

やっぱり上手くいかないのか、何やらまた空気が騒がしい。

 

 

 

 

 

 

 

少し前の夜のことを思い出した。ハナコが文字通り裸で夜空に放り出されていた時。その時よりもどうやら人数が多い。

私には救わないという選択肢はない。

 

トリニティの制服。どこのグループなのかはわからないけど、魔女だとか裏切りだとか叫びながら、うずくまってしまった女の子にぼこぼこ攻撃を加えていた。

 

飾りのついた白い羽は土と血で汚れ、桃色の髪にはさみが添えられて、

直接の面識はないのだけれど、ナギサ様から聞き及んでいる。写真も見せてもらったことがある。昨日もナギサ様が、彼女のことを話しながら懐かしむような笑顔を浮かべていた。

 

「ハナコはかえってもいいのよ?」

 

私には救わないという選択肢はない。でも、先日あんなことがあったハナコはできるだけ目立ちたくはないだろうし、どうやら彼女の視線からは少しだけ、同情やらとは違う複雑な感情が感じ取られる。

 

「これだけ、持ってて。私の部屋にでもおいててくれたらいいから。」

 

「でも、そうすると   ちゃんは」

 

ハナコが一緒に戦ってくれることは初めから想定していない。非難もしない。買い物袋を握ってもらい、ぎゅっと背中を押す。

 

「手が空いてたら、ナギさまに連絡してくれたらいいから。あんまり、目立ちたくないんでしょう?」

 

そう告げると、振り返ろうとしていたハナコの顔がぎゅっと歪んでしまい、何も言わずに駆けて行ってしまった。

怒らせるつもりで言ったしそれでいい。おそらく言及されたくないのを知りながらそう言った。ハナコなら、たぶん荷物くらいは取っておいてくれる。

 

彼女を囲んでいる人数を数えようとして、自分のピストルのマガジンに入る弾の数より多くなったので数えるのをやめた。もう子供でもない年齢だろうに。いたぶっている人たちが本当に彼女の髪を裁断してしまうまでもういくばくもないだろう。

周りの誰かと同調して興奮しているのが伝わってくる。

 

足音がしない走り方は心得ている。小さなナイフとピストルを抜きながら、一番人だかりの外側にいる一人を狙い、近いづいて撃った。

その一人はくらりと倒れこんだけど、周りの人はすぐにこちらを向く。彼女に銃口を向けていた数人はそれをこちらに向けた。

 

一対一ならたぶん何てことはないのだけれど、大人数を相手すると今でも身体がすくんでしまう。いらない昔の記憶をどうしても忘れられないせいだ。吐くまでお腹を圧迫された日のこととか、出した分よくわからない液体を詰め込まれた日とか。

 

「なにしてるのっ!」

 

でも今は彼女を救わなくてはいけない。気合を入れるように叫び、声が引き金になってこちらに銃弾が飛ぶ。

数発が羽にあたってそのうちの一つで折れたような痛みがするけど、走れるなら問題ない。二発撃ち返したけど不意打ちでない銃弾など当たっても耐えられてしまうだろう。

 

祈りながら彼女へ向かって走る。半分ほどの弾丸は当たらず、数発を羽で、数発をナイフで防ぎ、ライフルを持った人に左手ごとナイフを撃ち抜かれて落とした。

彼女を囲む一人の腹部を折れていないほうの翼で殴る。一人気絶させたのと引き換えにこちらにも激痛が走る。

もう一人に左手で殴り掛かり、膂力が足りないのかそれでは驚きもしないようだ。撃ち返された弾は左肩で受けたけどまだ大丈夫。

右手のピストルにはまだ五発分弾が残っている。四回引き金を引いてそのうち二つは外れた。一つは誰かの足に当たった。一つで一人がまた倒れこんだ。

 

最後の弾を撃つのを渋ったところを蹴り飛ばされた。運がいいのかわからないけど彼女のほうに倒れ込めたので容体を確認する。

泣きじゃくった跡があるけど、驚いた眼は覗き込む私の顔をしっかりと見つめている。

周りの人たちは舐めているのか銃での攻撃は行わず、私の羽を踏んだ。それに最後の銃弾を撃ち返した。

彼女を抱えて逃げようかとも思ったけれど、どうも分が悪い。

さっき私の羽を踏んだ人に右手で殴り返し少し眠ってもらったけれど、すかさず側頭部に弾丸が飛んできた。

くらっとして彼女に倒れこんだ。抱き留めてくれたので痛くはない。

けれど、周りの人たちはひどく興奮した様子で彼女と私に引き金を引いた。

折れた翼を広げて彼女をかばったけれど、受け止めきれているのか。

数人がリロードするすきに殴り返そうとして、別の人がまた引き金を引いた。

痛みとともに彼女のもとに逆戻りした。

ぎっと睨み返すけど、周りの人たちはもう油断していない。

気絶させたと思っていた数人も、甘かったのか手が緩んだのか、すでに立ち上がっていた。

 

でも、大丈夫、彼女から離れなければ、まだかばってあげられるから。

威嚇するように折れた翼を広げ、背中に彼女を隠す。

銃で撃たれ、蹴られるたびに、もはや広げているだけでも痛むけれど、散々貶められた焦げ茶の羽に執着なんてない。たとえちぎれたって、それでもいい。

頭に血が上ったのか周りの人たちは攻撃の手を緩めるつもりはないようだ。

トリニティでは生徒同士の権力争いなんていくらでもあるけど、これだけ引き金を引いたなら隠ぺいはできない。ケガをした彼女は、傷が癒えるまでは確実に騎士団に守られ、ティーパーティーが手を出せなくてもフッドのヒナタは確実に働きかけてくれるはずだ。

ああでも、もし羽がちぎれてしまったら、ナギサ様にはもう梳いてもらえないかな。それは少し悲しい。ヒナタにチョコをもらいに行くときはきっと、彼女のほうが痛そうな顔をするだろうな。

もう一度目の前の人をにらんだ。

 

 

 

 

「ちゃんと……受け止めてくださいねーっ‼」

 

 

そこにいたすべての人がその声のもとを向いた。

ハナコがにっこりと、それはもう素晴らしく、いつもの笑顔よりもずっと恐ろしく微笑んで見せると、私の体に桃色の光が仄かにともり、痛みが和らいだ。

その一瞬後、反対側から銃弾が飛んだ。そちらのもとにはいつかナギサ様の執務室で抱擁を交わした二人が援護の火線を焚いてくれている。

 

私はもう一度立ち上がると、正面にいた一人に頭頂部をぶつけた。たいした衝撃になってはいないようだけど、それを皮切りに彼女たちはその場所から逃げ出した。追い立てるように二人が火線をのばしてくれているので、もう大丈夫だろう。

ハナコがスマートフォンでどこかに連絡を取ってくれているので、私は安心して彼女に声をかけた。

 

「ミカさん、大丈夫でしたか?」

 

 

 

 

 

 

 

添木と包帯でくるくる巻かれた羽はまるでナギサ様のように白くなったが、重さが幾分か増した。広げると負荷がかかって痛いのでこげ茶だったころよりいっそうちぢこめてしまっている。

ハナコにプレゼントを抱えてもらってナギサさまの執務室のとびらをくぐる。

珍しく書類が片付けられた机の上にティーカップが2客置かれ、どこかから持ってきた椅子に座りナギサ様の対面にミカさんがいた。

 

昨日のことなど、何もなかったように話していた。昨晩はハナコが私を抱えて放してくれなかったように2人も一緒に過ごしたと二人から聞いたが、そんな そぶりはナギサ様とミカさんは見せていない。

ナギサ様とミカさんは私に、それからハナコに視線を向けた後それぞれ軽く挨拶をしてくれた。

ハナコからプレゼントの袋を受け取ると、ナギサ様に膝にのせてもらう。

 

「ナギサさま、元気になったみたいだけど、せっかくだから。」

 

時々ナギサ様がみているペロロ様のグッズに、お茶会に並べれそうなクッキーの箱、ビタミン剤。

 

手持ち無沙汰になり立ち位置に迷っハナコが部屋を離れようとするが、ミカさんがその手をつかまえると何やらハナコの耳元でささやく。ハナコは数秒迷った素振りを見せたが、諦めた、とは少し違う、何かの建前がなくなったように穏やかに笑うと、対面で彼女の身体をいじくりながらいちゃつき始めた。

もしかしてハナコの複雑な感情は恋だったのかもしれない。

 

袋をひっくり返すように、目薬、ホットアイマスク、腹巻、そして包んでもらった本が一冊零れた。

 

「これ、ハナコのプレゼント」

 

「……私に、ですか?」

 

ミカさんとの「遊び」が楽しかったのか数舜遅れた返事に少し妬いてしまう。

 

「いつも、お世話になってるから。」

 

手渡そうとすると、手をぎゅっと握られた。

 

「ありがとうございます」

 

ハナコはにっこりと笑って、いつものハートが付きそうな弾んだ声で受け取ってくれた。

ハナコが丁寧に包みをとくと、中に入っていたのは、

 

「…医学書、いえ、解剖学の参考書、ですか?」

 

めずらしくハナコと、ついでにナギサ様とミカさんもきょとんとした表情になる。

 

「うん。かーますーとら、だっけ。ハナコがいつも読んでるの。ヒナタが、人間のつくりが書いてあるって言ってたから。」

 

「…たしかに、人間の作り方ですね」

 

ハナコは面白そうに、ころころと笑ったけど、なぜか彼女は顔を赤らめ、ナギサ様からはそっと視線が刺さる。

 

「   ちゃんからのプレゼント、大切にしますね」

 

本を抱えたまま勝手に部屋の棚からティーカップをもう2客取り出すと部屋のポットと茶葉で勝手に紅茶を淹れはじめ、ナギサ様のカップと並べるように一つ、もう一つはミカさんのものの隣に置き、机の向こう側でミカさんと一緒に本を読み始めたようだ。ハナコは笑顔で、ミカさんはまだ顔を赤らめている。

 

プレゼントを出し終わった袋をたたんでいると、ナギサ様が頭を撫でてくれた。

 

「ありがとうございます。…ミカさんがこんな風に笑うのを見るのはいつぶりでしょうか」

 

ミカさんがじっと本を覗いた瞬間ハナコがその耳元をくすぐり、彼女は本を丁寧に机に置くと逃げるように少しだけ距離を離したハナコを抱き留めた。

ハナコが淹れてくれた紅茶を含むと、少し熱かった。

 

 






保護者視点とミカさんの感情入り文章は次回アップデートにて実装予定です
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