ブルーアーカイブ短編   作:天城修慧/雨晴恋歌

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ユウカ、ちょっとやばめな女ひっかけてくれ……

2022.12.24 キャラクターの名称とそれに関する表現を変更


セミナー
ちょっとお時間いただけますか(セミナー  ユウカ)


 

『ちょっとお時間いただけますか?』

 

ウサギ耳にぴったりフィットするイヤホン。いじらしく周りの音をたくさん拾ってしまう敏感な私の耳に、試作品のそれは優しくユウカ先輩の声を届けてくれます。

 

ミレニアム近くのエンジェル24で購入したビニール袋をガサガサならし、小さな菓子パンと常温のエナジードリンクを引っ張り出します。

 

『それに私に、ノアに…』

 

プルタブを起こすと気の抜けた音が鳴り、そして、

 

『まぁ他にも』

 

私は生まれて初めて自分の耳を疑いました。

 

 

 

 

『今週もスマートに乗り越えましょう』

 

動画を吐き出し終わった端末は、また初めに戻り、同じ映像を映し続けます。しかし、何週それが繰り返されても私の名前が呼ばれることはありませんでした。

 

少しごまかすような風味がついたユウカ先輩の声から、おそらく先生と遭遇したことのない生徒は省いたのだろうと想像はつきます。1分間の動画では、全員分の名前も呼べないでしょう。

 

スチール製の缶をきゅっと握りしめました。

 

『一応、コユキもセミナーの一員だったんですよ?』

 

そんななかで、セミナーでもなんでもない子ウサギの名前が呼ばれて、たまったものじゃありませんでした。

 

確かに、私はユウカ先輩ほど計算は得意ではないし、かっちり通達だけのために動かしているセミナー公式アカウントより先輩自身がプロモーションをしたほうが何倍も宣伝効果があることは明白。

 

C&Cのお姉さま達みたいにうでっぷしに自信があるわけでもなく、小競り合いのたびにぴょこぴょこ駆け回ってはウサギの丸焼きになる始末です。

 

エンジニア部やゲーム開発部のように突飛な、あるいは万人受けする功績もなく、ヴェリタスや子ウサギちゃんのように電子の海を泳ぎ回ることなんてできない。

 

子ウサギちゃんのほうが何倍も役に立てる力があることは、入学して少しで気づきました。

 

でも、『最先端の技術、知識』なんかには及ばない雑務を片付けることしかできず、鮮烈な印象もなくったって、

 

ユウカ先輩のために駆け回って、思いを伝えるかじりじり悩み、ステージに立った時には先輩の色のペンライトを振って、手紙も受け取ってもらえて、日が落ちてからもパソコンをたたく先輩の隣で書類にハンコを押し続け、たまの休みの日に写真を送りあったり、炎天下の日もグラウンドの部活との調整に駆け、帰りがけに二人分の飲み物を自動販売機で買って帰ると机の上にもつめたいのみものが二人分よういしてあって、

 

ぐるぐる思いが頭の中を回って、何も先輩は悪くないんだと思って、胸が苦しくなって、私に笑いかけてくれた子ウサギちゃんも思い出して、自分だけが悪いのだと思いいたって、

 

問題ばかりおこす子ウサギちゃんなんかより私のほうがって。そうしてまた自己嫌悪を起こして、せっかくの休憩時間になにも休めていないことに気づいて、

 

胸が痛くなって、先輩に迷惑かけちゃうのかなって、

 

自分の人生のどれだけに意味があったのかなって。

 

死んだら、やっぱり迷惑がかかっちゃうのかなって。

 

もしかしたら、私がいなくなったら、人手が足りなくなったら子ウサギちゃんもちょっと素直に、ユウカ先輩の隣に、セミナーの手伝いをしてくれるのかなって、

 

屋上の設備点検のためのカギがポケットに入っていることが耐えられなくて

 

 

 

『今週もスマートに乗り越えましょう』

 

 

「ちょっと、お時間、頂けますか」

 

 

相談なんてできずに、また一人で言葉を飲み込んだ。

 

イヤホンを耳から取り外し、ビニール袋と菓子パンと一緒にカバンの中にしまって立ち上がりました。

 

休憩時間がおわってぱたぱた歩いてセミナーの扉をくぐって、

 

 

「先輩、」

 

屋上に行く仕事を後回しにする言い訳なんて思いつかず、

 

不審に思ったのかユウカ先輩が手元の端末から顔を上げました。

 

 

「あの、」

 

「……どうしたの、  」

 

「今週の、」

 

 

驚いた顔をしたユウカ先輩を見て、やっと自分が泣き出してしまっていることに気づき、

 

慌てて逃げ出そうとして、ユウカ先輩は追いかけてきてしまうんだろうと思って階段を駆け下りることなんてできず、

 

 

寄ってきてくれたユウカ先輩の気配を感じながら罪悪感に飲まれることしかできませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つづきますん
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