書きかけのゴミが10個ほどたまってる
夜食用の五袋350円を切る程度の油揚げめんをゆで、添付されたスープと僅かな量のラードを規定量より少な目な水分量でとき、くず野菜と呼んで差し支えないような葉っぱと細切れ肉を炒めたもの、そしてありったけのチーズをネズ助君たちの分をのぞいて削って散らす。
こんなものよりもっとおいしい物、彼女が語るには刀削麺などがそれにあたるとも思うのだけれど。
つまらなそうな顔で携帯端末に表示されているテキストを眺めていた彼女、サヤの前にどんぶりを置くと、彼女は眼を輝かせながら食卓に置かれたコップに突き刺さった箸の山から適当に二本ひっこ抜いて丁寧に手を合わせた。
どうして被検体である私が料理までふるまっているのかわからない。けど。
箸が突き刺さったコップの隣、塩や胡椒、唐辛子、醤油、酢、ほかにも乱雑に積んだ調味料の小瓶。それが一つたりとも減っていない。
そして彼女の表情を覗き込む。それだけで、満足してしまった。
のこったチーズを小皿にのせて床面に置くと、ネズ助君たちが可愛らしく分け合いながら食べ始める。
さて、気分もいいので何かデザートでもふるまってあげようかとこの前少し安価に手に入れた桃の缶詰を拾いに立ち上がった。
1ダース積んだ缶を一つ手に取り、お皿を新たに1枚抱えて、フォークか何かも必要かと思ったけれどサヤなら箸でもうまいこと食べるだろう。
サヤがいる机の上に欠伸を漏らしながら缶を置く。と、
彼女は珍しく、私が机の上に置いたものを見て顔を歪める。
「…ダメだった?」
「そんなことは無いのだ。昔飽きるほど食べたってだけで、」
缶切りのいらない蓋のタブをつまんでめきょっと開封する。
半球状の果肉の一つを皿に丁寧に盛り、半分ほど中身が減ったどんぶりの横に添えた。食べ合わせは微妙だろうに、彼女は半分ほど麺を残したまますぐさま果実の端を小さくかじり、溜息を吐き、そして慌てたように私の顔色を窺う。
なんだ。そのうれしそうな素振りは計算のうちか。それとも私の気分を害さないように気遣ってくれたのか。
「桃なんか食べ飽きるって、桃娘じゃんね。果実だから一年中食べるわけでもないし」
彼女を困らせたくない。だから適当に、軽口のつもりで言葉を紡いだ。
桃娘。甘露だけをすすり続けた身体は涙の一滴すら甘美な味がするらしい。
コップに突き刺さった箸を適当にカップルにし、シロップに沈んだ半球をかじる。
ドロドロの糖蜜の中に負けない程度の旬を過ぎた香り。
二口めをかじろうとして、サヤがめきょっと固まってしまったことに気づく。
「…栄養バランスもカスだし、まともに成長して大人になれるなんて思えないもんね?」
「そそそうなのだ!そんなもの、伝説上の生き物と変わらないのだ!」
失礼だとか、そういったことはどうでもよかった。
机の向こう側にいる彼女の頭のてっぺんから、意外とあるふくらみの近くまで視線でくすぐる。
焦りか、熱い物を食べたからか、少し汗ばむ白い肌、下に浮く血流、
身を乗り出して彼女の首元に顔を近づける。
席を立てばいつでも逃げられるくせに。
へんなプライド。
彼女の耳の付け根を掴むと、怯えたようにぎゅっと目を閉じる。
きゅっと嗅覚に刺さる彼女の香り。
桃の香りなんてしないけれど。
「おいしそうな匂いするじゃん?」
概念で勝負していけ